マイカーローン市場を規範化させる

各商業銀行はより大きな市場シェアを獲得するため、続々とマイカーローンの条件を下げている。これは一方では消費者にマイカーローン申し込みがますます便利になったように感じさせるが、他方では銀行や保険公司にリスクを防げないという危機に直面させ、それによって金融の安全を直接脅かしている。これはすでに中国人民銀行の高度の注意を引き起こし、同行は市場に干与しはじめている。

中国では、マイカー購入ローンはますます多くの家庭に受け入れられている。伝えられるところによると、ここ数年に新規増加したマイカーのうち、ローンで買ったものは三分の一を占めている。最近上海で行われたサンプリング調査の結果が示しているように、ローンでマイカーを購入したい若者は90%近くにも達しているという。

ここ2年来、ローンで車を買う人がますます増えてくるにつれて、マイカー購入ローンは不動産ローンについで中国の消費ローン分野でいま一つの「有望株」となった。統計によると、昨年の中国マイカー購入ローン総額は人民元1150億元近くに達し、当年の消費ローン総額の8%を占めた。この比重は1997年の時は0.3%しかなったため、年平均成長率は1.5ポイント以上に達したわけである。

マイカーローン市場の争戦

伝えられるところによると、中国で車を買う力をもつ家庭は、2005年には4200万世帯に達するという。市場のシェアを争奪するため、多くの銀行は続々とマイカーローンの条件を下げている。

中央銀行の関係規定によると、マイカーローンはもはや銀行にしかない業務ではなくなり、金融機関であるかどうかをとわず、一定の条件を備えていさえすれば、外資でも民間企業でもマイカーローン業務の取り扱いを申し込むことができる。マイカーローン業務の主体多元化はマイカーローン市場の競争を激化させている。

民間資本のマイカーローン市場進出は、広州では非常に速いものである。今年は4、5月の1カ月内に、広州では3社の民営マイカーローン公司が相次いでオープンした。これらの公司は次々とユーザーに、戸籍謄本、身分証明書、正当な仕事か収入の証明書類を提出しさえすれば、「最高100万元」の担保サービスを受けられ、しかも3日以内の受理を保証することを約束した。この措置が発表された翌日、これらのマイカーローン公司は24件のマイカー消費ローンを扱った。

6月24日、中国工商銀行広東分行はマイカーローン業務の八大優遇措置を正式に実行し始めたが、「契約履行保険免除、一切費用免除」がその重要な一条である。同行行員の張雲斌氏によると、同行が審査、評定した上客が同行のマイカーローン業務を申し込む場合、以前取次販売業者、仲介業者に納めた約1000元の各種名目のサービス料が免除される。

サービス料減免のほか、マイカーの最低価格も各銀行のマイカーローン業務の競争の内容となっている。最近、広東発展銀行はユーザーに、取次販売業者の毎日のマイカーの最新オファーを提供している。双方は取次販売業者が広東発展銀行のユーザーに提供するオファーは、市場より安いことを保証するほか、「団体購入者」とその他の銀行の提供する価格より安いことを約定する取り決めを結んだ。広東発展銀行のこの措置に照らして、その他の銀行の関係責任者も続々と、広東発展銀行のようにユーザーに競争力に富む価格を提供できると表明した。

競争が激しくなるにつれて、一部の銀行の「優遇措置」は政策上の最低限界に近づいたかそれを突破している。以前は上客にしか提供しなかった10%というマイカーローン利率の最低限は、いまでは各銀行ともほとんどすべてのユーザーに対し実行している。しかも中国農業銀行広東分行は去る4月、この政策上の最低限度がまもなく突破されるだろうと表明した。

これと同時に、中国建設銀行が最近実行を始めた「前払免除」というマイカーローンの新しい形式も、中国人民銀行の「ゼロ前払」禁止の規定に違反している。このマイカーローンの形式によれば、ユーザーが中国建設銀行に提供する信用金額が車の価格より大きくなりさえすれば、ユーザーは「前払免除」で車を買うことができる。

リスクの危機

現在、中国ではマイカーローンの採用する担保方式は主として、自然人担保、取次販売業者担保、契約履行保険担保などがある。そのうち1997年から始まった契約履行保険担保は目下市場で主な地位を占めているローン方式である。

契約履行保険担保のローンはユーザーに、マイカー消費ローンを申し込む時、保険公司のマイカーローン契約履行保険に加入することを要求している。銀行は保険公司の出した保証、保険、保険書類を根拠とし、その他の担保がなくても、大胆にローンを提供することができる。

中国では、信用制度と抵当制度がまだ健全でないため、リスク制御は依然としてマイカーローン市場の上に吊り下げている「鋭い剣」となっている。契約履行保険担保のマイカーローンの方式は、実質的には銀行の借款人に対する信用資格審査およびこれによってもたらされるリスクを保険公司に推しやるものである。しかし、借款人の信用資格に対する保険公司の審査は、まだまだ銀行ほど専門化していない。

「当時、一部都市の保険公司はとても積極的にこの業務を扱っていた。というのは、ローン契約履行保険でユーザーにもマイカー保険に加入させ、抱き合わせ販売を実現しようとしていたからだ。だが、いざやってみると難度がとても大きく、すぐにもいろいろの問題が現れた」とある保険公司の責任者は心配そうに語った。

広州保険同業公会が最近明らかにしたデータが顕示しているように、今年第1・四半期では、広州地区保険公司のマイカーローン保険金支払い率は平均136%にも達し、400%近くまで迫った保険公司がごく少数であるがあった。ユーザーが悪意にローンを騙し取るかまたは返済を引き延ばすのを防ぐため、返済督促グループを設立した保険公司さえある。いまでは構内に返済督促で取り戻した自動車がいっぱいおいてある保険公司があり、またこれら取り戻した車をおくために駐車場をチャーターする必要のある保険公司もある。

こうした状況の下で、中国生命保険、平安財産保険などの大手保険公司は、マイカーローン契約履行保険業の全面的圧縮を考慮せざるを得ないでいる。例えば、マイカーローン契約履行保険業務の市場シェアを80%以上占めている中国生命保険公司は2002年10月から、マイカーローン契約履行保険業務を全面的に縮小し始めた。同年8月、中国生命保険公司北京分公司が保険を引き受けたマイカーローン契約履行保険の車は1861輌であったが、10月は855輌に減り、今年5月は382輌にまで減った。1年足らずの間に同分公司の業務量は全体として80%近く縮小したわけだ。

「投入が多く、リスクが大きい。いま時のマイカーローン契約履行保険は取るに足りないものだ」と同責任者はいかんともしがたい口調で語った。

マイカーローン市場に理性を取り戻させる

激しい市場競争の中で、一部の銀行、自動車販売業者、保険公司は一再ならずローンの条件を緩め、範囲を広げているばかりでなく、ユーザーに対する資質審査を軽々しく扱っている。このため、業界全体の潜在的リスクはこれに随って急に増大している。

中国人民銀行営業管理部の昨年5月に行ったある調査研究の結果が顕示しているように、北京地区のマイカー消費ローンの貸し倒れ率は15%前後にも達し、不動産ローンのそれより高いものである。「マイカー市場に『規則違反』や『すれすれのところまでやる』問題が存在している。その影響はいまのところ不動産ローンほどではないが、その隠れた災いを見くびってはならない」、「マイカー消費ローンは北京金融業の発展のために大きな手柄を立てたとはいえ、このような状況を抑えなければ、いったん貸し倒れ率が20%に達すると、その結果は想像に耐えられないものになる」と中国人民銀行の関係者はこのように警告している。

ほかならぬマイカーローン市場の過熱を心配する余り、中国人民銀行営業管理部はいま各銀行のマイカーローンを「調査」しており、その重点地区には北京、広州、鄭州など各地が含まれている。ある兆しが示しているように、中国人民銀行は過熱した住宅ローンが下火になったあと(導火線は上海の一部の不動産を経営する大金持が「問題のあるローン」のため相次いで損をしたこと)、つづいてマイカーローンを整頓し始めたがこれは過熱したマイカーローン市場に熱をさまさせ、徐々に理性を取り戻させるためである。

世論は普遍的にこう分析している。中国人民銀行は今日の検査を通じて、マイカーローン市場の深層に矛盾と問題が存在していることを発見して、いちだんと問題に照らして、効果的にマイカーローン市場の健全な発展に大きな影響を及ぼすだろう。例えばまもなく制定される「マイカー消費ローン管理規則」には、各銀行が情報資源を共同で享有し、信用のよくない消費者がある銀行から金を借りられない時他の銀行へ行って金を借りるような状況をなくする、リスク引受利益不均等の問題を解決し、以前の商人と銀行が基本的にリスク責任を負わず、保険公司だけにリスクを負わせる方式を改めるなど改正の細則が見られる。

「ここ数年に新規増加したマイカーのうち、ローンで買ったものが三分の一に達し、その中で若者が大半を占めている。彼らは一般には流動性が非常に大きく、個人信用が確定しにくいため、完全な個人信用システムの確立はマイカーローン市場規範化活動の中で当面の急務となっている」と中国人民大学金融と証券研究所副所長の趙錫軍氏は見ている