リスクに対応する中国の石油

――中国は石油問題のもたらすプレッシャーを取り除くため、すでにさまざまな措置をとっているかまた
はこれからとろうとしている。

唐 穎

 最近、広東省のある石油を燃料とする発電所が石油価格の暴騰で破産に瀕しているというニュースが伝わった。30%の石油が輸入に頼る中国では、関連業種に対する国際石油価格上昇の影響とそれが誘発する一連の効果が引き続き突出している。

 今年1月、中国の貿易は輸入超過となった。輸入が急増する主な原因の一つは国際の原材料価格上昇で輸入額が急速に増加し、特に原油とその製品の価格上昇が際立っていることにある。そのほか、アメリカとイラクの戦争の勃発は中国の一部企業の直接利益に損害をもたらしている。

 今回の湾岸戦争は中国企業に、次のように注意を喚起した。これ以上以前のように、生産に没頭するだけで、国際問題と国際市場を見ないことができず、特に戦争あるいはその他の異常な事件のその利益に対する侵害に自ら進んで面と向かって、リスク防備メカニズムと総合対応メカニズムを速やかに構築し、国際経営リスクに抵抗する能力とレベルを高める必要がある。

石油の備蓄に着手

 中国社会科学院工業経済研究所研究員の趙英氏は「企業が現在直面している重要な問題は商業ベースで石油を十分に備蓄するかどうかである」と指摘した。

 世界の主な石油輸入大国のうち、中国は戦略的石油備蓄をまだ完全に確立していない唯一の国であるが、このような歴史は間もなく終止符を打たれるであろう。当面の国際情勢の背景の下で、同時に国民経済・社会発展の第10次5カ年計画(2001―2005)が提出した「国の石油戦略備蓄を確立し、国のエネルギーの安全を守る」という目標に基づいて、中央政府が国の戦略的石油備蓄を確立するほか、正常な生産の必要を満たすため、少なからぬ関連企業も正常な回転在庫のほか相応の商業ベースの石油備蓄を確立、増加するとともに、国の戦略的石油備蓄に対する重要な補充としている。伝えられるところによると、現在中国の企業はすでに2000〜3000万トンの石油を備蓄する商業ベースの在庫能力を備えているという。

 中国石油化学工業グループ公司はこのほど、自社の商業ベースの備蓄倉庫で国の石油戦略備蓄タンクの前期工事をこっそりと始めた。4月、工事建設は全面的に展開する。現在、国内の中型油田の平均年産量は300万立方メートルであり、この工事により、中国石油化学工業グループ公司はほとんど一つの中型油田を備蓄したのに等しい。

 伝えられるところによると、中国石油天然ガスグループ公司も200万立方メートルの石油タンクを建設する予定であるという。

多元化を目指す

 石油備蓄の豊富な地域のほとんどが不安定な状況の下で、中国の多くの企業が石油リスクを最小限に小さくする方法は石油製品の多様化とエネルギー供給源の多元化であり、単一の品種と地域への依存度を下げることである。中国石油天然ガスグループ公司、中国石油化学工業グループ公司などは多くの国と石油特許取り決めを結んでいる。同時に、南中国海の石油開発協力を強化している。南中国海には石油資源が235億トン、天然ガス資源が10億立方メートルあるといわれる。

 現在、中国と国外の多くの協力はますます割り前の石油をもらう方式をとることを望んでいる。つまり中国は現地の石油建設プロジェクトの中で株式に参加するか投資し、毎年プロジェクトの産出する石油の中から一定のシェアをもらうことである。比較的有利なのは、中国が手にするのが実物であるため、石油の輸入量は価格の変動の影響をあまり大きく受けるようなことがない。

 運送ルートの面で、当面、中国が中東とアフリカの石油を輸入するルートは主に海路であり、一定の戦略的リスクがある。そのため、一部の企業はすでにそれを意識し、別の方向から石油と天然ガスの運送ルートを発展させ始めている。たとえば、多くの国との石油パイプラインと天然ガスパイプラインの建設を強化するのがその一例である。

新エネルギーを開発

 国家発展計画委員会産業処の蔡栄華氏は「石油代替製品の開発は今後の中国の重要な戦略である」と語った。

中国科学院海洋研究所研究員の呉時国氏は新エネルギーである天然ガス水化合物の研究と開発に従事している。

 「天然ガス水化合物」は天然ガスと水が長く低温と高圧の下で形成された氷状の白い固体物質であり、海洋の大陸スロープの沈殿物の中と陸地の永久凍土地帯に広く分布している。その天然ガスの成分の多くがメタンを主とするため、「メタン水化合物」と呼ばれている。

 楽観的に推定して、全世界の水化合物の炭素量は10兆トン前後で、全世界の確認済み石油、石炭、天然ガスの炭素総量の総和に相当する。大陸スロープの沈殿物の中の水化合物は今世紀に石炭、石油、天然ガスの代替エネルギーになる可能性が極めて大きい。

 「ほかならぬ天然ガス水化合物が大きなエネルギー潜在力と環境効果があるため、世界各国の政府はその研究および関連技術開発を非常に重視している」。中国は1980年代末から天然ガス水化合物の研究に関心を持ち始め、現在、「われわれは急ピッチで仕事をしている」。

石油市場体系を確立、充実

 中国の石油リスクを解決する手段はたくさんあるが、一部の企業家は、そのうちできるだけ早く中国の石油市場システムを確立し、充実させることが非常に重要な一側面であるはずだということを意識し始めた。現在、中国の石油市場システムと市場メカニズムがまだまだ整備していないことは需給関係と未来に対する効果的な期待を外れさせ、中国の石油ユーザーは石油市場の安全でない隠れた危険を効果的に予見することもできなければ、危機の前で効果的な経済と市場手段をとって危機も取り除くこともできない。

 国家発展計画委員会エネルギー研究所所長の周大地氏によると、中国はただちに石油市場参入の管制を緩和し、石油の端末販売市場を自由化させ、科学的で近代的な石油市場を確立し、対外開放する前にまず国内に開放すべきである。一方では、政府は石油価格を自由化させると同時に、マクロコントロールメカニズムを構築し、市場の管理・規制権を真に握り、他方では、国内石油市場の地域的独占を打ち破り、市場主体を積極的に育成し、市場を開放、整備し、規範化させることから着手して、市場ルールを制定し、合理的で、秩序だった競争の枠組みを形成する。それと同時に、その他の社会資金が石油流通分野に流入し、健全で秩序だった石油市場をつくるように奨励する。これを踏まえて、石油の価格を自由化させ、中国自らの市場の競争的価格メカニズムを形成する。中国は世界で成長がわりに速い石油の消費大国であり、石油消費の品種の需要と地域の差別は非常に大きく、そのため、中国自らの石油取引市場とオファー系統の形成は重要な意義がある。

 全国政治協商会議委員、光匯石油グループ公司総裁の薛光林氏らの専門家は、中国の石油の現物と先物の取引市場を確立する必要があり、合理的な価格を見つけ、リスクを取り除き、需給を追跡し、市場をコントロールする目的を達し、安全で規範化した国内石油市場を確立するのを援助し、石油の生産、経営、消費を正しく導くよう呼びかけている。

 中国証券監督管理委員会先物部主任の楊邁軍氏は鄭州商品取引所理事会に出席した際、燃料油は市場化程度が高く、当面比較的成熟している石油先物の品種として、今年上海先物取引所で上場する見込みがあるとメディアに語った。