台湾海峡の両岸で「三通」実現の声が高まっている

蘭辛珍

 「『三通』の開放は一刻も猶予することができず、速ければ速いほどよい」。最近、台湾の企業界人士、台湾の「経営の神様」とたたえられている台塑グループ董事長の王永慶氏、台湾統一グループ総裁の高清願氏らはメディアを通じてこうアピールした。

 最近の台湾「中華航空」の墜落事故で、「三通」(通商・通航・通郵)は再び台湾海峡両岸から注目されるホットスポットとなった。できるだけ速く両岸の「三通」を開放するよう当局に要求する声が台湾島内で再び盛り上がった。

 529日、中華人民共和国国務院台湾事務弁公室の行った第四回記者会見で、記者たちは両岸の「三通」問題について次々と質問した。同弁公室スポークスマンの張銘清氏は、「中国大陸は『三通』の技術面にいかなる問題も存在しない、台湾側ができるだけ速く民間機構に権限を授けて交渉に来るよう望んでいる」と語った。

両岸の「三通」は人心の向かうところ

 台湾島内で何度も行われた民意調査の結果によれば、調査対象となった民衆の七割以上は「三通」の開放に賛成し、「三通」の開放は台湾にとって「かなり有利だ」と見ている。

 台湾の企業界人士は、台湾当局はぐずぐずして「三通」を開放していないが、これは台湾の投資環境改善をこの上なく阻害し、産業の発展に直接影響し、経済を衰退させる、としている。関係ある統計データによれば、昨年の台湾島内の民間投資は27%減少した。業界筋は、台湾島内の経済の見通しがよくなく、このような状況の下で、当局が両岸政策の面ですぐ突破的な対応措置をとらず、ひたすら「三つのノー」を固持していくならば、台湾経済は回復する可能性がなくなる。同時に、「三通」を開放しないため、外国企業の対台湾投資が減っている。昨年、外国企業の対台湾投資額は一昨年より33%減り、今年の1月から4月までは昨年同期より39%減った。こればかりではなく、多くの外国企業が台湾に設けていた営業本部を上海など大陸部の都市に移した。

 台湾の民衆は両岸の「三通」が実現していないことに対しきわめて不満である。ここ数年来、海峡両岸の民間交流と経済貿易活動が頻繁に行われ、大陸に投資する台湾企業は総数62351社、投資総額は13941300万ドルにのぼった。両岸の年間貿易額は300億ドルを超え、帰省や観光で大陸を訪れる台湾民衆の人数は毎年延べ300万人を上回っている。しかし、直接通航できないために増加した旅客輸送と貨物輸送の負担は、年間に新台幣1000億元以上に達すると見積もられ、むだになる中継時間はなおさら計り知れないものである。多くの台湾商人は「三通」が通じないため、とても苦労だとこぼしている。

 台湾のオブザーバーから見れば、海峡両岸が一日も早く「三通」することはすでに台湾島内の民意の主流となっている。

「三通」の障害は台湾から来ている

 529日の記者会見で、張銘清氏は、1979年に「三通」問題が提起されてから現在まですでに23年たち、「三通」が実現していないのは、主に台湾当局が妨害しているからだ、と指摘した。

 国務院台湾事務弁公室の陳云林主任は先日、王永慶、高清願氏ら台湾の企業界人士が両岸の「三通」実現を積極的に促進するために払った努力を称賛するとともに、彼らができるだけ速く台湾当局の委託を受け、大陸部に来て「三通」について協議することを期待している、と語った。これは「三通」の早期実現に対する大陸側の誠意を十分に体現している。しかし、「三通」を強く求める台湾島内の民衆の声を前にして、台湾当局は依然としていわゆる「安全」、「尊厳」、「対等」を理由として、引き続き「三通」問題の上でお茶を濁そうとしている。台湾当局の指導者陳水扁は台湾が差別されず、地方化されず、瀬戸際化されない原則の下で、立場、議題、時間あるいは場所を前もって決めずに大陸と協議したいなどと言ったが、その目的は依然としてその「両国論」のために地ならしをすることにある。当局の関係官員は、「三通」が20043月になってから実現するだろう、とうわさを広めた。これは明らかに当局指導者の再任のために出したいまひとつの「選挙手形」で、台湾の民衆をだまし、「言うだけでやらない」ことを再び体現している。

 圧倒的多数の台湾人士は、両岸の「三通」は全く両岸の内部事務であり、決していかなるイデオロギーの紛争をもさしはさむべきではなく、当局は民意に背いて意識的に延ばすべきではないと見ている。

 両岸の「三通」問題に対し、張銘清氏は、大陸の「三通」と関係ある部門にいずれも相応の民間機構があり、台湾当局が民間機構に権限を授けさえすれば、交渉にいかなる問題も存在しない、と指摘した。

「三通」の早期実現を渇望

 中華人民共和国国務院台湾事務弁公室の陳云林主任が521日に発表した、両岸はできるだけ速く民間によって「三通」を協議することについての談話は、台湾島内で広範な反響を引き起こした。台北の多くの新聞は社説を掲げ、台湾当局ができるだけ速く「三通」を開放するよう呼びかけた。

 台湾の『経済日報』は「海峡両岸は三通交渉の時機を把握すべきだ」と題する社説の中で、両岸の「三通」を開放することは当面において緊急性をもっている、「三通」を開放してのみ、はじめて台湾産業の発展と競争力の向上に役立ち、さもなければ台湾産業はいちだんと萎縮し、空洞化するだろう、と書いている。

 台湾の『工商時報』の社説は、台湾当局が実務的な態度で両岸の「三通」実現を推進し、できるだけ速く大陸と「三通」問題について協議するよう要求し、こうしてこそはじめて両岸の経済の枠組みを高め、両岸の民衆の利益を増進することができると論じている。

 『中国時報』の社説は、できるだけ速く「三通」直航を実現してのみはじめて台湾はアジア経済の中で有利な地位につく機会に恵まれるのであり、台湾経済の長期の発展に対し、決定的な影響を与えるのである、としている。

 530日、台湾工業総会は真っ先に、両岸の「三通」問題について協議したいと態度を表明するとともに、項目グループを設けて両岸「三通」協議団体になる可能性を検討することを決定した。台湾工業総会の林坤鍾理事長は、台湾工業界の最も代表的な団体として、工業総会は両岸の協議が中断した状態の下で橋渡しの役割を積極的に果たすべきだ、と語った。

 できるだけ速く「三通」を実現するという台湾民衆の強い要求に対し、台湾当局は2004年に「三通」を実現する可能性があるというあいまいな表現を使った。これに対し、台湾台塑企業の王永慶董事長は、「三通」が2年後に実現するなら、時間が長すぎる、「三通」は来月に実現すべきであり、それ以上延ばすならば、台湾は競争力がなくなる、と語った。

「一つの国」は「三通」の堅実な基礎

 国務院台湾事務弁公室の陳云林主任は521日の「三通」問題についての談話の中で次のように述べた。「われわれは両岸の『三通』を実現することに対する基本的な立場を繰り返して説明した」。この基本的な立場は「一つの中国、直接かつ双方向、平等互恵」の原則に従うことであり、この原則を堅持してこそはじめて両岸の「三通」は堅実な基礎と健全な発展の方向があるというものである。

 張銘清氏も529日の記者会見で次のように強調した。「当面、両岸の『三通』を一国の内部事務と見なしさえすれば、民間間と民間、業種と業種、公司と公司が協議する方法で、できるだけ速く通じるようにすることができる。これは両岸が直接『三通』について協議する最も簡単で、可能な方法である。1990年の両岸の電信の直接交換についての協議と1997年の両岸の直行便試行についての協議はともに、このようにやれば効果をあげられることを証明している。」

 張銘清氏はさらに次のように指摘した。海峡両岸関係協会と海峡交流基金会の接触の中断を含めて、両岸が接触と協議を中断した責任は台湾側にある。最初は李登輝の「二国論」であり、後は現在の台湾当局の指導者が一つの中国の原則を認めず、両岸と両会の接触の基礎を破壊した。この基礎が回復される前に、海峡両岸関係協会、海峡交流基金会は話し合うことができない。同時に、張銘清氏は民進党が「台湾独立」という党の綱領を放棄しないかぎり、大陸側は民進党の大陸事務機構の責任者を含めて、それを名義とするいかなる機構や個人とも接触しないと表明した。