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「フセイン政権打倒」の中の反戦の声
――持続の時間、影響の範囲、発展の趨勢から見て、これはベトナム戦争反対の平和運動の後、アメリカで起こった規模が最も大きく、組織が最も厳密で、影響力が最も大きい全人民の反戦運動である。 葛瑞明(平和と発展研究センター)
アメリカ政府と国会が共和党に握られており、民主党の対イラク政策も共和党のとわりに一致しているため、ブッシュ政権の戦争をするための活動が権力に阻止されることがないであろう。反戦運動を推進している各種の勢力は政党の背景やその他の政治的要素があまりなく、より大きな自発性と民主性を持っている。反戦組織は、ベトナム戦争の時のように、アメリカの兵士が戦争で大量に死傷してからやっと立ち上がって戦争に反対してはならず、戦争を阻止するのは自己を救助するためであると強調している。これは行進の時にまいた宣伝ビラの中で書いているように、「アメリカ国会が民衆の願望を顧みないため、(戦争に反対するため)われわれは自ら行動するほかはない」のである。それと同時に、ブッシュ大統領とその主要な幕僚の対イラク政策は反戦運動の主な批判対象となっている。アメリカで行われたさまざまなデモ行進の中で、「われわれの名義でイラクを攻撃してはならない」、「爆弾を投げるな、ブッシュを捨てよう」が最も流行するスローガンの1つとなっている。 この反戦運動の中で、行進、座り込み、デモ、集会、講演などの伝統的な形式は、依然として歓迎されているが、これらの大規模な反戦活動が主としてインターネットとeメールを通じて組織、動員された点が違っている。例えば、1月18日のアメリカの反戦大行進を組織した「ただちに行動して戦争と人種差別主義を阻止しよう」(A.N.S.W.E.R)という反戦組織はより多くの参与と支持を求めるため、ウェブサイト(Internationalanswer.org)を通じて今年2月13日から21日までの「反戦活動週間」の全計画、スローガン、宣伝ビラを公布した。インターネットの即時性と非独占性は、反戦活動を組織、発動する主要な通信と連絡手段となり、これは最も便利、快速、安全な手段でもある。一方では、多くの活動計画、行動路線、演説・報告、宣伝ビラ・ポスターはPDFの形でネット上で速やかに広く伝わり、人々のダウンロードと伝播に供している。他方では、インターネットを通じてより自由で、より直接に意見を発表し、それによって新聞・雑誌、テレビなどの在来のメディアの経営者たちの政治的偏見の妨害や改ざんを避けることができる。注意すべきなのは、インターネットが単に言論、態度、見解を発表する場所であるだけでなく、抗議行動を行う有効な武器でもある。たとえば、ある反戦組織はインターネットで一部の政府部門、国会議員のウェブサイトの暗号、電話、ファックス、eメールを公布し、人々がネット上から用意した抗議書簡をダウンロードして郵便物による「爆撃」を行い、「雪片のような郵便物とファックスを官吏たちの郵便箱にいっぱいに詰め込む」よう呼びかけた。そのほか、反戦組織はまたインターネットを通じて各自のホームページをリンクして、世界各地の反戦活動の詳しい情況を速やかに伝播し、声援を獲得している。
しかし、規模が大きいとはいえ、今回の反戦運動の影響力は限られたものである。一方では、アメリカ国内の状況について言えば、目下、反戦の情緒が民意の主流であるとは言えない。アメリカのケーブル・ニュース・ネットワーク、『USAトゥデー』、ギャロップ社が最近行った民意調査の結果によると、アメリカでは73%の人が武力でイラクのフセイン大統領を覆すことを支持するかあるいはどちらでもよい態度を示し、反対の態度をとっている人たちのほとんどが国連から権限を授けられないでイラクを攻撃することに反対している。そのほか、共和、民主の2党の空前の一致も反戦運動の社会的動員に不利な影響を及ぼしている。同時に、アメリカが2回連続して死傷者ゼロの戦争をした後、戦争の残酷さに対するアメリカ人の認識がすでに冷淡になった。他方では、現在、国際では反戦運動に対し一般には傍観的態度をとっている。以前の経験が表明しているように、フランスは始めはアメリカに激しく反対したが、最後にはやはりアメリカ側に立った。このような変化はもともとアメリカの武力行使に反対したカナダ、イタリアなど一部の国で起こりつつあるかすでに起こっている。そのため、国連はアメリカあるいはイギリスが安全保障理事会の議長国を担当する時にアメリカの対イラク攻撃を批准する可能性があると見ることができる。 疑いもなく、新しいラウンドの反戦デモ運動の発展はブッシュ政権に対する圧力となるが、目下の規模と影響力ではまだアメリカの既定の「フセイン政権打倒」の政策を変えることができない。ブッシュ政府のフセイン政権を覆す考えは、中東地域の枠組みを改め、石油供給を獲得する必要から出たものでもあれば、2004年の総選挙の時に功績を立てる考慮から出たものでもある。目下、アメリカの兵士と兵器装備は相変わらず続々と湾岸地域に輸送されている。そのほか、イギリス、オーストラリアなどアメリカ同盟国の軍艦も湾岸地域に集結している。現在、戦争に対する国際社会の判断はするかしないかではなくて、早くするか遅くするかの問題である。 そのほか、新しいラウンドの反戦運動の中に人々を心配させる商業化の趨勢が現れている。例えば、報道界が反戦行動を報道する原動力は国際正義から出たものではなくて、商業の目的から出たものである。1991年の湾岸戦争の時に、CNNの成功を収めた経験は戦争と反戦行動のどちらを報道しても視聴率が下がるようなことがないということである。そのほか、各新聞、雑誌は続々とスペースをさいて広告を載せているが、それによる収入が少なくないのは当然である。たとえばアメリカの『シカゴ・トリビューン』が有名な反戦組織「荒野の声」のために掲載した反戦広告の費用は2万ドルであった。今年10月、ハリウッドの有名な映画スターと映画監督のシエン・パン氏が『ワシントン・ポスト』に載せた反戦広告は5万6000ドルかかった。インターネットは反戦運動に対し積極的な推進的作用を果たしているが、若干のeビジネスのウェブサイトは反戦の商売で大いに儲かっており、多くのウェブサイトは反戦用品店を開設し、反戦のポスターをコップ、Tシャツ、文房具、卓上カレンダーに印刷してネット上で販売し、さまざまな反戦書籍とビデオテープなども異常なほどよく売れている。事実上、一部の人は反戦を平和を求める道義の行動であると見るのではなく、クリスマスあるいはカーニバルのようなビジネスチャンスと見さえしている。商業化趨勢のマイナスの影響が一体どれだけ大きいかは、いまのところまだわからない。
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