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次の焦点はどこか 昨年、米国で「9.11」事件が発生してから、世界の目は反テロ活動に集まり、米国はアフガニスタンに対して軍事攻撃を実施し、世界各国は米国の反テロ行動を支持した。戦争が最終段階に入るにつれて、世界各地では絶えず新たな問題と衝突が出現している。米国の次の攻撃目標がイラクとなることはあり得るのか、印パ関係の一触即発の状態、パレスチナ・イスラエル間の衝突のエスカレート、日本の不審船撃沈事件といったことは、いずれも国際社会の関心を集めている。そこで、次の焦点はどこにあるのか、専門家らのそれぞれの見方を紹介する。 ──編集部 イラクは米国の次の攻撃目標となり得るか 中国国際問題研究所研究員 李国富
「9.11」事件の発生後、ブッシュ政権は、テロリズムに打撃を与えたいという国際社会の声を利用し、イラクとテロリズムを結び付けることで、何回かイラクを軍事攻撃しようとした。「9.11」事件後間もなく、米国の一部のメディアは、イラクの情報員が「9.11」事件の前にハイジャックの容疑者とヨーロッパで接触したことがあると報じた。その後、米国で発生した「炭そ菌入り郵便物」テロ事件で、米国のメディアは再び疑惑の目をイラクに向け、製造能力を持つのはイラクだけであると断定し、イラクを対テロリズム攻撃の対象として組み入れるよう米政府に求めた。ブッシュ政権は、確かな証拠に欠けることとアフガニスタンでの軍事行動に手一杯であったため、軽々に手を出すことはなかったが、米国は終始、テロリズムに打撃を与えるという名目にかこつけ、イラク攻撃の考えを放棄することはなかった。 現在、米国の強硬派は、ブッシュ政権は当面の有利な時機を利用してイラクを攻撃すべきであると主張している。米国の一部のシンクタンクやメディアは、次々にイラクを攻撃するための入れ知恵をし、米国はアフガン戦争における戦略を運用してイラクに対する大規模な空中攻撃を行うと同時に、イラクの反政府武装勢力を利用してイラク政府に対する地上攻撃を行っても構わないと考えている。いま米国国内で、イラクへの軍事行動を起こすべきだとする声がますます高まっていても、ブッシュ政権が本当に手を出そうとすれば、それは決して簡単なことではない。というのは、米国の親密な同盟国を含むほとんどすべての国が、米国の対テロ攻撃の対象を任意に拡大することにすでに反対を表明しており、こうした状況のもとで、米国が確かな証拠によってイラクと「9.11」事件とのかかわりを証明することなしに、イラクに対する武力行使を独断で行えば、その結果、国際反テロ連合の解体を招きかねないからである。したがって一般的には、ブッシュ政権が軽々しくイラクに対して武力を行使する可能性は大きくない。米国は、口先だけで、実際行動は起こさない可能性があり、そのねらいはイラクに服従を迫り、武器査察を受け入れさせることにある。むろん、ブッシュ政権がイラクを軍事攻撃するために準備しつつあるのは確かで、米国は湾岸地域の軍事力を増強するとともに、米軍前線の指揮作戦司令部を湾岸地域に移している。したがって、米国が国際社会の反対をかえりみずに、何が何でもイラクに対する大規模な軍事攻撃を行う可能性も完全に排除することはできない。
日本の不審船撃沈事件はアジア地域の安定に影響を及ぼすか 孫 承 (中国国際問題研究所研究員、歴史学博士、日本問題・東アジア問題専門研究者)
伝えられるところによると、日本側は、日本近海で発見した不審船を中国と日本の海上中間ラインの中国側海域まで追跡してこれを撃沈し、その結果、船上の15人全員が海に落ちて死亡した。日本側は不審船を追跡する際、イージス駆逐艦を含む25隻の船と14機の飛行機を出動させた。事件発生後、日本側は、不審船に向けての「威嚇射撃」も「正当防衛」としての船体射撃も、法に基づく行為であるとの認識を示した。その根拠は、本国の海域における不審船に対しては威嚇射撃を行うことができるという海上保安庁法に基づくもので、さらに、船体射撃の結果、船員の生命や身体に危害が及んでも刑事責任を問わないという、2001年11月に改正されたばかりの海上保安庁法に基づくものであった。しかし、今回は日本の領海外で相手の船を沈没させ、人を死に至らしめたもので、法的根拠があるかどうかをめぐって、広範な議論と批判を呼び起こした。 注目されることは、日本側が、今回の事件の中から教訓を汲み取り、海上保安要員の武器使用基準などの関連法律をさらに改正、緩和して、領海外での不審船に対して停船措置を取る有効性を確保するとともに、海上保安庁の装備を強化し、海上保安庁と自衛隊との協力を検討し、自衛隊を動員して海上警備を強化する必要性を表明したことで、これと同時に、日本が「有事法制」の制定に向けて拍車をかけていることである。 不審船に対して強硬な対策をとることと、これを契機に「有事法制」の制定を急ぐという動きは、日本がこれまでの安全保障政策を転換させる動きの延長上にある。日本の安全保障政策の転換の本質は、戦後に軍事力と軍事的役割に対して設けた制限範囲を突き破り、独立した軍事力の確立と地域における軍事的役割の拡大に向かって一歩一歩進もうとするものである。この目標を実現するためには、日本は先ず、自衛隊などの軍事力の海外活動における制限と海外での武器使用の制限を緩和する必要がある。その次に、日本は日米安全保障同盟の枠組みの下で、地域における軍事的役割を拡大する必要があり、日米防衛協力の指針(ガイドライン)では、日本は米国と力を合わせて地域の安全を守る責任を引き受けると規定しており、その中には海上の船舶を検査するという責任が含まれている。このため、日本が今回の事件後に改正を求めている関連法律は、主に次の二点に集中している。一つは、自衛隊と海上保安庁の装備水準および相互の協調能力を高めることである。二つには、領海外で武力を行使し、任務を遂行できるようにすることである。
日本が軍事力を強化し、海外で武力を行使することはアジア諸国にとって敏感な問題であり、同地域の安定に影響を及ぼす可能性があることから、日本の行動はすでにアジアの近隣諸国の関心を集めている。
パレスチナ・イスラエル衝突は緩和され得るか 中国国際問題研究所研究員 李勝旦 12月初めにハイファとエルサレムで発生した連続自爆事件は、百人を超すイスラエル庶民が死傷するという事態をもたらし、15カ月にわたって続いたパレスチナ・イスラエル衝突を危険な状態に陥らせることになった。自爆事件の発生後、イスラエルのシャロン首相は米国から急きょ帰国し、空港で緊急閣議を開いた。閣議終了後、イスラエルは、すでにパレスチナ権力機構をテロ活動支援団体と見なしたと発表し、その後イスラエルは、F-16戦闘機、武装ヘリコプター、ミサイル、戦車、大砲などの大型武器を使って、空前規模の報復攻撃を展開した。以前と異なったのは、このイスラエルの軍事攻撃の目標がパレスチナの軍事施設だけでなく、アラファト議長の官邸、同議長の特別専用機、ガザ空港の滑走路といった重要なパレスチナの象徴的建物までも含まれていたことである。その後、イスラエル首相はさらに、イスラエルにとってアラファト議長はもはや「どうでもよい人物となった」と語り、同議長のパレスチナ自治区の行動に制限を加え、実質的に同議長をその中に封じ込めてしまった。 イスラエル国内の強硬派は、うち続くパレスチナ・イスラエル衝突はアラファト議長がもはやイスラエルの和平交渉相手ではなく、和平交渉の成功にとって障害となっていることの証しだとして、アラファト議長が指導するパレスチナ権力機構を転覆させるか、あるいは同議長を追放することを主張している。これに対し、労働党の指導者であるペレス氏は断固として反対しており、同議長の指導がなければパレスチナ情勢はさらにコントロールしにくくなるだろうと考えている。同氏は、たとえイスラエルがアラファト議長を好きでなくとも、パレスチナ・イスラエル紛争を解決しようとするなら、同議長と付き合っていかなければならないと表明した。ペレス氏はさらに、シャロン首相の反対をかえりみず、双方がミッチェル報告を踏まえて衝突を終わらせ和平交渉を再開することについて、パレスチナ側と話し合った。報道によると、双方の話し合いはすでに進展をみせたという。このため一般的には、パレスチナ・イスラエル衝突は、そのうち次第に緩和に向かうものと見られている。しかし、たとえパレスチナ・イスラエルの和平交渉が再開されても、双方が平和を実現する道のりは、依然として紆余曲折して非常に長い道のりである。 |