CAFTA実現に向けた10大傾向

許寧寧

(中国・アセアン商務理事会中国側理事、北京・アセアン商務顧問センター代表)

※CAFTAは中国とアセアン(東南アジア諸国連合)との自由貿易協定を指す。

1)中国とアセアン及びその国家間との友好関係は新たな発展段階を迎えつつある。政治的な相互信頼、友好関係の制度化はCAFTAの実現に重要な役割を果たすであろう。中国が『東南アジア友好協力条約』に調印して確立された両者の新たな外交関係は、地域の安定と発展に有利であり、CAFTAの実現にも有利である。

2)CAFTAの実現は、座して交渉する段階から起きて実行する段階に到った。この数年来、日本や米国、EU(欧州連合)、インドなどはいずれもアセアンとFTA実現に向けた交渉を加速しているが、中国は枠組み合意の面で先行している。タイとの間では、今年10月から、300種の果物・野菜などの農産品を対象にゼロ関税を実施する。2004年には、アセアンと早期に妥結した「免税行動」に着手することになっている。このように貿易ハードルが徐々に下降して撤廃されていけば、企業は産業構造調整と市場開発の面で新たな選択肢を手にすることができるであろう。

3)人々のFTAに対する認識が高まってきた。1年前、人々はFTAとは何を意味するのか理解していなかった。CAFTAを実現する過程で、人々が豊富な内容を含むこの言葉に接する機会は増えている。WTO(世界貿易機関)と同様、今後一定の時間が過ぎれば、FTAは流行語になるであろう。FTAは人々の日常生活や仕事に新たな変化をもたらし、特に企業家は、新たなチャレンジを迎え入れる意識を持つことが求められているからだ。学術界では「東南アジアブーム」が起きるであろう。

4)CAFTAの実現は、政府の行動から企業の行動へと拡大しつつある。政府間の交渉がスタートし、交渉が進展して『中国・アセアンの全面的経済協力に関する枠踏み合意』が調印され、実行されるに伴い、益々多くの企業がCAFTAに関心を示し始めており、二国間貿易も大幅に増大し、双方向の投資も拡大した。企業は経済活動の主体であり、企業の能動性と創造性を十二分に発揮させれば、CAFTAの実現に弾みがつくであろう。

5)国際経済貿易分野では、中国とアセアンの競争性と協力性に新たな変化が生まれており、競争から協力への転換は双方にメリットをもたらす。東南アジア諸国側は、一部の商品で中国と国際市場で激しく競い合っており、外資導入でも競争相手だとの考え方が一般的だ。しかし経済法則は、協力は競争力を高める重要な手段だと教えている。CAFTAの実現はまさに共同発展のためである。CAFTAが実現されれば、中国とアセアンはより幅広い分野で経済構造調整を行って資源を統合し、その強みを強化できるであろう。双方の協力目的は既に確定している。新たな協力によってこの地域の製品の国際市場での競争力が更に高まることは、より多くの外資導入に有利となるであろう。

6)中国とアセアンの経済貿易協力は、一辺に偏った一般貿易から全面的協力に向けて急速に発展している。政府が強力に後押しする中、副次的な地域経済協力や科学技術協力、観光協力、資源開発協力、農業協力、エネルギー協力、情報産業協力、人材養成など一連の多分野にわたる協力は既に始まっており、飛躍的な発展傾向を維持している。

7)中国とアセアン10カ国の市場は相互融合した大市場へと向かいつつある。CAFTAの実現は、相互間の貿易と投資の自由化、利便化を現実のものとし、相互間の人的流動や貨幣の流動にも新たな傾向が求められる。企業家は国を越えた経営や市場の開発で新たな戦略を考慮することが必要である。

8)中国とアセアンとの間の投資では、アセアン企業による中国への膨大な投資という単一方向から双方向へと転換されつつある。この数年来、中国企業によるアセアンへの投資は増大し続けており、今後一定の期間にこの増大傾向は加速されるであろう。

9)中国とアセアン加盟国の商業会議所間の協力は日増しに活発化し、緊密かつ新たな時期を迎えつつある。CAFTAが実現すれば、企業間協力の緊急性は高まり、中国とアセアン加盟国の様々な商業会議所、業界・協会間の協力にも数多くの新たな傾向が求められ、発展する余地も拡大する。中国・アセアン商務理事会が既に立ち上がったが、今後一定の期間、商業会議所間の新たな協力により会員企業に幅広いビジネスルートが開かれていくであろう。

10)「中国のチャンス」から「中国とアセアン共同のチャンス」に向かいつつある。中国経済の持続的かつ急速な成長、中国のWTO加盟による新たな市場の開放に伴い、アセアンは中国の繁栄によって繁栄する、との「中国チャンス論」が提起された。CAFTAの実現に向けた計画の始動は一定程度、域外の一部の国に東南アジアを重視させ、その結果、アセアンとその国に自由貿易関係を確立あるいは確立に向けた交渉を開始させたことは、東南アジアの経済成長に有利である。CAFTAが実現すれば、共に繁栄した新たな地域が我々の眼前に出現することになるであろう。