アフガン復興と中国の役割

中国現代国際関係研究所第三世界研究センター傅小強副主任

 年初に東京で開催されたアフガニスタン復興支援国会議では、米国、欧州連合(EU・英仏独)、日本やサウジアラビアなどを中心に45億ドルの復興資金を調達することができた。大規模な復興に必要な額を満たすものではないが、復興を起動させるという点で一定の支援にはなる。だが、その背景にアフガニスタンに対する地権争いが潜んでいることに憂慮せざるを得ない。

復興は西側主導に

 アフガン暫定政権に対する資金の拠出国と金額を見ると、欧米日で半分を占めており、こうした国々の発言権が数年後に最も強まるは当然だろう。欧米日を西側の同盟として見れば、この3カ国は今後も引き続きアフガン復興の過程で協調し、西側諸国の当該地区での共通の戦略的利益を確保していくものと予想される。だが、米欧日は決して一枚岩ではない。アフガン問題では見解の相違があり、今後の協力過程で更に矛盾が顕在化する可能性もある。EU外交・安全保障政策担当のソラナ上級代表は1月22日、米国に対しグローバルな問題で単独主義を堅持せず、多角的メカニズムを利用して今後もEUやロシアなどとの協力を継続していくべきだと促した。実際、これは欧州が米国に発したシグナルである。即ち、米国は欧州が拠出することに期待するだけではだめであり、むしろ“勝利の果実を単独で摘み取ろうとしている”というものだ。

 米欧日はこのようにアフガニスタンを重視し、また巨額の資金を投入しようとしているが、事実、最も目をつけているのは、中央アジアや内陸海にある石油天然ガス資源である。この地区には約2000億バレルの原油と7億9000万立方メートルの天然ガスが埋蔵されているといわれ、世界で最後の未開発資源の宝庫であることから、アフガニスタンをコントロールする地権的経済意義はかなり大きい。米国は90年代、内陸海からアフガニスタンを経由してパキスタンやインド洋沿岸に至る資源輸送ラインを建設しようとしたが、タリバン政権の妨害で交鈔は1998年に決裂してしまった。現在、ロシアは依然として中央アジアや内陸海で鍵となる戦略的地位を占めており、西欧のコントロール下にあるアゼルバイジャンの首都・バクーからトルコの地中海寄りのジェイハン港に至る石油輸送パイプライン、という独占ラインはロシアと拮抗するため、当然ながら、アフガニスタンがエネルギー戦争の矢面に立たされた。米国が今後、アフガン復興を利用して石油天然ガスパイプラインを敷設しようとする思惑をけん制するため、プーチン大統領は年初、トルクメニスタンを訪問しロシアと同国、ハザクスタン、ウズベキスタン4カ国が天然ガスの生産で連合し、“ロシア型OPEC”で米国の当該地区で益々強まる影響力に対抗するよう呼びかけた。プーチン大統領はまた、4カ国が統一パイプラインを利用して天然ガスを輸出し、輸出量と輸出基地の面で協調していくことに期待を示した。

 アフガニスタンでテロリストを撲滅する目標と経済利益を求めるほかに、米国には中央アジアなどに駐留する、というグローバル戦略的な思惑がある。経済援助、資金提供、借款などの形で中央アジア諸国の軍事基地に軍を駐屯させ、当該地区で長期間駐留するとの考えがある。現在、米国はアフガニスタン3ヵ所に軍事基地を有しているが、中央アジアは9ヵ所とそれより多い。

復興で直面する数々の困難

 アフガニスタンの経済基盤は極めて脆く、これが復興の過程でカルザイ暫定政権が直面する大きな困難となる。伝統的な牧畜・農業国であり、人口の90%が農村部に居住しているが、長年の戦乱で耕地のほとんどは荒れ果て、灌漑など農業基盤設備は一つも残っておらず、食糧の自給自足は無理である。牧畜と農業がアフガン経済にとって重要な産業であり、なかでも特産のモンゴル羊の生産量は70年代に200万頭に達していたが、国連のアフガン復興に関する報告統計によれば、現在の牛飼育頭数は70年代末の45%以下、羊の頭数は同35%以下まで落ち込んでいる。長年にわたる戦乱でもともと未成熟だった工業基盤もほぼ崩れてしまい、手工業(従来は工業生産高の42%を占めた)もまた、大量の従事者が難民になったため重大な損失を被った。エネルギーや交通などのインフラも著しく破壊され、国内に僅かに残る幾つかの発電所も正常運転できない状態にある。

 アフガン復興で直面する最大の困難は、安全の問題であろう。国内はまだ完全統一を実現しておらず、カルザイ暫定政権はカブール市内をかなりの程度、掌握できるにとどまっている。カルザイ氏は同国に駐留する国際安全支援部隊(International Security Assistance Force)を増員するよう何度も呼びかけているが、米国などは反テロ部隊をアフガン警察に充当させることは望んでいない。そうすれば、米軍を再び発生する可能性のある内乱に巻き込む怖れがあるからだ。こうしたことから、米国や英国などはカルザイ氏が警察や軍隊を訓練するのを支援する傾向にあり、現在、米英は暫定政権のため約500人の士官を訓練しているところだ。アフガン国内の現状から見れば、暫定政権内部の前北部連盟とザヒル・シャー元国王を支持する勢力と間の対立は大きく、国王は遅々として帰国できないでいる。また統一された軍隊を持たないため、暫定政権に各地武装勢力の「兵を擁護し自らを重んじる」趨勢を阻止する力はない。暫定政権は5月に任期満了となるが、その時に「大国民議会」(Royal Jirga)が円滑に開催されなければ、アフガニスタンの安定はより大きな試練にさらされることになる。

 歴史的経験が証明しているように、アフガニスタンは大国の間で中立を保持し、隣国と友好的に付き合っていかねばならない。そうしてこそ、アフガニスタンの長期的な安定は保証される。過去の内戦と不安定な状態は、外的原因によるところがかなり大きい。大国がアフガニスタンを利用して自己の経済利益を実現しようと手を出せば、アフガン復興は大国が争奪する戦場と化してしまい、そうなれば不安定に陥る機会は更に増大する。

中国が復興に参与

 中国がアフガン暫定政権を支援する物資が3月末、カブールに到着した。これは中国がアフガン復興に正式に参与することを示すものであり、中国とアフガニスタンの関係に新たな1頁が切り開かれた。

 中国はアフガニスタンにとって重要な隣国であり、中国にとっても辺境の安定を維持し、“東の突厥”であるテロリストを撲滅し、安定かつ平和的な周辺環境を確保する上でも非常に重要であるため、中国がアフガン復興である程度の役割を担うのは当然である。もちろん、中国には米欧日とアフガニスタンで争奪戦を展開するつもりは毛頭なく、中国の実力からも、米欧日とはアフガニスタンで立ち会うことはできない。中国がなさねばならないのは、両国間にはいささかも確執や恩も恨みもないという歴史的基盤を利用して、21世紀に向け新たな関係を確立することだ。カルザイ氏が中国を訪問したことで、新たな情勢の下で両国関係を回復・発展させていく新基盤が築かれた。

 アフガニスタンは独立性の強い民族であり、ある国に長期にわたって制約を受けることに決して甘んじない。米欧日は復興支援を提供する際に必ずある付帯条件を付けるだろうが、遅かれ早かれ、これによってアフガニスタンの民族性との間で摩擦が生じることになるが、一方、中国が堅持する平和共存5原則はアフガニスタンの歴代各政府に高く評価されてきた。従って、アフガニスタンの主権の尊厳と平等などを十分尊重しながら力の及ぶ限りの援助を提供する、中国はこれを支援原則にすべきだ。前漢(紀元前20625年)に張騫(?−紀元前114年)が使節として西域へ旅立った時から、中国の指導者が1960年代にアフガニスタンを訪問するに至るまで、両国は歴史的に一貫して平等な交流を行い、互恵の中で互いに学び合ってきた。ブドウやニンジンなどの栽培技術、瑠璃技術はアフガニスタンから学び取ったものである。6、70年代に支援した水利施設や紡績企業、病院などは重要な役割を果たし、アフガン国民から今でも好意的な評価を得ている。

 中国は既に駐カブール大使館を再開しており、復興支援作業は秩序だって展開されていくだろう。中国政府はアフガニスタンの国内情勢に基づいて、農業灌漑や医療といった国民生活に役立つプロジェクト実施への適度な支援など、教育や医療、科学技術、文化などの面で政府援助を提供すると共に、中国への留学再開と学生数を増大することで、各方面で国を治める人材の養成を支援することもできる。また国内の有力企業がアフガニスタンの建設に参与し、技術移転や工場の設立など、様々な形で復興に積極的に参与するよう適度に奨励していくことも可能だ。

 中国のアフガニスタンにおける地位と影響は“年代ものの酒”と同様、時間と共に具現化されていくだろう。