公共事業を外資に開放

―――これまで政府が独占していた公共事業が段階的に社会資本や外国資本に開放されて以降、政府の投資負担が軽減された一方で、市民はより良質な公共サービスを受けられるようになった。

馮建華

 深セン市はエネルギーや給水、ガス供給、公共交通に従事する公営企業4社の一部の株式を国際入札の形で外国企業に譲渡することし、829日、フランスの電力会社や英国の水道会社など国際的に著名な企業60社余りが応札してしのぎを削った。これまで政府が独占的に行ってきた公共事業は外国資本に開放された。

 911日、同市は先行して対外開放する給水、配水管、ガス管、公共バス、汚水処理、生活ゴミ処理、環境衛生サービス、医療廃棄物処理など、8業種の公共企業を正式に公布した。

 国家建設部都市建設司の李東序司長は1021日、「公共事業を一段と開放し、社会資本や外国資本が単独出資、合弁など様々な形で公共事業の建設と運営に参与することを許可していく」との政府の方針を明らかにした。

独占の打破

 中国人民大学中国経済改革・発展研究員の黄泰岩教授は「公共事業は一貫して過度の保護を受けてきた独占分野だった。深セン市がこれほど早く対外開放に踏み出したのは、実に想像外のことだ」と評価する。

 深セン市が829日に国際入札を行った公営企業は、深セン能源(エネルギー)集団、水務(水道)集団、燃気(ガス)集団、公共交通集団の4社。譲渡株式はそれぞれ25%に45%、40%、45%。

 今回の国際入札で深セン市は、(1)戦略的投資家である(2)国際的に著名な企業または世界ベスト500社など同業種で有力企業である―――の2点に合致していることを条件に規定した。

 運営に当たっては、招聘された国際的な資質を備えた財務顧問グループが政府の指導を受けながら、国際慣例に基づいて科学的、公正な入札手順を制定し、入札の全過程が市場ルールや規定の手順に沿ってスムーズに進むようにすることで、応札箱の不正操作といった違法行為を防止することにした。

 深セン市体制改革弁公室の楊進軍主任によると、国際入札はすでに第2の段階、市政府と応札企業が一対一で交渉する段階に入っている。

 楊進軍主任は「外資に公営企業の一部株式を譲渡するのは、融資のためではなく、公営企業の国有株主による“一大独占”の状態を改めることで、企業構造を改変して分権制のバランスを図ることだ」と説明する。

 深セン市は今後、給水やガス供給、汚水処理など経営性のある公共事業の建設について、公開入札を実施して投資主体を選択するとともに、国内外の経済体が単独出資や合弁などの形態で投資、建設、運営していくよう奨励する方針だ。また、政府の資金に社会資本を取り入れていく。だが、非経営性の公共施設の建設は対外開放しない。

 今年5月、南京市は政府の独占を打破するため、公共事業を社会資本や外資に開放するようになり、“禁止区域”の開放に、数多くの多国籍企業が応札した。

 南京市政公用局の薜楽群局長は「今後4年以内に1000万元を投入して新たな都市建設を進めていく。そのうち経営性のあるプロジェクトについては、政府は建設に直接投資はせず、合弁や株式取得、融資などの形で外資や民間資本などの社会資金を導入する。半経営性の重要なプロジェクトは、政府の資金と社会資本を結合させた投資形態を採用する。公共事業では、一部撤退、またすべて撤退できる国有資本は、大胆に撤退させて全面的に開放していく」との方針を明らかにしている。

“多利益”を実現

 国家建設部都市建設司の李東序司長は「全国各都市で公共事業の資金が不足しており、単に政府の財政に依存するのみでは社会のニーズは満たせない。これでは公共事業の発展は相対的に緩慢となり、公共サービスは滞り、政策的な欠損で経営上の欠損をカバーしなければならなくなる」と指摘する。

 さらに「公共施設の建設や管理を、一定期間内に専門能力を有する企業に請け負わせるようにすることが、問題の解決にとって有効な方法になる」と、李司長は強調している。

 南京市政府が受け取る汚水処理費用の不足額は年間、3億元。政府だけが資金を投入する独占経営では、市が実際に必要としている1日の汚水処理能力190万トンを達成するには10年以上かかるが、社会資本を大々的に導入すれば、23年で達成できる。南京市政公用局の薜楽群局長はこうした例を挙た上で、「実際、公営企業にとって、外資導入よりさらに重要なのは、制度の導入だ。国外の大企業との協力を通して、先進的な管理技術や経験を学び、現代的な企業制度をさらに完備させて、公営企業の競争力を高めることだ」と指摘する。

 深セン市体制改革弁公室の楊進軍主任は「公共事業は営利を目的とするのではないが、利益が無ければ外国の投資家は参入しない。従って、政府や企業、市民いずれもが耐え得る価格メカニズムを確立することがカギとなる」と強調する。

 このため、深セン市は今回の国際入札で、外資を低コストで“ハードル”の高い公共事業の分野に入らせ、外資が受ける利益の範囲と空間を拡大させることにした。

 南京市では公共事業への外資導入に当たり、当面の銀行金利の水準などの要素を考慮し、また国の産業政策の要件に照らして、外資の利益率を10%以内(国内資本は8%)に抑えることにした。

 薜局長は「公営企業を開放して外資など社会資本の公共施設建設への参与が許可されて以降、過去の単なる財政で補填するといった状態ななくなり、これによって実質的に市民の税金を節約することができた。市場競争という環境が整備されるに伴い、市民もサービスや価格などでより多くの恩恵を受けるようになった」と話す。

監督の強化

 中国人民大学中国経済改革・発展研究員の黄泰岩教授は「社会資本と外資が公共事業に参入すれば当然、競争は厳しさを増していく。だが、政府はやはり、公共の利益を擁護する責任、即ち、公共サービスの質を改善し、市民により多くの恩恵を受けさせ、公営企業が最大の利益を追求することで幅広い市民の切実な利益が侵害されるのを防ぐ責任を担っている」と指摘する。

 李司長は、公共事業市場を段階的に開放していく一方で、市場の監督を強化する考えを示した。

 深セン市は8業種で対外開放を先行実施するのを受けて、各主管機関は具体的な監視監督条例を定めている。

 条例は(1)いかなる企業の行為も関係する措置や要件に合致するとともに、応札する際になした確約を実行しなければならず、みだりに価格を吊り上げまたは費用徴収を乱用した場合、政府は契約を取り消し、停止する権限を有する(2)企業が価格調整を行う場合、調整案を先ず政府の主管機関に報告し、物価関連機関が審査・認可し、市民も監督し異議を申し立てることができる(3)定価は市場が決定し、一般に入札前に、政府はその業種についてコスト査定を行うとともに、価格公聴会を開催し、企業の利益取得率を抑制する―――などと規定している。

 給水やガス供給など民生にかかわる特殊な業種について、薜局長は「すべての公共企業は供給確保とサービス、安全を第一の確約として経営していかなければならない。同時に、各業種の管理機関も、確約に違反した企業を速やかに処分し、市民の正常な生活に支障が出ないようにするため緊急対応策を準備しておく必要がある。