有給休暇はいつ実行できるか

 有給休暇制度はメーデーや国慶節のこのような7日間の長い休暇を何回か経て、にぎやかな「休日経済」を理性的に考えてから提出された新しい問題である。

 1999年から、国務院が全国の法定祝日の休暇期間を延長したため、中国に休日ショッピング、休日観光、休日レクリエーションの「休日経済」現象が現れた。「休日経済」は商業、飲食、観光、交通など業種の通常よりも速い発展を促し、これと関係ある業界も思いがけないメリットを入手するようになった。全国休日弁公室によると、過ぎ去ったばかりの国慶節の長い休暇期間に、100ヵ所の観光地は観光客を延べ1167万人も受け入れ、前年同期より5.7%増え、入場料は合わせて37943万元に達し、前年同期より20.9 %増えた。初歩的な統計によると、全国の主要な観光都市と景勝地はこの期間にいずれも経済面で良好な効果をあげ、利益を獲得した。

 しかし、中国の人口が多く、休日が集中しすぎると、飲食・宿泊・交通・観光・娯楽・ショッピングなどに大きなプレッシャーをかけ、同時に「ゴールデンウィーク」の集中消費後の数ヵ月間に消費が低迷する。

 そのため、社会各界は有給休暇制度の実行を呼びかけている。ある専門家は次のように指摘した。休日経済の発展に存在するアンバランスの問題を解決し、休日消費の内容をたえず豊かにしてのみはじめて、マクロ経済の繁栄に引き続き貢献することができるのである。まず休暇期間のアンバランスを打ち破る必要がある。有給休暇政策は休暇期間の制限を打破して、「ゴールデンウィーク」を「ゴールデンマンス」ないし「ゴールデンシーズン」に拡大するのに役立ち、そうすれば、社会資源と天然資源を十分に利用することができる。次に地区間の格差を縮小する必要がある。西部開発は西部地区の豊富な観光資源を活用して、西部地区の休日経済ブームが東部と中部地区にはるかに及ばない現状を変える必要がある。

 有給休暇をめぐる議論が長く続き、最近、メディアやインタネットも5年内に有給休暇を実行できると報道しているにもかかわらず、国家人事部政法司法法規処の関係筋は、このことを聞いていないと語った。しかし、国の事業体と公務員の有給休暇制度は以前から存在し、勤続年限が10年、20年以上の従業員は毎年それぞれ7日、10日、15日間の休暇をとることができる。この政策は変更できない規定ではなくて、各部門の実際の仕事の状況に基づいて調整することができる。

有給休暇を提唱すべきだ

『北京青年報』評論員蔡方華

 長い休暇制度が実行されてから、何回か「ゴールデンウィーク」が過ぎ去った。「ゴールデンウィーク」をめぐって、社会全体は最初はてんてこ舞いであったが次第に慣れるようになってきた。喝采と興奮の後、「ゴールデンウィーク」のもたらす問題を冷静に考え始め、新たな休暇案を工夫し始めた人も少なくない。

 国民経済にとっても、普通の人々の生活にとっても、「ゴールデンウィーク」の意義は尋常なものではない。それはサービス業に巨額の収入をもたらし、内需を促すだけでなく、人々の生活レベルをも高めた。しかし、「ゴールデンウィーク」が繰り返し訪れるにつれて、その弊害もはっきりと現れてきた。

 まず、国民全体が「ゴールデンウィーク」に集中して休暇をとって、交通に極めて大きなプレッシャーをかけた。今年の国慶節を例に挙げると、急速にふくれ上がった需要に対処するため、鉄道部門は620余本の列車を増発せざるを得なかった。「ゴールデンウィーク」になると、各地の民間航空は百方手を尽くして航空便を増やし、交通のプレッシャーを緩和しながら稼ぎまくった。しかし、潜在力発掘の裏には、理性的でない要素もある。たとえば、一部地方の交通部門は増資して高級車輌を購入したが、「ゴールデンウィーク」が過ぎたあと、これらの車輌はほとんど使い途がなくなった。鉄道、航空などにも人びとを憂慮させる疲労の現象が現れた。

 次に、集中休暇は観光、飲食など業界のバランスを崩し、奇形的に発展させるようにした。これは自然と歴史文化遺産の景勝地で特に有害である。「ゴールデンウィーク」に観光客が激増して、一部の名所旧跡では大規模な建設が始めたが、これは地元の景観を破壊したばかりでなく、シーズンオフの時は遊ばせておくほかはない。

 集中休暇は人々にレジャーと娯楽の機会を与えたが、同時に人々の体と精神に大きなプレッシャーをかけた。人々は知恵を絞って航空券、乗車券を手に入れるだけでなく、観光地での宿泊に気を使わざるを得ず、社会全体は短期間の大きな人口移動に対処するため、巨大な運行コストを払わなければならない。要するに、「ゴールデンウィーク」のマイナス効果はすでに無視できないものとなっている。

 そのため、有給休暇制度の制定により広く関心を寄せるべきである。

有給休暇は社会進歩の現れ  

広東商学院教授 徐印州

 「休日経済」の出現は、中国の国内市場に巨大な消費潜在力が存在していることを十分に物語っているが、問題はどのようにそれを科学的に導くかにある。他方では、中国の経済と社会の発展過程における欠点と不足、特に観光業、商業、飲食業など第3次産業の弱みと不足をも十分に顕在化し、経営観念、サービスの質、サービス施設などの面の問題を少なからず引き起こした。

 国民全体が集中して休暇をとる方式は知らず知らずのうちに人々に休暇とはつまり観光であり、観光が休日消費の唯一の選択という錯覚を起こさせる。中国の人口が多く、有給休暇は確率で計算して、各時間帯に休暇をとる人の数がほぼ平均すれば、シーズンとシーズンオフの過度格差を大いに縮小する。それは企業の経営に有利であり、社会の安定した発展になおさら有利である。そのほか、有給休暇制度は個人が自主的に休暇をとるのをほぼ保証でき、かなりの程度において類似した休暇方式を避けるようになった。こうすれば、第3次産業の各業種の均衡的発展に役立つだけでなく、企業が多種多様な形とグレードで、日ましに多様化、個性化する消費の需要を十分に満たし、それによってより高い段階とレベルから消費需要を拡大し、満たすことにも役立つ。

 ここ2年来に現れた休日消費のブーム及び休日消費後の不況は、知らず知らずのうちに一部の企業が不正な手段で消費者に損害を蒙らせるという不良な動機を助長した。1年間に経済が大きく起伏し、社会秩序が急に緩くなったりきつくなったりするのも、経済と社会の長期の安定と健全な発展に不利である。有給休暇は休暇消費の時間を分散させ、ブームを安定させる役割を果たし、その重要な社会的意義は低く評価してはならない。

 「休日経済」に存在する問題を前にして、有給休暇制度は賢明な選択であると言える。科学的な国民休暇は社会進歩の現れである。経済が発達し、市場経済がわりに全面的に発育している国・地域では、国民の有給休暇制度が普遍的に実行されている。公務員の有給休暇のほか、企業・事業体も従業員の勤続年限に基づいて、毎年日数の異なる有給休暇を実行している。

いかなる形式の長期休暇も経済発展に不利

日本経済産業研究所高級研究員   関志雄

 中国は毎年一週間の長期休暇が3回あり、それに1995年に実施した週休二日制を加えると、中国人の毎年の休暇日数はすでに先進国とほぼ違わなくなった。休暇を増やす目的の一つは国民の生活の質的向上にあり、いま一つは娯楽などの消費の拡大を通じて、景気を刺激する「休日経済」に効果を生じさせることにある。しかし、政府のこのような願望と裏腹に、長い休暇は生産の拡大を促すことができないのである。

 需要を増やしさえすれば景気がよくなるという観点はケインズの「有効需要の理論」に由来するものである。それは1930年代の世界経済危機が発生したとき、供給要素が景気規模の拡大を制約しなかった状況に似かよったところがあるが、それと比べて、中国の「休日経済」は明らかにこの条件を満足していない。休暇が増えると、労働時間が短くなることを意味する。この結果は、国民生産ないし国民所得が増えるどころか、逆に減少する。経済というケーキが全体として小さくなったため、その不足分は最終的に勤労者に回されるかそれども企業に回されることになろう。

 勤労者に回されるならば、家庭所得が減少し、それによって消費にマイナスの影響を及ぼすことを意味する。もちろん、連休を利用して観光に出掛けるなら、外食、ショッピングなどの消費が一時増え、特に観光、交通、小売など一部の業種は直接利益を得られるが、給料が減る限り、たとえ休日期間に消費が一時増えても、年間消費は依然として減る可能性がある。というのは日常消費がこれによって抑えられる可能性があるからである。消費を強行に増やすならば、二つの選択しかない。それは貯金を使うか、金を借りるかであり、その結果は家庭の収支状況がますます悪くなる。

 給料を減らさなければ、企業の利潤を犠牲にするしかなく、その結果、企業の投資活動が少なくなる。そのほか、給料は労働時間の減少につれて減らなければ、一時間ごとに支払う労働力のコストが上昇し、結果として企業の国際競争力にマイナスの影響を及ぼすことを意味する。

 そのため、休暇の増加は労働への投入の減少を直接意味し、家庭の貯金と企業の収益の減少は、投資ないし資本蓄積を制限する。その結果、当面の生産が下り坂を辿るだけでなく、国と企業の未来の発展も損われる可能性がある。

 なるほど、先進国は休暇が多い。経済の発展はもともと「まず苦しい思いをし、あとで楽をする」という過程であり、努力を払わなければ、先進国に仲間入りすることができない。「先に楽をする」風潮を助長する「休日経済」は後で苦しい思いをし、経済の発展を妨げる可能性がある。中国はいまでも、1人当たりGNP1000ドル足らずの発展途上国であり、当面やるべきことは労働時間を短縮し、消費を刺激することではなくて、すべての国民が一生懸命に働き、将来の消費拡大を目指して貯蓄を増やすことである。