北京、文化財保護を強化

                          唐元かい

 劉密琴さん一家は北京市西城区文物局と「引っ越し協議書」を結んだ。劉さん一家は「先農壇」北門にある民家から引っ越す最後の一家である。そのあと、先農壇の文物古跡の応急修復作業が始まった。 先農壇は北京市の南部にあり、東側の天壇と向かい合い、明代(13681644)に建造されたものである。歴史上、中国はずっと農業大国であり、以前の皇帝はほとんど農業生産をとても重視し、「穀雨」など旧暦の節気を迎えるごとに、皇帝たちは自ら先農壇に来て農業の神を祭った。 有名な歴史文化都市である北京は3000余年の建設史と800余年の帝都建設史があり、文物と古跡は7000カ所を超え、そのうち、「世界文化遺産」リストに組み入れられたものが5ヵ所、「全国重点保護文化財」に指定されたものが42ヵ所ある。調べによると、現在、北京市の文化財の建築総面積は200余万平方メートルに達し、そのうち、30%は応急修復する必要があり、70%は修復と保守が必要であり、先農壇のように長期にわたって機関や住民に占用され、居住されたため、文化財が効果的に保護、修復できないものが3分の2あるほか、修復された古代文物建築も一部分ある。

 以前、北京市は毎年、文化財保護に用いられた特別経費はわずか400余万元で、言うまでもなく、このぐらいの資金では北京の文化財を応急修復する必要をとても満たすことができない。経費不足の矛盾を解決するため、北京市政府は2000年から今年までの3年間に、特別補助金を33000万元投じて、重点文化財を応急修復することを決めた。現在、このプロジェクトは順調に進められているだけでなく、全市で文化財と古代建築の修復ブームが盛り上がっている。3年間に、北京市の各区・県と社会各界が自ら進んで投入したかまたはこれから投入する文化財保護と関係ある資金は14億元を超えた。

 北京市の文化遺産の修復・保護作業を近代的な国際都市建設の発展と協調するようにするため、多くの関係専門家は、市政府が一部の資金を支出して応急修復を行う必要があるほか、保護観念を変え、修復技術を改善する必要もあると見ている。北京市文物遺跡保護委員会委員・北京市古代建築研究所首席研究員の王世栄氏は次のように指摘した。

 全般的な観念、理念はつまり「保護第一」であり、応急修復は最もやむを得ない方法の一つにすぎず、文物や古跡に対する介入は少なければ少ないほどよい。というのは、「一回修復するごとに、原状を一回変えなければならないからである。氏は古代建築を保護するには、「それを長生きさせなければならず、それを若返らせてはならない」という氏の恩師、有名な建築学者である梁思成氏の名言を引用した。

 歴史文化の保護とは主にその歴史情報を保護することである。これは、国際上の一般的な見方である。このような観点の指導の下で、「現状を保存する」かそれとも「原状を回復する」かに対し異なった見方がある。王世栄氏は異なった対象に基づいて、この2種類のやり方を合理的にとることを主張している。

 北京市石景山区文化委員会主任の劉燕さんは、北京市の文化財保護は総体的計画を強化すべきであり、「四合院」(旧式の家屋)と古い会館などはすべて先祖の残した貴重な遺産であり、古い市街区を改造するとき、それを取り壊して高層ビルを建てることばかりしてはならない、「歴史文化は都市の魂であり、魂のない都市は命がないと同じだ」と見ている。

 北京市都市企画院都市設計所の宋暁竜所長の説明によると、北京市文物局、企画委員会と企画院が制定したいま一つの保護計画は今年上半期に完成する。この計画の中では、古い市街区の枠組みの保存が保護の核心と重点となっている。「四合院」など北京の特色をもつ氏家が保護されるほか、由緒のある川や湖、都市の中軸線、明・清時期(1644-1911)の北京城の輪郭、古い市街区の通りと路地、都市の風景、有名な古木など10の方面も保護の範囲に組み入れられる。

 今後数年間の、北京市文化財保護修復の重点は南北の中軸線、阜城門から朝陽門に至る沿線、国子監街、什刹海地区を含める「211区」に置かれる。このようにすれば、北京市の古い市街区の伝統的面影が一応保たれるであろう。

 それと同時に、北京市の「歴史文化保護区」も1999年に公布された25カ所から39カ所に増え、その範囲はもとの古い市街区の土地を17%占用することから約4分の1を占用するにまで拡大される。社会の関心を集めた皇城は全体として保護され、保護区の面積は6.8平方キロに達する。

 宋暁竜所長は次のように語った。

 保護計画によると、古い市街区内では建物の高さが厳格に制限され、「保護区」の中にあった視覚が単調で、破壊力の大きな建物は逐次改造され、古い市街区の主体色彩は黒いレンガと灰色の瓦を基調とし、屋根に瑠璃瓦をやたらに葺くことを禁止し、古い市街区の高さ18メートル以下の数階建ての住宅に対し、屋根と壁が黒みがかった灰色を使用することが要求されており、平らな屋根が逐次傾斜式の屋根に改築される。「保護区」内の老朽化して倒壊するおそれのある住宅を改造するとき、文化財保護の措置は最も重要な要素として考慮される。

 北京市文物局が編成した「2003年から2008年までの『人文オリンピック』文物保護計画」の中で、古い北京の古都の風韻を再現させるため、文化財保護作業の重点は単なる修復から環境の整備、改善に移され、個別の保護から大面積の保護に移されている。

「北京市国民経済と社会発展第105カ年計画期(20012005年)の文物事業発展計画」の中で、北京市は5年内に、「北京市の文化財保護に質的飛躍を実現させる」ことを北京市文物保護事業発展の目標の一つとしている。そのほか、文化財保護と緊密に結びつけて、ここ数年、北京はいくつかの大型博物館を建設する予定であり、そのため、50年代の十大建築に継いて、博物館建設ブームがもう一度現れるであろう。