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中国の有人宇宙飛行の夢が間もなく実現 魯 皮
中国の宇宙飛行専門家でアカデミー会員の梁思礼氏は、第10次5カ年計画(2001-2005)期に、「中国の宇宙飛行士が宇宙に上がる」夢想は遅くとも2005年に実現できる」と語った。 中国が有人宇宙船の打ち上げに成功すれば、アメリカ、ロシアに次いで有人宇宙飛行の能力をもつ3番目の国となる。 新世紀に入ってから、中国の宇宙飛行事業はめざましく発展する新たな時期を迎え、最初の5年間に、さまざまな衛星30余個と多くの宇宙船を打ち上げる予定である。 1970年4月に最初の人工衛星「東方紅1号」を打ち上げてから現在までに、中国は合わせて70余個の衛星を打ち上げたが、その中に中国が自力で開発した衛星が約50近くあり、外国の衛星が27個ある。 神舟4号も人を載せない
関係専門家の説明によると、前の2回に打ち上げた神舟1号、2号の宇宙船が帰還してきてから、軌道周回モジュールが少なくともさらに半年以上宇宙にとどまり、多くの実験を行うことができる。これはいまのところその他の国が備えていないものである。もし今後経費の問題で、一部の小型の宇宙実験室しかやれないならば、軌道周回モジュールは大きな利用空間がある。これは中国の有人宇宙船の特色と強みであり、完全に中国自体の知的所有権でもある。 将来、有人宇宙船が打ち上げられた後、中国が宇宙活動を行う第1歩はドッキングであり、それから国力の可能に基づいて、適切な時に有人管理と無人管理の宇宙実験室の研究も展開する。独自の宇宙ステーションに至っては、多額の資金がかかるため、一つの国が独自にやるのはとても困難であり、将来国際協力を求める可能性がある。そのうちドッキングはとても難しい技術であり、中国の宇宙船はすでに宇宙の救命ボートとする能力を備えている。 「神舟」3号任務指揮部の顧問で、自ら「神舟」1号、「神舟」2号の実験宇宙船および「神舟」3号宇宙船の開発、打ち上げ、帰還作業に参加した王礼恒氏は次のように述べた。3月25日に打ち上げられた「神舟」3号宇宙船は無人宇宙船であり、宇宙飛行士を載せないほか、その技術状態は有人宇宙船とまったく同じである。それより重要なのは、「神舟」3号が技術面でまたも一連の突破を実現したことである。例えば、運搬ロケットが冗長システムと逃逸システムを新たに増やし、信頼度をいっそう高めたことや宇宙船に完全な宇宙飛行士生命保障システムと救命システムがあり、科学実験プロジェクトも増え、しかもかなり高いレベルに達していることがそれである。 「神舟」3号は衛星を搭載していないが、宇宙船が地球に帰還する際に、その軌道周回モジュールは帰還モジュールと分離し、軌道周回モジュールは軌道に残って引き続き運行し、いろいろな科学実験を展開する。同時に、「神舟」3号宇宙船は動物を搭載していない。というのは近代的な科学技術の発展レベルが、完全に器具を模擬して人に代わって実験を行うことができるようになったからである。 中国の有人宇宙飛行は「三つの段階」に分けて行われるが、目下の第1段階は中国の宇宙飛行士を順調に宇宙に送り込み、安全に帰還させる。第2段階は宇宙実験室を設け、第3段階は長期にわたって管理する人がいる宇宙ステーションをつくる。同時に、世界の有人宇宙飛行技術の発展を追跡し、有人宇宙飛行技術の特徴と強みを十分に利用し、試験の範囲をいちだんと拡大し、より多くの科学技術成果をあげて、中国の宇宙飛行事業の持続的で健全な発展を推進する。 関係者の分析によると、神舟3号は順調に回収され、中国は年末以前にもう一度宇宙船つまり神舟4号を打ち上げる予定であるが、神舟4号もやはり人を載せない。 宇宙における科学実験が重要な成果をあげた
神舟3号宇宙船が宇宙から持ち帰ってきた試験管種苗は、科学者を奮い立たせる生長ぶりを見せ、地上に帰還してから十数日しかたっていないが、生長の速度は正常時の5ないし7倍である。 同プロジェクトの研究責任者、遺伝研究所研究員の劉敏氏は次のように述べた。これは中国が初めて成功裏に搭載し地上に帰還した、応用普及に用いる植物試験管種苗であるが、以前帰還式地上衛星あるいは宇宙船に搭載し成功裏に帰還したのはすべて種子であった。宇宙から帰還した後、種苗の生長ぶりがすばらしく、平均3ないし5センチ伸びた。これは今回の搭載が非常に成功し、宇宙船の生物保護システムがとてもよく整備され、温度、日照、空気などが植物の正常な生長を満たせることを物語っている。 今回搭載した種苗はブドウ、キイチゴ、ランであり、今秋にビニールハウスに移して土に植えられ、ブドウの苗は来年の春にブドウの枝に接ぎ木をし、当年宇宙で育苗したブドウが収穫できるものと見られる。「わが国の宇宙植物は小麦、水稲、トマト、ピーマン、キュウリなど合わせて12品種あり、いわゆる宇宙植物品種はすでに実験の段階を経て、国の関係部門の審査・評定にパスし、一定の栽培規模をもつ宇宙植物を指す。現在、河北、甘粛、山東、四川など各省に宇宙野菜を大面積に栽培する生産基地がある」。 「宇宙飛行による育種は育種の周期を短縮することができる。在来の技術で新しい品種を育成するのに平均10年前後の時間がかかるが、宇宙飛行による育種は5年前後しかかからない。そのほか、宇宙における植物の遺伝子変異率が高く、人類に有利な変異品種をより速く得ることができる。たとえばいま大規模に栽培している宇宙のキュウリのムーあたり収穫量は普通のキュウリより約20%高く、しかも口当たりがよく、抗病性が強い」。 説明によると、「神舟」3号宇宙船で行われた宇宙生命の科学研究は、蛋白質とその他の大分子の宇宙結晶生長実験および生物細胞育成実験を含んでいる。宇宙船に搭載した中国が自ら開発した第2世代の宇宙蛋白質結晶装置は、2種類の異なる蛋白質結晶方法と二重温度制御の特徴があり、これらの研究成果は高純度、高効率の生物製品を獲得し、生産し、生物薬品を設計することに対し重要な意義がある。 生物細胞育成実験の面では、中国科学院の科学者たちは製薬の将来性のある動植物細胞の宇宙育成方法および微重力の細胞生物の繁殖、代謝、合成と生物活性物質の分泌などの研究を行った。 中国科学院の専門家たちはまた多種の材料の宇宙結晶の生長、製造および技術方法を模索、研究した。 「神舟」3号軌道周回モジュールはいまでも軌道に沿って飛行し、軌道周回モジュールに搭載している中国最初の中解像率結像分光器は、大範囲の海洋、陸地、大気の多スペクトルのリモート・センシング実験を行うが、このほかにも太陽紫外線分光器、太陽常数モニター、地球輻射収支器などの地球環境監視測定器と宇宙環境高層大気観測などの実験プロジェクトがある。伝えられるところによると、すべての計器は宇宙船の軌道周回モジュールの中で約半年にわたって軌道実験と応用研究を行うという。 12人の宇宙飛行士候補者、宇宙に上がる
1970年の夏、中国は1000余名のパイロットから19人の宇宙飛行士を選び出したが、その多くは当時の空軍の戦闘英雄であった。費用がとてもかかることを考えて、国は最後に「宇宙競争をやらない」ことを決定した。その時から、中国の宇宙飛行事業は資源、気象、通信および帰還式衛星の開発に転向した。有人宇宙船の活動は一時中止し、宇宙飛行士の選抜と訓練も中止した。 1992年、数世代の人の夢想が再び持ち出された。今度選ばれた12人の宇宙飛行士候補者は中国空軍の2000余名の現役戦闘機パイロットの中から選出したもので、みな大学本科卒の学歴がある。トレーニングを担当した専門家によると、これらの未来の宇宙飛行士は非常に強い愛国の情熱と献身的精神があり、彼らの体、心理の素質も非常によい。 この12人の未来の宇宙飛行士は北京北郊外の中国宇宙飛行士トレーニング基地に集まってトレーニングを受けた。説明によると、トレーニングはほぼ@基礎的理論の学習、A専門技能のトレーニング、B一部の任務のトレーニングを含んでいる。それと同時に、操縦耐久力、低気圧酸欠耐久力を含む耐久力トレーニングおよび宇宙飛行士が無重力状態の飛行機の抛物線をつくれば短時間無重力になる無重力状態を模擬するトレーニングなど体と心理面のトレーニングも行われる。 神舟3号の逃逸システムを検証するため、この12人の宇宙飛行士は初めて姿を見せ、酒泉打ち上げ基地に来た。宇宙船打ち上げ副総指揮の秦文波氏によると、この12人の中の2人ないし3人が中国最初の宇宙を飛行する宇宙飛行士となる。いったい誰が中国最初の宇宙飛行士になるかは、「神舟」5号を打ち上げる前の15分前に発表されると見られる。 秦文波氏はまた、地上逃逸テストを行った時、これらの宇宙飛行士はわずか5秒前後で危険状態から抜け出し、すばらしい心理的素質を持っていることを明らかにした。 いま、中国の宇宙飛行士は宇宙飛行のために最後の準備を進めている。中国宇宙飛行士システム総指揮兼総設計士の宿双寧氏によると、宇宙飛行士はすでに最後段階のトレーニングを始めている。ある期間たてば宇宙飛行の能力を完全に備えることができるはずである。宇宙船が人を載せて飛行することができ、人を載せて飛行する条件に達しさえすれば、宇宙飛行士の準備もすっかり整えられたことになる。 専門家は、中国のロケットと宇宙船の成功率はすでに97%に達し、残りの3%は先進的な逃逸システムでカバーされる、これは中国の宇宙飛行士の生命安全を百パーセント確保するのに十分である。
背景資料 世界と中国の有人宇宙船年表 1957年、ソ連は3000人の候補者の中から最初の宇宙飛行士6人を選び出した。 1961年4月12日、ソ連は世界初の有人宇宙船ウォストーク1号を打ち上げた。ユーリー・ガガーリン氏はウォストーク1号に乗り、108分で地球を一周してから安全に帰還した。ガガーリン氏は世界最初の宇宙を飛んだ宇宙飛行士となった。その後、アメリカもアポロ計画を正式に実施し始めた。 1969年7月16日、アメリカはアポロ11号有人宇宙船を打ち上げ、3 人の宇宙飛行士が75時間50分飛行して、月を回る軌道に入った。7月21日のグリニッジ時の2時56分、宇宙飛行士のアームストロング氏は左足を月の上に踏んで、世界初の月に足を踏み入れる人となった。宇宙船は24日に帰還した。 1970年4月24日、中国初の人工衛星東方紅1号は長征一号運搬ロケットで打ち上げに成功した。これは中国が宇宙時代に入ったことを示している。 1986年1月28日、アメリカのスペース・シャトル「チャレンジャー」は発射72秒後、大爆発を起こし、7人の宇宙飛行士が全員死亡した。 1992年1月、中国政府は有人宇宙飛行プロジェクト立件を認可し、「921プロジェクト」と呼ばれ、中国宇宙技術研究院が有人宇宙船の開発を引き受けた。 1999年11月20日6時30分、中国初の有人試験宇宙船「神舟号」が順調に打ち上げられた。11月21日午前3時41分、「神舟号」は予定の帰還場に正確に着陸し、「この打ち上げで中国はアメリカ、ロシアに継ぐ3番目の有人宇宙プロジェクトをもつ国になった」。――イギリス放送会社(BBC) 2001年1月10日午前1時、中国の「神舟2号」無人宇宙船は酒泉衛星打ち上げセンターから打ち上げられ、10分後成功裏に予定の軌道に乗った。1月16日19時22分、「神舟2号」無人宇宙船は宇宙を7昼夜近く飛行し、地球を108周してから、正確に帰還した。 2001年8月、中国系アメリカ人の宇宙飛行士盧傑氏はスペース・シャトル「アトランティス」から「国際宇宙ステーション」に向かって30.58メートルゆっくり歩いていき、宇宙を漫歩する最長距離の記録を作った。同氏は宇宙飛行をした3人目の華人科学者であり、それ以前に宇宙飛行をした華人科学者は1985年に「チャレンジャー」に乗って宇宙飛行をした王?駿氏および6回も宇宙飛行をした張福林氏である。 1997年末現在、アメリカは合計118回も有人宇宙船を打ち上げ、537人の宇宙飛行士を宇宙に送り込んだ。ロシア(旧ソ連を含む)は合わせて85回の有人宇宙船を打ち上げ、191人の宇宙飛行士を宇宙に送り込んだ。 3艘の宇宙船の区別 「神舟」1号宇宙船の打ち上げは初めて技術工場建物で宇宙船、ロケット連合体の垂直組立てとテストを行い、それを垂直したまま発射場まで運んで、遠距離テスト・打ち上げコントロールを行う新しいパターンを採用した。中国は元の宇宙飛行観測コントロール網の基礎の上で新たに作った、国際基準体制にかなう陸地と海上を基地とする宇宙飛行観測コントロール網も、その時の打ち上げ実験で初めて使用された。宇宙船は軌道に沿って運行する期間、地上の観測コントロールシステムと公海にある4隻の「遠望号」測量船はそれを追跡し、観測、コントロールして、一連の科学実験を成功裏に行った。 「神舟」2号宇宙船は中国初の正式の無人宇宙船である。宇宙船は軌道周回モジュール、帰還モジュール、推進モジュールの3つのモジュールからなる。「神舟」1号試験宇宙船に比べて、「神舟」2号宇宙船はシステム構造が新たに拡大され、技術性能が新たに向上し、宇宙船の技術状態が有人宇宙船のとほぼ同じである。 「神舟」2号宇宙船は初めて宇宙船で微重力環境下の宇宙生命科学、宇宙材料、宇宙天文と物理などの分野の実験を行い、その中には半導体光電子材料、酸化物結晶、金属合金などいろいろな材料の結晶生長、蛋白質とその他の生物大分子の宇宙結晶生長、植物、動物、水生生物、微生物および体分離細胞と細胞組織の宇宙環境効果などの実験などを含んでいる。宇宙船は軌道に沿って運行する期間に、各種の実験器具と設備の性能が安定し、作業が正常に進められ、多くの貴重な飛行テストデータを入手した。 「神舟」3号宇宙船は、人体代謝模擬装置、擬人生理シグナル設備およびダミー人形を積載しており、宇宙飛行士が宇宙での重要な生理活動のパラメーターを定量的に模擬することができる。また初めて逃逸システム試験を行った。逃逸システムはロケットの打ち上げと空に昇る段階に意外な故障が現れる緊急な状況の下で、宇宙船を危険な区域から離れさせ、宇宙飛行士の安全を確保することができる。 中国が三つの宇宙飛行器発射場と完備した宇宙飛行観測コントロール網をつくる 中国国務院報道弁公室の2000年11月に発表した『中国の宇宙飛行』白書によると、中国はすでに酒泉、西昌、太原の3つの宇宙飛行器発射場と完備した宇宙飛行観測コントロール網をつくり上げた。 中国の宇宙飛行器発射場はさまざまな運搬ロケットの飛行実験とさまざまな人工衛星、試験宇宙船の打ち上げ任務を完成した。中国の宇宙飛行器発射場は国内の打ち上げ任務を首尾よく完成することもできれば、国際商業ベースの打ち上げサービスとその他の国際宇宙飛行協力を行う能力もある。 中国の宇宙飛行観測コントロール網は陸上観測コントロールステーションと海上観測コントロール船を含んでおり、近地軌道衛星から地球静止軌道衛星、衛星から実験宇宙船までの宇宙飛行観測コントロール任務を完成した。中国の宇宙飛行観測コントロール網はすでに国際ネットワークに接続して観測コントロール資源を共有する能力を備えており、観測コントロール技術は世界先進レベルに達している。 中国は型の異なる12種類の「長征」シリーズ運搬ロケットを独自に開発して、近地軌道衛星、地球静止軌道衛星、太陽静止軌道衛星の打ち上げに適している。「長征」シリーズ運搬ロケットの近地軌道の最大運搬能力は9200キロに達し、地球静止転移軌道の最大運搬能力は5100キロに達し、異なるユーザーの必要をほぼ満たすことができる。1985年に中国政府が「長征」シリーズ運搬ロケットを国際商業ベース打ち上げ市場に投入することを正式に発表してから、すでに27個の外国製衛星を宇宙に成功裏に送り込んでおり、国際商業ベース衛星打ち上げサービス市場でしかるべき地位を占めている。1996年10月から2000年10月までの間に、「長征」シリーズ運搬ロケットは21回続けて打ち上げに成功した。
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