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児童に肥満の“警戒注意報”発令 5月20日、中国生徒・学生栄養促進会と衛生部、教育部などが共同提唱した「中国生徒・学生栄養デー」の2回目のキャンペーン活動が行われた。この席で、ある父兄は「息子は肉が格別好きで、毎日マクドナルドやケンタッキーに行きたいとまとわりつく。8歳なのに体重は45キロ、どうしたらいいのか」と訴え、困惑を隠さなかった。 北京のある小学校で行われた身体検査で、児童の27.8%が平均体重を上回っていることがわかった。校長も「肥満の子は、多くが成績はよくない。ハキハキせず、何をしても自信が持てない。成長に非常にマイナスだ」と憂慮を示す。 「中国人の肥満と疾病のリスク」をテーマにしたシンポジウムで、専門家は「都市部の児童の肥満は発生率ですでに先進国の水準に達し、公共衛生の面で深刻な問題になっている。肥満は児童が直面する最大の敵だ」と指摘した。 驚くべき肥満児の増加スピード
調査検討グループの責任者で同研究所の季成葉所長によると、80年代初めには児童の肥満率は現在と比べ1%にも満たなかった。当時、国の関係機関は生徒や学生が予防・治療すべき一般病リストを作成したが、そのなかには虫歯や近視、トラホームはあるものの、肥満は含まれていなかった。90年代になって、肥満児が増えるに伴い、この問題が社会各界から幅広い関心を集めるようになったことから、予防・治療対象の一般病に指定された。1995年に18歳以下の肥満率は、男は3.5%、女が2.5%と80年代初期に比べ数倍増え、2000年になると、この比率は同6〜7%、3〜4%まで上昇している。季成葉所長は「現在、肥満と平均体重のオーバーが都市の生徒・学生にとって重要な問題となっている。肥満率は農村部の3〜4倍。都市でも、東部沿海の経済発達地区の比率は内陸部よりかなり高い」と指摘している。 2000年に国家スポーツ総局や教育部など11の省庁が合同で行った「国民体格検査」でも、2000年末までに都市に暮らす男性の肥満率は約10.1%に達することが判明した。また、北京の小中高生の比率は15%、10年前のほぼ2倍であり、先進国の水準に劣らない。 さらに注視すべきことは、肥満児の数の多さまたは比率の高さ(全体的には先進国の水準に達していない)ではなく、驚くべきその増加のスピードだ。季成葉所長によれば、米国では肥満児が問題になってすでに100年以上たち、発生率はおよそ15〜20%、日本は約10%だが、この数字の数十年間の変化はいずれも小さい。それに比して中国では現在、平均5年で倍増しており、しかも経済の発展と富裕層の増加に伴い、この速度が加速し続ける可能性がある。 肥満は子供の成長に大敵
肥満が児童や青少年に与える影響は火を見るより明らかだ。専門家は、肥満は自我意識を損ない、自己を低く評価し、内向きに鬱屈し、社会への適応力を低下させる、といった異常な心理行為を引き起こすことがあると指摘する。その原因は、体型の変化や活動の不便さにある。集団行動では仲間と接触した際に排斥や嘲笑される。仲間たちから笑いの対象にされるケースもあり、自尊心を著しく傷つけられ、さまざまな集団行動への積極的な参加が妨げられることで、社交能力が健全に育たず、また社会への適応力も劣る。こうした状態が長く続けば、鬱屈やコンプレックスなど情緒に支障が生じ、何事にも受身になり、しりごみするようになり、人との付き合いに敏感になり、ますます人に対して疑い深くなっていく。ある調査では、肥満児の77%がコンプレックスや孤独を感じていると答えており、集団行動では自分を表現したくない、心理的に強い圧迫感があるというのが半数近くにのぼった。 肥満が児童の知力の発達に一定の影響を及ぼすことは、研究結果で証明されている。上海市が小学生を対象に実施したサンプル調査で、肥満児では優等生の比率が極めて低く、また各科目の成績の非及第率も高いことがわかった。南京医学院が6〜13歳までの肥満児を対象に行ったIQ測定でも、操作能力や総合能力が正常な児童より明らかに低い結果が出ている。 肥満は児童の成長や発育にとりわけマイナスだ。専門家によれば、肥満児のうち80%が青春期を迎えても太っており、45%以上が中高老年になって肥満症を患っているという。乳がんや男性の前立腺がんなど、成人の肥満と関係する疾病は青少年時代にすでにその基礎ができているのだ。肥満は常に児童の行動に不便さをもたらす。熱さに弱い、汗っかき、疲れやすいなどがそうだが、深刻な場合には呼吸器や循環器系統、内分泌系統に影響を与え、糖尿病や高血圧、心臓血管病、高コレストロール症など生活習慣病を引き起こすことにもなる。北京市の協和病院糖尿病科には年間3万人の外来患者が診療に来るが、うち児童が7%を占め、最小年齢はわずか4カ月。肥満が児童や青少年の健康や成長に大敵となっているのは確かだ。 正しい食事と運動が大切
専門家は、体重のコントロールは総合的な方法として考え、まず肥満症は不規則な生活と緊密に関係する慢性病であることを理解するのが大切だと強調し、子供や父兄に焦らないよう呼びかけている。さらに専門家は、暴飲暴食を慎み、糖分や脂肪の摂取を減らし、たんぱく質が豊富な食物を多く食べるとともに、食物中から十分な無機塩を取り、適量のビタミンを取り入れるなど、栄養に関する科学的知識をより理解して、日ごろからバランスの取れた栄養の摂取を心がけるよう求めている。 児童の飲食面でのさまざまな問題に対処して、政府の関係機関や民間組織は児童の飲食構造を改善し、また栄養のバランスを図るための作業を積極的に進めている。中国生徒・学生栄養促進会は1990年から毎年、5月20日にキャンペーン活動を行っており、2001年に5月20日を「中国生徒・学生栄養デー」に指定した。また政府は1997年12月に生徒・学生向けの栄養食を計画的、段階的に普及させる『中国栄養改善計画』を制定した。北京市生徒・学生栄養食事務弁公室のある職員は「毎食フライドチキンや魚フライを出すのが栄養食だと一部の父兄は考え、本当の栄養食とはバランスの取れた栄養のある食事であることを知らない」と話していた。また北京市は全市の小中高生に無料で『生徒・学生の栄養食キャンペーン図』を5000部、『小中高生の栄養・衛生・健康ガイドブック』を10万部配布しており、さらに授業で栄養に関する知識を学ばさせている小学校もある。翠微小学校のある父兄は「子供はニンジンやタマゴが嫌いだったが、栄養教育を受けてからは、食べるようになっただけでなく、家に帰ると学んだ知識を教えるようになった」と授業への取り入れを評価する手紙を送ってきた。第146中学・高等学校では専門家を呼んで教師、生徒や学生、父兄、給食担当者に副食品や野菜の栄養成分、配合、料理法などを講義している。こうした試みは子供たちの栄養を改善する上で大きな役割を果たした。 しかし、児童を真に肥満の苦しみから抜け出させるには、スポーツによる鍛錬を積極的に行い、“静”から“動”を中心とした生活スタイルに改めることがやはり最も重要だ。北京大学児童青少年衛生研究所の季成葉所長は「肥満児は常に酸素を多く吸収する運動をすることが大切。力を入れなくとも、リズミカルなジョギングやランニング、自転車、水泳、体操などを毎回40分以上やって酸素による代謝をよくし、同時にバランスある食事を摂取すれば、脂肪を有効に消耗させられる。長期間こうした運動をやり、生涯にわたり体を鍛える習慣を身につければ、健康な体型を取り戻し、体を増強し、成長を助け、病気を減らすことができる」と強調している。
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