WTO加盟後の輸入の安全と輸出の障害

韓 孟  中国社会科学院経済研究所

中国はWTOに加盟して、いちだんと経済グローバル化の大きな流れの中に融け込み、各国との貿易往来が日増しに増え、輸入の安全と輸出の障害という二つの問題が際立って現れてきた。政府と地方および業界の情報伝送、輸出入の事前警告、防備処置などのメカニズムとシステムは構築、整備が待たれている。

輸入の安全

輸入の安全は食糧の安全、動植物の安全、生態環境の安全、農村生活方式の保障などを含む経済と資源の生態環境問題にかかわっている。そのうち外部からの動植物の侵入と生物技術リスクは当面非常に現実的な問題となっている。

(1) 外部からの動植物の侵入

2002年末、中国の多くの省・自治区・直轄市で相次いで南米アマゾン川流域に産出する人を食うマナガツオが発見され、人々の注目を引き起こした。人を食うマナガツオが中国南部の河川と湖沼に入れば、大きな生態災難をもたらすのを人々は憂慮している。

外部からの動植物の侵入は生物が原生地から侵入地に入り、経済的損失と資源生態の災難をもたらす資源生態経済の過程を指す。国内外貿易が日増しに頻繁になった今日において、中国は外部から導入された生物を享受し、自国の生物の種類を豊かにすると同時に、それによってもたらされるマイナスの影響をも高度に重視し、防備を強化しなければならない。

中国の国土面積が大きいため、侵入する生物による侵害を受けやすく、世界各地から来る大多数の生物は中国で適当な生息地を探すことができる。外来生物は植物、動物、微生物を含んでいる。現在、中国の森林、農業区、水域、湿地、草原、都市の住民区などほとんどの生態システムでは、外来生物侵入の現象が見られるが、そのうち水生生態システムの情況が最も重大である。

現在、中国には外部から侵入した動物の種類が37種あり、植物の種類が90種ある。例えば、1950年代、中国は水瓢をブタの飼料として導入して普及させたが、今では多くの地区の川や湖の中で氾濫し、水路を塞ぎ、水運、排水・灌漑および水産物の養殖に影響をもたらし、水生生態システムを破壊し、湖の水を汚染している。またここ数年食卓の上でたいへん人気のあるウシガエルはもともと北米で産出され、図体が大きく肉が多いため中国に導入され、食用の目的で飼育されている。中国の自然界に入ってから、その適応能力と繁殖能力が強く、食性が広く、天敵が少ないため、競争の強みを持ち、地元の動物に対し数量減少と絶滅の脅威を構成している。現在中国はそれを外部から侵入した生物に組み入れている。

外部から侵入した生物はすでに中国の生態環境、生物の多様性および社会、経済にかなり大きな危害をもたらした。政府の関係部門の見積もりによれば、外来侵入動植物がもたらした経済的損失は年平均574億元に達している。

しかし、他方では、中国は外国のトウモロコシ、トマト、羅非魚、紅マスなどの動植物の優良品種を成功裏に導入し、大きな経済的効果をあげた。動植物の導入には利もあれば害もあり、カギは科学的論証を行い、外来動植物の審査・認可手続きを規範化させることである。

中国は動植物輸入の面で、生態安全を確保する相応の法律と法規に欠けている。たとえば、中国には現在、人を食う魚の取引禁止に関する法律と法規がまだなく、中国の漁業法にも明確な規定がない。

 そのため、中国は外来動植物の侵入を防備する生態安全メカニズムを構築し、充実させ、それによって中国の生態安全を守るべきである。@関連法規を制定し、健全にし、外来動植物の安全管理を強化する。A高効率のモニタリングシステムを逐次確立、健全にする。B導入禁止外来動植物目録を公布し、外国から導入される動植物種類の識別、予防・治療の技術、リスク評価技術、リスク管理措置の面で訓練を強化し、導入された動植物の危害性についての宣伝、教育を強化し、防備意識を高める。政府は全国範囲内で外来動植物調査を展開し、その種類、数量、分布、作用を明らかにし、外来動植物データバンクをつくり、外来動植物が中国の生態システムと動植物に与える影響を分析し、生態システム、生態環境あるいは脅威を構成する外来動植物のリスク評価指標体系、リスク評価方法およびリスク管理プロセスを構築すべきである。

(2) 生物技術リスク

生物技術リスクは主に市場化の遺伝子技術製品の問題を指す。

遺伝子食品の安全性について、科学界ではずっと論争されている。関係専門家が指摘しているように、遺伝子作物の中の毒素は人の急慢性中毒、ガン、奇形、突然変異をもたらすことができるが、現在、遺伝子食品に危害性があることを表明する科学的証拠がまだない。

中国が輸入する遺伝子作物のうち、金額が10億ドルに達する大豆はアメリカから輸入したもので、総トン数は国産ダイズの総量に相当し、含油量が高く、値段が安いため、中国のダイズ加工企業とりわけ搾油メーカーの歓迎を受けている。2002年7月末、アメリカ農業相は初めて中国を訪問したが、その重要な使命はアメリカの遺伝子ダイズを中国に輸出する問題を討論することであった。アメリカが最近可決した農業補助法案に基づいて、アメリカ政府が農業に支出する金額は現在より80%伸びる。その時には、アメリカの遺伝子ダイズの値段は現在よりもっと安くなる。中国政府がどのようにして大豆を栽培する農民の利益を守り、同時にダイズ加工企業の利益を配慮するか、中国が遺伝子ダイズを研究、開発して市場のニーズに適応するかどうかおよび国際貿易紛争の解決などの問題が議事日程にのぼせられた。

現在、毎年2000万トンの遺伝子食品は中国市場に進出しているが、大多数の中国消費者は彼らの食べる食品が遺伝子食品であることを知らない。消費者の事情理解の権利を尊重する角度から考えると、関係方面は遺伝子食品に対してできるだけ早く強制的に標識をつける制度を実行する必要がある。

輸出の障害

中国のWTO加盟後の一年間に、「グリーン障壁」は農産物輸出が直面する最大の障害となった。例えば、EUが中国の動物の各部分を材料としてつくった製品に対し制限を実行している、日本が中国から輸入した野菜に対し検査を強化している、韓国とアメリカが中国からの水産物輸入に対し制限を強化しているなどがそれである。2002年以来、中国が先進国に輸出する農産物の中に農薬と獣薬の残留および重金属の含有量が基準を超えたため受入れをされたり、差し押えられたり、契約あるいは輸入を中止されたりする事件は史上の同期を大幅に上回った。国連の統計が示しているように、中国の農産物を含む輸出商品のうち、「グリーン障壁」のため受入れを拒絶されたものは74億ドルに達した。

長期以来、中国の労働集約型農産物はずっとわりと大きな強みを持ち、国際競争に参与する中で価格の面で明らかに有利である。今のところ、世界経済の不振によって保護貿易主義が台頭し、食品安全の問題は先進国が中国の農産物の市場進出を阻害する主な口実となっている。一部の国が中国の輸出する商品に「グリーン障壁」を設ける時、明らかに不公平性と差別性をもっている。

しかし、中国も科学技術、管理、生態環境・資源保護政策、農民の教養や資質などの面で、経済が発達した国の国際基準と比べれば、大きな格差と相違が存在している。中国は農産物の品質の現状及びその発生の原因を真剣に分析し、この基礎の上で、積極的に「グリーン食品」を発展させて、WTO加盟後に直面する「グリーン障壁」を突破し、農産物の輸出を拡大するようにすべきである。同時にできるだけ早く農産物輸出情報サービス体系を確立し、力を集めて農産物輸出の主なデータと主な市況を収集、公布し、輸出企業に国際農産物の生産、需要の動きおよび市場情報を提供すべきである。さらに、輸出入商会などの業界機構に役割を果たさせ、業界の基準と規則を制定し、業界の自己規制を強化し、業界の経営秩序を規範化させ、国外の同業者との疎通を強化しなければならない。