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世界の正常な大国になる ――中国の「世界観」の再確立について 厖中英 ある国が国際社会の中で正常な国であるかどうかは、正常であるかどうかという評価基準によって決定付けられる。ある基準を確立したならば、ある国が正常な国であるかどうかが判断しやすくなる。
今日、国際社会にはある国が正常であるかどうかを判断する基準がない。それは国際社会がまだ国際共同体ではなく、統一された、すべてのメンバーに受け入れられる、正常な国であるかどうかについての価値基準がないからである。 拙文が関心を持っているのは、ある国が正常であるかどうかについての国際社会の評価ではなくて、ある社会がなぜ自国が正常でない国だと感じるのかということである。 20世紀の後期に、日本に次いで中国に自国が正常でない国であると見る観点が現われた。 中米和解と改革・開放(1972-1979年)以前、中国は世界の経済体系と国際政治体系から孤立していた。多くの人から見れば、このような閉鎖状態そのものは正常ではない。この認識が国家戦略に転化した時、中国では改革・開放と中米関係正常化が始まった。 ソ連が解体した後、中国は共産党の指導する世界最大の社会主義国として、西側が主導する国際体系から見れば、政治体制を異にする中国は正常な国ではない。 1989年以後、不利な国際環境のため、中国は韜晦の対外政策を実行したが、それ自体は中国が正常な国ではないことを表明している。 中国は市場経済を改革し、貿易が経済成長の原動力となり、外国が絶えず中国の市場に投資しているとはいえ、昨年以前は、中国はWTOの加盟国ではなかった。このような状況の下では、中国は世界経済体系の正常な国ではない。 中国が正常な国になりたいことをどう説明するか これは150余年来の、中国がまだ完全に実現していないが、今日ではそれを実現する可能性が最大な国家目標である。
抱負論に基づいて自国が正常な国ではないと中国が感じているのはなぜかを解釈すれば、次のようになる。中国はかつて歴史上の偉大な国であり、アジア地域で大きな影響を及ぼしていたが、近代になってから衰微した。中国は政治大国と人口大国であるとはいえ、中国の経済は依然として立ち遅れており、中国は再び政治、経済、軍事、文化の面で全面的に発展する大国になる必要がある。他方、抱負論の立場から見れば、「世界大国」にならなかったか、あるいは回復しなかったこと自体は正常ではないのである。 ある国が正常になりたいということを知った時、国際社会が真先に思いつくのは、この論争自体がこの国が外交、安全及び国の発展方向について理論と政策の弁論を行っていることを表明しているということである。つづいてこの国の発展方向に最も関心を持っている関係各国は、この種の国家正常化が代表しているのは一種の国家抱負なのか、それとも一種の自己矯正なのかについて分析する。国家抱負であるならば、国際社会は憂慮するかも知れず、大国の抱負に対し非常に複雑で断固たる反応を示して、国際社会の現状を変える可能性のあるこの種の「誤った」企みを制止するかもしれない。自己矯正に対しては、国際社会は原則的には歓迎し、受け入れる。 その意味では、中国は正常な国として上述の二つの方面がともに存在しており、そのため、国際社会は中国の正常化(国際事務に速やかに参与する)に対し、「中国脅威論」をあちこちに流し、同時に中国が国際大家庭に加わるのを歓迎するという複雑な反応を示した。国際社会の覇権国(アメリカ)は中国に対し互いに結びついた二つの方法をとっている。一方では「接触」し、中国がいちだんと国際社会の一部分となるのを奨励し、国際規範の制約を受け入れさせ、国際義務と責任を負わせようとし、他方ではまた中国を「抑制」し、中国が昔のような大国に復活して、国際社会に衝撃と影響をもたらすのを防備する。 そのため、中国が正常な国であると主張するものは、中国が一歩進んで国際社会に入って正常になり、それによって「中国脅威論」をなくすことを望んでいる。 どのような中国こそ正常な国なのか 1、民族国家。民族国家としての中国こそ国際社会の正常な国である。中国は真の意味の民族国家になるべきである。指摘に値するのは、中国が自国にいわゆる「56の民族」があるという表現を改め、中国には「56の族群」があり、主体の中国は中華民族の基礎の上に樹立されていると言うべきである。中国はいつも「主権は民にある」という民族国家の思想を強調し、これを通じて中国にいまなお存在している国家主権の問題(例えば台湾問題)を解決しなければならない。 3、平和国家。制度と規則の面から逐次国際社会の主流に近づき、内在の自己制約と抑制のメカニズムを構築する。中国は国連安保理常任理事国としての役割を十分に果たし、国際で平和を実現しそれを擁護する役を積極的に務めなければならない。 4、地域国家。自国の所在する地域を外国ではなく、自国の国内政治、国家安全と最も密接な関係にある周辺の環境とし、所在する地域の国とともに、地域メカニズムの下で複雑な相互制約(つまり所在する地域の国々の自国に対する制約を受け入れる)を実現し、国家間の相互承認と同時に地域間の相互承認を確立する。中国はアジアの国であり、地域主義の枠組みの下でアジアと斬新な関係を樹立する必要がある。 5、世界国家。国際社会との協力を通じて中国の国家安全を保証し、中国の国家利益を擁護し、中国の直面しているグローバルな挑戦を解決する。中国は国際社会を必要とする以上、国際社会により大きな貢献をしなければならない。中国はグローバル化の過程の公正性と合理性を促進する重要な力となり、全力あげてグローバル化の積極的な影響の促進に努め、グローバル化の消極的な影響を抑制すべきである。 国連安保理常任理事国からWTOの加盟国へと上がりつつある中国の国際地位は、中国がすでに正常な国になったことを表明しているのか、それとも一部の人が望んでいるように、WTOへの加盟は中国が国家正常化の過程を完成したことを示しているのか。私の答えは、WTOの加盟によって中国は以前より正常になり、中国が世界と融け合う道で大きな進歩をとげたことを示しているが、中国は依然として一段と正常化する必要がある。 世界の正常な大国になる 中国が正常な国になる根本的な基準として、中国がすでに国際社会の主流に融け込み、国際社会の主流と共通の利益と観念を分かち合うかどうかを見なければならない。 正常と不正常は弁証法である。ある国は正常でもあれば、同時に不正常でもある。いわゆる国が正常化し、特に自我を実現する過程は、その結果が願望と裏腹になることがよくある。外部から見れば、国を正常にする結果はこの国がいっそう正常でなくなることである。そのため、自我を探し求める過程の中で正常化予想とは反対の効果をもたらすのを避けなければならない。 他方では、中国は国際社会の行為者としてその他の国とは同じではなく、それなりの特徴がある。中国に代表される文化と価値、そのアジア大陸地域に占める中心的な地理的位置、膨大な人口、社会の相対的単一の民族性はいずれも世界のその他の国が持っていない特徴である。この意味から言って、中国は今は世界各国が完全に受け入れる正常な国ではなく、将来もそのような国になるのが非常に難しい。 中国はなんと言っても結局世界大国であり、このような大国はアジア、国際社会の基本的な一員としての正常な国でもあるはずである。中国の大国の地位に対する追求を、正常な大国についての積極的で正しい理念を結び付ければ、中国は国際社会の中でますます正常になり、中国の権力、利益、価値は国際社会でよりよく実現し、、世界も中国の国家正常化から利益を獲得し、世界はさらに平和になり、人類はさらに発展するようになる。 中国の国際社会における国家としての位置付けは世界の正常な大国であるべきである。 筆者は国際政治学博士、清華大学国際問題研究所助教授で、現在はイギリスWARWICK大学のグローバル化と地域化研究センターの客員研究員。(北京在住 郵便番号 100084 Email pzying@yahoo.com)。 |