WTO加盟後の中国で発展を速める外資系銀行

莫 南

 さる34日、中国人民銀行の審査、認可を経て、厦門国際銀行は中国のWTO加盟後の、大陸部住民向けの外国為替業務を認可された最初の外資系金融機関となり、経営の内容は、大陸部住民の個人外貨貯蓄預金、個人預金証書抵当貸付、個人売買などがある。こうして、厦門国際銀行はこれまで扱っている部分的な外国為替業務を全面的な外国為替業務に拡大することができ、また顧客の範囲もこれについて内外の企業、外国の中国駐在机構、香港・澳門・台湾の大陸部駐在機関、外国人、香港・澳門・台湾同胞及び大陸部の住民にまで拡大される。

 320日、中国人民銀行の審査、認可を経て、ファースト・ナショナル・シティバンク上海支店は正式に国内の住民と企業を含む各類の得意先向けの全面的な外国為替業務を扱い、また一部分の人民元業務を引き続き経営することを認可された。

 328日、中央銀行はまた香港上海銀行の北京支店と上海支店が国内の住民と企業に外国為替業務を提供するのを認可した。

 業界筋の見方では、外資系銀行が大陸部住民向けの外国為替業務取扱を認可されたことは、WTOの枠組みの下で中国が銀行の対外業務を開放する面で実質的な一歩を踏み出したことを示している。

 昨年1211日、中国は正式にWTOに加盟した。同日、中国人民銀行は外資系銀行の外国為替業務取扱の地域と得意先面の制限を撤廃し、また外資系銀行が中資企業と中国の住民に対し外国為替業務を始めるのを認可するとともに、外資系銀行の人民元業務取扱に対し、5年内に地域と時間の制限を逐次撤廃すると発表した。

 今年21日、中国は新しい「外資金融機関管理条例」とその「実施細則」を正式に公布した。同法規は外資金融機関がその中国における業務と顧客の範囲を拡大するために具体的操作の手引きを提供している。

 それ以来、多くの外資系銀行は続々と中国人民銀行に、営業資金増加や業務範囲拡大を要求する申請を出した。金融業界の専門家の考えでは、これは中国のWTO加盟後、外資系銀行が対中業務の発展の見通しを楽観視していることを示している。

中国の市場に大きな期待をかける

 321日、シティ・グループ取締役会長兼CEOのフォード・ウィル氏は、彼の指導する世界最大の金融機関――シティバンクの中国進出百周年を祝うために、わざわざアメリカから上海の世紀広場を訪れた。同日、装いを一新したシティバンク浦西支店が正式に顧客を迎えた。これによって、中国人はシティバンクに外国為替口座を開設することができるようになった。ウィル氏は自ら最初の中国人顧客――中国ネットワーク公司億唐ネットの創立者兼CEOの唐海松のために外国為替口座を開設し、外資系銀行が中国で最初の個人業務を扱うのを自分の目で確めた。

 シティバンクをまだ記憶している上海の年輩の人が少なくない。1902年、シティバンクは正式に上海で支店を設立し、アメリカの銀行として真先に中国に進出した。シティバンクにとって、中国国内の顧客を相手として外国為替業務を扱うのを認可されたことは、百年来の中国における二番目の起点となった。この日を迎えるため、シティバンクは18年も待った。1984年、シティバンクは30余年ぶりに上海に戻り、上海支店を開設した。1995年、シティバンクはその中国本部を香港から上海に移し、翌9612月末に、上海浦東新区で人民元業務取扱を認可された最初の外資系銀行の一つとなり、1998年末には上海銀行カード・ネットワーク・サービス・センターと契約を結んだ最初の外資系銀行となり、正式に上海ATMに加入した。2000年、シティバンクの資産ランク付けは一躍国内における外資系銀行の第一位に上昇し、人民元預金と貸出は外資系銀行の人民元預金と貸出総額の5分の1を占めた。

 1812年に創立したシティバンクは、現在アメリカ最大のグローバルな銀行の一つであり、百余の国と地域に3400以上の支店や事務所を設けている。いままでに、シティバンクは中国の上海、北京、広州、深センなどの都市に支店を開設し、中国ゾーン本部を上海浦東に設けた。

 シティバンクは中国市場に大きな期待をかけている。20世紀30年代の5年内に、シティバンクが中国で700余万ドルの利潤を獲得したが、その額は世界各地の支店の収益総額の40%に近いものであった。今日では、シティバンクは前にもまして中国市場を楽観視する理由があり、シティバンク中国ゾーンの責任者はかつて、同行の目標は中国の主要な人民元貸出銀行となり、現地の企業と個人との協力分野を開拓、拡大することであると表明した。シティバンクはまた、市場発展の要求に応じて、顧客のために最良のスライド案を開発し、中国でのeビジネス発展戦略を実施する。シティバンクは完備したグローバルな製品と業務シリーズが中国で積極的に応用されるのを期待している。同行はまた、現地の公司が外資企業に代わってシティバンクの業務の重点となり、今後数年の業務成長が主に現地の公司によって実現される、と楽観視している。

 伝えられるところによると、上海和平飯店に設けられているシティバンク上海支店傘下の支店も321日に同時に開業した。4月、シティバンクは上海浦東でさらに一軒の支店を開設し、また今後の数カ月内に北京、広州、深センの支店も全面的な外国為替業務を始める計画である。

 ウィル氏は、「その他の新興市場と比べて、中国市場の成長のチャンスが最もすばらしい。そのため最も投資に値する地域でもある。中国が今後の10年ないし20年に導入する外資は数千億ドルに達する」と語った。

拡大を速める外資系銀行

 中国のWTO加盟が確実となってから、外資系銀行は時を移さずに多くの具体的な行動をとった。中国業務本部を香港から上海に移した銀行もあれば、中国のことに明るい職員を上海業務本部に派遣して充実させた銀行もある。個人銀行、電子銀行及び仲介銀行業務などのホットな分野では、外資系銀行はすでに法規についての見方や、技術と従業員の配備などの具体的な業務について、中央銀行の監督・管理部門に諮問を始めた。

 21日、新しい「外資金融機関管理条例」とその実施細則が正式に施行された後、香港上海銀行、香港東亜銀行、シティバンクは相前後して中国人民銀行上海支店に、外国為替業務と人民元業務運営資金増額の申請を渡した。チャータード・バンク、バンク・インドスエズ銀行、華僑銀行などいくつかの外資系銀行も、増資の関連業務に取りかかった。香港上海銀行は上海、深セン、広州、北京の四支店で国内住民向けの外国為替業務取扱を始める計画である。ベルギーのKBCバンク、イタリアのインテーザ・ビーシーアイ・エッセ・ピー・ア及びJPモルガン・チェース・マンハッタン・バンクも人民元業務の申請資料を積極的に作成している。

 香港上海銀行はずっと中国大陸部の業務の開拓・拡大に非常に積極的である。同行中国本部スポークスマンの張丹丹氏は次のように語った。香港上海銀行は現在、中国大陸部で外資系銀行の最大な支店網を擁し、支店が9軒ある。そのため、関係ある申請は何回かに分けて提出されることになろう。中国のWTO加盟後間もなく、香港上海銀行のような外資系銀行が現地の住民、企業に外国為替業務を提供できることは、中国が金融分野を開放する面の重大な突破である。

 それと同時に、一部の外資金融機関も続々と事務所の支店への昇格を申請している。例えば、香港上海商業銀行が最短期間内の上海と深センにある事務所の支店昇格を提出したこと、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド・ピーエルシーが昇格を在中国業務の中長期発展の先決条件としていること、ファースト・ユニオン上海事務処がその本店に、事務所の支店昇格を申請したこと、アメリカのフリート銀行が近い将来の上海事務所の支店昇格について協議を急いでいること、日本の住友信託銀行がすでに上海支店開設申請書を正式に提出したことなどはそのいくつかの例である。これらの外資系銀行はいずれも、営業機構を設立すると、伝統的な商業銀行の分野だけでなく、資金管理、債務融資、企業融資などの方面に発展するチャンスをも探すことを明らかにした。

人民元業務取扱を陸続と申請

 33日、中国人民銀行は条件にかなった7行の外資系銀行が上海と深センで人民元業務を扱うのを認可されたと発表した。この7行は、オーストラリア・ニュージーランド銀行上海支店、コメルツバンク上海支店、日本旭日銀行上海支店、韓国ハンビット銀行上海支店、韓国産業銀行上海支店、日本三和銀行深セン支店、日本富士銀行深セン支店である。

 中央銀行に人民元業務取扱を申請した、天津にある日聯銀行の森川幸好頭取は次のように語った。中国がWTO加盟の時に行った約束に基づき、外資系銀行が中国で人民元業務を扱うことができるようになり、日聯銀行は早くから準備を始め、できるだけ早く中国人民銀行に認可されるのを望んでいる。また、日聯銀行が人民元業務を扱うことは、きっと日本企業の対中投資の後顧の憂いをなくし、より多くの日本企業の対中投資を誘致し、中国、特に天津の経済発展に新たな活力を注ぎ込むことになろう。

 1997年、中国人民銀行は関係規定に基づいて、9行の外資系銀行が上海浦東で人民元業務の取扱を試行するのを初めて認可した。1998年、中国人民銀行は外資系銀行の人民元業務取扱の試行範囲を引き続き拡大し、10行の外資系銀行が上海浦東で、6行の外資系銀行が深センで人民元業務の取扱を試行するのを認可した。現在までのところ、中国で人民元業務取扱を認可された外資系銀行は32行に達しているが、そのうち上海は24行で、深センは8行である。

良好な経営業績

 中国のWTO加盟の前に、外資系銀行が人民元業務取扱が試行する都市として、上海は多くの外資系銀行に甘みをしめさせた。

 昨年末現在、上海にある53社の外資金融機関の資産総額はドルに換算して236億百万ドルに達し、そのうち、貸出、預金残高はそれぞれ97億ドルと333000万ドルで、昨年初めより19200万ドルと47000万ドル増えた。

 上述の外資金融機関のうち、人民元業務を扱う外資系銀行24行の昨年末現在の人民元業務資産総額は3398000万元で、そのうちの貸出残高は2897000万元で、昨年初めより928000万元増え、人民元負債総額は3032000万元に達し、そのうちの預金残高は966000万元で、昨年初めより369000万元増えた。そのうち香港上海銀行とシティバンクの増加の最も速い銀行となり、それぞれ157%、250%増えた。

 現在、上海にある外資系銀行の業務には、自国通貨と外貨の取扱を主とし、多ルートで発展する枠組みが日増しに明らかになってきた。昨年、外国為替資金の使用需要が軒並みに不況であるという状況の下で、各外資系銀行は積極的な経営を通じて、元のマーケット・シェアをほぼ確保した。同時に人民元業務の開拓に努め、昨年の人民元貸出は32%増え、その資産業務の主要な成長要素となった。これらの外資系銀行はまたネットワークと科学技術の強みに頼って仲介業務を発展させ、経営収入を増やしている。

 中国のその他の都市にある外資系銀行も急速な発展をとげ、よい業績をあげている。

 19821月に南洋商業銀行深セン支店が開業してから今までに、深セン市は外資系銀行の営業機関が27カ所あり、その中に外資系銀行支店24軒、中外合弁銀行本店1、支店1社、中外合弁財務公司1社が含まれている。そのほか、事務所を深センに設けている外資系銀行が4行ある。

 伝えられるところによると、2001年、深センにある外資系銀行の利潤総額は23722700ドルに達し、資産総額は773000万ドルで、人民元業務を扱う8行の外資系銀行の人民元業務の資産は1099900万元、貸付は99200万元、預金は208500万元、納税前の利潤は62432000元にそれぞれ達した。

 中国人民銀行天津分行の劉崇明行長は、天津にある外資系銀行の発展の勢いがよく、昨年はその前の数年間の総体的欠損の局面を転換させ、総体利潤1786万ドルを獲得したことを明らかにした。

 中国人民銀行外資系銀行監督・管理処の曹元芳氏の説明では、天津は中国のWTO加盟後に真先に金融を対外開放した都市の一つである。現在、全市に外資系銀行支店が14軒、外資系銀行事務所が5カ所ある。昨年末現在、14社の金融機関の資産総額は28億ドル、貸付総額は115000万ドルにそれぞれ達した。天津にある外資系銀行は前年同期に比べて、正常資産は19.88%増え、不良資産は5.67%減り、リスク抑制能力が強くなった。同時にクレジットカード、貸付公約、予備信用状などの仲介業務がかなり速い発展をとげ、貨幣互換などの新しい業務もいくつかの銀行で扱われている。外資系銀行が人民元業務を扱うことを認可された後、天津にある外資系銀行のうち、申請を出したものが6行あり、中央銀行の認可を待っているものは4行あり、残りの2行は審査中である。

 統計によると、現在、中国に進出した外資系銀行は400行あるが、うちの200行がすでに営業を始めた。

外資系銀行の発展を速める株式参加

 外資系銀行の発展を速める最も速い道はやはり資本の拡張であるが、株式参加は恐らく持株実現の第一歩となるだろう。

 最近、中国人民銀行の認可を経て、香港上海銀行、香港の上海商業銀行は上海銀行に投資して株式に参加し、同時に国際金融公司も上海銀行の持株を増やしている。こうして、今回外資の金融資本が注ぎ込まれたあと、上海銀行の外資の割合が株式総額の18%に達し、中国のWTO加盟後に最初に外資系商業銀行の株式参加を吸収し、また多くの海外金融機関が投資して株式に参加する大陸部の商業銀行となった。

 報道によると、香港上海銀行が上海銀行への株式参加に大きな興味を持っているのは、上海銀行の良好な資産の質と特有のネットワークの強みのほか、その特殊な株主権構成がより気に入ったからである。上海銀行の個人株主の持株は30%にも達しており、その株主には多くの私営企業だけではなく、国際金融公司の持株もある。独特な株主権構造は将来の資本運営に大きな空間を提供した。

 関係者の見方では、今回の株式参加と資本追加は、国内外の銀行が長期にわたって「ともに有利」関係をはかるために行った有益な試みである。内外の銀行の間には明らかな資源の相互補完の効果がある。つまり、外資系銀行は中資銀行の国内ネットワークの資源、人民元建て資金の強み及び広範な顧客の関係を必要とし、中資銀行は外資系銀行の国際ネットワークの資源、外貨資金の強みと先進的な管理経験を必要としている。

 さる2月の報道によれば、交通銀行が外資を株式に参加させることはほぼ決まっており、同銀行の資産整理や国外の戦略投資家を選ぶなどの活動は、計画どおりに進められているという。

 瑞銀華宝公司の中国経済兼策略分析家の陳昌華氏は、中国のWTO加盟後、管制が逐次緩和されるにつれて、外資系機関は大陸部の中小銀行の買収を速めるものと見られている。

外資系銀行はどれだけのマーケット・シェアを占めるか

 先日、シティバンク・アジア太平洋地域総裁のブラウン氏は「中外金融機関協力発展シンポジウム」で、WTO加盟後の中国の金融市場が外資系銀行に逐次開放されているにもかかわらず、中国の金融市場に占める外資系銀行のシェアはさらに十年たっても10%を越えないから、中資銀行は心配する必要がないと次のように語った。

 外資系銀行の中国市場に占めるシェアは現在まだ2%に足らずであるが、これから努力をして5%に達成できればかなりなものであり、中資銀行と全然比べものにならない。しかし、外資系銀行は中国の市場を重視している。例えば、消費者ローンを例にあげると、アメリカでは、GDP成長の3分の2は国内消費によって実現されているが、中国はそれと違って、中国の内需はまだまだそれを促してはおらず、個人金融業務の発展空間はまだかなり大きく、本当の意義でのクレジットカードはまだ非常に少ない。しかも、中国の人口が多く、人々の収入水準が絶えず上がっているため、個人金融業務の面で外資系銀行と中国の現地銀行とは大きな協力の空間がある。

 チャータード銀行中国ゾーンの黄遠輝総裁は、中国がWTOに加盟し、銀行業を逐次開放するにつれて、外資系銀行のシェアは2010年以前に10%まで高められる、と語った。

 国務院発展研究センター発展部の李善同部長は次のように述べた。

 今後5年内に、中国にある外資系銀行が決算業務量の約半分を占めるのはまったく可能であり、少数の大都市では、この割合はもっと大きくなる。中国にある外資系銀行はずっと付加価値の高い仲介業務を優先的に発展させることを重視しており、資金を占用しないが、収益がわりと高いその他の投資銀行業務もその重点的に発展させる対象である。WTO加盟後の外国為替業務の地域と顧客の制限は逐次撤廃され、外資系銀行はその管理と技術の強みに頼って外国為替業務を急速に発展させているが、中国にある外資系銀行が取り扱っている輸出決算業務はすでに大陸部の市場で40%以上のシェアを占めている。