中国で就業する6万人の外国人

于聞澤

 今や北京、上海、広州などの大都市では、外国人といっしょに仕事をしたり、学校で外国籍の教師の授業を受けたり、レストランで外国人シェフの作ったグルメ料理を味わったり、美容院で外国の高級メイクアップアーティストやヘアーアーティストのサービスを受けたり、バーで外国人歌手やダンサーのショーを観賞したりすることは、いずれももはや新鮮なことではなくなった。

 目下、中国で就業の登録をする外国人は6万人余りで、実際の就業人数はこの数字を上回っている。

世界各地から

 イタリア人の楽大豆氏(中国語名)(29歳)は中国へ来て、すでに10年になる。イタリアで中国語と美学を学び始めた彼は、中国へ来てから上海同済大学で中国語を、杭州美術学院で中国美術を学んだあと、ベネチア大学で博士課程を履修した際の研究テーマは中国チベットの建築であった。彼は、現在、上海で芸術コンサルタントセンターの芸術顧問を務め、頻繁に芸術活動を組織するなど、非常に忙しい日々を送っている。

 日本の京都から来た深谷恭子さんは、上海戯劇学院で中国語を学び終えたあと、上海に残った。彼女は上海博物館に行くのが好きで、また一人で外灘に行き、黄浦江沿岸の美しい景色を静かに座って味わうのも好きだが、より多くの時間は家で絵を描いて過ごす。彼女の作品は上海の絵画展覧会にすでに3回出品しており、友人も上海の美術界の人が多い。現在、彼女の中国語は、問題なく中国人と会話のできるレベルで、上海のボーイフレンドまでできた。

 オーストラリアの若者・ベンは、上海衡山路にあるバーでバーテンダーをしているほか、ある学校で英語の教師をしている。このほか、彼はさらに不定期の仕事をいくつか持っており、なかなかの収入を得て、気ままに暮らしている。ベンは上海がとても気に入っており、いつも故郷の友人らに「チャイナドレスを着た上海の娘さん」を見に来るようネット上で呼びかけている。

 昨年、上海広播交響楽団に招聘されてティンパニーの首席奏者となったマーク・シャープ氏は、上海に1LDKの部屋を借り、中国での仕事人生をスタートさせた。昨年、上海広播交響楽団が米国で団員の募集を行った際、打楽器の試験会場はマイアミになることが決まった。この知らせをピッツバーグから受け取ったマークは、大金をはたいて非常に素晴らしいティンパニーのセットをレンタルし、自分の木琴、チェレスタ、ドラムなどを持って、車一台分にぎっしり積み込み、30余時間かけてマイアミまで車を走らせた。マークは団に合流したあと、中国の打楽器に非常に興味を持ち、すぐにその要領をつかみ、その巧みなテクニックは同僚らに好評を博した。

 昨年、中国国際航空公司と海南航空公司が、それぞれ10数名の「外人乗務員」を導入した。国際航空が日本から招いた12名のスチュワーデスは、全員が日本路線のフライトで機内サービスを務めている。海南航空が導入した女性9人、男性2人の11名の「外人乗務員」の内訳は、カナダ国籍が9人、チェコ国籍、グァテマラ国籍が各1人で、最年少者は19歳、最年長者は29歳である。北米で最も有名な航空学校の一つであるカナダ・セネカ文理学院を卒業したこれらの若者は、北京での15日間のトレーニングを終えたあと、海口に到着し、海南航空の正式な実習乗務員となったのである。

 上海の夜の帳がおりると、さまざまな娯楽施設で外人シンガーや外人バンドが活躍し始める。彼らは主に米国、カナダ、ブラジル、インドネシア、フィリピン、ロシアなどの国々からやって来た人々で、その数は20グループ近くにのぼり、総人数は200人余りに達する。「夜猫」と称するインドネシアの5人グループのバンドは、みな年齢が30歳以下で、昨年初めに結成されてから上海にやって来たが、メンバーのそれぞれが歌え、踊れて、弾けるというバンドで、3時間の1ステージをこなすごとに500元のギャラを得ている。ロシアからやって来た7人のバンド「白楊林」は、星ランク付きもしくはそれに準じるホテルや施設に狙いを定めて活動しており、1ステージのギャラは約600元で、ステージの内容は歌や踊りのほか、パントマイム、ボードビルなどで、とりわけ50年代のソ連の歌が人気を呼んでいる。

広がる就業分野

 非常にはっきりしている傾向は、以前は、中国に来て仕事をする外国人は、基本的に各分野の専門家や企業の高級管理要員、技術スタッフであったのが、今では、外国人が仕事をする分野は大きく広がり、数多くの業種に及び、職務上の地位も多様化している。そして、中国における外国人の就業人数が最も増加している業種がサービス業である。

 虹橋路と凱旋路の交差地点にある西村美容院は、40数名のスタッフのうち、経営者とレジ係、8名の通訳を除いて、美容師、ヘアーアーティスト、洗髪係に至るまで30名のスタッフが、すべて日本から来ている。ここでは、大きな物はパーマ器械、椅子から、小物はファッション雑誌、ティッシュペーパーに至るまでも、すべての美容・ヘアケア関連の機器をみな日本から輸入しており、サービスも日本式で、客が足を踏み入れるや、スタッフ全員がお辞儀をして暖かく迎えてくれるのである。この中日合資の美容院は、日本の本社との間に高度な同調性を維持しており、ほぼ唯一と言える違いは、ここでは常に通訳がついていることである。

 復旦大学の顧暁鳴教授は、「バー、ヘアサロンといったサービス業は、技術含有度は高くないが、人々の暮らしや身体とつながっていて、『生命含有度』を具えており、中国ではこれらの業種でまだ足りないところがあるため、こうした業種が海外の資金や人材の目の付け所となるのだろう」と語る。

 中国で仕事する外国の人材のすそ野が広がっていることは、外国の人材に対する中国の吸収力が明らかに高まっていることを示しており、これは経済の急速な発展と不可分に結び付いている。

 上海関連の資料が示しているのは、上海経済の急速な発展と投資環境の充実にともない、証券、金融など国家級の要素市場がここに集まり、世界のベスト500企業のうちの半数近くが黄浦江両岸に事務所を構えており、上海が日増しに国際的な人材による事業開拓の楽土となっていることである。この3年間、上海で就業する外国人は、毎年10%のスピードで増えている。昨年第1四半期から第3四半期の上海における「勤労外国人」の人数は、前年同期比で36%増加した。199651日に中国が「中国における外国人就業管理規定」を公布してから今まで、上海で就業する外国人はすでに延べ26888人にのぼり、119の国と地域から来ている。内訳は、日本人が30.72%、米国人が13.48%を占め、続いて韓国、シンガポール、ドイツ、オーストラリア、フランスとなっている。これらの人々のうち、博士学位を有する者は2.63%、修士学位を有する者は11.49%、学士学位を有する者は74.96%で、その他の人々はほとんどがコック、美容師などのように一芸に秀でた者である。

 このほか、中国で就業する外国人を擁する企業も、独資、合資企業から、国内資本企業、株式制企業へと広がってきている。

 「勤労外国人」たちは、才能を発揮すると同時に、上海の税収にも貢献している。外国籍の人からもたらされる全市の個人所得税収入は年々上昇しており、昨年は第1四半期から第3四半期までで163600万元、前年同期比11.57%増となり、全市の個人所得税総収入に占める割合は20%を超した。これは、彼らの多くが高学歴の専門的人材で、高級技術や管理といった地位に就き、高給待遇を受けていることによるもので、納税する個人所得税もおのずと高額になっているのである。

 こうした状況は、北京でもほぼ似たり寄ったりである。

知能の注入

 先ごろ、中国太平洋保険公司は、4000名余りの応募者の中から厳しい審査を経て、それぞれカナダと米国の大会社から来た2名の外国人専門家を登用した。漏れ聞くところでは、同公司は非常に高い給与を約束しているという。

 同公司の王国良董事長によると、同公司は、人材資源の集中を長期的発展の重要な措置の一つとして、財務会計、投資、IT、精算技術、法律分野のハイレベルな人材を海外から大々的に呼び込み、彼らを通じて国際金融保険業の先端的な経営管理理念と技術を引き入れ、今後、同公司が世界や国内の資本市場と保険市場で突き進むための発展戦略を実施する準備をしているという。

 近年、上海は、海外からの人材の導入をかなり重視しており、聞くところによれば、上海が重点的に専門家の導入をはかっているのは、支柱産業、ハイテク産業、重要プロジェクト、持続可能な発展プロジェクトに役立つものであるという。今年の上海の知能注入活動は、民間企業、中国側持ち株・管理の中外合資企業、中外合作企業や中央および他省・他市の上海駐在企業などにまで広げて行い、重点プロジェクトに対しては、専門家が中国へ来る経費を一年に複数回分、資金援助するという。また、専門家導入後の成果を産業化する項目に対しては、関係部門が特定経費または低利融資の有償使用を提供するほか、外国人専門家が特許や技術をもって株式参加し、中国企業と合資、合作することを支持し、奨励している。

 目下、上海の国有企業は、技術やプラントの輸入にともない中国で仕事をする技術者、管理要員を導入しているほか、さらに一部の外国人専門家は国有企業で技術診断、監理、共同設計などを行っている。企業は、さらに外国人専門家の技術による株式参入、技術請負、生産協力などの新たな協力方式をつくり出している。

 先日、国家外国専門家局の支援を受けて中国国際人材交流協会が創設した中国国際人材市場が正式に設立されるとともに運営を開始したが、これは全国初の国際人材市場である。

 国際人材市場は、年間を通じて設置される、社会の各業種、国内外の顧客に向けて開かれた国際的人材の専門仲介サービスの場である。今後、海外からの専門家やスタッフの派遣・養成に関連したさまざまな活動は、漸次みなこの市場を通じて行うことになるという。今のところ、業務の上で国家外国専門家局の支援を受けるという強みを有しているため、科学技術方面の専門家、大学の外国人教師といった中国で仕事をする海外の専門家の招聘業務が国際人材市場の主な業務であり、国内ニーズに対する申請が取得できれば、運用に着手することになる。彼らは自らの人材ネットワークのルートのほか、国際的な「人材募集」に向けてウェブサイト上で情報を発信している。

外国人就業者数はさらに増える見込み

 毎年78日、中国語能力検定試験(HSK)が国内外の数十カ所の試験会場で行われている。

 HSKのホームページには、「HSKは、中国につながる橋」と書かれており、これを「中国のTOFEL(トフル)」になぞらえる人もいる。HSKは、中国語以外の言語を母語とする者の中国語能力を検定するために設立されたもので、1988年に初めて北京で開催され、1990年に専門家による評価を経て、1991年に国外で試行され、1992年に国家級の統一試験として正式に認められた。

 資料によれば、1995年の受験者数は12600人であったのが、2000年には8万人前後にまで増加し、2001年の国外受験生はさらに前年比47%増となった。2001年末現在、120余カ国の延べ38万人がすでにHSK(中国語能力検定試験)に参加したのである。

 最初のころにHSKを受験した人は、中国の歴史や文学に対する興味または文化交流の必要性から試験に参加する人が大部分であったが、今これを受験する人の中には、すでに中国で就業していたり、または就業するつもりのある人がかなりいる。

 中国で設立した日本、韓国の企業は、本国の従業員を使用する傾向が強いが、同時にアジア金融危機以降、本国の経済が衰退しているため、日本、韓国の若者の一部は就業の目を中国へ向けざるを得なくなっている。日本の名古屋からやって来たある若い女性は、日本国内で日本語教育を専攻し、中学校の教師を2年間務めたあと、中国へ来て中国語を学んでいるが、卒業後は中国に留まって日本語教師になりたいと語る。彼女はすでにHSKを続けて2回受験しており、3級証明書を取得している。親戚が上海で貿易会社を経営しているというある韓国人留学生は、中国語をマスターしてその会社を手伝いたいと語る。

 中国は、すでに大量の就業の機会を世界に提供している。中国経済の一層の発展と中国のWTO加盟にともない、中国で就業する外国人の数はいちだんと増加するはずである。そこで、外国人の就業が中国人の就業に脅威をもたらすようなことはあり得るのか、転ばぬ先の杖にと、この問題を提起する専門家がいる。

 中国人民大学労働人事学院の董克用教授は、「規範化された条件のもとで、限定された職場に少数の外国籍従業員を雇用部門が雇い入れるのは構わないが、これを奨励して普遍的な現象にすべきではない。各国は本国の労働力を保護する措置を講じており、外国人就業者に対しては厳しく規制している。目下、中国の労働力市場は供給が需要を上回っており、中国の就業者の養成に力を入れるべきだ」と語る。

 北京市労働・社会保障局就業処の孟憲蒼処長は、「現在、北京市で仕事し、就業許可証の取得手続を済ませている外国人は16000人、台湾・香港・澳門出身者は5000人で、彼らのうちの85%は中級・高級管理要員か専門技術者だ。一千万人を超す北京の人口と比べれば、人数から言っても職務上の地位から言っても、北京人の就業にとって決して脅威となってはいない」と語る。

 ある専門家は、「短期間のうちに大量の外資系企業や外国の人材が中国に押し寄せるというようなことはまだ起こらないであろう。中国は、外国人が中国で就業する条件の一つとして『はっきりとした任用機関がなければならない』と規定している。そして、給与・福利などの問題についても考慮しており、圧倒的多数の中国企業は、今のところ無闇に外国人を任用することはできない」と分析する。このほか、いくつかのヘッドハンティング会社が明かしたところでは、現在、彼らを通して一部の外国人が中国での仕事を探す機会は確かに常にあるが、成功率は決して高くないという。それは、多くの顧客が求めているのは中国の人材であるためで、中国駐在外国企業の人材の「本土化」は日ごとに明確になってきているという。したがって、現在、外国人に飯の種を奪われるのではないかと中国人が懸念する必要はまったくない。しかし今後、国際間の人材競争は不可避であり、企業は、中国人であれ、外国人であれ、最も有能な人物を選び続けることになる。