中国のWTO加盟1周年――開始時はいいが、
任重くして道遠しである

 中国のWTO(世界貿易機関)加盟1年余り以来の態度について、新任のWTO事務局長のスパチャイ氏は、中国はWTO加盟後に大きな努力を払ったと見ている。中国がこれまでやったことはすべてWTO加盟時に行った約束に合致する。中国対外貿易経済合作部の石広生部長は、1年来の開始段階は平穏であったが、良好な開始は成功の半分でしかなく、中国は依然として長期にわたって応対する準備を整える必要があると述べた。

 20011211日に中国がWTOに正式に加盟してから今まで1年の時間がたった。漸進的かつ大きいと見られるこの変革の中で、中国は厳格にWTO加盟時に行った約束に基づいて、関税を大幅に引き下げ、各種の非関税措置を削減した。中国はまたサービス貿易分野の開放を速め、知的所有権に対する保護をいっそう強化し、WTOに対する通報・諮問義務を真剣に履行している。

 中国がルール遵守を約束し、市場をいちだんと開放したため、中国の対外開放は新たな段階に入った。今年の1月から10月までの中国の輸出入総額は50026000万ドルで、19.7%増え、そのうち輸出は26249900万ドル、輸入は23776200万ドルで、それぞれ昨年同期より20.6%、18.7%増えた。外国投資家の対中国投資は持続的に増加し、1月から10月までに中国が実際に導入した外資額は4644000万ドルで、昨年同期より19.65%増え、契約ベースの外資導入額は765億ドルで、昨年同期より34.87%増えた。2002年上半期のサービス業の全国新規増加外資総額だけでも102億ドルに達し、外資導入総額の4分の1を占めている。外資の中国進出は、外国投資家にリターンをもたらし、同時に中国に経済発展と新たな就職のチャンスをもたらしている。WTO加盟1年来の情勢はすでに中国と世界がともに利益を得る局面を立証している。

 中国のWTO加盟1年来の態度に言及して、新任WTO事務局長のスパチャイ氏は次のように指摘した。中国がWTOに加盟した後大きな努力を払った。ここ1年来、中国はWTOのルールに基づいて自国の多くの法律を改正し、中国の一部の省、自治区も貿易政策メカニズムを改革し始め、タイムテーブルよりも早く市場開放の改革を完成した者さえある。中国のWTO加盟後の各国との貿易額は急に増している。スパチャィ氏は、多くの国は中国がより多くの情報を提供する必要があることを提出しているが、「私は、中国が今までやったことはすべてWTO加盟時に行った約束に合致すると見ている」と述べた。

 前任WTO事務局長のムーア氏は「中国は自分の約束をよく履行し、責任感のあるメンバーだ」と述べた。EUの通商担当執行委員のラミー氏は10月に北京を訪問し、中国はWTO加盟時に行った約束を履行する面ですでに重要な一歩を踏み出したが、透明度を高める面でなおもより多くの努力を払う必要があると述べた。

 中米商業会議所のクリス・マーク会長は、中国が約束を完全に守っていないところがあるかもしれないが、技術と実践の面に多くの困難があるとはいえ、中国の中央政府は現在そのWTO加盟時に行った約束を履行する決意をかなり固めていると見ている。

 中国最初のWTOと地域経済協力を専攻して博士号を取得した劉光渓氏は次のように述べた。WTO加盟により、われわれは本当の政府機能転換、産業構造調整とは何かがわかるようになり、大貿易の概念で企業の貿易ルートを切り開き、WTOのルールを利用して企業自体の権益を合理的に保障、保護し、反ダンピングおよびその他の保障措置を利用し、世界と平等に対話することを覚えた。それと同時に、計画経済による束縛、官僚主義と権力経済がなくなった。われわれは完全に新しい態度でWTOに応対し、思惟の方式を変え、法に依る行政を行うべきであり、市場経済を中国の現段階における体制改革の目標と見なさなければならない。

 中国対外貿易経済合作部の石広生部長は次のように述べた。各方面の応対活動が十分かつ有力であるため、WTO加盟1年近く以来の開始段階の状況は平穏であったが、WTO加盟の中国経済発展に対する影響は長期にわたるものであり、中国は依然として長期にわたって応対する準備を整える必要がある。良好な開始は成功の半分でしかない。どのようにチャレンジをチャンスに変えるかについては、今後依然として一歩一歩しっかりとやる必要がある。

積極的に応対する

 WTO加盟後、中国はWTOの約束を実行する決心をはっきり示している。1年来、中国では政府から民間、中央から地方、機関から企業に至るまで、「応対」のために大量の仕事をした。

 20022月、中央の配置に基づいて、各部・委員会、各省・直轄市は中・高級指導者のWTO研修を重要な仕事としてそれに力を入れ、全国で各クラスの公務員に対しWTOのルールについて講習を行った。

 中国は行政体制改革の推進を加速し、幹部の訓練に力を入れている。中央と地方政府は行政審査・認可の改革に力を入れ、政府機能の転換を加速している。11月初め、国務院は789項目の行政審査・認可項目の取り消しを決定した。

 中国はWTOの定めた諸権利を運用して中国の利益を守り始めた。WTOのルールと規定に基づいて、輸出面の反ダンピング、輸入面の反ダンピング、保障措置、技術障壁などを含む内外経済貿易紛糾を善処している。WTOの紛争解決メカニズムを通じてアメリカの「201」鉄鋼保障措置との貿易紛糾を解決している。中国はその他のWTOメンバーに対する貿易政策の審議に積極的に参与し、一部の国とそのWTO加盟についての二国間交渉を行い、多国間メカニズムを通じて二国間経済貿易関係の発展を推進する問題を解決している。

 中国はまたWTOとの新しいラウンドの多国間貿易交渉に積極的に参与している。前後して20余りの交渉グループをジュネーブに派遣して交渉に参加させている。中国は貨物、サービス、知的所有権、農業などの主要な議題の上で提案を行い、中国が新しいラウンドの交渉に対する観点と立場を適時に表明し、発展途上国メンバーの支持を得た。

 20029月、「対外貿易経済合作部WTO諮問ネット」が正式に開通した。このウェブサイトは中国唯一のWTO事務についての政府ウェブサイトであり、観点が政府を代表する、情報量が大きい、情報源が権威的で的確である、政府と商工業界に相互促進を保たせるなどの特徴をもっている。このウェブサイトの開通は中国がWTOに加盟した際に約束した諮問提供の義務をよりよく履行する積極的な措置でもある。中国政府のWTO諮問提供の重要な窓口として、このウェブサイトは中国のWTOについての知識とルールの普及をいっそう推進し、対外貿易政策の透明度を高め、企業と個人の経済貿易政策の研究と理解の便利をはかる上できわめて重要な役割を果たしている。

 中国が多くの有効な応対措置をとったため、WTO加盟後に、中国の農業、サービス業、自動車など業界の市場がいちだんと開放された後、全般的な運行情勢は良好である。農業は平穏な発展を実現した。金融、保険、証券、電信、物流などのサービス貿易分野は対外開放を秩序だって推進し、これら分野の改革と発展を促進した。自動車工業の再編と技術グレードアップのプロセスは往年より著しく速くなり、上海自動車製造工場とゼネラル・モーターズが再編し、第一自動車製造工場はトヨタと合弁し、東風と日産は全面的に協力するなど内外の自動車産業界の「双方に有利な」局面が現れ、中国の自動車工業の構造調整と競争力増強を促進した。報道出版界もWTO加盟後の新しい情勢に適応して調整を行い、現在、中国はすでに7つの出版グループ、5つの発行グループ、38の新聞グループの創立を認可した。そのほか、航空業は再編を経て、新しい三大航空グループが誕生した。電信業は再編を通じて、独占を打ち破り、競争力を強めた。WTO加盟後、中国の対外開放は新たな発展段階に入った。

約束を遵守

 中国の交渉代表は1年前にドーハで次のように表明した。中国がWTO加盟のために長期にわたって努力を傾けてきたことは、中国の改革深化と開放拡大の決意と自信を表明するものである。WTO加盟後、中国は権利と義務のバランスを踏まえて、権利を享受すると同時に、WTOのルールを守り、約束を履行する。

 2002917日、WTO知的所有権理事会は中国がWTO加盟以来「貿易と関係ある知的所有権協定」と加入議定書の中の約束についての状況を審議するとともに、積極的に評価した。審議する前に、中国は中国の知的所有権についての法律と法規を含む14項目の通報をWTOに提出し、アメリカ、EU、日本、オーストラリアなどWTOのメンバーが書面で中国に提出した101の質問に回答した。WTOのメンバーは中国が知的所有権の面で収めた成果、特にWTO加盟以来約束を履行するために払った努力を積極的に評価した。

 年初から今までの間に、中国は5300余りの税目の商品の輸入関税を引き下げ、関税の全般的レベルを15%から12%に下げ、工業製品の平均税率は14.7%から11.3%に引き下げ、農産物(水産物を含まない)の平均税率は18.8%から15.8%に引き下げた。中国は食糧、羊毛、綿花、化学肥料など8種の生産物の製品の割り当て額、許可証、特定入札管理を廃止した。

 約束に基づいて、中国はWTOのルールと一致しない一部の法律、法規を改正、廃止した。同時に、一部の新しい法律、法規を相継いで制定した。そのうち「中華人民共和国反ダンピング条例」、「中華人民共和国反補助条例」、「中華人民共和国保障措置」は200211日に施行された。それと同時に、行政による独占がちくじ打破され、電信、航空、電力が多くの面で、解体、競争がひっそりと行われている。税制改革を通じて、内資と外資企業の流通税制を統一し、外資企業に対する高い費用徴収を廃止し、外国人向けの航空券、乗車券、乗船券、入場券、公共施設使用の2重料金基準を廃止した。

 それと同時に、特許法、商標法、著作権法およびIC(集積回路)配置設計保護条例など相応の法律と法規を全面的に改正した。約束を履行して、国内の法律と法規をWTOのルールに適応させるため、中国は渉外経済の法律と法規を真剣に整理、改正した。国務院の30近くの部門は合わせて約2300部の関連法律文書を整理し、そのうち廃止したものは830部、改正したものは325部であった。各地方が関連法規文書を整理する仕事も、中央の要求に基づいて着実に推し進められている。

市場をいちだんと開放

 WTO加盟後、中国は最恵国待遇と内国民待遇の原則およびサービス貿易のちくじ開放の約束を守らなければならない。関税をちくじ発展途上国のレベル(2000年の15.6%から2005年の10%前後に)にちくじ引き下げ、輸入製品に対する非関税措置をちくじ減少、廃止し、WTOの原則と抵触する法律、法規、規則を廃止し、実施を停止し、対外貿易管理体制を改革し、統一した、透明な対外貿易政策を実施し、WTOの関係審議を受け入れる。これらのすべては大量の仕事をしなければならないことを意味している。WTO加盟後の2年目は依然として真剣に応対し、チャレンジをチャンスに変える必要がある。

電信 取り決めに基づいて、WTO加盟後の2年目に、中国は移動通信、固定電話などの基礎電信サービスの開放順序と段階の面で、1年目よりさらに開放し、開放する都市は3市から14市に増え、外資の株主権比率も25%以下から35%以下に高められた。静観から探りを入れて進出する1年目を経たあと、2003年は多くの外資が合弁公司の設立および業務展開など実質的な活動を始める年となるだろう。

 銀行 中国人民銀行はこのほど、2002121日から、広州、珠海、青島、南京、武漢にある外資金融機関に人民元業務を開放すると公表した。四大国有の商業銀行も、外資を含む民間資本に開放する。

 保険業 3年内に全面的に開放する。来年はますます多くの外資企業が経営許可証を獲得し、支店の開設を認可される。現在、認可を経て中国市場に進出して営業するか、営利的機構の設立を準備する外資保険会社は34社に達し、これらの企業は今後12年内に営業を始める。約束に基づいて、中国がWTO加盟後の2年内に、外資生命保険会社、非生命保険会社が北京、成都、重慶、福州、蘇州、厦門、武漢、天津などでサービスを提供することを認められる。

 小売業 すべて繰り上げて開放することはない。2003年、外資は買収の形式で中国に進出する。そのほか、外資は出版物の代理販売分野に入ることが認められる。

 対外貿易 外国業者が少量の株式を持つ合弁企業は全面的な輸出入権を獲得することができる。

 観光業 WTO加盟後、観光業は最も急速に開放する業種となった。現在までに、全国に11社の合資旅行社が誕生した。国家観光局観光促進国際連絡司の沈蓉司長は次のように述べた。中国観光業の対外開放は絶えず拡大され、条件が理想的であれば、WTO加盟時の約束をいちだんと繰り広げて実現し、外資が独資旅行社を試験的に設立するのを認めることを考慮してもよい。「遅くとも20051231日までに外国業者による独資旅行社設立を認める」という約束は2003年に繰り上げて実現する可能性がある。

 工業 来年の初めに中国の全般的な関税水準はさらに11%にまで引き下げられる。輸入商品の価格は引き続き下がる可能性がある。来年の腕時計、カメラなどの商品の割り当て制限が取り消され、自動車、精製油、天然ゴムなどの商品の割り当て量は15%増え、農産物、化学肥料などの関税割り当て商品の割り当て量も15%増える。それと同時に、サービス貿易分野も開放のいちだん拡大に直面する。

 自動車 来年輸入車の関税は依然として引き下げられるが、幅は今年より小さくなる。しかし、国内の金融分野の開放度が大きくなるため、外資の自動車ローンはサービスと市場に衝撃を与えるだろう。

表一 WTO加盟時に約束した2年目の市場のいちだん開放の略表

電信

地域は成都、重慶などの14の都市にまで広げることができる。附加価値と呼び出し業務の持株量は30%から49%に増え、移動話し声とデータサービスは25%から35%に増える

保険

中国の再保険公司が強制的に扱う法定再保険の比例は、5ポイント下がって20%になる

小売

すべての地域、数量、外資持株比率の制限は取り消される

輸送

道路輸送、倉庫貯蔵、貨物輸送代理公司がいずれも外国側の持株を認める。EMSは外資が大多数の株主権を占めることができる

銀行

中資企業に人民元業務を提供し、人民元業務を広州、珠海、青島、南京、武漢など9都市に広げることができる

法律

すべての地域と数量の制限を廃止する

対外貿易

外国業者の少量の株式を保有する合弁企業は全面的な輸出入権を獲得することができる

 

表二 WTO加盟後の1年間の10大業種のメルクマールとなる出来事

対外貿易

鉄鋼貿易は「最初の戦争」が始まった。2002314日、中国政府はWTOにアメリカが鉄鋼輸入制限の「210条項」の始動開始についてアメリカと協議することを提出した。627日、中国の鉄鋼業界産業損害早期警報メカニズムが正式に始動し、最初の重点的モニタリング製品は合計10種類、42税目である。9月初め、一部の鉄鋼製品保障措置の産業調査公聴会が開かれた。

銀行 

「寝返り」はレベルの高い取引先の争いを誘発する。20023月、南京エリクソンパンダ移動通信設備公司が中資銀行の交通銀行、工商銀行、中国銀行などに合計199000万元の貸付けを繰り上げて返済し、代わりにシティーバンクから同様に多額の金を借り入れた。そのため、この事は中国がWTOに加盟してから内外の銀行が激しく競争することを示す出来事となった。

農業

ダイズ、ニンニクは焦点となった。2002320日、中国の新しい法規である「農業遺伝子組み換え生物輸入安全管理規則」はその日から、中国にすべての遺伝子組み換え生産物を輸出する会社は中国農業部に、これらの生産物が人畜および環境に無害であることを証明する証明書を申請しなければならない。

民間航空

民間航空の再編は終わった。20021011日、中国民航運輸およびサービス保障グループ公司は設立大会を開き、民間航空の再編はついに終わった。民間航空の再編は、中国のWTO加盟後に民間航空が国際競争に直面して必然的に選ぶ方法である。

電信

中国の電信は南北に分離した。2002516日、中国電信はついに二つに分かれ、独占時代にピリオドを打った。国家情報化指導グループの画策に基づいて、元中国電信は北部の10(自治区、直轄市)の電信公司を中国ネット通信グループに分け与え、自ら南部と西部の21(自治区、直轄市)を保留したが、元中国電信のすべての無形資産を享有する。全国の長距離ネットは3分と7分に分け、中国ネット通信グループは3分を占め、中国電信は7分を占める。

IT

中国のネット株は好転している。三大ウェブサイトが10月から11月にかけてそれぞれ発表した最新財務レポートは、投資家の自信をいっそう強めた。

小売

外資の小売巨頭は北京に集まった。外資小売業巨頭の中国での開店は噴出期に入った。今年の外資小売企業の合弁公司設立申請が非常に積極的であり、国家経済貿易委員会はカルフール、オーシャン、イギリスのB&G、日本のジャスコおよび中国台湾地区の統一グループ、香港特別区の華潤グループなど8社の合弁小売り公司を認可し、これらの公司は28軒の店を開設する。

保険

最初の独資生命保険会社アシュランスが北京に進出した。200267日、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)傘下の独資子会社――アシュランス生命はついに北京に支店を開設し、最初に北京に進出する外国独資生命保険会社となった。

自動車

中韓協力による北京現代自動車公司が発足。20021118日、北京現代自動車有限公司が正式に発足した。これは中国がWTO加盟してから認可した最初の自動車生産分野の合資プロジェクトである。登記資本は18億元で、中韓はそれぞれ50%を占め、合弁期限は30年。

家電

DVDは特許権の試練に直面。10月、中国のDVD企業は再び3C同盟とDVDを一台輸出するごとに5ドルの特許料を納めることで合意に達した。国内販売のDVDの特許料の交渉は最近すでに始まり、6C3C1CMPEGなどの特許企業は一台13ドルの値段をつけた。