就職面で「厳しい冬」に出会う大学卒業生

---今年の大学卒業生が激増し、就職のプレッシャーが大きくなっている

                       馮建華

 「卒業(7月)が近づいているが、就職がまだ決まっていない、夜もおちおち寝れない」と北京商工大学法律学部4年生の王海林さんは語った。法律学科は今でも人気のある学科の一つであるが、だれもが気に入った仕事を探せるわけではない。というのは、今年が中国の大学が1999年に学生募集人数を増加したあと本科卒業生(4年制)が就職市場に殺到する最初の年だからである。ここ数年、大学卒業生の就職は以前のように容易なことではなくなった。

 次の1組の数字を見ていただきたい。2002年の大学卒業生は145万人であったが、2003年は212万人に達し、前年より67万人(本科生は27万9000人)増え、伸び幅は46.2%に達した。求人面から見て、昨年と比べて、今年は明らかに増える傾向がないだけでなく、2002年末現在、仕事をまだ探せない前期の卒業生はなおも14万人近くいる。

 中国は都市部の新たに増えた労働力の就業、農民の出稼ぎ、一時帰休者と失業者の再就職の局面に直面している。このため、大学卒業生の就職状況は一層厳しいものになった。

 権威あるデータが示しているように、2002年10月中旬現在、中国の失業者総数は約800万人であり、2003年から2005年までの3年間に、中国の労働力は年平均800余万人新規増加し、毎年就職を解決してやる必要のある都市部の就職希望者数は約2300万人に達し、就職希望者数は求人数より1500万人も多く、そのうち、2003年に北京市の就職できない人が26万4000人に達すると予想されている。

 1月22日、中国教育部大学生司の林恵青司長は記者会見の席上で、今年の大学卒業生の就職状況は楽観を許せず、社会各界はこれを高度に重視しなければならないと語った。

職探しは本当にうんだりする

 「求人会に参加するのは列車に乗ることよりも疲れる」。中国人民大学国際経済貿易学部4年生の連智峰さんは求人会に何回も参加した経験に触れてこう語った。

 昨年11月、連さんはさまざまなやり方で20部以上の求職略歴を出したが、最近やっと地方のある部門の面接の通知を受け取った。まもなく行われる北京市機関の公務員試験に参加するつもりである彼は、いろいろ考えた末、容易には得られないこの面接の機会を放棄するよりほかはなかった。

 連さんは毎月200余元を出してパソコンを借りてきて、インターネットを通じて求職情報を調べたり、個人略歴を出したりしているが、気に入った職場をなかなか探せない。連さんによれば、クラスメートの多くも彼と同じような状況である。

 求人部門によい印象を与えるため、連さんは1500余元を使っておめかしをした。これらの余計な出費は必要である。満足できる仕事を探せるなら、そうする値打ちもある。金は家に一部を出してもらうほか、借金やアルバイトで稼いだ金もあると連さんは語った。

 この最もよい時期に仕事を探せなければ、今後はいっそう難しくなる。クラスメートが仕事にありつけたのを見ると、連さんはますますいらいらするようになった。

 今年に卒業する広東工業大学コンピューター学部の大学院生の王?海さんは次のように語った。

 求人会に何回も参加したが、高給の仕事を探せる望みがないだけでなく、普通の仕事もなかなか探せない。

 就職の情勢は私の想像よりもはるかに厳しいものである。今では、職探しのことを思うと、うんざりする。本当に自分の就職を心配している。このような現実を前にして、博士コースの試験を受けざるを得なくなる。こうすれば、就職の圧力をさらに3年先に延ばすことになるが、なんと言っても失業や好きでない仕事をするよりよいと思う。

総合的要因が大学生の順調な就職を制約

 大学の学生募集増加が就職ポストの増加より速いことは、確かに大学卒業生の就職に大きなプレッシャーをもたらした。しかし、大学卒業生の就職難はすべて大学の学生募集増加によるものではなくて、総合的要素によるものである。

 教育専門家の魯欣氏は次のように語った。グローバル経済と融合する中国では人材は依然として足りないのであり、学生募集人数を増加しなくても、若い人たちは同様に就職面で自らの位置を探さなければならない。

 権威ある資料が示しているように、中国の大学教育を受ける人数が全国人口に占める比率は約5%しかなく、先進国よりはるかに低いものである。これはもう一つの側面から、大学卒業生の就職難は表面的な人材過剰現象にすぎないことを物語っている。これに対し、中国社会科学院社会保障研究室の唐軍さんは、これは主に一部の大学が市場ニーズの変化を見ないで盲目的に学生募集人数を増加することと大きな関係があると語った。

 一時期以来、会計学科が中国の市場で歓迎されたため、多くの大学は能力を顧みずにこの学科の学生募集人数を増加し、増加幅は年平均200%以上に達し、市場ニーズが急速に飽和状態に達したため、これら「人気学科」の学生を待っているのは就職難と失望でしかなくなった。

 雇用部門から言えば、雇用の観念は以前の高学歴しか重視しないことから学生の実際能力を重視することに変わった。しかし、中国の大学教育は一般には受験教育、学歴教育を重視し、学生の職業資質、実際能力の養成はまだ不十分である。これによって、一方では求人部門は適格の大学卒業生を招聘するのが難しく、他方では大学卒業生は仕事を探せないという「悪循環」に陥っている。

 北京市大学卒業生就業指導センター就業推薦部の齊雲志主任の分析によると、同センターは6239人の学生の個人求職資料の中から200件を取り出して分析した結果、80%以上の求職資料が要領を得ていないことを発見した。そのうち、紹介する必要のある34項目の基本的状況の中で、6項目以上欠けている求職資料は総数の93%を占め、10項目以上欠けている資料は36%を占めている。これは大学卒業生の総体的な職業意識がわりに低いことを示し、自身の順調な就職をある程度を妨げている。

 大学卒業生の就職の目標があまりにも集中しすぎ、分布がアンバランスなことも、一部大学卒業生に人為的に就職難をもたらしている。地区の面では、大学卒業生の求職地区は主に経済が発達している北京、上海、広州、深センおよび東南沿海地区の大中都市に集中しており、経済がまだ発達していない地区や県、町、農村に行く人があまりにない。部門の面では、政府機関、外資企業、大手企業は卒業生が真っ先に選ぶ対象であるが、中小企業に対しては排斥する心理を持っている。大学卒業生がこのような選択をするのは、給料と関係があるほか、重要なのは後者よりも前者の方がより安定した福祉と職業の保障を提供できるからである。

 そのほか、大学卒業生が給料に対する期待が高すぎることおよび現行の人事制度と戸籍制度などの要素も、ある程度学生の順調な就職を妨げている。

各方面から大学生の就職を援助

 大学卒業生が直面しているこの厳しい就職の情勢は、政府の関係部門の重視を引き起こした。これらの部門は大学卒業生の就職問題が社会にもたらす衝撃とプレッシャーを取り除き、学生に厳しい就職問題を順調に解決してやるため、いまよい方法を探している。

 最近、中国教育部は大学生の就職ルートを広げるため、6項目の特別措置を制定した。これらの措置には、省都以上の都市が卒業生を受け入れるため戸籍制限を最大限にゆるめ、省都と省都以下の都市が卒業生に完全に開放すること、大学卒業生就職指導・サービス機構を設置し、完全なものにし、当年の卒業生500人ごとに少なくとも1人の専従の就職指導教師を配備し、卒業生就職情報の監視快速反応システムを確立すること、卒業生が末端部門、中小企業、西部地区に就職することを奨励、支持し、西部地区に就職する原籍が中部・東部地区にある卒業生に対し行き来自由の政策を実行することなどが含まれている。

 林恵青司長の説明によると、教育部は国、地方、大学の三方面から学生募集、養成、経費、就職が互いに結び付き、促し合うというマクロ運行メカニズムを構築し、大学教育事業の発展規模、課目設置、大学運営レベル、品質評価の就職の情勢・状況と適当に結び付け、大学が社会のニーズと就職市場の変化に基づいてすかさず構造を調整し、教育の質と大学運営のレベルを高めるように導くという。

 同時に、地方の各クラス政府と大学も大学卒業生のために良好な就職環境をつくり出している。先日、上海市は中国初の大学卒業生就職工作協会を設立し、上海市の大学卒業生の就職工作に対し統一的に協調を行っている。安徽省は学生の授業料の2%を各大学に分けて就職工作特定経費として、もっぱら卒業生の就職解決に用いている。復旦大学、吉林大学などの大学は次々と就職指導教学研究室を設立し、卒業生の就職指導を特別課目としている。就職していない大学卒業生に一定の経済力をもって職探しを続けさせるため、広東省は末就職大学生保障金制度の設立を考慮している。 

 齊雲志主任は次のように語った。社会各界が高度に重視しているため、往年と比べて、今年の就職政策と環境はよりゆるいものになっている。その他、中国経済は依然として成長の勢いを呈しており、労働力に対する吸収能力になおも開発の潜在力がある。そのため、今年の大学卒業生の直面する全般的な就職情勢はわりに厳しいが、それを恐れる必要がなく、心理状態をちゃんと調整し、正しい就職観を持ちさえすれば、自分を養うことのできる仕事を探すのはそれほど難しいことではない。