馮昭奎氏、日本の「ODA大綱」改正について語る

中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員はこのほど、日本の「ODA大綱」改正について、ODAの目的・理念の変化に着目したうえで、次のような評論を発表した。

日本の2001年のODA提供額は米国に次ぐ世界第2位で、世界最大の政府開発援助(ODA)供与国の一員となっている。日本政府はこのほど、1992年に制定された「政府開発援助大綱(ODA大綱)」の改正を行った。新旧の大綱の大きな違いは、日本のODAの目的・理念の定義にある。旧大綱がODAの目的・理念を「人道的立場」と位置付けているのに対し、新大綱では「国民的利益(国家利益の重視)」と表現している。対外援助では国益を考慮すべきとの方針が、ODA大綱に初めて明確に盛り込まれた形になる。

対外援助の目的・理念の変化は、ODA重点課題、重点地域、実施方法などの新規定に現れている。例えば、ODAにより「国際社会の平和と発展に貢献する」必要を強調している。地域紛争防止や戦争被害国への復興支援は、対象国・地域の多くが資源・エネルギー産出地であるため、資源・エネルギーの多くを輸入に頼っている日本にとって最終的には利益となるからだ。重点支援地域を「東アジア・東南アジアを中心とするアジア地区」から「南アジア・中央アジアを含むアジア地区」に拡大したことは好例で、これら新対象地区での経済的メリット、特に中央アジアのエネルギー資源での利益と関係がある。さらに、相手国の申請に応じる従来の実施方法から、相手国からの支援要求に先立ち政策協議で決定する方式に変わった。こうした変化は、ODAをより戦略的に利用し、自国の利益確保に役立てるためであることが明らかである。

新ODA大綱が「国益」を全面に打ち出した原因は、1990年代以来、日本経済が長期的に低迷し、財政状況が悪化し続けていることと関係している。こうした背景の中で、日本国内では「国民の税金は対外援助でなく、国内の景気対策に優先的に使用すべきだ」との声が出ている。しかし実際には、日本のODAがこれまで「国益と無関係」だったわけではない。日本からのODA運用に成功した国では、日本の経済的利益も拡大している。援助対象国のインフラ整備が、貿易や直接投資などでの協力の促進につながった例もある。しかし、旧大綱では「人道的立場」との表現が強調されていたため、「政府は国内の利益を顧みずに外国で慈善事業を行っている」という誤解を国民に与えることになった。国民の理解と支持を得るため、新大綱はやむを得ず「人道主義」との表現を捨て、対外援助も自国の利益につながることを強調している。これにより、民間企業も堂々とODAにビジネスチャンスを求めることができようになった。

政府開発援助を国益や対外戦略需要と結びつけるのは日本だけではない。欧米の先進諸国もODAを同様に扱うとともに、こうした目的をはっきりと明言している。しかし、援助は本質的には「利他的」であるべきで、提供国の利益をあまりに重視するのも違和感を禁じえない。ただ日本について言えば、長期的にODA(特に円借款)を実施してきた経験を活用するとともに、「援助」という美称を捨て、日本・対象国の双方にプラスとなる、官民一体型の対外経済協力に転換していくことが望ましい。