高学歴者は出産優先権を享有すべきなのか

 一組の夫婦は1人の子供しか産むことができない、これは中国の計画出産政策の基本的原則である(特殊な状況については、別の規定がある)。しかし、さる6月、江蘇省人民代表大会常務委の委員たちは「江蘇省の人口と計画出産条例(草案)」を審議した際、人口の資質を高めるため、出産政策をやや調整し、博士や修士のような高い資質をもつ人が2人の子供を産むのを認め、学力の低い社会階層、とりわけ農民の出産超過を一歩進んで抑えるよう提案した。この提案は社会で大きな反響を呼んだ。

 その後、国家計画出産委員会の関係筋は、今後、国はそのように計画出産政策を調整することがなく、計画出産の基本原則がすでに確定され、どんな状況の下で2人目の子供を産むことを認めるかについては、各省は実況に応じていささか調整することができるが、いわゆる学歴に基づいて調整を行う可能性はほとんどない、と明らかにした。

 伝えられるところによると、早くも20011229日、「中華人民共和国人口と計画出産法」が公布されたとき、似たような提案を行う人がいた。これでも分かるように、このような意見を持つ人はかなりいる。

 最近、人々はこのことについて討論を繰り広げている。反対する人が多数を占めているが、賛成する人も少なくない。何といってもこの問題についての論争は、中国人の人口問題や人口政策に対する認識を高めるのに役立つことができると見られている。

社会の不安定をきたす形を変えた「血統論」

 北京大学社会学学部のイ冬新博士 母親の資質と子供の資質が正比例の関係にあるのは確かである。しかし、これで差別政策をとってはならない。そのようにすれば、一部の人の基本的権利を剥奪することになる。学歴が高いことはより多くの権利を擁することを意味しない。

 北京大学人口研究所の蒋森副教授 高学歴の者に多く子供を産ませる観点は珍しいものではない。それは第2次世界大戦期間にドイツの一部学者が提出した「人口優生論」に似ている。その論点は後にナチスが人種主義政策を推し進めるよりどころとなり、そのために人口学が悪名高いものになって、ドイツでの人口学研究が4050年間停滞した。研究が示しているように、母親の学歴が高いことが優秀な子を生み育てることに重要な役割を果たしている。しかし、遺伝の面で両親の学歴が子女の知能と確実的な関係があるのを証明できる研究成果は、いまのところまだない。一人の能力と優秀さは後天的にはぐくまれたものが多い。中国では人口の資質向上はやすやすできることではなく、カギとなるのはより多くの発展のチャンスを提供し、全人民の教養を高めることである。

 20世紀670年代にシンガポールは、大学以上の学力をもつ女性は2人目の子供を産むことができ、政府が補助を与えるが、学力の低い者は多く産むのを認めないという政策を実行したことがある。80年代になってから、人口の減少によって、シンガポールはまたも出産奨励政策をとったが、学歴の高い人はやはり多く産むのを望んでいない。同じ時期に、中国では、資質の高い人の出産が少ないが、資質の低い人の出産が多いという「人口の逆淘汰」の問題を取り上げた学者が少なくなかった。これは複雑かつ敏感な問題である。シンガポールの政策は往々にして差別政策になり、一部の人が他の人を差別視する工具となり、社会の不安定を引き起こしやすい。

 修士コース卒業生、外資系会社社員の魯魯さん 民主の社会はそうすべきではない。それは人類が数千年も追求してきた平等を否定するものであり、後退である。また、それは差別政策であり、社会で「高貴な血統」という概念が現れるべきではない。なぜなら、それが人が生まれた時から平等であるという原則に背き、予測できないマイナスの影響をもたらすからである。

 修士高―ス卒業生の李敏さん 修士、博士にこの権利を与えても、必ずしもそれを享受するとは限らない。私の夫は有名な大学のポストドクトレートであり、私たちは5歳の息子がいる。たとえこの政策があっても、2人目の子供をほしくない。先ずはそれだけの精力がない。職業女性として、子供の教育に使える時間と精力がわりに少ない。次に、中国の経済が発達しておらず、高学歴の人たちも、大多数の経済的収入がせいぜい1人の子供に最も良い教育を受けるのを保障することしかできない。健康な子供を産むより子供を優秀な人にを育て上げるほうが重要であると思って、私は質しか求めず、数量を求めない。私の周りには、主観的原因や客観的原因で子供を遅く産む、ひいては子供を産まない高学歴の人が少なくない。産みたくない人は結局産むことがない。だから、この政策はあまり実行されないだろう。

 雑誌社編集者の程信 中国は13億もの人口を擁しているが、高等専門学校以上の学歴を持つ人が3000余万人にすぎず、修士や博士なおさら少ない。そのため、彼らに子供を多く産ませても、根本から人口の資質問題を解決することができない。

 現在、中国の人口はすでに過剰であり、経済が発達せず、社会保障制度が健全でなく、農業が現代化を実現できなければ、「老後のために子供を養う」、「女性より男性を重視する」といった農民の旧い観念を変えることができない。こうした状況の下で、高学歴の人に子供を多く産ませるのは人口を増やすだけであり、これは人口の数量を減らすという政策に背くばかりでなく、人口資質の向上にもあまり役立たない。だから、条件を整え、教育を通じて「高貴」でない人々に高い資質をもたせるようにしたほうがよい。

 この観点が差別的なものであるのは明らかであるのに、一定の市場があり、しかも人民代表大会常務委員会の提案の中にも出ているのは、ほんとうに不思議のことである。この観点は農民を差別視することや優等地域と劣等地域についての争いと似ているところがたくさんある。これらはいずれもいわゆる「血統」や出生地によって人々を区分するものである。経済の発展につれて、中国に「貴族」が現れるのも情理にかなっているが、このような「貴族」は自然の経済関係によって維持されるものであって、国の政策またはメディアの宣伝に現れるべきではない。さもなければ、エリード意識を生み出すか、またはそれを強化し、彼らにより多くの特権を享受させる。これは民主国家に現すべきではない。

 グウンローディングの「×××」 博士や修士も農村出身のものが多いだろうか。博士、修士、ひいてはアカデミー会員の子女にも罪を犯し、国に危害をもたらしたものがいるではないか。現在、最も重要なのはどんな人に2人目の子供を産ませるかという問題ではなくて、いかに教育を普及させ、強化するか、いかに人口の資質を高めるかの問題である。中国の農民が都市部の人々と同じような教育を受けることができるなら、袁隆平氏のような科学者が多く出現するに違いない。

高学歴が高収入を意味し、子供により良い教育を受けさせられる

 外資系企業職員の王娜さん 私と夫はともに博士であり、月給が2万元で、息子が1人おり、もう1人産みたいと思っている。なぜなら、私自身は一人っ子の寂しさをいやというほど嘗めたからである。市場で農民が何人もの子供を連れているのを目にすると、どうして政策が制度を守らない人を管理できないのかと思うことがある。私は2人の子供を養えるだけでなく、彼らに良好な教育を受けさせることもできる。私の子供がきっとえらくなることを保証できないが、少なくとも彼らの成長に必要な教育を受けさせるのに問題がない。私の願望が国内で実現できないなのか。一部の有名なサッカー選手や俳優たちが子供を多く産むことができるのはなぜだろうか。少数民族の人々が子供を多く産むことができるのはなぜだろうか。私が教育する子供が彼らの子供に劣らないことを保証できるのである。

 大学卒業生の孟興さん 高学歴の人の資質は普遍的に学歴が低い人より高い。そのため、生まれた子供の知能も割に高いはずである。より重要なのは、高学歴の母親は子供をどうのように教育するかがわかることである。

 このほど国の関係機構の調査によると、社会各階層の収入が基本的に学歴と正比例をなしている状況である。だから、私は子供が高級インテリの家庭に生まれるなら、より良い教育と世話を受けることができると思っている。

 医者の李銘さん 私は北京で、他所から来た農民が1人の子供の手を引き、1人の子供を抱き、1人の子供を背負っているのをよく目にする。彼らはたくさんの子供を産んだのに、自分自身に子供を養う能力がないため、国だけでなく、計画出産政策を厳守する人に極めて大きな負担をもたらしている。これははなはだ不公平なことである。だから、貧困地区で計画出産政策を厳格に実行しなければならない。

 グウンローディングの「纓子」 政策の制定にはより多く必要なのは科学と理性であり、あまり多くの感情的色彩ではない。高学歴の人々はひっきょう今の社会でわりに高い社会的地位とわりによい経済条件にめぐまれており、子女に基本的な教育を受けさせ、良好な環境の中で育つのを保証することができ、国と社会の負担を軽減することもでき、国にも国民にも有利なよいことである。貧しい母親や学校に入れない子供の数を減らすのは、家庭や社会の幸せである。弱い人々に同情するのはいいことであるが、それよりも貧困の根源をなくすことの方がより重要である。高学歴の人の出産制限を適度に緩めるのは、国の今後の発展にプラスとなる。

 グウンローディングの氷氷さん 清華大学や北京大学およびその他の大学に農村出身の立派な学生が大勢いる。これは中国の農村人口の比率があまりにも大きいことしか物語ることができない。事実上、家庭条件のよい子供は小中学校での成績がよくなくても、学業を続けることができる。しかし、農村では、子供は成績がよくなかったら、中学の段階でひいては小学の段階で淘汰される。高学歴の家庭が経済条件がよく、子供が両親の高い知能を受け継ぐことができなくても、教育を受ける機会を多く得られる。子供の最初の教師は母親であり、高学歴の母親は自分の子供をどう教育するかがわかっている。奨励政策を制定する必要がある。農村で計画出産をさらに厳しく実行しなければならない。さもなければ、数十年後の人口の資質は依然として中国を悩ます大きな問題である。