中国、初めてWTOの規則によって貿易紛争を解決

 魯 皮

 中国政府は314日、WTO保障措置の関係規定に基づいて、アメリカが320日正式に発動する鉄鋼輸入を制限する「201条」の問題についてアメリカと話し合うことをWTOに提出した。322日、中米両国はワシントンでこの問題について協議を行った。中国代表団は協議の中で、アメリカ政府にとくに中国がアメリカに輸出するすべての鉄鋼製品に発展途上国待遇を与えるよう要求し、またWTO協定に基づいてさらなる措置をとる権利を保留することを明らかにした。これはWTO加盟後、中国がWTOの関係規定を利用して貿易紛争を解決する初めてのケースである。

 アメリカの鉄鋼保護の最終救済案「201条」は、鋼材など主要輸入品目に対し3年にわたる関税割当制限あるいは830%にも達する関税を徴収すると規定している。これはいままでのところ、歴史的にアメリカが輸入鉄鋼製品に行った最も重大な貿易制限である。以前の鉄鋼保護対策と比べて、今回の措置は制裁を受ける国が多く、それに関わる製品の面が広く、保護措置の持続時間が長いという特徴がある。専門家と業界筋は、これは中国鉄鋼の対米輸出に影響を及ぼすだけでなく、これによって引き起こされる中国鋼材市場に対する潜在的な衝撃はなおさら見くびってはならないと見ている。

 国際貿易法の専門家の見方によれば、アメリカが鉄鋼輸入を制限をするのは、アメリカの鉄鋼業が衰退しているからである。過去の4年間に、政府に破産を申請したアメリカの鉄鋼企業はアメリカ鉄鋼業界の半分以上を占める31社もあった。多くの鉄鋼企業の倒産によって、アメリカの15万人の鉄鋼労働者のうち、7万人が失業した。

 それと同時に、鉄鋼企業が高度に集中している地区の鉄鋼企業の従業員、定年退職者およびその家族の投票数は今年のアメリカの中間国会選挙の中で、衆議院の6議席に対し決定的な役割を果たすが、この6議席は与党の共和党がその多数の地位を保てるかどうかを決定づける可能性が大いにある。経済と政治の二方面の原因は、ブッシュ大統領が「201条」を発動するのを促した。こうすれば、アメリカの鉄鋼企業は3年間に再編を行い、競争力を回復し、鉄鋼労働者の政治的支持を獲得できるというわけである。

 無視できない影響

 中国の鉄鋼生産企業がアメリカに輸出する鉄鋼総量は多くはないが、中国の鉄鋼製品の主な輸出対象国として、アメリカのこの挙が中国の鉄鋼輸出に及ぼした影響は明らかなものである。一部の鉄鋼企業が損害を直接蒙るだけでなく、アメリカの鉄鋼輸入制限で、国際市場から締め出された大量の余剰鋼材が次々と中国市場に回され、中国の鉄鋼製品の大量過剰を招く可能性があり、これによって、中国の鉄鋼企業はいっそう苦しくなる。

 「201条」を発動する保護貿易措置はアメリカ政府の行為にすぎないとはいえ、アメリカの企業が制裁を受ける輸入品に対し、新たに反ダンピング訴訟を起こす可能性を排除しない。中国の鉄鋼業はさらなるチャレンジに直面する可能性がある。

 アメリカの「201条」の波及する国は、中国のほかに、EU、日本、韓国、ロシア、ウクライナ、ブラジルなど主な鉄鋼輸出国も含まれている。これらの国と地域も緊急保障措置をとるが、全世界で鉄鋼保護貿易の連鎖反応を引き起こす可能性がある。伝えられるところによると、EUは輸入総量に枠を設け、枠からはみ出した部分は関税の税率の上乗せを行うことにした。これは同様に中国の鉄鋼市場を脅かしている。

 戦略的調整を実行

 中国政府と企業は速やかに反応を示し、一連の措置をとっている。対外貿易経済合作部の関係責任者はアメリカとの協議が満足できないものであれば、中国はWTOに提訴すると表明した。

 しかし、今回の貿易紛争は協議を通じてすかさず解決することができなければ、WTOメカニズムに基づいて解決を求めても、少なくとも1年間かかる。これは中国の鉄鋼輸出が直面する脅威が短期間に解消されないことを意味している。そのため、関係専門家は政府が積極的にそれに対処すると同時に、関係方面もさまざまな対応措置をとって、リスクを積極的に解消しなければならないと提案した。今後数年間、中国の鉄鋼生産は製品構成、合併などの面から戦略的調整を行い、余剰製品の出荷を避けると同時に、できるだけ早く生産と輸出の策略を調整すべきである。

 鉄鋼企業はまず、手元にある発注書をうきちんと処理し、損害を最小限に減らすようにする。企業はアメリカ国内の輸入企業と提携し、証明力のあるあらゆる証拠、資料とさまざまな関連情報をできるだけ提供し、双方の利益を保護するよう努めなければならない。

 ゲームのルールで自分を守るようにする

 対外貿易経済合作部部長の石広生氏によると、対外貿易経済合作部は公平貿易局を設立し、国家経済貿易委員会も関連機構を設立して、一緒に中国での外国製品のダンピング行為を調査し、裁定することにした。

 今年に入ってから、中国の一部の輸出製品は次々と貿易紛争に巻き込まれている。1月に、EUは中国の動物製品の輸入を一時停止し、35日にアメリカが発動した鉄鋼セーフガードは再び中国に影響を及ぼした。

 問題は今年になってから出たものではない。関係資料がケ顕示しているように、世界の貿易大国として、中国は事実上さまざまな保護貿易主義の最大の被害国となっている。これまでに、中国の企業が受けた国外の反ダンピング調査は480件以上に達し、輸出は100億ドル以上の損害を蒙った。昨年の1年間だけでも、国外が中国の企業に対し行った反ダンピングと保護措置の調査は46件に達し、新記録をつくった。中国は1997年から反ダンピング調査を始めたが、現在までのところ、中国が行った外国製品の反ダンピング調査は14件にすぎない。

 国外の反ダンピング調査と頻繁に発生する貿易紛争を前にして、中国国内には自己保護意識の乏しい企業も一部ある。中国の企業にとって、経済グローバル化はより多くの機会を意味しているが、より大きなリスクをももたらした。中国がWTOに加盟してから、国内の企業は「ゲームルール」を守るだけでなく、「それを上手に使いこなせるようしなければならない。

 国の関係部門の責任者は次のことを明らかにした。中国の企業がWTOの紛争解決メカニズムを生かして貿易紛争を解決する時、政府は積極的な態度をとってそれを支持する。外国製品が中国にダンピングするかまたは国内企業が国外で製品を販売する時、不公平な競争と待遇に出会った場合、企業は少しもためらわずに政府と業界組織に提訴すべきである。貿易パートナーが保障措置と反ダンピングを乱用する場合、自国企業の合法的権益を守るため、政府は企業の提訴に基づいて、反ダンピングを行う国に適度な反応を示すようにしている。