中米経済貿易関係の発展と中米関係に対する作用

中国国際問題研究所副所長・研究員 甄炳禧

 経済貿易関係は従来から中米関係の重要な構成部分であり、二国関係の中で最も共通の利益と発展の潜在力をもつ一側面でもある。1979年の中米国交正常化以来、二国間の経済貿易関係は両国の総体的関係の影響を受けて、若干の波瀾を経たが、長い間ずっとわりに速い発展速度を保っている。中米両国の経済面の相互依存は絶えず強化され、経済貿易関係はすでに中米関係を安定させる要素および中米関係のいちだんの発展の重要な基礎となっている。経済貿易関係の発展も総体的関係の進展に頼っている。2001年、中米関係は順調でなく、揺れ動いたが、双方特に両国指導者の共同の努力の下で、下半期にわりに大きく改善された。10月の上海APEC(アジア太平洋経済協力機構)の指導者非公式会議期間に、双方は中米の建設的な協力パートナーシップ発展のために共に努力するという重要な共通認識に達した。これは今後の二国関係の発展に方向をはっきり指し、二国間の経済貿易関係のいちだんの発展のためにも好ましい条件をつくった。中国が改革を深化させ、開放を拡大し、特に中国がWTOに加盟するに従って、二国間の相互依存程度は日ましに高くなり、経済貿易関係は中米関係発展の中でいっそう大きな役割を果たすであろう。

 まず、中米の経済貿易関係はすでに非常に密接で、両国は互いに重要な経済貿易パートナーとなっている。両国の国交正常化、特に90年代に入ってから、中米の経済貿易協力と発展は非常に急速である。中国税関の統計によると、1990年の中米貿易額は118億ドルであったが、2001年は805億ドルへと、6倍も増えた。アメリカ商務省の統計によると、ここ10年の米中貿易も6倍増えた。現在、中国はアメリカの4番目の大貿易パートナーであり、アメリカは中国の2番目の大貿易パートナーである。投資の面では、アメリカは香港以外の最大の対中国投資家である。2000年のアメリカの対中直接投資額(実際使用額)は44億ドルで、外国の対中直接投資額の10.8%を占めた。1980年から2000年までのアメリカの対中実際投資額は累計300億ドルに達した。2001年の第1〜第3・四半期のアメリカの対中実際直接投資額は318000万ドルで、2000年同期と比べて約38%伸びた。中国がアメリカで設立した貿易と非貿易公司は増加の勢いを呈し、1999年末現在、認可された中国がアメリカに投資して設立した海外企業は合計590社、契約ベースの投資総額は約79000万ドル、中国側の投資総額は約56000万ドルである。1999年、中国は513億ドルのアメリカ国債を保有していたが、この額は外国が保有するアメリカ国債総額の4%を占めるものである。

 次に、両国の経済貿易の分野で相互補完性はかなり強く、双方は互いに巨大な市場を分かち合うことができる。中米の発展水準と資源構造に大きな違いがあり、労働力、資本、技術などの面でそれぞれわりに大きな強みを持っている。そのため、中米経済貿易の発展はこの二国の強みの相互補完に役立つ。貿易の方向から見ると、アメリカが中国に輸出するのは主に農産物と付加価値の高い工業製品、例えば航空機、発電所設備、石油設備、化学工業製品、機械設備などであるが、中国がアメリカに輸出するのは主に労働密集型の製品、例えば靴類、アパレル、おもちゃ、家電、金属製品、照明器具、家具などである。直接投資から見ると、アメリカの対中投資分野は金属、石油、電子、通信、化学工業、紡織、軽工業、食品、農業、医薬、不動産、保険および金融サービスなどに及んでいる。中国側の対米投資分野は工業、科学技術、請け負い、アパレル、農業、レストラン、食品、保険および運送などである。

 さらに、二国間の経済貿易往来がアンバランスであるとはいえ、両国の経済発展に対する役割は著しく大きくなっている。現在、中米経済貿易にある程度のアンバランスが存在し、貿易の上では中国側が輸出超過である。中国税関の統計によると、2001年の中国側の貿易黒字は281億ドルであった。直接投資の面では、アメリカの対中投資は中国の対米投資を遥かに上回っている。両国の全般的な国際収支から見ると、アメリカの対中投資の収益は実際には対中商品貿易の輸入超過をカバーすることができる。日ましに拡大される二国間の経済貿易交流は中米両国に大きな利益をもたらしている。

 中国はアメリカから資金と技術を導入して、管理経験を参考にし、国内市場を豊かにし、発展資金の不足をカバーし、経済成長に役立てている。2000年の中国の対米輸出額は輸出総額21%、中国GDP5%以上を占めた。

 それと同時に、アメリカが二国間の経済貿易関係から得る利益は増加している。その一は、アメリカの対中輸出がアメリカにもたらす就職のチャンスは90年代初の20万人から現在の約40万人にまで増えた。その二は、アメリカが中国から品物がよく、値段の安い商品を大量輸入して、多くのアメリカ家庭にその中から利益を受けさせている。世界銀行はかつて、中国以外の国から同様の商品を輸入するならば、アメリカの消費者は毎年支出を140億ドル増やさなければならないだろうと指摘した。その三は、中国がアメリカ企業のためにリターン大きな投資の場所を提供した。米商務省の推算によると、対中投資の平均のリターン率は9.6%で、制造業全体の投資リターン率より高い。中国の『国際商報』によると、中国に投資した外国企業の中でアメリカの企業の利益獲得額が最高である。そのほか、昨年世界経済あまねくスローダウン状況の下で、アメリカのその他の国への輸出が大幅に減ったが、対中輸出は逆に17%増えた。

 長期から見ると、中国経済の持続的高速発展とWTO加盟により、両国の経済貿易関係は明るい発展の見通しをもっている。中国の後から発展するという強みはすでに現れており、そして引き続き持続していく。米『フォーチュン』誌2001514日号は、イギリスが19世紀に大部分の時間を費やしてようやく一人当たりの収入を25倍増加させた。アメリカは1879年から1930年までに60年の時間を使って収入を35倍増やした。日本が収入を6倍増加させるのに25年(1950年〜1975年)もかかった。中国が収入を7倍増加させるのに20年(1979年以来)しかかからなかった。同誌は、中国がテーク・オフを続けていくならば、この変化は世界に巨大な影響を及ぼすだろうと指摘している。21世紀の最初の10年間に中国経済が依然として7%前後の率で成長し、中国のこの最大の潜在的市場が次第に現実に変わると予測されている。中国対外経済貿易合作部の推計によると、1999年から2005年までの間に、中国の輸入額は15000億ドルを上回る。アメリカの大中型企業は中国という急速に成長する新興の大市場でシェアをより多く占める可能性がある。

 そのほか、中国はWTOに加盟して、両国の経済貿易関係は急速に発展する。中国駐米大使の楊潔ち氏は最近、中国のWTO加盟は中米双方にとって有利である。なぜなら、第一は、アメリカの対中正常貿易関係の年度審議を排除し、中米経済貿易関係の中で一大人為的な政治撹乱要素を一掃し、更に二国間の経済貿易関係の安定性にいっそう有利であり、第二は、中国市場にいっそう吸引力を更にもたせ、対米貿易の拡大にいっそう有利であり、第三は、中国国内の商業環境のいっそうの改善、市場のいっそうの開放が、アメリカの企業により多くのビジネスチャンスを提供し、特に中国が、情報通信、金融サービスなどの面で大きな発展の潜在力と市場の空間がある。アメリカ商業会議所の最近の調査によると、アメリカが中国に設立した経営企業のうち、90%以上が中国のWTO加盟後の中米経済貿易関係を楽観視している。

 もちろん、中米経済貿易関係には摩擦と紛糾がまだ存在しており、WTO加盟後、中米の経済貿易問題は具体的な製品と具体的なサービス業の貿易紛糾により多く現れるだろう。中米両国の経済貿易利益の摩擦と紛糾の大部分は両国のいくつかの産業部門、具体的な業界間の経済利益問題であり、しかも、これらの摩擦と紛糾は中米経済貿易関係の支流であり、両国経済貿易協力の主流に影響すべきではなく、中米関係全体になおさら影響すべきではない。双方、特にアメリカ側はより高く立ち、より遠くまで見、中米関係の全局から出発して、慎重に処理し、制御できなくなることを防止し、協力を維持すべきである。

 最後に指摘に値するのは、中米経済貿易関係と中米関係全体の発展が一種の相互推進の関係であるということである。つまり経済貿易関係の急速な発展は全体の関係の発展を促進することができ、同時に中米関係の正常な発展も、中米経済貿易の発展に良好な政治的雰囲気をつくることができることである。しかし、経済貿易往来は政治的衝突を自動的に減らしたり緩めたりすることができず、政治面の持続的な緊張はかならず経済貿易往来のいちだんの発展に影響する。中米国交正常化23年の歴史が証明するように、中米関係が正常に発展する時に、中米経済貿易関係は急速に発展するが、その逆であれば、二国間の経済貿易発展は緩慢になり、停滞し、ひいては後退の局面が現れるだろう。