国外から熱いまなざしが注がれている北京−上海高速鉄道の建設

――北京−上海高速鉄道は中国最初の高速鉄道として、1994年の建設計画提出以来、日本やドイツ、フランスなどが受注を目指して激しい国際商戦を繰り広げてきた。この受注合戦の裏には、投資者たちの未来の中国の高速鉄道市場への大きな期待感がある。

馮建華

7月初め、日本の政府関係者とメーカーからなる「中国高速鉄道日本連合」が中国を訪問した。この代表団の訪中は中国国内の世論のみならず、国外、特にドイツとフランスからも大いに注目された。それは、建設予定の北京−上海高速鉄道(全長1300キロ)はレール方式かリニア方式かについてのフィージビリティ・スタディが6月20日から北京で行われてきたが、その結論が2カ月後に明らかになることになっていたからである。日本政府は受注獲得のための最後の「PR」のため、第9回新幹線レール方式説明団を派遣したのである。

中国鉄道部の推算によれば、北京−上海高速鉄道はドイツのリニアモーターカー方式を採用するならば、少なくとも人民元4000億元を投じなければならないが、日本運輸省の推算によれば、日本の新幹線方式を採用すれば、人民元で1700億元しかかからないという。

ちなみに、北京−上海高速鉄道の試験区間は上海に隣接する江蘇省の昆山市と決まった。

リニア方式かレール方式かをめぐる論争

1994年に北京−上海高速鉄道の建設計画が打ち出されるやいなや、日、独、仏の三国は先を競って自国の技術を中国に推薦することに努めた。当時中国の鉄道部はレール方式の採用を極力主張していたため、三国が最初に推薦したのはいずれもレール方式であった。1998年になって、中国政府のトップがドイツのリニアモーターカー式に乗り気になったため、受注合戦は絶対的な優位に立つドイツのリニア方式と不利な地位に置かれた日本の新幹線方式とフランス(TGV)のレール方式との競争となった。

昨年末、上海リニア(世界初の磁気浮上式高速リニア実用線)が開通し、試運転に入った。当時中国を訪問していたドイツのシュレーダー首相が朱鎔基前総理に伴われて試乗した。これでドイツのリニア方式が採用される兆しが見え始めた。しかし、ドイツのリニア方式はその神通力(リニア・マジック)を見せつけながらもその採用反対の声も寄せられていた。上海リニアの運営に問題が現われるにつれて、リニア方式の「独擅場」の競争の地位には根本的な変化が生じ、中国政府もレール方式を採用する考えをあらわにするようになった。

伝えられるところによると、上海リニアは試験に入って以来、毎日500万元を超える赤字を出し続け、破損したケーブルの取り換えだけでも、技術提供者のドイツのティッセン・クルップス社はすでに人民元数億元を投入した。コストが高すぎるため、上海リニアは今年の3月中旬から運休を余儀なくされた。鉄道部の計算では、北京−上海高速鉄道にリニア方式を採用すれば、一キロあたりの建設費は少なくともレール方式の3倍となり、輸送能力もレール方式の半分に過ぎないが、チケットはレール式車両の5倍に当たる。

コスト要素と輸送能力のほか、中国政府がレール方式を採用する考えを示した重要な原因の一つには、ドイツ側はキーとなる技術を譲渡しようとしていないのに、中国政府は高価で技術の使用権を取得することを望んでいるということにある。双方はその後ともにある程度の歩み寄りを示したが、最後に合意された取り決めは双方の国内に不満を残す結果となった。

どちらが勝者に

レール方式の受注合戦においては、ドイツのICE、日本の新幹線、フランスのTGVはかつて三つの勢力が並び立つ勢いを示したこともあるが、3年前に脱線転覆事故が発生し、スピードも他の二つのライバルより遅いため、ドイツのICEの総合的競争力はずっと低下している。

フランスのTGVより、日本の新幹線のほうが中国でよく知られており、新幹線の運営状況もよく、しかも日本政府が外交手段で売り込み攻勢を強めているため、最近ではフランスのTGVより日本の新幹線を推す声が中国国内で強まってきた。

しかし、こうした日本の売り込み攻勢に直面しても、フランスのTGVは新幹線方式より優れた技術を持っているため、絶対に負けを認めようとしていない。権威あるデータによると、フランスのTGV方式の採用によって、1995年には実験時速515キロ以上、実際運行時速360キロ以上を実現したが、新幹線方式の場合はそれぞれ400キロ、300キロでしかなかったという。

そのほか、全世界の高速鉄道建設では、フランスのアルストム社は最初にTGV方式で受注を獲得し、スペインと韓国に自国の技術を提供したが、日本の新幹線方式は台湾にしか採用されなかった。

新幹線とTGVの競争がますます白熱化しているなか、昨年11月、中国がレール方式を採用し、独自に開発した「中華の星」(電気機関車)の専用線での試験運行が行われ、時速321キロの最高実験速度と時速200キロの平均運行速度を記録した。「中華の星」は現段階では、250キロ以上という国際鉄道連盟の制定した高速鉄道の運行時速基準には達していないとはいえ、その開発は中国が高速鉄道の建設で重要な一歩を踏み出したことを示すものである。

マーケット・アナリストによると、「中華の星」の開発によって、中国政府はレール方式を導入する決意を固めた。それと同時に、レール方式を提案する日本とフランスの競争も行方もさだかではなくなった。中国の鉄道建設技術が向上するにつれて、中国政府は中国独自の建設「方式」が開発されるまでに建設の工期を遅らせる可能性があると推測する人もいる。

この推測に対して、業界筋はこう見ている。中国の「第10次五カ年計画」(2001―2005)によれば、北京−上海高速鉄道の建設は遅くとも来年に始まることになるため、この推測が現実になる可能性はほとんどなく、技術の面では外国技術の導入に頼らなければならない。

ドイツのTRI北京駐在事務所市場販売総支配人の呉永新氏は、「今回の受注が成功するかどうかは会社のみの実力によって決められるものではないため、最後にならないと、どちらが勝つかを断言することはできない」と語っている。

より大きなマーケット

鉄道部高速鉄道建設弁公室関係筋の分析では、外国の投資者が北京−上海高速鉄道に熱い視線を注いでいるのは、当面の1300キロの高速鉄道の建設によってもたらされる利益だけではなく、将来性のある中国の巨大な高速鉄道マーケットに照準を合わせているためである。北京−上海高速鉄道は外国投資者が今後中国の高速鉄道の建設に参入するための通行許可証と言ってもよい。

日本運輸省の関係レポートには次のように書いてある。日本が北京−上海高速鉄道の建設権を獲得できれば、日本国内では少なくとも100億元の市場収益を生み出すことができ、これは日本の鉄道や運輸、電子などの業種の発展を促すだけでなく、日本の新幹線方式が中国市場を独占するための基礎を固めることもできる。しかも後者の持つ意義は前者よりずっと深遠なものである。

現在までのところ、中国の鉄道総延長は7万1500キロに達している。何回にわたってスピードアップを実施してきたが、快速鉄道はまだ1万キロ余りしかなく、時速300キロ以上の高速鉄道はまだ出来ていない。ブロック経済の発展趨勢がますます強くなり、世界経済における地位がますます重要になるにつれて、高速鉄道を発展させることは中国の必然的な選択となっている。したがって、一部の先進国と比べて、中国の高速鉄道マーケットには巨大な発展のスペースがある。これも外国業者が北京−上海高速鉄道の受注競争でしのぎを削る内在的な原因である。

伝えられるところによると、長江デルタ、珠江デルタ、環渤海地区という中国の三大区域の経済の中心としての地位と役割をさらに向上させるため、中国政府はこの三大経済区域に高速鉄道網を建設する計画を打ち出している。フランスのBTI社の予測では、この建設プロジェクトに秘められている市場収益は1万億元を上回り、中国史上最大の受注となるだろう。