世界的な買収ブームに巻き込まれた中国企業

柴 米

 9月上旬、ヒューレット・パッカード社は250億ドルでコンパック社を買収した。これは世界コンピューター業のこれまで最大の買収である。続いてIBMは他の大手通信メーカーと協力して、通信サービス分野に進出すると発表した。

 ここ数年、買収はすでに世界企業界の新しく、力強いテーマとなっている。関係データによると、過去の5年間に、世界の石油、航空、電信、電力、医薬、食品、メディアなどの業種では5兆ドル近くの買収が行われた。

 昨年、世界最大のインターネットサービス業者であるアメリカオンライン社と世界の娯楽とマスコミの大手企業であるタイム・ワーナ社は合併して超大手企業となり、アングロ・デュトツア社はベスト食品社を買収するなど一連の大規模な買収は人々に驚きの声をあげさせた。当時、2000年は世界企業の「買収年」と言うことができるという人がおり、いままた、新しいヒューレット・パッカードの出現は、2000年の出来事が恐らく買収劇のひとこまにすぎず、面白い芝居はこれからだという人もいる。

 この劇の中で、中国に出番があるのか。答えは肯定的である。

買収額は増えつづけている

 広西チワン族自治区南寧市郊外の長さ14キロ足らずの道路の両側にガソリンスタンドが13カ所もある。これらのガソリンスタンドはみな中国石油化学工業公司広西分公司のものである。

 関係者によると、これらのガソリンスタンドは中国石油化学工業公司が私営業者から60万ないし400万元の価格で買収したもので、買収した時は欠損状態にあった。儲からないことをはっきり知っていながら、このような大金を出して買収するのはなぜか。中国石油化学工業公司から言えば、重要なのは地盤を獲得することであり、そのため、欠損してもほかの者に譲ることができないのである。

 20004月と10月、中国石油・天然ガス株式有限公司と中国石油化学工業株式有限公司は半年内に次々と海外で上場した。この背景の下で、二大石油公司はガソリンスタンドの数を大規模に増やす計画を制定するとともに、個人経営のガソリンスタンドに対し空前の買収を展開し、そのために使った資金は数百億元に達し、ほとんどコストを無視する状態であった。南寧市のこの道路の両側にあるガソリンスタンドは今回の買収ブームの「戦果」である。

 中国石油・天然ガス株式有限公司と中国石油化学工業株式有限公司は百億元でガソリンスタンドを買収したのは中国の2000年の買収ブームの一例にすぎない。このほか、人々の関心を集めた買収はまだたくさんある。例えば、中国光大グループが申銀万国証券に進出したこと、南方航空公司が中原航空公司を併合したこと、捜狐が中国人ウェブサイトを買収して中国最大のウェブサイトとなったこと、Tom.com公司が163.netを買収したなど。青島ヘールが鞍山信託の20%の株主権を買収し、長江証券と増資による持ち株について商談し、青島市商業銀行に進出するなど一連の金融買収措置を発表したことがそのいくつかの例である。

 中国の権威ある部門の統計によると、2000年に、中国大陸部の上場企業の間だけでも500余件の買収が行われた。

 国際的に有名な管理会社であるボストン社のデータは、中国の買収額が過去5年間に毎年70%の率で増えて、中国がアジア3番目の大買収市場となったことを顕示している。

 同社の専門家によると、中国の資本市場が現在まだまだ外資に進出させていないにもかかわらず、公司の買収取引金額が日増しに増えているため、投資家は買収による価値創出をますます認めるようになり、買収市場はますます大きくなっている。中国のWTO加盟によりいっそう多く外資企業が直接投資あるいは買収を通して中国に進出し、中国の企業もこのようなやり方で外国に進出することができるようになる。

別の選択がない

 ある専門家は、「先進国の百年来の買収の歴史が未来の10年内に中国で再演される」と予言した。

 中国人民大学金融・証券研究所の発表した研究によると、中国ではWTO加盟後経済がいっそう対外開放され、情報、バイオテクノロジーなどの新興技術と産業が発展するにつれて、未来の10年内に大規模な企業買収ブームが現れるという。

 この研究は、未来の10年に中国企業が産業の大規模な整理合併を経た国際企業群の挑戦に直面し、中国の企業は産業の戦略的な整理合併を行ってのみはじめて国際市場でしかるべき地位を占めることができると指摘している。

事実上、WTOに加盟した後、外部競争力の挑戦は企業買収の外部の誘因の一つにすぎず、産業内部の資源の整理合併と戦略的調整という内部の必要こそ企業買収の真の原因である。

 中国人民大学金融・証券研究所のこの研究は次のように指摘している。現在中国の企業にスケール効果欠乏、資源の過度の分散による競争力低下、産業構造の不合理などの問題が普遍的に存在している。大規模な買収は中国の企業が規模を大きくし、産業の交替とグレード・アップを実現し、それによって社会全体の産業構造調整を推進し、資源配置を最適化させ、中国経済全体の質を高めるのに役立つであろう。

 国内の多くの企業はもともと自身の蓄積に頼って企業の発展をはかることに慣れていたが、このような発展パターンは現在大きな挑戦を受けている。それというのは市場競争がたえず激化し、技術進歩が絶えず加速する時代に、自身の蓄積に頼って企業の発展をはかることに多くの局限性があり、市場が根気よく企業の成長を待っていられないからである。国外企業の急速な成長の例から見ると、かなり多くの企業はまさに資本運営を通して目標となった会社を併合するか買収して、その快速な成長を実現しているのである。

 易凱ネットワーク資本公司CEOの王冉氏は、中国のIT企業が「小さく、分散している」局面は改めなければならず、大規模な整理合併と戦略的調整という国際背景の下で、国内の企業は局外に身をおくことができない、以前は「鶏の頭になっても、鳳の尾になりたくなかった」、国内の企業家はこの時からより理性的に買収と整理合併に対処するようになり、「細々とやるよりも、進んで鳳の一部分になる」だろうと語った。

1+1=

 中国石油化学工業公司広西分公司が多くのガソリンスタンドを買収した後長期間利潤を上げられないならば、このような買収が成功しただとは言いがたい。

いかなる企業の買収も協力の効果を生むとか、あるいはある種の稀有資源を獲得するとか、あるいは管理のグループを吸収するなどそれなりの目的がある。買収が成功したかどうかは1+12であるかどうかを見なければならない。ある期間では、「ゼロ・コストの買収」、「ローコストの拡張」は確かに先にカニを食べる者にうまい汁を吸わせたが、1+12という神話をつくり出すどころか、1+12、ひいては<1の結果になった企業も一部ある。ゼロ・コストとローコストは往々にして質がよくないかひいては質が全然だめという状態をともなうが、生存の質がとても低い「ショック状態にある企業」を真に活性化させるには高いコストの代価を払わなければならない。

 専門家は、買収の成敗のかぎは策略、価格、整理合併の三大要素にあると見ている。

 ある専門家は、中国企業の買収の挑戦は、一部の公司の長期計画が明確ではなく、財務データあるいは会計標準がないために問題を引き起こし、整理合併のプロセスについての専門知識に欠け、所有権のパターンが相変わらず変化するなどにあると指摘し、また従業員が多すぎることをどう解決するか、人材をどう引きとめるかという二つの手を焼く問題は早期に解決案を提出した方がいいと提案した。