1000元から83億元へ

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　多くの商人にとって、ブタの飼料の経営は決して理想的な商売ではないが、四川省新津県の劉氏の四人兄弟はこれによって中国最大の私営企業の月桂冠を戴いた。2001年、劉氏兄弟が共同で擁する希望グループは米『フォーブス』誌の中国大陸部私営企業資産ランキングで第1位にランクされたため、この四人兄弟は大陸部最大の富豪となった。

　人民元83億元の純資産をもつ希望グループは主に飼料生産に従事している。長年らい、劉氏兄弟の主な仕事は全国農村の大小道路の両側にできるだけ多くの飼料広告をはることであったが、広告の要点は「希望の飼料を買えば、あばたの飼うブタは肥えて丈夫になる」であった。

　現在、1万5000人の従業員を擁する希望グループはすでに全国に100以上の飼料加工工場を開設し、全国動物飼料市場のシェアを6％占めている。同グループの2001年の飼料の売上高は12億ドル、利潤は1億ドルに達した。同グループはさらに業務を電子、不動産、銀行、保険業に広げている。

　しかし、20年前、四人兄弟が初めてウズラ飼育公司を創設したとき、全資産は1000元しかなかった。「私たちは腕時計、自転車を売って、最初の投資を手に入れ、例のかわいらしい小鳥を買わざるを得なかった」と、現在希望グループの董事長、法人代表を務める次男坊の劉永行さんは語った。

創　業

　20余年前、四川省新津県古家村の劉氏家族はこのあたりではすこぶる有名であった。劉氏四人兄弟の父親は若い頃、革命に参加した知識人で、県の農業局長まで務めたことがあり、母親は黄埔軍事学校の洗礼を受けたことがあり、1949年以後ずっと教鞭を執っていた。4人兄弟は長幼の順でそれぞれ劉永言、劉永行、劉永美、劉永好といい、姓氏と名前をつなげれば「永遠に言行がすばらしい」という意味である。三男坊の劉永美さんは幼い頃から陳という農家に預けられたため、陳育新という別名があり、4人は劉永紅という妹がいる。

　劉氏家族は以前、生活がきわめて苦しかった。父親は早く亡くなり、母親は体が弱く病気がちで、生活の重荷は早くから4人兄弟の肩にかかった。

　70年代末から、中国は改革・開放の新しい時代に入った。歴史的意義をもつ変革はまず8億の農民を擁する農村で始まった。以前の公有地は農家に請け負わせ、農民は耕作するほか、養殖も行い、商売もできた。1982年、政府は科学技術による農業振興を呼びかけ、農村で火のように熱い建設ブームが盛り上がった。

　劉氏兄弟はそのとき、前後して大学または中等専門学校を卒業した。劉永言さんはある国営部門のコンピューター室で働き、劉永行さんは県教育局で勤務し、陳育新さんは四川農業学院を卒業した後県で農業技術員となり、劉永好さんは母親の後を受け継て、教鞭をとった。古家村の村民たちからすれば、劉氏の4人兄弟は人々を羨ませる「食いはぐれのない職業」に従事しているから、劉家は本当に幸せである。

　しかし、彼らはどうしても分際をわきまえなかった。1982年、中国南西部の山間地帯特有の湿っぽく蒸し暑さに包まれた古家村の劉氏の小さな庭で、気持ちが焦っていた劉氏の兄弟たはが厳粛な家庭会議を開いた。会議は3日3晩続き、討論と口論を繰り返してから、4人兄弟はついに自分たちの運命を改める決定を行った。彼らはそれぞれ腕時計、自転車など値うちのあるものを換金して、1000元の資金を集めた。陳育新さんがまず仕事を辞めて、農村に戻り、自分の名前で命名した育新良種場を設立した。

最初の商売

　最初の経営は順調ではなかった。劉氏兄弟の最初の商売はあと一歩で「育良品種場」を夭折させるところだった。

　そのとき、ある専業経農家が優良品種のニワトリを10万羽予約した。彼らは卵を買ってきて、在来の方法でひなを孵化し、先に2万羽を荷渡した。ところが、思いがけないことに、ひなは輸送の途中に箱の中で暑苦しさのため半分が死んでしまい、残った半分も火災で焼き殺された。そのため、専業農家はもう少しで破産するところであり、劉氏兄弟も当然一銭ももうからなかった。残った8万羽のひなはどうしよう。成都の市場でこれが必要であることを聞いて、彼らは夜通し竹かごを編んだ、その後、四人兄弟は毎朝4時に出発し、自転車を3時間こいで20キロ離れた定期市へ行き、声を張り上げてひなを売った。数千羽のひなをすべて売ったあと、くたくたに疲れた体を引きずり、自転車をこいで家に帰ったときが深夜であることがよくあった。

　こうして10数日続けた後、4人兄弟はみな5キロ以上も痩せたが、幸いにも8万羽のひなを何とかして残らず売ることができた。勘定してみたところ、やはりもうけがあった。

　事後、劉永行さんは、ひなを売り終わった後の数ヵ月の間に、彼の耳はずっとひなの声ばかりが聞えるという幻聴に悩まされた。

　この商売をやったあと、じっくりと計算してから、劉氏兄弟はウズラを重点的に飼うことを決めた。陳育新さんは専門の科学研究グループを組織してからまもなく、産卵率が80％にも達する良種ウズラの育成に成功し、また一連の飼料を開発した。

　4人兄弟はそれぞれ腕をふるい、コンピューターを飼料の調合と育種に応用し、ウズラの糞でブタを飼い、ブタの糞で魚を飼い、魚の糞でウズラを飼うという生態循環飼育法を模索して探し当て、ウズラの卵のコストをニワトリとほぼ同じレベルに下げたため、いっぺんに市場を占有した。これは彼らが専門の科学技術に頼って豊かになる道を歩むきっかけであり、今後の創業のために資金を蓄積した。

転　換

　過去、中国の民間企業が人々に与えた印象はそれぞれ3ないし5年繁盛し、発展も速いが、落ちぶれるのがもっと速く、淘汰率はきわめて高いものである。業界筋は、中国の民間企業を「産むだけで成長せず、老けるだけで大きくならない」と評価した。数年後の今日、劉永行さんは希望グループの成功の経験を総括したとき、同グループが今日まで発展できたのは1988年の同グループの養殖業から飼料業への成功裏の転換が決定的役割を果たしたからだと見ている。

　育新良種場が経営を始めたばかりのとき、飼料買付担当の劉永好さんは中国南部で飼料を仕入れるときから、飼料経営に対する観察、調査、思考を始めた。劉永好さんは「誰の家の食卓でもブタ肉がなくてはならないが、ウズラの卵に対する必要はブタ肉にはるかに及ばない。中国の在来の養豚法はあまりにも立ち遅れており、農民は青草、オオムギ、サツマイモでブタを飼い、ブタは1年たたなければ出荷できない。養豚業を飛躍的に発展させるには、飼料の発展を突破口としなければならない」と言った。80年代中期、チャ・タイ・グループを代表とする外国の飼料メーカーが続々と中国に進出し、近代的な概念を持つ全価顆粒飼料を生産、販売した。一時期、中国第一の養豚大省である四川省に列を並んでチャ・タイ・グループ製の飼料を買う現象が現れた。

　今でも劉永行さんは希望とチャ・タイ・グループとの競争について、すきがあればつけ入ろうと機会をねらう彼らがいなければ、面白味も大部少なくなると自慢げに語った。劉永行さんは希望グループの成功のコツは困難にぶつかったとき粘り強くやることであると語った。

　劉永好さんの提案に基づいて、4人兄弟はすぐにも飼料の開発を始めることを決定した。彼らは100余頭のブタを飼う試験場をつくり、省内外の専門家と学者を招いて、一緒に飼料の調合を論証し、研究の成果を積み上げた。1988年、希望飼料公司が育新良種場に取って代わり、劉氏の家族企業が正式に発足した。

　1989年、希望公司が自ら開発、生産した「希望」印1号子豚全価顆粒飼料が全面的に市場に出荷され、質はチャ・タイ・グループの飼料と肩を並べることができ、トン当たりの価格がタイの飼料より60元安いため、市場が外国飼料に独占される局面をいっぺんに打開した。希望印の飼料が一挙に有名になった。

　劉永行さんは次のように総括した。「希望」の創業はいくつかの重要な発展段階を経た。1982〜1988年はウズラの飼育で初期の原始的蓄積を達成し、純資産は1000元から1000万元に増えた。1989〜1993年は飼料企業の生産・経営を通じて、純資産は1000万元から1億元に蓄積された。1993〜1999年は資産経営、ブランド経営を通じて、純資産は1億元から10億元に増えた。

分家と発展

　54歳の劉永行さんは兄弟4人のそれぞれの性格を次のように述べた。永言は号令をかける人で、創業は彼が提案したもので、私たちがあきらめたとき、彼は私たちに引き続き前進するよう要求した。私は永遠に事を実施に移す実践者だ。永美は事を完全無欠に運んでいる。永好に至っては、意思を疎通させ、協調を行い、社会に「希望」を理解させることが彼の得意とするところだ。創業したとき、永好の交際能力がわりに強く、私もよく彼と一緒に対外活動を行い、彼の長所を学んだ。こうして私もだんだんと自分の性格の中の不利な要素を少なくし、うまく抑えられるができるようになった。

　創業の初め、4人の経営者の異なる性格は、この家族企業に明らかな衝突を発生させることがなかったが、企業が強大な実力をもつ外資企業のプレーシャーにも直面すれば、国内の多くの新しい相手の挑戦を受けて立つ段階において、4人兄弟は経営策略の面で各自の意見に固執して食い違いが現れた。

　1995年3月の希望グループの董事会の席上で、劉永行さんと劉永好さんがそれぞれ企業の指導者を成ることを提出した。

　劉永行さんは分家は確かに難しく感情を傷つけることであるが、積極的な意義もある、つまり希望グループ伝統的な家族企業から現代企業への脱皮を促したと語った。事後、劉氏兄弟はメディアに分家は主導的な選択であり、理性の選択でもあると言った。

　1995年、劉氏兄弟は所有権をはっきりさせ、資産再編を行い、それぞれ大陸グループ(ContinentalHopeGroup)、東方希望グループ（EastHopeGroup）、華西希望グループChinaWestHopeGroup)、新希望グループ(NewHopeGroup)を設立し、それぞれ関係ある分野で発展をはかることにした。その後、兄弟間の協力は前と大いに違い、それぞれの出資に厳格に基づいて株式保有の割合を決め、協力は明確な所有権関係を踏まえ、商業のルールに基づいて運行するようになっている。

　資産再編後の希望集団は純家族企業管理の弊害を克服し、兄弟企業が互いに呼応しあい、現代企業への移行を成功裏に完成した。現在、希望グループはすでに飼料を主とし、食品、ハイテク、金融、不動産、生物・化学工業などの業界に及ぶ全国的なグループ公司となり、前後して国家工商行政管理局など権威のある機構に「中国最大の私営企業500社の第1位」、「全国民営科学技術企業の技術・工業・貿易収入ベスト100の第1位」、「中国最大私営製造企業ベスト100の第1位」などに選ばれた。劉氏兄弟は3年連続して『フォーブス』誌によって世界富豪500人に入れられた。