農民の収入を増やす

唐元かい

 中国では人口の70%以上を占める農民の収入はわりに低く、増加幅が小さいため、国内消費の需要回復を制約する主な要因となっている。

 農民の収入をどのように増やすか。これは旧い問題でもあれば、新しい背景もある。この新しい背景とは、WTO加盟にしたがって、中国の農業が新たな挑戦に直面していることだ。つまり、科学技術あまり使わない中国の大量の農産物は国際市場で価格競争の強みを持たず、外国の品質がよく、価格の安い農産物が中国に入ってくると、ふたたび上がりはじめた農産物の価格を抑えて、関係ある農産物の生産に影響し、それによって一部の農業労働力の就業にも影響し、これらの剰余労働力が就業できなければ、農民の収入問題はいっそう深刻になるということである。

 朱総理はさる3月第9期全国人民代表大会第5回会議期間の記者会見で、農民に増収させることは、最も頭の痛い問題であり、これまでずっと中国政府の中心の活動でもあると語った。

経済構造を調整

 朱総理は「政府活動報告」のなかで、根本的に言って、農民に収入を増やすには、農業と農村経済構造の調整を速め、農業の産業化経営を大いに発展させ、伝統的農業の近代的農業への転換を積極的に推し進めなければならないと指摘した。

 朱総理は、農業構造の調整はあくまで市場の需要を方向とし、実際から出発し、農民の望みを尊重しなければならず、絶対に強制的に命令してはならないと強調した。

 近年来、中国は、農業発展の新たな段階の要求に基づいて、農民増収の目標をめぐって、構造調整の効果的な方途を積極的に模索して、成果をあげた。杜青林農業部長によると、今後の一時期に、中国の農業構造調整は次の四つの重点を際立ったせなければならない。@農業生産の配置を調整し、各区域の強みを十分に発揮する。A良質、専用、無公害の農産物を発展させ、農産物の質を全面的に高める。B農産物加工業を発展させ、農産物の付加価値を大きくする。C農村の就業構造調整を促進し、農村の剰余労働力の移転を速める。

農業人口を減らす

 都市の失業と対応するように、農村にも非常に多くの農業剰余人口がある。現有の農村剰余労働力は約15000万人で、農村労働力の三分の一は就業不十分な状態にある。また、ここ数年に、耕地の減少と農業労働生産性の向上のため、毎年約600万人の農業労働力が余る。

 全国政治協商会議常務委員会委員の陽中恕氏は、労働力資源が豊富で、耕地資源が不足している国として、中国は労働集約型と技術集約型の農産物を大いに発展させて、農業内部の就業容量を拡大すべきであり、「経済資源代替原理」に基づく農業生産構造調整も需要によって農業の剰余労働力を消化する適切な選択であると語った。

 現在、中国農村の労働力の中で、字を読めないかまたはいくらも読めない人は約16%、学力が小学校程度の人は約40%を占め、職業教育と職業訓練を受けた人は農村労働力総数の5%を占めている。農村労働力の資質構造が普遍的に低い現状は労働力過剰の矛盾を激化させている。そのため、専門家たちは、教育と訓練を通じて、資質のわりに低い労働力の供給を遅らせ、減らし、就業ポストをより多くつくり出すべきであり、これは農業剰余労働力を解決するカギのあるところである、就業のサービスシステムを確立し、健全にし、農村労働力の移転に保障を提供すべきであると述べた。

税金、費用徴収を改革

 第9期全国人民代表大会財政経済委員会委員、著名な経済学者の呉樹青氏は、農民に増収させるには、まずその負担を軽減することから始めるべきであると述べた。

 資料によると、1994年から1999年までの期間に、農民の一人当たり純収入は年平均126%増えたが、一人当たりの各種農業税は127%増えた。厖大な郷鎮政府機構と多くの事務職員は基本的には農民に養ってもらっており、これによって農民にかける負担が重すぎるものにした。

 農村の税金・費用改革は、農民の負担を軽減し、農民の収入を保障する根本的方金である。

 費用を税金に改めることは、いま中国で行われる重大な改革であり、末端の県と郷が農民から徴収する各種の税金と費用を整理し、不合理な費用徴収を取り消してから、農業税と合併させ、統一する。

 19993月、第9期全国人民代表大会第2回会議で朱総理は農村の「費用を税金に改める」案を急いで制定、施行するよう要求した。20004月、中国共産党中央と国務院が通達を出し、安徽全省とその他の省、自治区、直轄市で少数の県(市)を選んで農村の費用を税金に改める改革を試行し、規範化した農村税金・費用制度を確立し、根本から農民負担を軽減する方法を模索することを決定した。

 中国共産党安徽省委員会書記王太華氏によると、税金・費用改革を実施してからの一年後に、安徽省農民の負担総額は169000万元減り、一人当たりの負担軽減幅は31%に達し、また農村の分配関係を初歩的に規範化させて、農村末端部の民主政治建設を促進し、社会の安定を維持した。現在までに、安徽省は20余の関連政策を制定、実行し、郷鎮体制、教育体制の改革を推し進め、県・郷の財政体制を整備し、村クラスの負担を軽減し、村クラスの財務管理を規範化させ、強化した。

 朱総理は、農村の税金・費用改革は農民の負担を著しく軽減するだけではなく、郷・村の正常な活動と発展の必須経費を保証し、特に農村の義務教育経費を保証しなければならないと一再ならず表明した。

 県・郷の財政困難で、費用を税金に改める改革は制約されているが、項懐誠財政部長は「予算報告」で、今年、政府は省を単位として行う税金・費用改革の試行範囲を約三分の一の省に拡大する。そのため、中央財政はそれに用いる移転支出を150億元増加すると述べた。