南北関係の発展の趨勢

中国国際問題研究所 王和興

 21世紀に入ってから、世界各国の相互依存が日ましに深まるにつれて、経済グローバル化がたえず発展し、南北問題が深く発展する趨勢を見せている。

 経済グローバル化の発展にともなって、グローバルな貿易往来、資金流動、科学技術進歩が各国のさまざまな障壁を取り壊し、全世界で相互依存、共同発展の統一体を形成しつつある。第三世界諸国は世界経済の不可分の一部分として、先進国との経済的利益と複雑に織り混ざって、相互影響が日ましに大きくなっている。発展途上国とくに新興市場諸国はいまや先進国にとってきわめて重要な市場となっている。

 1985年以来、外資を10億ドル以上導入した国・地域は17から51に増えたが、その半分近くが発展途上国・地域である。1997年、発展途上諸国は外国直接投資総額の30%に相当する1400億ドルを獲得したが、そのうちの90%は先進国からのものである。現在、ますます多くの国は開放政策を実行し、貿易自由化を実現し、外国企業が自国で工場を設立し、労働者を雇い、加工と生産や組み立てをおこなうよう奨励している。このような「世界を工場とし、各国を職場とする」多国籍の生産パターンは第三世界の経済構造が多様化に発展するのに役立ち、第三世界が同水準の国際分業への参与にも有利である。多国への直接投資の増加はかならずや先進国と発展途上国の経済的つながりをいちだんと緊密にし、各国経済の相互依存を促すことになろう。

 南北の矛盾はかなり長い間、依然として抑制と反抑制の闘争として現れるだろう。しかし、先進国の他国に押し付けるようなやり方は必ず第三世界が独立自主に経済を発展させ、民族の利益を擁護する正当な要求と衝突する。先進国が既存の経済的地位を維持し、第三世界の平等に国際経済実務に参与する要求との矛盾も引き続き先鋭化する。しかし、相互依存が日ましに深まる情勢の下で、先進国と発展途上国をとわず、自らの行為を抑えて、矛盾を激化させないようにする必要がある。南北双方は調和と均衡のとれた発展を保ってのみ、世界経済ははじめて健全に運行することができるのである。これは南北双方が数十年間にわたる実践の中から得た共通の認識である。

 グローバル化の深化発展によって、先進国と発展途上国の利益が互いに融けあい、影響しあい、制約しあい、南北双方が双方の切実な利益にかかわる問題の上で、必然的に相互妥協という選択を行って、一方が災難をこうむると他方に及ぶことを避けるように促す。そのため、21世紀の南北間の食い違いと紛争は一定の程度に限られ、ゆゆしい対抗に発展するようなことがないだろう。

 第二世界大戦後の国際情勢における最も重要で、最も歴史的意義をもつ出来事は、アジア、アフリカ、中南米の多くの国が独立を宣言し、南北間の植民地時代の従属関係がちくじ相互依存の関係に変わることである。しかし、先進国は依然として経済面で第三世界を抑えようとし、はては政治、軍事、外交および文化などの手段を用いて第三世界に影響を及ぼしている。しかし、当今の第三世界諸国はいずれも独立した主権国であるため、決して大国の言いなりになるようなことをせず、西側諸国がその内政にあれこれと指図し、やらたに干渉するのをなおさら許さない。そのため、先進国のこのような弱者いじめ、貧乏者いじめのやり方はかならず第三世界諸国の強い抵抗に遭うものである。

 1990年代以来、アメリカは何回も中南米諸国と「長期のパートナーシップ」を確立すると宣言し、アフリカ諸国と新しい関係を樹立することを表明し、「相互尊重、協力促進」の対アフリカ政策を制定した。欧州連合(EU)とアフリカ諸国の指導者は2000年に第1回アフリカ・EU首脳会議を開き、「カイロ宣言」を発表し、「アフリカとヨーロッパの21世紀におけるパートナーシップが戦略各面で新しい重要な意義をもっている」と強調した。2002年に開かれた国連の発展のための資金調達に関する国際会議は「モンテレー共通認識」を発表し、先進国と発展途上国は新しいパートナーシップを確立すべきであると指摘した。

 各国の利益が互いに融けあい、影響しあい、制約しあう現状によって、各国が平等な態度で国際実務に現れた問題に対処し、それを処理しなければならなくなった。そのため、内政不干渉と平等なパートナーシップの確立は今後南北経済協力の基礎となるであろう。

 現在、世界人口の四分の一も占めていない先進国は、世界総生産の四分の三を占めており、他方世界人口の四分の三を占める発展途上国は世界総生産の約四分の一しか占めていない。北側が豊かで、南側が貧しいことは当面の世界の著しい特徴である。科学技術が急速に発展する時代に、先進国が世界総生産の大部分を占めているため、国際分業の面で支配的地位を占めている。そのため、国際競争において有利な地位を占めている。しかも先進国は国際金融、貿易面の「ゲームルール」の制定者と操縦者である。南北の格差がさらに拡大する趨勢がある。

 20世紀末以来、発展途上国の貧困化問題を検討し、解決するため、国際機構の開く南北の格差の縮小と除去を議題とする国際会議が多くなった。そのため、2001年に開かれた第3回最貧困国会議は最貧困国の債務減免を決定した。2002年にメキシコで開催された国連の発展のための資金調達に関する国際会議で、アメリカは毎年100億ドルの政府援助をふまえて、今後の三会計年度に毎年さらに50億ドルを追加することを約束した。EU2006年からその政府発展援助を現在のGDPに占める比率を0.33%足らずから0.39%に増やし、つまり、毎年70億ドル増加すると発表した。国際社会は南北格差の縮小を21世紀の最大のチャレンジとしている。国連の「2000宣言」は、2015年に貧困者人口を半減する目標を実現するよう要求している。全般的に言って、先進国はやはり言うことが多くて、やることが少ない。

 1992年国連環境・発展世界サミットは「21世紀議事日程」を採択した。これは最初の持続可能な発展に関するグローバル行動計画である。20029月ヨハネスブルグで開催された国連持続可能な開発に関する世界サミットは「実施計画」と「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」を採択し、各国が具体的な段取りをとって「21世紀議事日程」の諸指標を実施するよう要求した。南北関係の改善にとって、ヨハネスブルグサミットは歴史に記録されると言える。

 21世紀に入って、人類は各国間が驚くほど不平等で、空前の繁栄と貧困が共存する世界に直面している。これは、国際環境の安定に対し大きな脅威となっている。このような弱肉強食の秩序の下で、貧困国は不公平な扱いを受け、貧しい国がますます貧しくなり、富める国がますます豊かになっている。そのため、公正かつ合理的な国際経済新秩序の確立は歴史の必然、時代の要求となっている。

 現行の国際経済秩序は市場経済を基礎としている。市場経済は従来から盲目性と無政府状態という欠点がある。市場経済では、従来から強者が弱者をいじめている。競争の参与は従来から不平等なものである。そのため、経済グローバル化の程度が高ければ高いほど、国際規則を制定して、国際経済活動における世界各国の行為を協調、制約し、国際経済を秩序だって運行させ、市場経済における独占性と破壊性を減らすことがますます必要となってくる。そのため、第三世界諸国は現行の国際規則における不合理的部分を取り消し、グローバル化規則の制定に参与し、少数の先進国が国際実務を操縦し、独占することに反対し、国際経済機構を改革し、国際実務の中で国際関係の民主化を促すよう要求するのは当然である。