WTO加盟後、中国の証券業はどう歩くか

李 輝

 外資に中国の株式市場の門を開くのは、中国のWTO加盟後の最初の反応である。中国証券業の歴史は10年しかなく、未熟の産業であり、WTOの加盟後、圧力、挑戦、チャンスに直面して、企業界の人たちはいかなる怠惰があってもならず、奮起して挑戦を受けて立つのは彼らの唯一の選択である。

チャンスと挑戦

 北京商工業大学金融・証券研究所の姚爾強所長は、WTO加盟が中国の証券市場にとって言えばチャンスと挑戦、「利益が多い」と「利益がない」が同時に存在している。

 WTO加盟は証券市場に対し利益が多いことは、主に次のいくつかの面に現れている。

 第一は、WTOの加盟は中国経済の長期にわたる安定成長に役立ち、資本市場の急速かつ健全な発展に最も基本的な条件を提供する。政策・法規の透明度が高くなり、政府の機能が転換し、管理効率が大幅に向上する。

 第二は、WTO加盟後、国外の資金が一歩一歩中国の資本市場に進出し、資金供給を増やし、資本市場の規模拡大に役立つ。

 第三は、WTOの加盟が中国の産業構造調整を加速し、企業の買収・再編の規模を拡大し、資本市場の発展により多くのチャンスを提供する。

 第四は、WTOの加盟が上場企業の質と業績の向上に役立ち、証券市場の繁栄と発展に堅実な基礎を提供する。

 第五は、WTO加盟後、市場運営メカニズムと監督・管理法規システムが一歩一歩国際とリンクし、中国資本市場の成熟加速を推進する。

 しかし、制度の欠陥、投資家の目前の功利の追及および非理性、ミクロ信用基礎が薄弱などいろいろな原因により、金融リスクが大量に累積している。これらのリスクをいち早く解決できず、日にちがたつと、証券市場の正常な発展に衝撃をもたらす可能性がある。

 中国の証券市場に対し「利益がない」ことは主に、初期の割り当て額の発行制により、多くの地方政府が株式市場を国有企業が困難を解決し、貧困から脱却する道具と見なしていること。取引制度の配置が適当でなく、非流通株式の比例が大きすぎて、市場が効果的な価格メカニズムを構築するのが難しくなり、株価の変動と上場企業の真実な業績の間に大きな格差が存在することに現れている。

 それと同時に、上場企業の法人管理構造にも効果的な奨励メカニズムと制約メカニズムに欠け、投資家が成熟しておらず理性的でなく、中間機構に基本的信用がなく、監督・管理層が単一しすぎ、まだ監督・管理機構、証券業の自律および社会世論など各方面の監督システムがまだ形成されていない。市場は最低限の透明度もなく、マーケット情報の伝導がはなはだ対称せず、株式市場の効果が小さいという特徴により、一部の上場企業、証券仲介機構が会計事務所とぐるになり、多くの資産の質のよくない企業が上場して、資源配置を最適化させ、経済効率を高めるという証券市場に最も重要な機能を基本的に失わせるとともに、予測しがたい系統的なリスクを形成している。これらは投資家の自信に大きな影響を及ぼし、人々はWTO加盟後の証券業の立場を心配しないわけにはいかない。

 経済学者の呉曉求氏は次のように述べた。WTO加盟後の中国証券市場は二大難題に直面する。一つはできるだけ早く国有株、法人株の流通問題を適切に解決することであり、もう一つはわれわれの現在の多くの市場規則が、まだ明らかな計画経済の色彩を持っているため、WTOの規定と相容れず、国際化の要求の下で、そのうちの多くは改正し、ひいては廃止して制定しなおす必要があり、これはきわめて困難な任務である。同時に、WTO加盟後の中国の監督・管理メカニズムも効率向上、リスク防備などの重要な問題に直面している。

 中国の証券市場は創立10数年来、ずっと相対的に閉鎖した環境の下で運行し、中国の特色をわりに濃く持っている規則システムを実行してきたが、WTO加盟後の中国証券市場は全世界の資本市場に進出しなければならず、ゲームのルールに必ず斬新な変化が生じ、以前のいくつかの方法がもはや適応しなくなる。

 関係専門家によると、WTOの加盟はまだ規範に合わない中国証券市場の国際とのリンクを推進し、中国経済の「有利」な面である。全国人民代表大会の「投資基金法」起草グループの王連州組長は、WTOの加盟は中国証券市場の管理水準の向上を促進すると述べた。

 上海金信証券研究所の李康所長は次のように述べた。WTOの加盟は中国証券市場を変える。投資家の構成に変化が生じ、証券市場の投資に参加するものにより多くの国内外の機構投資家が含まれるようになるが、これにより証券市場の行為はより予期できるものになり、非系統的なリスクを減らすことができる。上場企業の構成にも変化が生じ、外資企業の進出を許せば上場企業の質的向上を促進することができる。WTOの加盟は仲介機構に大きな衝撃をもたらし、証券業者、弁護士事務所、会計士事務所などの国際とのリンクは大きな挑戦に直面するであろう。

 専門家たちは、全体から見て、中国のWTO加盟は利益が弊害より大きく、株式市場がよくなるはずだと信じている。

どのように挑戦に対応するか

 WTOの加盟は、中国が次第に世界に資本市場の門を大きく開けることを示している。それでは、国外からの強大な競争に直面して、中国の証券業はいったいちゃんと準備しているのかどうか。

 中国には大小の証券企業が110余社あり、その資金の規模、運営レベル、経営理念は、海外の著名な証券企業とかなりの隔たりが存在している。中国のWTO加盟で達した関連合意に基づいて、中国は5年以後に金融と証券市場を全面的に開放する。そのため、国内の証券公司は将来、併合・連合、優勝劣敗の道を歩くのが避けられず、23年内に大規模な市場の整合が始まるであろう。

 最近以来、証券企業、基金管理企業、上場企業を問わず、国際の有名な企業との協力と交流は、かつて見ない広さと深さを呈している。事実上、中国証券市場はWTO加盟後の外国同業者との競争を迎えるため、上場企業が管理構造を完全にすることから証券企業が自社の実力をたえず増強し、管理効率を高め、起点の高い開発式基金を設立することなどに至るまで、すでにかなり多くの準備をした。

 証券市場は上場企業の管理水準をいっそう向上させるため、すでに多くの努力した。経済グローバル化の趨勢に直面して、中国の上場企業の質を全面的に向上させ、上場企業の規範化運営を促進することを目的とする「上場企業管理準則」も社会から公に意見を求め始めている。銀広夏、三九医薬、鄭百文などの偽物製造・規則違反公司が次々と処罰され、すべての上場企業がかつてない衝撃を受けた。自律行為を厳格にしたり、規範化運営を強化したり、信用の等級を高めたり、よいイメージをつくったりして、中国の上場企業は新しい姿でWTO加盟の挑戦を迎えている。

 基金業界の最初の規範化した閉鎖式の証券投資基金である基金金泰と基金開元は19983月の設立以来、現在は45社に達したという。20019月の開放式の証券投資基金である華安創新と南方穏健成長の上場につれて、基金管理の資産規模は800億元を上回った。

 2000614日、北京首創グループは天華証券投資基金に介入し、証券公司と信托投資公司を除くその他の企業法人機構が証券投資基金管理に参加する先例をつくった。2000719日、華安基金管理公司は新しい株主を迎え、四大株主の持株の割合はそれぞれ30%20%20%10%で、株主権構造が持株型から分散型への転換を実現し、このことは法人管理構造の監督の作用をいっそう十分に発揮し、基金管理公司の行為を規範化させ、投資家の利益をよりよく保障した。それと同時に、基金管理公司の内部の制約と奨励メカニズムも日に日に完全になっている。2000223日、10社の基金管理公司は管理費率引き下げの公告を発表し、管理費が固定徴収から業績奨励と固定徴収との結合への転換を実現し、基金経理人の態度を基金そのものの発展をいっそう緊密に結び付けている。

 わずか4年で基金業は先進国が100年近くかかって歩いてきた道を歩き、組織形態、融資ルート、業種管理、企業整備構造など多くの面の改革を経て、WTO加盟後の挑戦を迎えるために準備を整えた。

 中国証券監督管理委員会国際部の孫傑主任は次のように述べた。中国の証券市場は次の八つの面からWTO加盟に応対する措置を打ち出した。@健全な証券監督管理体制を確立し、市場の基礎建設と標準化を強化し、有効なリスク抑制制度を確立する。A公司の整備構造を完全にし、監事会の名ばかりの存在、中小株主の利益が内部の人に抑えられて保障されず、国有株の割合が大きいなどの問題を解決する。B仲介機構の役割を発揮し、会計事務所、弁護士事務所、コンサルティング業の発展を速め、国外同業者の競争を導入する。C投資家の利益を確実に保障し、株主の民事訴訟、投資家賠償制度を確立し、外国投資家の利益を重視する。D機構投資家を育成し、証券投資基金、保険基金、養老基金を含むいろいろな機構投資家を大いに発展させる。E市場と製品のイノベーション。F多段階の証券取引市場システムを確立する。G秩序だった、多段階の監督・管理システムを確立する。

史美倫氏 重大な改革が差し迫って必要

 中国証券監督管理委員会の史美倫副主席は、中国大陸部の証券市場は透明度が低い、市場に不法行為があるなど多くの問題に直面している。そのため、中国はWTOに加盟してから国際とリンクし、証券市場に対し急いで重大な改革を行う必要がある。

 史美倫氏の見方では、中国のWTO加盟後、外資証券企業は合弁の形で中国のA株以外の証券市場に進出するが、その時になれば、大陸部の証券業はより激しい競争に直面するだろう。だが、現在大陸部にある約100社の証券公司のうち、大多数の管理制度に問題が存在し、リスク管理が足りず、自己監察能力もやや低い。業務を広げ、ユーザーにより多くの価値増加のサービスを提供しなければならない。より重要なのは公司の管理とリスク管理水準を向上させることであり、こうしてこそ将来の競争に対応できるのである。その時には大陸部の証券公司に合併と強固の現象が多く現れるであろう。

市場には、中国がWTOに加盟する時に行った約束に対し二つの誤解がある。一つは人民元の自由兌換のタイムテーブルである。もう一つは中国証券業会が中国銀行及び保険業とともに開放すると混同したことである。実際には人民元の自由兌換はWTO加盟時に行った約束に含まれておらず、海外の証券企業と資産管理公司も大陸部の公司と共同経営公司を設立してこそはじめて人民元の兌換業務を行うことができるのである。

 中国のWTO加盟後、より多くの私人企業が上場する。20019月末現在、大陸部に上場公司が1154社あり、そのうち、国有企業は1100社以上あり、私人企業は少数で、株式の市場価値は約6000万ドルにすぎない。同時に、外資企業と中外共同経営公司の大陸部の取引所での上場も認められ、関連法則がいま起草中である。

 このほか、当面、大陸部に基金管理公司が14社あり、大陸部で上場している基金は46で、総資産額は90億ドルに達している。大陸部が投資手段に欠けているため、近年、預金過多の問題に直面しているが、事実上、大陸部に発展資金を必要とするプロジェクトがたくさんあり、効果的な投資ルートをより多く発展させて、預金を生産価値のある投資に転換させなければならない。

証券法を改正

 「投資基金法」起草グループの曹鳳岐副組長は最近、WTOの加盟後、証券市場の法律、法規は国際ゲームのルールに従って相応に変動する。一方では、外国証券会社の中国市場進出に照らして、単独にいくつかの法律と法規を制定する。他方では、「公司法」、「証券法」の若干の具体的条項がWTO加盟に適応しないが、全部を改正するのが難しいので、若干の補充条項を制定することになろう。

法曹界筋の話では、WTO加盟後、「公司法」、「証券法」、「銀行法」、「保険法」を含む数百の法律・法規は改正しなければならず、改正作業は少なくとも数年はかかる。  

だが、いまでは「証券法」の改正に着手するのは時機尚早である。これは一方では、中国の証券市場のWTO加盟後の発展の枠組みに対して、まだはっきりした認識がなく、他方では、現行の「証券法」の実施時間がわずか2年間と比較的短く、欠点と問題がまだ十分に露見していないからである。このような状況の下で慌てて法律を改正しても、予期の効果をあげるのが難しい。

伝えられるところによると、関係部門は「証券法」改正の準備を積極的に進めており、2002年の3月から4月にかけて、全国人民代表大会財政経済委員会のもと「証券法」起草グループが関係部門とともに、「証券法」改正についてのハイレベルのシンポジウムを開く予定である。会議では関係専門家と学者から論文を募集し、主に「証券法」のどこを改正すべきか、いかに改正するかについて検討する。

全国人民代表大会財政経済委員会の専門家王連洲氏はこう語る。

「証券法」は実施2年来、証券市場を規範化、発展させる上で積極的な役割を果たしてきたが、制定した時の条件の制約および証券市場のさらなる発展によって新しい状況がもたらされたため、実施の過程で若干の問題にぶつかっている。市場の実践はすでに前に進んでおり、法律もそれ相応に改正しなければならない。

このほか、全国人民代表大会常務委員会弁公庁研究室経済室の李誠副主任はこのほど、中国はWTO加盟後、国際とよりよくリンクし、市場の発展をよりよく促進するため、「証券法」をさらに改正し、系統的な内容を増加すべきであり、これには主に、民事責任制度、特に民事賠償制度の法律規範、証券の新しい品種、証券市場の段階あるいは体系の完備、上場公司の脱退メカニズムの整備などが含まれる、と述べた。