劉永好さんの「新希望」グループ

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　「新希望」グループの劉永好董事長は宣伝を好まない3人の兄と違って、ここ数年とても人目を引くようになっている。劉永好さんはあくまでも「企業は社会の流れにしっかりついていくべきだ」と見ているが、飼料業ですばらしい成果をあげているほか、金融、不動産、化学工業など多くの分野でも成果をあげている。最近の報道によると、乳業は新希望グループの次の重要な経営業種となり、その目標は1年内に資産再編を通じて、8社ないし10社の乳製品企業を擁し、新希望グループの最初の乳業産業群とすることである。

　今年51歳の劉永好さんは学生風のヘアスタイルをし、顔の輪郭がはっきりし、体ががっしりし、肌が黒く、実際の年齢より若く見える。彼は北京飯店貴賓楼二階のコーヒーショップで記者のインタビューに応じた。

　「幼い頃、家が貧しかった。20歳以前は新しい靴を履いたことがない。私は市場で他人のはいた中古の布靴を買ってきて、靴の後部の両側面をはさみで切ってから履いた。当時、家にたきぎがなく、毎日放課後、炊事用の枯れ枝を拾いに行った。」

　劉さんは幼い頃の貧しい生活は人生にとっては最も大切な経験であると見ており、「私は農民や教員になったことがあり、これらの経歴があれば、たとえある日突然金がなくなっても、怖くはない。農民になることができ、ゼロからやり始めることができる。年は少しとっているかもしれないが、仕事はまじめにやり、ほかの人よりりっぱにやることができる。親方は認めてくれ、給料を少し上げてくれるかもしれない」。ここまで言うと、劉さんは朗らかに笑い出し、白い歯を見せた。

経営のこつ

　20年来歩んできた道を振り返ってみると、劉永好さんはあくまでも仕事を着実にやることがなにより重要だと見ている。「最初、ウズラを飼った時、面倒がらずにウズラを見守り、待っていた。ウズラが卵を産むのを見て、また1分（中国の通貨の補助単位で、1元は100分）儲けられると思った。金はこうして儲けた。もちろん、今はウズラが卵を産むのを見守る必要がなくなったが、いかなることでも、またいかなるものでもそんなに容易に得られるものではない。新しい経済情勢のもとで、民営企業は重要なチャンスに直面し、産業の選択、人材の使用、管理メカニズム、自己学習のパターンなどは、いずれも民営経済が引き続き発展する原動力であるが、企業の発展と位置付けが実際に合わなければ企業は狂気になり、最後に覆滅しやすくなる。」

　劉永好さんは、現代の企業にとって、資本経営は企業を強くし、大きくする効果的な手段である、と言った。ほかでもなく、資本運営の面で、新希望グループは人々を驚かすほどのことをやり、とくにこの転換が飼料企業がやったのである。

　市場競争の激化にともなって、ここ数年来、農産物と飼料業は薄利化し、1999年に全国で欠損を出した飼料工場が1万3000余社、倒産した飼料工場が2000余社に達した。劉永好さんは「その時、飼料業にカラーテレビ、エアコンのような価格による競争が現れるのを予見できた。その時、企業はすでにある程度の資本蓄積があったので、戦略的選択がきわめて重要なこととなった」と語った。

　「ある業種はいったん独占から開放に向かうと発展すれば、急速に膨れ上がる短い時期を迎えるが、これは歴史が賜ったチャンスであり、時期は多くなく、チャンスも多くない」。1996年から、新希望グループは専門家、学者、業界筋などからなる専門の研究機構を発足させ、企業の将来について戦略的研究を行わせた。内外企業の成功例と失敗例を研究した結果、劉永好さんは香港最大の富豪である李嘉誠氏に学ぶことにした。李嘉誠氏を通じて、劉永好さんは適時にチャンスをとらえて、多元化をすれば、資本を速やかに拡大できることが分かった。

　劉永好さんは政府が逐次金融分野を自由化させるという得がたいチャンスをつかんで、新希望グループを成功裏に金融分野に進出させた。民生銀行は1993年3月に提案した時から、1996年の再編を経て、2000年に上場するまでの過程に、劉永好さんはずっと積極的に参与し、ついに民生銀行の最大の株主となった。劉永好さんは、自分はいま劉永行と保険業に介入しており、証券、基金などの金融分野も研究しているが、チャンスをつかめば参入すると言った。

　いまでは、劉永好さんは資本運営に興味津々であり、自らのグループを一台の飛行機と見なした。新希望グループの本部は機首で、方向と施策を確定する。飼料業とまもなく開業する乳業は飛行機の胴体で、主な産業の位置にある。金融は左翼で、不動産は右翼であり、初歩的に進出し始めたハイテクなどの分野は尾翼で、たとえ失敗しても全局にあまり響かない。

　劉永好さんは新希望グループの将来を楽観視している。彼はこう言った。「WTO加盟は境界線となる。WTOは公平、公正、公開の国際慣例を強調し、その結果、外資企業であろうと、国有企業であろうと、民営企業であろうと、すべて同一視する。私は、中国がWTOに加盟したその日に、民営起業家がほとんどテレビを見たと信じている。調印式の実況中継が終わると、何人かの民営起業家が電話をかけてきた。彼らは私と次の段階でどうするかについて相談した。みんなは喜びの余り、新しいチャンスと希望を感じ取った」。

劉永好さんの金銭観

　劉永好さんはダンスやゴルフができず、ブランドや芸能界の話題にも興味がないと率直に言った。

　金銭観について聞かれると、劉永好さんは自分の人生の各段階の金銭に対する異なる認識を思い出すのを禁じ得なかった。「一人が10万元を持っている時、富に対する欲望が最も強く、彼にとって金の重要性もクライマックスに達する。1000万元を持っている時、ほしいものは何でもあると感じるようになる。この段階では、進取の原動力を失いやすい。」

　「いま、私にとって、1億元を余計に儲けても数百元を余計に儲けても、両者に区別がない。生活の必要を十分に満たしたあと、金はもはや追求する最終の目標でなくなるからだ。例えば、いま、私が民生銀行の1年の利益配当だけでも数千万元もらえる。たとえほかの産業がなくても、快適な暮らしができる。しかし、金儲けを追求の唯一の目標とした時は、最も悲しい時である。不断の前進を支えるのは不断の追求と奮闘である」。劉永好さんの目には、金はいくらあっても「符号」としてしか映らないのである。

　「われわれは先に豊かになった一部の人であるが、中国の道徳観によれば、先に豊かになった人は貧しい人を助け、ともに豊かになるようにしなければならない。そのため、責任がいっそう重いと感じている。いま考えているのは、自らの発展だけでなく、社会責任感をより重視し、自らを発展させると同時に、社会に報いることであるというのは、これらの金が社会からもらったのであり、社会に用いるべきである。世界の多くの企業が持続的に発展できるのは、社会責任感を重視しているからである。」

　「そんなに多くの金を持っているのに、なんで苦労しているのかと聞く人がいるが、彼はこれが起業家精神であるということを知らないのである。ある程度成績をあげた時、いつも次の目標にねらいを定める。次の目標は何か、それはいっそううまくやることである。新希望グループの今の目標は百年の老舗につくりあげ、企業を強くし、大きくし、世界の大手企業に仲間入りすることである。」

　劉永好さんは、できればすべての富で一人の若者と年齢を交換したいと言い、「社会に対する認識、経験、能力を依然として保ちつづけることができれば、20年後はいまよりうまくやれると信じる。これらのものが20余年来の真の富で、数字ではないからだ」と言った。

よき夫

　劉永好さんと奥さんの李巍さんの婚姻は最初のうちは友人や家族から楽観されなかった。李巍さんの父親はエネルギーの専門家である。交際の初め、李巍さんは華西医科大学を卒業した優等生だったが、小さな県都の貧しい家に生まれた劉永好さんは一般の工業中等専門学校で勉強しただけである。

　数年後、李巍さんは自分の一生を決定した恋愛を思い出した時こう語った。「それは秋の夕暮れのことだった。私は宿舎で本を読んでいたところ、肌が黒く、痩せた若い男性がふと入ってきた。顔を真っ赤にして、李さん、普通の友人以上に付き合ってくれないかときっぱりと言った。私は思わず、だめだと答えた。彼は私を見て、待ってるからと自信たっぷりに言った。その時、自分が今生待つ人はこの劉永好だということが分かった。」

　やさしい李巍さんは自分は世界で一番幸せな女性だとよく言っている。劉永好さんは妻の李巍さんの話になると、喜びが思わず顔に出て、「賢く、独力で仕事のできる女性」と称した。「創業がとても難しいが、解けない難問があるときは、彼女に話す、こうすれば、ストレスを解消できる。このような感じは私にとってはとても重要なことである」と劉永好さんは言った。

　1996年の夏、劉永好さんは李巍さんが印刷公司を設立するために2000万元を出した。今、李巍さんは６社の公司を経営している。2000万元の借款を返還しただけでなく、毎年数百万元の収入がある。

　劉永好さんと奥さんは依然として仲むつまじい夫婦である。仕事が忙しくても、劉永好さんが成都市にいるなら、外食することをせず、毎日家に帰って食事をする。李巍さんはいくら忙しくても、エプロンをかけておいしい料理をつくり、お手伝いさんに任せない。

　劉永好夫婦の一人娘はいま留学中である。劉永好さんは「娘が人材になり、人々に尊敬される人になるよう望んでいる。彼女は自分の願い通りに生活できるので、無理して何かをやらせるようなことはしない。彼女が努力して学び、かなりの責任を担うことができ、またそのようにしたいならば、私の事業を引き継ぐ可能性もある。彼女はビジネスに興味がないかもしれないが、選択することができる」と言った。