陣痛に見舞われる中国の家電業

唐元カイ

 市場化が最も活発であるのに、「価格戦」の洗礼をいやというほど受けた中国の家電業はますます厳しい情勢に直面している。調査によると、昨年の中国の家電市場ではエアコンの需要量が楽観できるほか、冷蔵庫、洗濯機の需要増加はいずれもわりに緩慢であり、そのうえ、製品が軒並みに値下げしたため、家電企業の実績が大幅に下がり、とくにカラーテレビ業種が最も深刻で、供給が過剰する、輸出がアメリカ経済と世界経済の衰退の影響を受ける、技術が変わるなどの原因で、その利潤率は引き続き下がっている。

 中国の家電産業はかつて高速成長し、平均利潤率が10%以上に達した時期もあった。20世紀90年代の後期から成熟期に入り、市場は飽和状態となり、企業に残した空間が非常に限られたものであり、そのため、業界では悪性競争が激化した。

 WTO加盟という大きな背景の下で、今後の中国の家電企業は変革を求めるほか、進むことのできる道がないのである。 

セールス方式と製品の種類が日増しに多様化

 最近の中国の新聞や雑誌を開いてみると、「不動産のページ」に、ひいては丸一ページに家電製品の広告を載せる状況がよく目につく。不動産業にブームが現われるに伴い、家電メーカーは大手不動産業者と協力して、互いに相手から新しいビジネス・チャンスと売れ口を探し、ともに利益を得ることを望むことは、すでに当面の中国家電業の新しい流行の趨勢となっており、ここから家電の新しいセールス方式が生まれてくるかもしれない。 

 さらに、いまの家電製品についてのニュースに留意してみると、「情報家電」などの新製品が急に中国人に近づいてきていることが分かる。それらのほとんどがまだ「概念の段階」にとどまっているにもかかわらず、昨年の情報家電の開発はすでに目に見える進展をとげた。

 「情報家電」はさまざまな家電製品と室内ネットワークの間の整合であり、その主要な特徴はデジタル化、インテリジェント化、ネットワーク化であり、通信、コンピューター、消費電子技術の結合である。その絶え間ない進歩は、競争で悪戦苦闘し、泥沼の中でもがいている家電企業にとって、明るい見通しだと言えるかも知れない。   

 創維グループの黄宏生董事長は、現在、在来の家電産業はインターネット産業と結合しつつあり、情報家電、ハイビジョンテレビは全世界でも新興の産業であり、中国人がその中に融け込み、チャンスをしっかりつかむことができれば、今後の20年内に中国製の世界ブランド品が現われるだろう、と考えている。

 このほか、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの大型家電製品が売れなくなった時、利潤が相対的に大きな小型家電製品が目玉商品となった。一方では、内外の大手家電企業が続々とこの分野に進出し、他方では、小型家電企業は技術と販売網の「防波堤」を急いで築いている。小型家電製品の利潤率は30%以上に達してはいるが、その需要量が大きいため、市場の空間はかなり広い。湯沸かし器を例にとって見よう。今後5年内に、普及率の低い農村を除き、中国都市部の年間需要量は平均932万台前後に達する。

 現在、中国の小型家電業は二つの部分からなり、一つは中低級の製品で、ほとんど国内の企業が占有しているが、もう一つは高級品で、外国製品が幅を利かせている。これは大型家電企業が小型家電分野への進出のために、あらかじめ小さからぬ空間を残した。

 しかし、多くの製品にとっては、小型家電だけに頼って企業を支え、苦境から抜け出し、大型家電市場での衰勢を打開するのは、恐らく不可能なことである。「現在の小型家電は各大手企業にとって焼け石に水のようなものだ」と見る専門家さえいる。

商業資本がチャンスを利用して拡張

 昨年以来、中国の家電市場に人目を引く新しい現象が現われた。それは、チェーン店を基本的経営形式とする商業資本が絶えず発展し、大きくなり、特に北京の「国美」、江蘇の「蘇寧」、山東の「三聯」を代表とする大手家電企業が先を争って国内市場に進出していることである。「蘇寧」は42000万元を投じて、3年内に1500軒の特許チェーン店を設立することを披露した。「国美」の目標も同様に全国最大の家電チェーン店を目指しており、2003年に全国に150軒のチェーン店を設立し、100億元以上の年間売上高を達成するほか、国外でもチェーン店を設立するという。「三聯」もチェーン店の経営方式を取っており、山東省で80余軒のチェーン店を設けている。

 この三大公司がスピードとスケールを格別に強調しているのは、一方では、中国の家電販売がすでに新旧経営形式の転換期に入り、「販売ルート価格戦」が「メーカー価格戦」に取って代わったからである。以前の「価格戦」の中で、製品価格の決定権はメーカーに握られ、販売ルートはメーカーについて価格を調整するだけであったが、製品の販売ルートが発展し、大きくなった後、販売ルートを通じての入荷数量が大きくなり、市場と競争の需要に基づいて自ら価格を決定できるようになり、価格の決定権はある程度メーカーから販売ルートに移り始め、中国の家電市場の今後数年の「価格戦」の主役はメーカーではなくて、製品の販売ルートである。他方では、中国はすでにWTOに加盟し、アメリカの「ウォルマート」とフランスの「カルフール」など国外の大手会社は中国の大都市で支店を設立した。いまのところ、外国と国産の家電製品を売る店がともに多くなく、外国家電の経営規模も大きくないため、この二つの販売ルートの間には大きな衝突がまだないが、しかし、この二つのルートが中国市場で足場をほぼかためた時には、正面衝突は間違いなく避けられなくなるだろう。専門家の予測では、有利な位置を占めるため、国際商業資本が疑いなく中国国内の有力な企業の協力を求めるが、その時には、合資と買収を問わず、ネットワークが大きく、ルートが多いことは、競争の決め手になる。

外国製品の戦略的移転

 中国の家電業種が厳しい情勢に直面している時、外国製の家電は中国への戦略的移転に拍車をかけている。松下、日立、東芝はそれぞれ中国で研究開発センターを設立した。松下電器は中国で二番目の松下電器生産基地を設立し、アメリカのケンタッキー州にある電子レンジ生産ラインを上海に移す意向を明らかにした。日立は対中投資を増やし、安徽省の蕪湖で投資額2100万ドル、年産量30万台の家庭用エアコン新公司を設立するほか、深セン、福建各地でも背景投影テレビ生産基地を建設することを明らかにした。東芝も日本国内のブラウン管テレビの生産を中止し、デジタル・テレビを含むテレビ生産ラインをすべて中国に移すことを明らかにした。韓国のLG、サムスンは中国での生産能力を拡充している。

 資料が顕示しているように、10社近くの国外の家電企業が20世紀80年代末に中国で生産ラインを建設したが、最近またしてもその生産ラインの中国への移転を計画しているか、あるいは実施している。外国企業の生産ラインの移転ブームがひそかに訪れている。

 外国の家電企業は次々と動いているが、これはローコストの競争で優位に立つなどの原因のほか、中国家電市場の誘惑力がますます大きくなっていることもその一因である。中国は内需市場が巨大で、給料が安く、技術者と開発者が大勢おり、そのため、対中国投資はほとんど全世界同業者の必然的な選択となっている。

中国と外国の協力

 中国のWTO加盟後、関税が引き下げられて、国外の技術、設備、資源の導入コストが大幅に下がり、多くの家電企業は同等の価格の基礎の上でその他の製品と品質や技術で競争する機会を持つようになった。黄宏生董事長は、WTOの加盟は、中国企業が世界貿易の主流に融け込み、貿易摩擦を減らし、関税の障壁を突破し、近代化した大工業生産とハイテク・ニューテクのイノベーションの面で世界の有名な企業とのギャップを縮めるのに役立ち、中国の家電企業が世界各地で販売網を設立することや委託加工による輸出にも有利である。

 外資企業は資金、技術、管理の面でも、国際経営理念及びグローバルなネットワークなどの面でも、中国の家電企業が比べものにならない優位を持っている。しかし、黄宏生董事長は、中国の家電業種はすでに世界市場でコストの面で最も競争力を持つ業種となった、と見ている。

 現在、中国の家電業は新たな中外協力ブームを巻き起こしている。多くの企業は次々に外国投資家と合資、協力を行い、その資源や資本、製品構成などを利用して企業の再整合を行っている。

 各企業の選んだ難関突破の方向と力の入れ方がそれぞれ違っているにもかかわらず、その中で中国家電業の再生の機会がはぐくまれているかもしれない。人々はさまざまな努力の中から、家電企業が依然として赤字増加に悩まされているが、さまざまなチャンスを通じて再生の道を歩むのを放棄していないことを見てとることができる。