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発展しつつあるアジア欧州経済協力 中国社会科学院欧州研究所副研究員、博士 趙俊傑
アジア欧州経済協力には確かにかつて見ない新しい局面が現れており、特に西ヨーロッパと東アジアという二大地域はアジア欧州協力に積極的に参与し、経済貿易関係が日ましに密接になり、ユーラシア大陸に新しい活力を注いでいる。 経済協力の成果 アジアとヨーロッパの経済は非常に強い相互補完性をもっている。アジアはヨーロッパの資金、管理経験、エネルギー、環境保全などの先進技術を必要とし、ヨーロッパはアジアの大きな市場、投資のビジネスチャンス、安価な労働力を必要としている。
投資分野では、EUは近年アジア進出を強化する態勢を見せた。1995年から1998年までのEUの対アジア直接投資額は年平均27.7%伸び、1998年は56億ドルに達したが、同期のEUの対米直接投資額の年平均伸び率は3.7%しかなく、1998年の対米直接投資総額は98億ドルであった。 発展援助およびその他の分野では、EUはアジアの発展途上国になおさら関心を注いでいる。1992年以来、EUの対外政府援助資金総額の30%はアジアに流れ込み、9%というアメリカの援助額よりはるかに多く、この傾向はここ数年来いっそう顕著になり、1996年から2000年までの期間に、EUはアジアの発展途上国に年平均4億1000万ユーロを提供したが、1991年から1995年までの年平均援助額は3億6000万ユーロであった。1998年から2000年までに、EUはさらにアジア諸国に年平均7700万ユーロの人道主義援助を提供した。中欧関係について言えば、EUは中国が外国政府借款をかなり集中的に利用する地域である。1999年末現在、EU加盟国および政府の金融機構が中国に提供した政府借款は契約ベースで累計161億5800万ドルに達し、外国政府と政府金融機構が中国に提供した借款総額の44%を占めた。2000年末現在、中国はEU加盟国から累計1万2445件の技術を導入し、契約ベースの金額は約627億5000万ドルに達した。そのうち1999年だけでも、中国はEUから1564件の技術を導入し、契約ベースの金額は87億6400万ドルで、中国の同期の技術導入総額の51.1%を占めた。
多角的協力メカニズムの中で、EUは特にアジア欧州会議(ASEM)への参与を重視している。 ASEMはアジアとヨーロッパの25カ国の政府首脳(EU15カ国、東アジア10カ国)と欧州委員会からなる常設的な対話フォーラムである。それはアジアとヨーロッパの政府首脳会議であるばかりでなく、それにもまして政治対話、経済貿易協力、文化交流を目的とする全方位の協力メカニズムである。1996年から今までに首脳会議3回および一連の後続会議が開かれ、「ASEM議長声明」、「アジア欧州投資促進行動計画」(IPAP)、「アジア欧州貿易円滑化行動計画」(TFAP)、「アジア欧州協力枠組み2000」などの重要な文書を採択したが、これらの文書及び関連措置はアジア欧州関係に実質的変化を生じさせ、アジアとヨーロッパという二大州の経常的な対話メカニズムを一応構築し、かなりの程度においてアジア欧州経済協力関係を密接にした。 ASEMは貿易と投資分野では、主に非関税障壁の削減に努め、貿易コストを下げ、貿易のチャンスを増やし、加盟国間の投資政策交流を強化し、透明度を高め、商工業界が積極的にアジア欧州協力に参与するよう奨励している。これらの措置はアジアとヨーロッパで安定した、透明な貿易投資環境を作り上げる上で積極的な役割を果たしている。 2000年の中国とASEM加盟国との貿易額は2210億ドルに達した。投資分野では、1999年のASEM加盟国の対中国投資額は契約ベースで112億3000万ドルに達し、実際投資額は122億3000万ドルで、それぞれその年の中国の外資導入総額の27.23%と30.29%を占めた。 中国政府はアジア欧州協力への参与を非常に重視し、ASEMが南北対話と協力の新たな地域協力の方式となり、東西文化交流のきずなとなり、世界の枠組みをいちだんと多極化に向かうように推し進める力となることを望んでいる。アジア欧州経済協力のいちだんの発展を促すため、当面の急務は効果的な措置をとって、ASEMの枠組みの中で、「中欧企業協力会議」を定期的に開く、EUの対中政策における発展援助と貧困脱却扶助プロジェクトを推し進める、EUの対中政策とASEMの目標を効果的に結び付けるなど二国間または多国間の相互補完の性格をもつプロジェクトをより多く実施することである。同時に、ASEMの枠組みをフルに生かしてわれわれと大国との関係、周辺諸国との関係を調整し、アジアとヨーロッパ間の政治対話と安全協力を繰り広げる。 経済の必要だけではない 20世紀90年代の初期、経済グローバル化にしたがって、アジア欧州経済関係に著しい変化が生じはじめ、これまでのわりに単一で、ゆるいつながりから全方位の緊密な協力に向かって発展していった。1994年のアジア欧州貿易額は3125億ドルに達し、2350億ドルという欧米貿易額をはるかに上回った。しかし当時、アジアの新興の大市場では、アメリカと日本の二強国は貿易、投資分野においても、また市場占有率の面でも、ヨーロッパをリードしていた。1994年、アメリカとアジアの貿易額は4101億ドルで、アジア欧州貿易額よりはるかに多いものであった。アジアが導入した外資の中で、アメリカが18%を占めたが、EUは2.6%しか占めていなかった。これに対し、欧州委員会は「ヨーロッパの会社は今後10年にアジアの経済成長の中で十分なシェアを取得できなければ、必ずやその利潤と世界における競争力に影響を及ぼすだろう」と危機感を強く感じた。 自らの戦略から考慮して、アジアにおけるヨーロッパの経済的存在を強めるため、欧州委員会は1994年7月にEU最初の「アジア進出新戦略」という政策文書を公表したが、同文書は、ヨーロッパは東アジア地域との経済貿易関係の強化を重視すべきであり、「アジアを以前より優先的な地位を置かなければならず、各加盟国は自国の資源を十分に利用し、より効果的に協力して、アジアにおけるヨーロッパの知名度を高め」、「アジアと建設的で、安定した、平等なパートナーシップを確立するように努めなければならない」と強調している。 この背景のもとで、90年代中期から、EUはその加盟国の立場を統一的に調整させ、二国間と多国間の協力メカニズムを通じて、ユーラシア大陸両端の二つの重要な地域である西ヨーロッパと東アジアの間の経済協力関係を積極的に促進している。双方の協力メカニズムの中で、EUは日本、中国、ASEANとの経済関係を非常に重視し、これはヨーロッパのアジアに進出する新戦略の成敗にかかわるカギであると見ている。ここ数年来、欧州委員会は相次いで「EUと日本‐‐将来の段階」、「中欧関係についての長期政策」、「EU・ASEAN関係の新しい原動力」など双方の関係を強化する一連の重要な文書を公表し、EUが東アジア諸国と平等かつ安定したパートナーシップを確立する願望を表明した。 特に注目に値するのは、1995年から今まで、欧州委員が対中関係を非常に重視し、前後して「中国と全面的なパートナーシップを確立する」(1998年)、「EUの対中戦略‐‐1998年の文書の実施状況および政策効果の向上をめざす将来の計画」(2001年)、「EUの対中発展援助国別戦略文書」(2002年)などの対中関係の重要な文書を制定、公表したことである。これらの文書は中国とヨーロッパの戦略的協力関係をグレードアップさせ、アジア欧州経済協力を促進する上で著しい役割を果たしている。 そのため、具体的な経済成果のほか、アジア欧州経済協力はまた、ASEMという多国間協力の枠組みを通じて、アジアとヨーロッパの間に理解と意思疎通の掛け橋をかけるという重要な意義がある。ASEM加盟国の人口が24億を上回り、世界総人口の40%を占めており、その経済規模がすでに全世界のGDPの50%を上回っている。EUは全世界に対し重要な影響力をもつ国家グループであり、中国、フランス、イギリスはいずれも国連安全保障理事会の常任理事国であり、日本とASEANも重要な経済実体である。アジア欧州協力は経済グローバル化のプロセスの中で、アジアとヨーロッパが政治面で互いに力を借り、経済面で互いに依存する戦略的要請を表しており、それが世界の枠組みを多極化へと発展させる重要性を過小評価してはならない。 任重くして道遠し ASEMの各方面がアジアとヨーロッパの21世紀初期の全方位協力について共通の認識に達し、アジア欧州経済協力がASEMのプロセスを推し進める基礎と原動力になることを望んでいるにもかかわらず、アジア欧州経済協力の中で、アジア欧州双方にはまだ若干の問題と矛盾が存在している。いかにして双方の貿易投資の障壁を解決するか。いかにしてより積極的かつ実務的な措置をとってASEMのプロセスを推し進めるか。いかにして開放した多国主義を促進し、安定した多元のアジア欧州経済協力関係を確立するか。いかにしてアジア欧州経済技術協力を深め、中小企業間の連係を強化するか。これらの問題はアジア欧州協力の前途にかかわり、ASEMの各側がその解決を重視する必要がある。 昨年9月、欧州委員会はアジア新戦略に対するEUの文書「EUとアジア‐‐欧州委員会はパートナーシップ強化の新戦略を採択」を改めて発表した。この文書は1994年にEUが公表した「アジア進出新戦略」と題する文書を充実、発展させ、今後10年のEUとアジアの関係の新しい戦略的枠組みを詳しく述べており、その目的はアジアにおけるEUの存在を拡大したEUの世界における地位とつり合うレベルに高めることにある。この戦略の重点は、EUが政治と安全の分野でアジアとの接触を強化する、EUとアジアの双方向の貿易と投資関係を強化する、アジアの貧困軽減を効果的に援助する、民主的で、良好な管理と法治のアジア各地における伝播促進を援助する、アジアの主なパートナーとグローバルなパートナーシップを確立する、ヨーロッパとアジアの相互理解を一歩進んで促すなどである。このため、同文書はEUとアジアとの関係を強化する具体的な提案を作成している。同文書はアジア欧州協力に深い内包を与え、アジアとヨーロッパの21世紀における協力の潜在力が大きく、見通しが明るいことを示している。
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