9.11事件後における国際政治の枠組みの変化

 米国で発生した「9.11」事件は、世界中を大きく震撼させた。米国のアフガニスタンでのテロリストに対する軍事行動、対外政策の変化によって、人々は21世紀における国際情勢の変化のゆくえ及び国家間の相互関係が孕むものを見直し始めている。そこで本号ではこの問題について、国際問題の権威である3名の専門家の見方を紹介する。       ──編集部

 

多極化へ向かう世界

楊成緒(中国国際問題研究所所長)

 「9.11」事件以前は、冷戦終結後の力関係がアンバランスになり、東欧が大きく変化し、ソ連が解体した。米国にしてみれば、「資本主義が社会主義に勝った」というわけだ。20世紀最後の10年に、米国は終始、唯一の超大国の地位を保ったばかりか、科学技術の面で遥か先を行き、経済成長率はヨーロッパと日本を超えた。そのため、米国から見れば、かなり長い間、米国に対抗できる国は世界中に一つも無かった。しかし、ここ数年、中国経済が安定を保ち、急速に発展したため、米国に挑戦状を突きつけることのできる相手となった。米国にとって、中国はイデオロギー上の敵である。ロシアは解体し、経済も良くないが、少なくとも世界第二の大国である。さらに日本は、過去に米国との間で経済摩擦が生じたこともあり、米国と日本は確かに同盟関係を強めてはいるが、米国は日本に対しても警戒していないわけではない。米国が超大国の地位を保つには、挑戦状を突きつける可能性のあるあらゆる国に対して用心しなければならない。重点は、ロシアと中国を抑え込み、ヨーロッパ諸国と日本をコントロールすることである。

 「9.11」事件は、世界の枠組みにどのような影響をもたらしたのだろうか。「9.11」事件は、新たな時代、ポスト冷戦のスタートであろうか。「9.11」事件は、世界に占める米国の優勢な地位を変えてはおらず、米国も反テロによってその世界覇権の望みと地縁政治における進取の姿勢を放棄してはいない。反テロ以外の地域と国の脅威に対処することが、依然として米国の直面している重要な任務なのである。「9.11」事件は、米国の実力に実質的な影響を及ぼすことはなく、その他のところと米国との力の格差にも本質的な変化は生じていない。しかし、米国の内なる傷はきわめて重く、精神的打撃は長期にわたるもので、影響は深く、こうした影響は米国の今後の政策調整にちょっとした変化をもたらす可能性がある。世界はもはや過去の世界ではなく、米国ももはや過去の米国ではなくなった。「9.11」事件以降、大国関係に重要な変化が生じ、新たな国際政治の枠組みの出現が準備されつつある。これは、冷戦時代が真に終わり、新たな段階に入ることを予知している可能性が大いにある。

 数多くの死傷者を出した「9.11」事件は、真珠湾以来、最大の事件であり、世界の人々はみな米国の災難に同情した。同時に、テロリズムに反対し、タリバンと戦い、ビンラディン氏を捕捉するという問題においては、米国の同盟国に限らず、ロシア、日本、中国なども米国を支持した。米国は各国の支持を必要とし、各国との関係を改善しているが、各国も米国に同情して比較的多くの支持を与えている。この戦争の中で、大国間の関係は改善され、強化された。

 従来からの大国にとって、冷戦終結から10年が過ぎたあと、共に脅威に直面しているということは、大国間で相違点を残して共通点を求めるうえで有益であり、相互間の矛盾を棚上げにし、ひいては利害衝突を緩和する可能性がある。米ロ関係の強化、中米関係の改善、米国のインド重視、パキスタン軽視の政策の調整、これらはいずれも「9.11」事件後の新たな変化である。

 現時点から見て、大国関係の中で協力面が増え、争いが減ったことは、多極化の発展を反映したものである。ロシア、米国は冷戦思考を捨て、プーチン大統領の中央アジアでの米国の役割、北大西洋条約機構(NATO)に対する見方にはいずれも変化が生じている。米中関係は位置付けの見直しがなされた。米国の同盟国は「9.11」事件後、世界の安全保障実務における役割を著しく高め、一部の国、とりわけドイツ、日本、ロシアの発言権の増大は多極化の発展を映し出している。むろん、大国の力関係と大国関係に根本的な変化は生じておらず、ヨーロッパ諸国、日本、ロシアの姿勢は、総じて依然米国に有利な方向へ傾いており、米国にとってプラスとなっていることを見てとらないわけにはいかない。世界が多極化へ向かう道は曲がりくねったものである。

 しかし、冷戦終結後、湾岸戦争が残したイラク問題の解決の見通しは依然として定まっていない。コソボ戦争でユーゴスラビアは戦争の傷を深く受け、マケドニアには再び動乱が起こり、バルカン問題はいまだ解決案を見出せずにいる。そしてアフガン戦争は歴史上、大国が争奪する地域で勃発した。見たところ、ヨーロッパ、西アジアから中央アジアにかけては、すでに衝突が頻発する震源地帯となっており、21世紀初頭のかなり長期間にわたって世界が注目する地区となりそうである。

 中米間には台湾問題において、対立を呼び起こす可能性のある潜在的な要素が依然として数多く存在しており、「9.11」事件後も本質的な変化は生じていない。中国と米国にとって、国際政治の新秩序をどのように確立するかは見解が異なるところだが、一部の重大な国際問題あるいは地域問題の上では、中米間になおも共通性と共通の利益があることを見てとるべきである。中米間の貿易・経済関係は急速に発展しており、現在、米国はすでに中国の第二の貿易パートナー、中国は米国の第四の貿易パートナーとなっており、中米両国は中国のWTO加盟問題を話し合いを通じて適切に解決した。したがって、中米間には相互依存の関係があり、冷戦前も冷戦後も絶えず強化されており、こうした関係は、あれこれの問題に関連して中米間に生じる相違点を緩和するのに役立つと言うべきである。中米関係は、かなり複雑である。米国では、対中抑制政策を採らなければ、中米関係を間違いなく悪化させると主張する人が一部にいる。しかし米国では、かなりの人が中米関係を発展させることを重視すべきだと考えている。「9.11」事件後、中米両国の指導者が上海で会談した際の談話の中でいずれも関係の発展を重視し、協力パートナーシップを発展させるべきであると強調したことは、以前とは異なっている。ブッシュ大統領は就任の前後、米国と中国は戦略的パートナーではないと言っていたが、現在は、双方とも協力パートナーシップを発展させるべきだと考えている。ブッシュ大統領は、中国は米国の敵ではないと強調している。ここから、両国関係には依然として多くの積極的要素があり、これらの積極的要素をいっそう十分に発揮させれば、一部の困難を克服して、両国関係をたえず前進させるのは可能であることを見て取ることができる。「9.11」事件後、中米関係の改善を含めて、大国関係の改善にきっかけが提供されたのである。各国には戦略的配慮から先方に対してさまざまな懸念があり、あるいは中国から見れば、米国が中国を警戒していることから、中国は米国に中国を抑え込もうとする勢力があると考えているが、これは中米関係の発展に障害をもたらしている。この点は「9.11」事件後も変わらないはずである。双方がこの方面の事をうまく運ぶなら、これらの困難を克服し、この問題をうまく処理することができるが、たとえば、敏感な台湾問題で処理のしかたを間違えば、中米間には新たな問題が生じ、両国関係の発展に影響するであろう。

 

楽観を許さない世界の安全保障環境

閻学通(清華大学国際問題研究所所長)

 「9.11」事件後、戦略的観点から見て比較的多くの関心が寄せられているのは、やはり大国関係である。「9.11」事件前には、大国関係は比較的はっきりしており、米日同盟が中国に対するけん制を形成し、米国と西欧がNATOを通じてロシアに対する戦略的圧力を形成し、中ロが戦略的協力パートナーシップを形成していた。「9.11」事件後は、すべての大国、中国、ロシア、日本、ヨーロッパの大国がいずれも米国と関係を強化もしくは改善し、従来からの基礎のうえに一段と関係を密接にし、中国、ロシアと米国の関係には際立った改善が見られた。しかし、こうした改善は、決して大国間の戦略関係全体に根本的な変化が生じたと説明できるものではない。それはなぜか。もとからの中ロの戦略的協力パートナーシップが引き続き維持されており、米国はこれまでのところ、ロシアがNATOに加盟し、その正式メンバーとなるのを受け入れることができない。同様に東アジア地域においては、米国は依然として、中国を真の戦略的協力パートナーとして扱ってはおらず、潜在的ライバルと見なしている。この意味から言えば、中国、ロシア、米国を含むあらゆる大国関係の改善は、いずれも程度の改善であって、質の改善ではない。では、2002年の大国関係にはどのような変化があるのだろうか。大国間関係は現在と比べて、必ずしもいまより良くなるとは限らない。2002年の大国間関係は、良くても目下の状況を維持するだけで、実質的に進展する可能性は小さい。現在の米ロと中ロの間の協力は、かなりの程度において反テロリズムに依拠しており、アフガニスタンでの反テロリズム戦争の中で、米国は中国とロシアの支持を必要としているのである。現在のアフガニスタンでの大規模な戦争は、すぐにも最終段階に入り、2002年の春、早ければ春以前に終息できるかもしれない。戦争終結後は、この地域で大国間に生じた矛盾、あるいは大国間にもともと存在していた矛盾が改めて蒸し返され、大国間関係が今日のように着実で実質的なものではなくなるかもしれない。2002年、大国関係がさらに発展するのを期待できる可能性は小さく、現状維持かあるいは辛うじて現状を維持する可能性のほうがやや大きい。

 国際政治の観点から見ると、「9.11」事件後に最も際立っている点は、政府間の安全保障協力が明らかに強化されたことで、国あるいは政府の間が国際反テロ問題、一部の政治問題において、すべての国というわけではないが相対的に多くの国が協力的姿勢をとっており、特に大国はそうである。しかし、これと同時にわれわれは、政府とその社会、すなわちその人民との間の矛盾が強まっていることにも気付く。こうした矛盾の激化は、イスラム国家に現われているだけでなく、米国の盟友たるヨーロッパ諸国にも、これまでになく大規模な反戦デモが出現した。これは実際には、「9.11」事件をいかに処理するかで政府と民衆の見解が異なることを映し出したものである。この矛盾が2002年に激化するかどうかは、かなりの程度において米国の反テロリズム政策にかかっている。軍事攻撃の範囲が拡大するようなことがあれば、この矛盾が激化するのは必至であろう。アフガン戦争を早期に終結させることができ、米国が再びその他のイスラム国家を軍事攻撃することがなければ、こうした矛盾は弱まっていくであろう。現在、すでにヨーロッパでの反戦の勢いは下火になりつつあるが、これはアフガン戦争の進展が比較的順調で、民間人の死傷者数が総体的に受け入れられる程度だからである。戦争が続き、民間人の死傷者数が余りに多くなるようなことがあれば、こうした矛盾は激化するであろう。こうした矛盾は、個人あるいは小規模のテロ行為を引き起こす可能性もある。このほか、グローバルな視点から言えば、反テロという矛盾の出現によって、大国間あるいは政府間にもともと存在していた一部の政治的矛盾が反テロ闘争に席を譲ったわけで、反テロ闘争が終息しないうちは、各国間、とりわけ大国間の政治的矛盾があまり多くの問題を引き起こすようなことはないと言うべきである。しかし、アフガン戦争の終結後は、こうした矛盾が再び顕在化する可能性もあろう。

 2002年、中米関係の良し悪しは、主に次の二つの要因にかかっている。第一の要因は、中国と米国が中米の戦略的協力の基礎を、現在の反テロリズム分野からその他の分野に比較的短期間に拡大することができるかどうかであり、比較的有効に拡大できれば、中米間の関係は良い方面に発展するであろうが、それができなければ、中米の戦略的協力関係はかなり大きな制約を受けるであろう。第二の要因は、戦争終結後、もともと存在していたその他の矛盾や問題がどの程度蒸し返されるかである。たとえば、3月の米国の台湾向け兵器輸出問題、中国のWTO加盟後に米国内の一部の人が中米間の経済問題を政治化する動きがあるかどうかという問題、米国がアフガン戦争後、兵器拡散問題で中国と協力を進めることができるかどうかといった問題がそれである。

 2002年、世界の安全保障環境は楽観を許さない状況である。2001年に発生した「9.11」事件は非常に突発的で、人類史上でも稀な事件であり、これを真珠湾事件になぞらえる人もいるが、いずれにせよ、この類の事件は歴史的に珍しく、これに類似した事件が2002年に再発する可能性は相対的に確率が低く、大きな歴史的事件の発生にはどうしてもそれなりの間隔があるものである。2002年にいくつかの突発的な国際安全保障問題が出現することはあるかもしれないが、これほど大きな突発的事件が発生する可能性はあまりない。人々が懸念する2002年の国際安全保障の直面する問題は、米国がアフガン戦争後にその他のイスラム国家に対して軍事攻撃を行うかどうかで、米国がこの反テロ軍事闘争をアフガン地域からその他の地域に拡大するようなことがあれば、イスラム国家の反米感情は日増しに高まって、かなり深刻な程度にまで達するであろう。米国と「9.11」事件のテロリストとの間の矛盾が、現在の状況から拡大して、米国とイスラム世界全体との間の矛盾となれば、世界の安全保障は非常に危険な状況となる。なぜなら、いったん文明の衝突となれば、その戦争に巻き込まれた一部のイスラム国家で政権交替が起こり、一部の反米強硬派が登場するかもしれず、これらの国は米国の反テロ闘争に対する支持から米国との対抗へと変化する可能性があり、そうすれば、その軍事闘争の範囲が広がり、全世界への影響も大きくなるからである。これは、だれもが懸念している問題である。米国政府の内部では、この問題をめぐって明らかな食い違いが存在しており、一部の勢力は、その他の国にまで戦争を拡大する必要があると考え、もう一方の勢力は、その必要はないと考えている。米国国内の政治闘争の中で、この二つの政治勢力のうちどちらが優勢に立つかは、まだあまりはっきりとしない。目下のところ、必要ないと考えるパウエル国務長官が優勢で、同氏が局面を有効にコントロールできるかどうかは、現段階では予想外の事件が発生しないかどうかにかかっている。たとえば、CIAが何らかの証拠を見つけ、「9.11」事件に某国が関与していると言えば、ラムズフェルド国防長官をはじめとする強硬派がイラクに対する軍事攻撃を進めるのは必至であろう。このため、米国がその他のイスラム国家を攻撃するかどうかは、いくつかの偶然的要素の影響を受ける可能性がかなり大きい。

 第二の危険性は、アラブとイスラエルの衝突のエスカレートである。米国の政策は、「9.11」事件前はイスラエル寄りであったが、「9.11」事件後はアラブとイスラエルの間で中立を保っている。現在、アラブ・イスラエル間の武力衝突がエスカレートしており、ブッシュ政権は再びイスラエル支持の政策に戻っている。次の段階で、反テロ闘争の必要性から米国が再びアラブ・イスラエルの間でバランス政策を採るかどうか、今のところ確定的ではないが、こうした可能性を排除することはできない。アラブ・イスラエル衝突の中で米国の政策が揺れ動き、この地域をいちだんと流動的にさせることがあり得る。米国の政策が揺れ動くことによって、イスラエルとアラブ諸国はいずれも米国の政策に対する確信を失い、その結果双方がいっそう多くの暴力的手段あるいは軍事的手段を採り、それぞれの軍事力に頼って衝突を解決しようとするだろう。これは2002年にアラブ・イスラエル軍事衝突のエスカレートという危険性を増大させることになる。これは、国際社会があまねく懸念している問題でもある。2002年、イスラム地域の安全保障環境は、非イスラム地域に及ばないであろうし、イスラム地域と境界を接する地域でも一定の影響を受けることになろう。

 総じて、2002年のテロ事件と局部的戦争の回数は2001年を超える可能性があるが、事件と軍事衝突の規模は2001年よりは小さいものとなろう。

 

めまぐるしく変わる複雑な国際情勢

夏兆竜(新華社世界問題研究センター副主任)

 2001年は新世紀の最初の年であり、世界で大きな出来事が二つ発生した。一つは、米国で10年も続いた経済繁栄が終わり、衰退に向かっていることで、そのスピードは人々の予想を超え、グローバル経済を10数年ぶりの成長の谷間に引きずり入れた。二つには、911日、ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントンの国防総省ビルが空前規模のテロ襲撃に遭い、世界を震撼させたことである。この二つの出来事は、現在の世界が複雑でめまぐるしく変わり、国際情勢の中で不確定要素が日増しに際立ってきており、世の中がかなり泰平でないことを物語っている。

 911日の惨劇は、米国にきわめて大きな人的損害と財産の損失をもたらし、国際社会の広範な同情を集めた。各国は、現代文明を破壊し、世界の安定と平和を脅かすテロリズムの犯罪行為を次々と非難し、団結して、さまざまなテロ組織を徹底的に根絶し、世界の安寧を確保することを求めた。現在、どの国も新たな情勢のもとで改めて自国の利益と国の安全をはかり直し、関連政策の大幅な調整を進めており、国際関係と地縁政治に新たな変動と調整が生じつつある。一部の発展途上国、とりわけアラブ・イスラム諸国は、内政と外交の二重の圧力に直面しており、非常に微妙で苦しい立場に置かれている。しかし、全局を総合的に見れば、総体的に世界の枠組みと発展の大きな趨勢には、「9.11」事件の衝撃によっても根本的な変化は生じていない。

 現在、反テロリズム戦争は、すでに国際的な政治闘争の中心問題となっている。アフガン戦争は拡大する傾向にあり、新たな注目地域が再び出現する可能性がある。国際社会は、テロリズムの定義、テロリズムに対する攻撃の手段及びこれを生み出す政治的、経済的、社会的な根源などの問題について議論を進めている。反テロリズム戦争が政治、軍事、外交、金融、情報、司法、心理、世論などの分野で深く展開するにつれて、それぞれの矛盾がいっそう複雑で尖鋭なものに変わっていく可能性がある。近い将来に世界大戦が起こることはないであろうが、局部的な危機と地域的戦乱は避けがたいように思われる。反テロリズム戦争は、21世紀初頭の世界政治情勢の発展に影響を及ぼす重要な要因の一つとなるであろう。

 少数の極端な勢力が扇動するテロ活動は、人類の進歩にとっての公害である。経済のグローバル化が深化している今日、各国の危機管理の上での相互依存も絶えず深化しつつある。「9.11」事件の発生後、米国とその他の国は、テロリズムの新しいタイプの脅威に反対することを共通の利益の接点として、相違点を残して共通点を求め、協力を拡大している。大国間の関係は改善された。それぞれが政策協調し、世界経済や貿易発展の推進などの問題で新たな共通認識に達した。これらはいずれも、世界の平和と発展に対し積極的な役割を果たすであろう。広範で有効な国際協力がなければ、環境保護、貧困や疾病の除去、麻薬の抑制、不法移民などの地球規模の問題はいずれも机上の空論でしかなくなることを、事実が証明している。各国の間で平等、協力、互恵の新しいタイプの協力関係を打ち立て、新世紀の挑戦を共同で受けて立たなければならない。多極化は、世界政治発展の大きな流れであり、いかに強大な国であろうと、すべてを一身に引き受けることはできないのである。

 「9.11」事件は、ある側面から今日の世界の政治、経済、社会の矛盾の尖鋭な対立を明るみに出した。冷戦終結後10余年の間、世界の平和と発展という二大問題は、一つも解決されていない。経済のグローバル化は、世界の資金、技術、人の交流を促し、経済の発展を加速させる。しかし、その中から最も大きな利益を受けているのは西側先進国であり、広範な第三世界の人民が置かれている境遇は、いまだに改善されていない。経済のグローバル化のマイナス面での影響が次第に顕在化しつつあり、最も発達していない国が隅に取り残されるという危機が日増しに深刻化している。現在、世界経済が低迷し、国際貿易と直接投資が大幅に低下しており、これら諸国はいっそう困難な境遇に置かれている。現在の不公正、不合理な国際政治・経済秩序のもとで、南北格差はますます大きくなっている。新たな情勢に直面して、西側先進国は、貧困国に対する財政支援を拡大し、共同の発展をはかるべきである。そのようにしてはじめて、人類は21世紀に安定、繁栄、平和の希望を持てるのである。