「信用建設」に力を注ぐ中国

唐 穎

 「インターネットに接続してその信用(credit)を調べてみる……」、これは北京の多くの企業が仲間と協力して商売する前に必ずやらなければならないことである。マウスを使って北京市工商行政管理局の「紅盾315」ウェブサイト(www.hd315.gov.cn)をクリックすると、昨年7月にスタートした「不良行為警戒記録管理システム」から違法経営をしたり、信用のない企業や「自然人」を調べ出すことができる。 現在、上海の戸籍をもつ公民は同市の各商業銀行で商業貸付けを申請する時、その名前は自動的に「個人信用共同興信サービスシステム」に入り、銀行と貸付け関係を結び、および当座貸越しクレジットカードを申請した上海市民は個人信用記録がある。上海の銀行などの企業あるいは機構は、電話をダイヤルしてネットワークに接続すると、5秒後にある借款をする人の信用記録がわかり、それに基づいて金を貸すかどうかを決定する。

 昨年6月、深市工商行政管理局登録支局は、初めて「個人信用がよくない」ためにもとの破産企業責任者の新企業登録の申請を断った。 中国社会科学院「国家信用管理システム確立」課題グループメンバーの林鈞躍氏は、市場経済は成熟に向かうと、必ず信用経済に発展するが、企業と個人を問わず、その信用システムの確立はいずれも国家全体の信用システムの確立から離れられないと見ている。 最近、国家経済貿易委員会主任、全国市場経済整頓規範化指導者グループ弁公室主任の李栄融氏は、中国政府は各地で行われている企業と個人信用システムを確立する試みを支持し、それを市場経済建設の基礎的活動として積極的に推進すると表明し、また中国はすでに「企業経済保存書類制度」と「個人信用システム」の確立に着手したと述べた。 調査によると、現在中国の銀行、税関、税務、外国為替管理などの部門はいずれも不良行為を記録する「ブラック・リスト」制度を確立している。関連部門は「ブラック・リスト」に入れられた企業と個人の経営拡大の申請を制限し、その他の企業も関係あるウェブサイトから企業あるいは個人の信用不良記録を調べることができる。

 企業信用管理を開始

 有名な経済学者の呉敬氏は、中国の経済が計画経済から生まれたものであるため、信用の基礎は非常に脆弱だと見ている。 氏はまた、現在中国企業の信用状況があまりよくない原因として、およそ明晰な財産権の限界と強い権利維持意識に欠けている、政府が貸付けと形式を指定して形成した信用関係が確実な保証に欠けている、信用を失い、借金を踏み倒すなどの行為に対する処罰、取締りに力をあまり入れていない、信用サービス機構が弱く、その提供するサービスのレベルが高くないなどを挙げている。  林鈞躍氏は、信用管理はユーザーに対する調査、物事が行われる前、行われている間、行われた後のリスク抑制を通じて、企業経営のリスクを効果的に小さくすることができる。 昨年121日、北京は「中関村科学技術パーク」で企業信用制度の試行を始めたが、その主な目標は市場経済の法規に基づいて運行する企業信用管理サービスシステムを確立することにある。 このシステムは「信用情報サービスセンター」と「信用サービス仲介機構」からなっている。前者は工商管理、税務、労働、品質監督などの政府部門および銀行と関係のある企業から信用情報を収集し、後者は責任を持って社会に企業の登録報告、商業信用報告、信用等級評定報告などの情報を提供する。中関村科学技術パーク管理委員会は国際通用の標準を参照し、入札と専門家の評定と審査を通じて、スケールと実力が強く、資質がよい四社の専門公司を選んで第1陣の仲介機構に指定した。 説明によると、今後中関村科学技術パークの企業信用サービスシステムが集める企業信用情報の範囲は公安、裁判、仲裁、税関、衛生検疫、不動産管理、公用企業などの部門と関連ある情報を次第に増やす。

 個人信用建設を試みる

 中国で一番早く個人信用制度を確立した都市として、上海はすでに銀行間の個人信用記録システムを確立し、第1陣の200万の上海市民に個人信用報告を渡した。信用記録に頼って、銀行は以前数週間かかってはじめてはっきり調べることができた個人信用問題をわずか数秒で解決できるようになった。 この全国最大の経済と金融中心都市で、個人信用はすでに成熟し、個人消費者ローンは次第に広範な市民に受け入れられつつある。「個人共同興信システム」が開通されてから、上海市民はとても積極的に銀行から金を借りている。銀行から金を借りてから35日後に金を返しに来る人もおり、借金と返還の頻度がかなり高い。上海の銀行筋の分析によると、これらのユーザーは本当に金がないわけではなく、金を借りて時間どおりに返すことを通じて、自分の「ゼロ信用」の記録を突破し、信用が「よい」という評価を得たいためである。あるユーザーは、「よい記録があれば、今後住宅を買ったり、車を買ったりする場合、銀行は安心して金を貸してくれる」と言った。1998年上半期から各銀行は個人ローンで車を買うことを正式に経営項目に入れてから、いま、このような業務を開設した銀行は十数行ある。個人ローンで車を買うことが実施されてから、上海で新規増加した2万台余りのマイカーのうち、三分の一は借金を使って買ったものである。 伝えられるところによると、上海市政府の司法、税務、工商行政管理、社会保険などの部門も続々とこの興信システムに参加し、システムにより多くの公民の静態と動態の経済行為情報資料を提供している。

 関係法規を制定

 専門家たちは、信用システムの確立、整備は、個人の感情要素と自己認知能力に頼ってできることではなく、法的手段に頼って督促すべきだと普遍的に考えている。

 最近、中国銀行北京分行はクレジットカードによる「現金の当座貸越し」を取り消したが、その原因は、個人信用制度がまだ完全なものではなく、銀行のクレジットカードを利用して悪意に当座貸越しをする事件がしばしば発生し、銀行のリスクが大きくなる結果をもたらしている。報道によると、北京では現在依然として「現金の当座貸越し」サービスを保留しているのは工商銀行だけで、毎回最高限度額は2500元である。

 これについて、専門家たちは、できるだけ早く個人信用の法的環境を健全にし、そのための法律を制定し、「個人破産制度」を確立すべきだと呼びかけている。

 北京市政治協商会議委員の鄒正方氏は、企業の破産と同じように、個人の資産が個人の負債よりはるかに小さく、返済の可能性のない状況の下で、個人破産制度を実施して、破産した個人が債務を免除されると同時に、高消費をしてはならず、住宅や自動車などの高級品を買ってはならず、また消費者ローンをする時はさらに苛酷な条件を付け加えるように、一定の代価を払わなければならないことを決定づけ、また個人信用担保メカニズムを確立、整備し、外国の先進的経験を学び、政府が資金を調達して消費者ローン担保公司を設立して、個人信用消費に担保を提供し、個人の違約によるリスクを転嫁し、銀行の後顧の憂いを取り除くようにすべきだと主張している。

 中国初の個人信用制度を規範化させる地方法規――「深市の個人信用興信および信用等級評定管理規則」が今年11日から実施され始めた。この規則は個人信用情報の範囲、個人情報の収集、使用および情報収集機構の監督・管理に対し明確な規定を行い、特に個人信用状況の記録が大衆が法定のルートに基づいて、専門機構へ行って検索できる情報となっている。

 「管理規則」は、今後、市政府と中国人民銀行深市中心支店の許可を経た興信機構は、個人信用に関する情報を収集するとともに、商業銀行とその他の使用者に個人信用情報諮問および等級評定サービスを提供することができる。興信機構の業務は、専門に設置された「個人信用興信および等級評定監督委員会」の監督・管理を受け入れなければならないと規定した。

 興信業務が個人のプライバシーを侵害するのを防ぐため、「規則」は個人情報の収集は本人の同意を経なければならず、すでに収集した信用情報に対し、個人はそれを知る権利があり、住民身分証に頼って調査、訂正することができると明確にする一方、関係部門が個人情報を収集、利用する過程で個人情報の秘密を保持し、第三者に漏らし、範囲を超えての使用をしないように要求している。

 北京市民営科学技術実業家協会の紀世瀛会長は、厳格な法規を制定し、信用に背き、信用を騙し取る者に法律の制裁を加え、同時に強大な世論システムを確立して道徳の拘束力を強め、信用に背く行為を記録に留めて大衆に公開し、法律と道徳で治めることは信用建設の保障であると見ている。