中国の十大階層

魯皮皮

 先般、中国社会科学院は約百人の社会学学者が3年がかりで調査、研究した重要な課題の成果「当代中国社会階層研究レポート」を出版した。専門家たちは同レポートの中で大量の調査データを使って今日の中国の社会階層を分析し、初めて中国大陸部の十大階層の社会的地位の順位を定め、国と社会管理者階層、経営者階層、私営企業主階層、専門技術要員階層、事務要員階層、個人経営商工業者階層、商業サービス業従業員階層、産業労働者階層、農業勤労者階層、都市無職、失業、半失業者階層という「十大階層」を画定した。

 「当代中国社会階層研究レポート」の研究者と執筆者の一人、中国社会科学院社会学研究所研究員の王春光氏はこう語る。この命題は重要な意義がある。1978年の改革・開放以来、中国の社会階層構造に大きな変化が生じ、もとの「二つの階級、一つの階層」(労働者階級、農民階級と知識人階層)という平行する社会構造が著しく分化し、職業を基礎とする新しい社会階層分化メカニズムが次第にこれまでの政治、戸籍、行政の身分を根拠とする分化メカニズムに取って代わるようになった。現段階の中国の社会階層の分化を研究する目的は、より多くの社会の力と団結し、それを動員して社会・経済発展の目標を実現することにある。

 十大社会階層およびその特徴

  同レポートは画定した十の階層およびその社会的地位、特徴などについて次のように定義している。

 国と社会管理者階層は政府機関、事業体、社会団体で実際の行政管理職権を行使する指導幹部を指し、社会階層構造全体の中で約2.1%を占め、当面の社会・経済発展および市場化改革の主な推進者と組織者である。

 経営者階層は大中型企業における業主でない中高級管理職を指し、社会階層構造全体の中で約1.5%を占め、市場化改革の最も積極的な推進者と制度の革新者である。

 私営企業主階層はある程度の個人資金または固定資産を擁し、投資して利潤を獲得する人を指し、社会階層構造全体の中で約0.6%を占めている。この階層の政治的地位はその経済的地位とつりあわないが、彼らは先進的生産力の代表者の一つであり、社会主義市場経済の主な実践者と重要な組織者である。

 専門技術要員階層はさまざまな経済構成要素の機構の中で専門の仕事と科学技術関係の仕事に従事する要員を指し、社会階層構造全体の中で約5.1%を占めている。彼らは先進的生産力と先進的文化の代表者の一つであり、社会主導価値システムおよびイデオロギーの革新者と伝播者でもあり、社会安定を守り、社会の進歩を励ます重要な力でもある。

 事務要員階層は部門の責任者を助けて日常の行政事務を処理する専従の事務要員を指し、社会階層構造全体の中で約4.8%を占め、社会の中間階層の重要な構成部分であり、今後10数年は増える見込みである。

 個人経営商工業者階層はわりに小額の個人資本を所持し、それを経営活動または金融債券市場に投入し、それを生業とするものを指し、社会階層構造全体の中で約4.2%を占めている。この階層は実際の人数が登録した人数よりずっと多く、市場経済における活発な力である。

 商業サービス業従業員階層は商業とサービス業界において専門以外の肉体の仕事とそのほかの仕事に従事する要員を指し、社会階層構造全体の中で約12%を占めている。この階層は都市化と最も緊密な関係がある。

 産業労働者階層は第二次産業において、肉体と半肉体労働に従事する生産労働者、建築業労働者およびそれと関係ある要員を指し、社会階層構造全体の中で約22.6%を占め、そのうち農民労働者は産業労働者の約30%を占めている。経済改革以来、この階層の社会的経済的地位が著しく低下し、その人員構成に根本的変化が生じた。

 農業勤労者階層はいまのところ中国の規模最大の階層で、集団所有の耕地を請け負い、農業(林業、牧畜業、漁業)を唯一または主な職業と収入源とする農民を指す。この階層はほとんど組織的資源を持っておらず、社会階層機構全体における地位がわりに低い。

都市無職、失業、半失業者階層は特殊な歴史的移行期の産物であり、固定した職業を持たない労働適齢人口(在校生を除く)を指し、社会階層構造全体の中で約3.1%を占めている。現在、この階層の人数は引き続き増えている。

 現代化社会階層構成がほぼ整う

 課題グループの長で、中国社会科学院社会学研究所の専門家陸学芸氏によると、改革・開放20余年来、中国の社会に大きな変化が生じたが、そのうち階層の変化は中国社会の体制転換と経済の軌道転換の最も核心的な内容である。この変化には、農業勤労者がたえずその他の社会階層へ流動し、農業勤労者階層が縮小しつつあること、商業・サービス業従業員の人数がいくらか増え、産業労働者の人数が農村の工業化につれて目に見えて増えていること、社会の中間階層が速やかに拡大され、中国社会階層構造がこれまでのピラミッド型からカンラン型に変わっていること、経済資源を掌握、操作する階層が興起し、大きくなっていることが含まれている。

 先進国と比べて、現代化社会階層構造の基本的構成部分が中国ではすでに備わっている。

 専門家の分析によると、中国の現代化社会階層構造はまだひな型にすぎず、現代化社会階層構造の理想的な状態および運営メカニズムと比べて、まだかなり大きな格差がある。これは主として農業勤労者階層の規模が大きすぎ、社会の中間階層の規模が小さすぎることに現れている。同時に、各階層の順位が基本的に形成されたにもかかわらず、まだ全社会から十分に認可されていない。経済の発展と同じように、中国の社会階層構造の育成にも顕著な区域的アンバランスの現象が存在している。経済未発達の中・西部地区の社会階層構造が簡単であり、もはや国の現代化建設の要請に適応しなくなっている。

 現代の社会階層構造を育てあげる

 中国の社会階層構造の発育が遅れている深層の原因について、レポートは制度と社会政策の確立と制度が遅れているかまたはまだ確立、制定されていないという自発的状態を呈していることにあるとしている。

 レポートによると、国際的経験によると、合理的な現代化社会階層構造を育てあげるのに必要な社会政策は公平を目標とすべきである。

 現在の中国の所得配分の現実は、階層間の格差と地域間の格差がいずれも大きくなっていることである。社会階層が分化する中で社会政策がまだそれ相応の調節的役割を果たしていない。

 社会制度の革新が著しく遅れていることも、階層間の相対的に自由な流動を妨げている。そのうち、最も際立っているのは戸籍制度で、それによって広範な農民が構造的な機会が不公平な状態に陥っている。

 レポートは次のように指摘している。現在、産業労働者、農業勤労者およびその他の各階層の現代化した社会階層構造における位置、地位、各自の利益の保障、および相互利益の調節などの問題は、まだはっきりした、具体的な、かつ公正の原則と現代化社会階層構造の要請に合致する解釈がなされていない。とどのつまり、問題の実質は社会主義現代化を実現する中で社会発展の基本的枠組みがいったいどうなるべきか、いったいどのような社会階層構造を形成すべきか、いかにしてこのような階層構造を育てあげるかについて、人々がまだ本当にはっきりしていないことにある。この基本的構想の欠如は一部の制度革新の方向がはっきりせず、社会政策が揺れ動き、ひどく遅れる結果をもたらしている。

 陸学芸氏は自発性をそのままにさせてはならず、国という「目に見える手」は役割を果たさなければならない。合理的な現代化社会階層構造を育てあげることは今後社会制度の確立と政策の選択の核心となり、それによってわりに完全な社会制度と社会政策システムを確立すべきであると強調した。

 各階層がともに発展

 今回の画定を通じて、どのような人々が社会の主導的階層であるか、どのような人々が弱きものであるか、どのような人々が向上する人々であるかが明確にされたので、それ相応の政策を制定し、社会構造を調整し、弱きものが向上するルートを広げ、社会安定と持続可能な発展を最大限に維持することができる。

 レポートは、中国の今日の社会各階層はすべて社会主義の勤労者であり、社会主義現代化事業の建設者でもあるとし、「現段階に中国の社会階層構造を研究する目的は各階層の発展を同時に実現することにある」と指摘している。