中国の労働と社会保障状況

中華人民共和国国務院報道弁公室

20024月・北京

前書き

 労働と社会保障の権利は公民の基本的権利であり、広範な公民の切実な利益に関わっている。中国は世界最大の発展途上国であり、人口が多く、経済発展のレベルが高くなく、労働と社会保障事業の発展はなみなみならぬ重任である。

 中国政府は自国の国情から出発し、「中華人民共和国憲法」と「中華人民共和国労働法」に基づき、公民の労働と社会保障の権利を保障し、労働と社会保障の管理・サービスのレベルアップに努め、多大な成果をあげた。

 中華人民共和国の成立初期、中国政府は一連の効果的措置をとって、旧中国の残した深刻な失業問題を解決し、人民の基本的生活を保障した。計画経済体制の下で、中国は高度に集中、統一された就職・賃金・労働保険制度を実行し、当時の就職を全面的に手配し、職員・労働者の生活を保障し、経済建設と社会安定を促進する上で積極的な役割を果たした。しかし、歴史の発展につれて、古い労働と社会保障体制はもはや経済・社会発展の要求に適応しなくなってきた。

 1978年以来、中国は経済建設を中心とすることを堅持し、改革・開放政策を実行し、逐次社会主義市場経済体制確立の道を歩み、労働と社会保障事業は急速に発展するようになった。中国政府は就職構造を合理的に調整し、就職総量の増加、市場を方向とする就職メカニズムの構築に力を入れ、就職情勢を基本的に安定を保たせ、調和、安定した労働関係の維持に力を注ぎ、賃金分配制度を改革し、労働基準システムを逐次整備し、新しい労働関係を基本的に形成させ、社会保障制度を改革、整備し、社会保険制度が大多数の都市部の就労者と定年退職者をカバーするようにさせ、都市部で住民最低生活保障制度を広く確立し、農村でも社会保障制度確立を積極的に推進した。長年の模索と努力を経て、社会主義市場経済体制に適応した労働と社会保障制度が初歩的に確立された。

 中国政府は相互尊重、平等互恵の原則にのっとって、国際労働事務に積極的に参加している。労働と社会保障分野では、中国は国際労働機関(ILO)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)など多くの国際機構、国とすこぶる成果のある交流と協力を行い、就職を促進し、貧困をなくし、勤労者の合法的権益を保護するため、国際社会で積極的な役割を果たした。

 21世紀から、中国はまずまずの社会を全面的に建設し、現代化の推進を速める新たな発展段階に入った。就職の積極的促進、職員と労働者の権益の保護、労働関係の協調、住民収入の増加、社会保障の整備は、新世紀初期における中国の労働と社会保障事業の主な奮闘目標である。

一、就職情勢は全体として安定した状態を保っている

 人口膨大、労働力資源豊富、経済構造調整などのため、中国は就職面で大きな圧力に直面している。中国政府は終始就職促進を国民経済と社会発展の戦略的任務とし、失業率抑制を国民経済のマクロコントロールの主な目標に組み入れ、就職構造を合理的に調整し、市場を方向とする就職メカニズムを構築し、就職総量の増加を大いに促し、全体として就職情勢の基本的安定を保っている。2001年末現在、全国の総人口は127627万人(香港、澳門両特別行政区と台湾省を含まない)、就労者数は73025万人、労働力の就職率は77.03%、都市部の就労者数は就労者総数の32.8%、農村の就労者数は同67.2%をそれぞれ占め、都市部の登録失業率は3.6%であった。

 就職を積極的に促進する政策を実施

 中国政府は経済建設を中心とすることを堅持し、経済成長で就職の増加を促し、積極的な就職政策を実行し、さまざまな効果的措置をとって、就職を大いに促している。

 就職構造を合理的に調整する。産業構造の調整に適応し、就職のチャンスの増加に有利な産業と企業を発展するように導く。インフラ建設への投資を増加し、内需を積極的に拡大し、国民経済を速く発展させると同時に、産業政策の調整を通じて、優位に立ち、市場潜在力をもつ労働集約型企業、とりわけ多くの人を就職させるサービス企業と中小企業を発展させることを重視する。集団、私営、個人経営など多種所有制経済を積極的に発展させ、柔軟で多様な就職の形式をとり、就職口を増加し、就職ルートを拡げる。

 市場を方向とする就職メカニズムを構築する。中国政府は「勤労者が自主的に就職し、市場が就職を調節し、政府が就職を促進する」という就職の方針を実行し、勤労者が公平な競争を通じて就職口を探すのを奨励し、使用者が自主的に募集人数と質を決定するのを支持し、また、さまざまな措置をとって市場を方向とする就職メカニズムの形成を促進している。労働力市場の情報ネットワークはすでに役割を発揮し始め、労働力需給情報の交換を活発化させ、勤労者が労働力市場を通じて就職と再就職を実現するように援助している。メカニズムが健全で、規範的に運営し、サービスが行き届き、監督が有力な労働力市場を建設するため、中国政府は100の都市で科学化、規範化、現代化の労働力市場の建設を試行している。労働力資源配置、賃金形成、労働力流動に対する市場メカニズムの基礎的な調節の役割を発揮させるため、近年来、中国政府は労働力市場の価格形成メカニズム構築の模索を始めた。

 勤労者の資質を高める。勤労者の文化教養と職業技能を高めるため、中国政府はさまざまな方途を通じて、各種の教育事業を積極的に発展させ、学歴証書と職業資格証書を同じく重視する制度を実行している。現在、9年制義務教育普及の人口カバー率は85%に達し、青・壮年の非識字率は5%にまで下がった。一般大学は1225校、在校生は719万人、成人大学は686校、在校生は456万人、一般中等学校(中学、高校)は8400校、在校生は7919万人である。中国はまた高等職業技術学校、中等職業技術学校、中等専門技術学校、技術労働者学校、就職トレーニング・センター、民営職業訓練機構、企業従業員トレーニング・センターなどの職業訓練形式を通じて、全方位、多段階の職業技術教育と訓練システムの形成に努め、新に生まれた労動力、在職の職員・労働者および一時帰休者と失業者に対する養成訓練を強化している。大学と高校に進学できなかった高校と中学校の卒業生など新に生まれた労働力に対し、13年間の労働予備訓練を全面的に実行し、技術勤労者学校、就職トレーニング・センターを調整、再編し、総合的養成訓練基地を建設し、「市場で養成訓練を導き、養成訓練で就職を促す」メカニズムの形成を推進し、職業資格証書制度を全面的に実行し、初級工から高級技師に至る職業資格システムを確立した。現在、中国都市部の新規就職者の80%以上は高卒以上のレベルに達しているかあるいは職業技能訓練を受けたことがあり、約3500万人が相応の職業資格証書を取得した。

 就職サービスシステムを発展させる。中国は20世紀80年代から、職業紹介、就職訓練、失業保険、労働就職サービス企業などを内容とする就職サービスシステムを確立し、絶えず改善している。就職サービスシステムを通じて、勤労者の求職と企業の求人に指導、コンサルティング、仲介サービスを提供し、初めての求職者に対し就職前のトレーニングを行い、失業者に対し転職トレーニングを行うとともに、失業保険を提供し、就職の難しい人々に就職口を提供する。多段階の就職サービス・ネットワークをつくるため、政府は民営職業紹介所の発展を奨励し、就職サービスの地域社会への拡張を推し進めている。

 都市と農村の就職を統一的に手配する。中国の農村では労働力資源は豊富であるが、就職不十分の問題が深刻である。中国政府は農村労働力の就職問題を非常に重視し、「都市化」と「西部大開発」など戦略の実施と結び付けて、都市と農村の就職を統一的に手配する新しい方途の模索に努め、二つの方面で次のような基本的政策を形成した。一つは農村労働力の現地就職を促進することである。農村の地元資源の強みを十分に生かし、農業と農村の経済構造を積極的に調整し、効益のある農業と労働集約型農業、農村の農業以外の産業を発展させ、郷鎮企業の発展を町の建設と結び付けて、農村の水利、交通運輸、農村電力網などインフラ建設の規模を拡大し、農村の基礎教育と職業技能訓練を発展させるように導く。もう一つは農村の労働力を他の地区に流動して就職するように導くことである。農村における改革の成功によって農業生産性が大幅に向上し、農村の余剰労働力は農村から都市部に、西部の内陸部から東部の沿海地区に移動している。中国政府は農村労働力の地区に跨る合理的流動を積極的に導き、情報ネットワーク建設と職業仲介サービスの強化を通じて、農村労働力に対し予備訓練を行い、農村労働力を秩序だって流動させ、出稼ぎ労働力の就職率を高め、農民の出稼ぎと故郷に帰って事業を興すという双方向流動の就職メカニズムを構築している。現在、全国の100の県・市に農村労働力流動就職観察所が1000ヵ所設置され、農村労働力の流動と需給状況を分析し、すかさず情報を公布して、農村労働力を合理的に流動するように導いている。

 就職の規模拡大、就職構造最適化

 政府と社会各方面の共同の努力を経て、中国の就職人数は明らかに増えている。1978年以来、都市と農村の就労者数は合計32873万人増えたが、そのうち、都市部は1億4426万人増えた。

 就職構造に大きな変化が生じた。2000年、第一次、第二次、第三次産業における就労者の就業構造の比重はそれぞれ50%、22.5%、27.5%であった。以前と比べて、第一次産業の就業比重は明らかに下がり、第二次、第三次産業の就業比重はかなり増え、特に第三次産業の就業比重の増加率は第二次産業の増加率を上回っている。国有と集団所有部門の就労者数が都市部就労者数に占める比重は1978年の99.8%から2001年の37.3%に下がり、私営企業、個人経営、外資系企業の就労者数は明らかに増えている。農村では、農業の就業は依然として家庭を主としているが、都市化戦略の実施と農業以外の産業の発展に従って、農業以外の就業と農村労働力の流動が急速に発展している。2000年末現在、郷鎮企業の従業員者数は128195000人に達したが、そのうち、集団企業の従業員は38328000人、私営企業の従業員は32525000人、個人経営企業の従業員は57342000人であった。20世紀90年代以来、農村から都市と町に行って就職した労働力は8000余万人に達している。

 一時帰休者と失業者の再就職を促進

 経済構造調整の加速にともなって、長期にわたって積み重ねた企業経営メカニズムなどの矛盾は日増しに顕在化し、企業に大量の余剰人員がレイオフされる状況が現れた。国有企業の一時帰休者の多くは相対的に言って年齢が大きく、教養の資質が低く、職業技能が単一の人たちであり、その再就職がわりに難しい。一時帰休者と失業者の問題を解決するため、中国政府は彼らの基本的生活を保障すると同時に、一連の再就職政策を制定し、多くの面で措置を講じた。

 積極的かつ能動的な就職サービス措置を講じる。 一時帰休者を抱える国有企業では再就職サービス・センターがあまねく設けられ、同センターに入った一時帰休者に対し、政府の公共就職サービス機構は半年ごとに就職指導を1回、就職情報を3回、無料職業訓練を1回提供する。1998年から、政府は第1回の「3年間1000万人」(即ち3年間に一時帰休者と失業者を合計1000万人養成、訓練する)再就職訓練計画を実施し、社会の力を養成・訓練に動員し、政府が訓練の成果を買い取るなど効果的措置をとって、一時帰休者と失業者の再就職訓練参加を推し進めている。1998年から2000年までの3年間に、全国各地は合計1300余万人の一時帰休者と失業者を養成訓練に参加させ、半年にわたって養成訓練を受けた後の就職率は60%に達した。2001年から、政府は第2回の「3年間1000万人」再就職訓練計画を実施し始めた。現在、30の都市で「創業のための養成訓練」計画を実施し、小企業を設立したい一時帰休者と失業者に対し創業のための養成訓練を行い、養成訓練が終わった後、彼らが商工登録を行い、小口貸し付けを獲得するのを援助し、小企業の発展を通じてより多くの一時帰休者と失業者を再就職させる。

 再就職の優遇政策を整備し、実行に移す。商工登録の簡略化、場所提供、税金費用減免、貸付け供与などの措置をとって、一時帰休者と失業者が生産による自己救助の経済実体あるいは労働組織を設立するか、自分で職業を探すかあるいは組織して就職するのを助ける。地域社会への就職を一時帰休者と失業者の再就職の主な方向とし、わりに多くの人を就職させる小企業と労働就職サービス企業を積極的に発展させる。

 「再就職を援助する行動」を展開する。一時帰休者が再就職センターを離れてからぶつかる実際的な困難を妥当に解決するため、政府は「再就職を援助する行動」を展開し、さまざまな援助措置をとって、再就職センターを離れた一時帰休者に、基本的生活保障、再就職および社会保険継続などの面で適時に効果的なサービスを提供する。

 1998年から2001年までの間の中国国有企業の一時帰休者は合計2550余万人に達し、そのうちの1680余万人が再就職した。

 婦人の就職権利を保障

 婦人の就職は中国で特別な関心を寄せられている。「中華人民共和国憲法」、「中華人民共和国労働法」、「中華人民共和国婦人権益保障法」はいずれも婦人の就職権利保障に対し専門の規定がある。国は婦人が男性と平等な労働権利を享有し、男女の同一労働・同一賃金を実行し、婦人が月経期、妊娠期、出産期、授乳期に特別な保護を受けるのを保障している。中国政府と社会各界は婦人の職業技能訓練を積極的に展開し、婦人の就職に適する分野と業種を開発、拡大し、より弾力的な就職形式をとり、就職の需要の異なる婦人に就職のチャンスを提供する。

 身障者など特殊な人々の就職を援助

 身障者の社会労働参加と就職の権利は政府に高度に重視されている。中国は集中と分散を結び付け、自分で職業を探すのを奨励するという方針をとって身障者の就職を促進している。福祉企業は集中的に身障者を就職させる重要な形式であり、政府は税金減免などの優遇政策を通じて、福祉企業の発展を奨励し、それによってより多くの身障者を就職させるようにしている。同時に、また比例に基づいて身障者を就職させる政策を実施し、人を必要とするすべての企業は一定の比例に基づいて身障者を就職させ、この比例に達しない企業は身障者就職促進保障金を上納する必要がある。1996年から2000年までの5年間に、社会各方面は政府の資金と身障者就職保障金を利用して110余万人の身障者を養成、訓練し、110余万人を就職させた。身障者の就職率は70%から80.7%に上がった。

 都市の貧しい無職者、年齢の大きい一時帰休者と失業者の就職が難しいことに照らして、政府は就職サービス制を確立し、資金を支出して地域社会の公益的就職組織を扶助し、環境衛生、地域社会の保安とサービスなどのプロジェクトを実施して、特別に貧困な人々を就職させ、また無料の就職サービスを提供して、わりによい効果をあげている。

二、新しいタイプの労働関係が基本的に形成

 社会主義市場経済体制を確立し、完全にする過程で、中国の労働関係は日増しに複雑になり、多様化している。中国は調和、安定した労働関係の維持に力を入れ、「中華人民共和国労働法」を主とする労働関係調整の法律・法規体系を初歩的に形成し、労働契約と集団契約制度、3者協調メカニズム、労働基準システム、労働争議処理体制、労働保障監察制度を確立し、こうして社会主義市場経済に適応する新しいタイプの労働関係が基本的に形成された。

 労働契約制度を実行

 中国の労働契約制度は20世紀80年代の半ばから試行を始め、、90年代に大いに普及され、今では都市部の各種企業で広く実施されている。中国の法律は次のように規定している。使用者と勤労者は法によって労働関係を樹立する時、書面で期限を規定しているかまたは規定していないかまたは一定の仕事を完成することを期限とする労働契約を結ぶべきであり、労働契約を締結する過程で、労働関係の双方は平等・自由意思、協議一致の原則に従わなければならない。労働契約制度の実行によって、勤労者と使用者双方の権利と義務が明らかになり、勤労者の職業選択の自主権と使用者の雇用自主権が保障された。

 集団契約制度を確立

 中国政府は企業が従業員代表大会と労働組合の機能をたえず強化し、従業員の民主的参与制度を整備するのを奨励する。企業の労働関係自己協調メカニズムを形成するため、中国は平等協議を通じて集団契約制度を確立し、それを普及させることを模索し始めた。中国の法律と法規は、企業の従業員は労働報酬、勤務時間、休息と休暇、労働安全と衛生、保険・福祉などにつき、労働組合が代表するかあるいは直接従業員代表を推薦して企業と平等協議を行い、集団契約を結ぶことができると規定している。平等協議の形式はさまざまで、集団契約の内容は豊富である。多くの企業は企業の労働組合が企業と協議して集団契約を締結するという形式をとっている。

 ここ数年来、集団契約制度は非国有企業で推し広められただけでなく、国有企業の改革の過程でも逐次推し進められている。2001年末現在、全国で企業が締結したあと、労働と社会保障行政部門に報告し、記録にとどめた集団契約は27万件に達した。

 三者協調メカニズムを構築

 中国は自国の国情に合致する政府・労働組合・企業三者協調メカニズムの構築に取り組んでいる。このような協調メカニズムは、各級政府の労働と社会保障部門、労働組合、企業が代表を出して、協調機構をつくり、労働関係に関わる重大な問題について意見を疎通させ、話し合い、労働と社会保障法規の制定および三者の利益調整に関わる重大な改革案と政策措置に意見を提出する。

 20018月、中国労働と社会保障部は中華全国総工会、中国企業連合会とともに国の労働関係協調三者会議制度を確立し、第1回国家クラス労働関係協調三者会議を開き、中国の労働関係協調活動のためにが比較的規範化し、安定した活動メカニズムを構築した。現在、北京、天津、河北、山西、江蘇など10余の省、直轄市および深?、大連などでは地域の労働関係三者協調メカニズムが構築され、そのうち、山西、江蘇など各省は、省、地区(市)、県(区)の3段階で三者協調メカニズムが構築された。

 労働基準システムを整備

 勤労者の合法的権益を保障し、経済と社会の発展を促進するため、中国政府は労働基準を合理的に確定し、法によって公布し、適時に調整することを非常に重視している。現在、中国では「中華人民共和国労働法」を核心とし、内容が労働時間、休息と休暇、賃金、少年工使用禁止、女性と未成年の従業員の特殊な労働保護、作業量、職業の安全と衛生などに関わる労働基準システムが一応形成され、経済と社会の発展に基づいてたえず調整、改善されている。

 勤労者が正常な仕事と休息・休暇の権益を享有するのを保証するため、中国は現在、毎日の労働時間が8時間を越えず、毎週の労働時間が40時間を越えない就業時間制度を実行している。使用者は労働時間を延長する場合、労働組合および勤労者と協議しなければならず、通常毎日1時間を越えてはならず、特殊な理由がある場合、一日3時間、一月36時間を越えてはならない。休息・休暇の面では、勤労者は法によって法定の祝日、休日および毎週少なくとも1日休む権利を享有する。

 国は16歳未満の未成年者の就職を禁止し、少年工の不法雇用行為を厳しく取り締まる。女性従業員と未成年従業員(16歳になったが、満18歳にならない)に対しては、国は雇用部門が彼らを国が従事を禁忌すると明確に規定した労働に従事させるのを禁止する。中国は職業安全衛生面の国家基準、業種基準、地方基準を制定した。職業安全衛生管理制度を整備するため、1999年、中国政府は職業安全衛生管理体系の基準を公布するとともにその認証活動を繰り広げた。いままでに、中国は国と業種の労働定額定員基準を200余件制定し、職業分類基準と職業技能基準などその他の労働基準を公布した。

 労働基準の科学性と合理性を保証し、それを順調に実施するため、中国は労働基準を制定、公布、調整する過程で、労働組合、企業および専門家・学者の意見を広く聴取しなければならない。中国政府は一貫して労働基準が自国の経済・社会発展の水準と一致し、基本的人権を保障し、国民経済の発展と社会の進歩を促進し、これを踏まえて逐次レベルを高めなければならないことを主張している。中国は国際社会の労働基準の制定、実施に関する経験を重視し、自国の経済・社会発展の実状と結びつけて、適当な時期に関係国際労働条約に加入するようにしている。

 労働争議処理システムを健全化させる

 中国政府は、法によって労働争議を適時に処理し、当事者双方の合法的権益を保護することを主張し、労働争議の双方が自ら協議する方式で争議を解決するのを提唱、支持する。中国の関係法律・法規は、法によって労働争議を解決するプロセスと機構を明確に規定している。規定によると、勤労者と企業との間に労働争議が発生した場合、当事者の一方は企業内部に設けた労働争議調停委員会に調停を申請することができ、調停が不調に終わったか、あるいは当事者が調停を望まない場合は、地元の労働争議仲裁委員会に仲裁を申請することもでき、当事者は仲裁機構の仲裁に不服である場合、人民法院に提訴することができる。

2001年末現在、全国では県クラス以上(県クラスを含む)の労働争議仲裁委員会が3192設置され、専従と兼職の労働仲裁員が2万人近くいる。「中華人民共和国企業労働争議処理条例」が公布された199381日から2001年末までに、全国の各級労働争議仲裁委員会が受理した労働争議案件は全部で688000件、それにかかわった勤労者は2368000人に達し、結了率は終始90%以上保っている。そのほか、各級労働争議仲裁委員会はまた非立件の方式で労働争議を503000件処理した。

 労働保障監察制度を確立

 1993年以来、中国は徐々に労働保障監察制度を確立した。「中華人民共和国労働法」、「中華人民共和国行政処罰法」などの法律と法規は労働保障監察機構の職責と活動のプロセスを規定している。労働と社会保障行政部門は法によって雇用部門の労働と社会保障法律・法規の遵守状況に対し検査と監督を行い、労働と社会保障の法律と法規に違反した行為を制止し、改正を命じる権限があり、また法によって警告、罰金などの行政処罰を与えることができる。いかなる組織と個人も労働と社会保障の法律と法規に違反した行為に対し、それを摘発、告訴する権利があり、当事者は労働と社会保障行政部門が監察する時にその合法的権益を侵犯したと認めた場合、行政再議あるいは行政訴訟を提出することができる。

 中国の各クラスの労働と社会保障部門は法によって行政を行い、厳格に法を執行する原則にのっとって、労働と社会保障の行政と法律執行をたえず強化し、労働保障監察組織を設立し、健全にしている。2001年末現在、全国に労働保障監察機構が3174設置され、労働保障監察員が4万人配備されている。

 賃金収入分配制度を改革

 中国政府はあくまで労働に応じる分配を主体とし、多種の分配方式が併存する制度を貫徹し、効率を優先させ、合わせて公平を配慮する原則を体現する。賃金制度の改革を通じて、市場メカニズムに賃金を調節する作用を発揮させ、勤労者の賃金レベルを経済の発展と企業の収益の増加に従って相応に高めるようにしている。「中華人民共和国労働法」、「企業の最低賃金に関する規定」、「賃金支払暫定規定」などの法律と法規は、賃金の分配行為の規範化させることについて明確な規定を行っている。中国政府は法によって最低賃金基準を制定し、適時に調整し、賃金の支払方法を規範化させ、定期的に賃金指導ライン、労働力市場の賃金の指導的価格及び人工コスト情報を公布し、企業が賃金についての集団協議制度を試行するのを奨励し、企業が弾力的で多様な賃金制度と分配形式をとり、企業の賃金分配自主権および勤労者が法によって労働報酬を獲得する権利を保護するように導いている。現在、全国で最低賃金制度が一応確立され、賃金の集団協議を試行する企業が1万社を超え、26の省、自治区、直轄市は賃金指導ラインを公布し、88の都市は労働力市場の賃金の指導的価格を公布した。

 改革・開放以来、経済の急速な発展に従い、都市部の従業員の賃金収入はたえず増えてきており、2001年末現在、中国都市部の従業員の貨幣賃金は平均1978年の16.3倍に相当する1870元に達し、物価の要素を差し引いた実際平均賃金は年平均5.5%逓増した。

三、社会保障システムを一応確立

 経済の発展と社会の安定を促進し、広範な人民大衆の生活水準と社会保障の待遇を逐次高めるため、中国政府は社会主義市場経済体制に適応する健全な社会保障システムの確立に力を注いでいる。長年の模索と実践を経て、社会保険、社会救済、社会福祉、優遇慰問・職業斡旋、社会の相互援助を主な内容とし、多ルートで保障資金を調達し、管理・サービスが逐次社会化する社会保障システムが一応確立された。

 社会保障制度を改革

 20世紀80年代の初めから、中国政府は社会保障制度に対し一連の改革を行った。改革の目標は、企業・事業体から独立し、資金源が多元化し、保障制度が規範化し、管理とサービスが社会化した社会保障システムを確立することである。その主な特徴は、基本的に保障し、広範囲をカバーし、段階が多く、逐次統一することである。経済発展のレベルに適応して国が強制的に確立した基本的保障は、主に人々の基本的生活の必要を満たすこと、社会保障がちくじ全公民をカバーすること、基本的保障のほか、国はその他の保障形式の発展を積極的に促し、多段階の社会保障システムを形成するように努めること、改革と発展を通じて、全国統一の社会保障制度を逐次実施することである。十数年の努力を経て、当面、社会保険制度の基本政策がすでに制定され、陸続と公布、実施され、大多数の都市部の職員・労働者と離職休養・定年退職者をカバーし、一部の地区ではさらに都市に出稼ぎに来た農民もその中に組み入れられている。都市ではあまねく住民最低生活保障制度が確立された。2001年、中国政府は遼寧省で都市部の社会保障システムを完全なものにする総合的テストを始めた。

 20世紀90年代中期以来、社会保障諸制度の統一的計画と社会保障基金の管理・監督を強化するため、中国政府は社会保障管理体制に対し一連の改革を行った。以前は多くの行政部門がそれぞれ管理していた社会保険を労働と社会保障行政部門の統一的管理に移し、各クラスの労働と社会保障行政部門もそれ相応に社会保険の具体的事務を管理する社会保険経営機構を設立した。以前に企業が引き受けていた社会保険事務は逐次社会機構による管理に変わった。つまり社会保険待遇が社会化支給を実施し、社会保険対象が地域社会による管理を実行することである。中国政府は社会保険基金に対する行政と社会監督活動を強化している。社会保険基金は財政特別口座に入れられ、収入と支出を別々に管理し、基金は決められた使途に用いる。各クラスの労働と社会保障行政部門は社会保険基金の徴収・管理・支払を検査、監督し、法律・規則違反の問題を取り締まる社会保険基金監督機構を特に設立した。そのほか、中国政府はまた基金の徴収を強化し、財政支出に占める社会保障金支出の比率を高めるなど一連の措置をとって、社会保障資金源の開拓に努めている。2001年の一年だけでも、中央財政が社会保障支出に用いた資金は1998年の5.18倍に相当する982億元に達した。中国政府は国有株の保有減少で獲得した資金と中央財政の投入する資金およびその他の各種の方式で調達する社会保障資金の運営と管理を担当する全国社会保障基金理事会を特に設立した。

 1998年来、中国政府は「二つの確保」の措置をとった。一は国有企業の一時帰休者の基本的生活を確保し、国有企業にあまねく一時帰休者の再就職サービスセンターを設立し、再就職サービスセンターが一時帰休者に基本的生活費を支給し、彼らに代わって社会保険料を納め、必要な資金は政府の財政、企業、社会(主に失業保険基金)の三者が共同で調達する。それと同時に、一時帰休者を職業指導と再就職訓練に参加させ、彼らが再就職を実現するように導き、助けている。二は離職休養者と定年退職者の基本的生活を確保し、基本的養老年金の時間どおりの全額支給を保証する。「二つの確保」の実施を保証するため、中国政府は「二つの確保」とリンクする「三つの保障ライン」の政策を打ち出した。つまり@国有企業の一時帰休者は再就職サービスセンターで最長3年の基本的生活費を受け取ることができる、A3年たっても依然として再就職していない場合は、引き続き失業保証金を受け取ることができ、受け取る時間は最長2年である、B失業保険金享受期間が満了しても依然として就職していない場合は、都市住民最低生活保障金の支給を申請することができる。2001年には、圧倒的多数の国有企業の一時帰休者は基本的生活費を受け取っており、離職休養者と定年退職者の養老年金はほぼ時間どおりに全額を支給されるようになった。「二つの確保」の実施は、一時帰休者、離職休養者と定年退職者の合法的権益と社会の安定を守る上で重要な役割を果たした。

養老保険制度

 1984年、中国各地で養老保険制度の改革が行われた。1997年、中国政府は「統一的な企業従業員基本的養老保険制度の確立に関する決定」を制定し、全国で統一的な都市部企業従業員基本的養老保険制度を確立し始めた。

 中国の基本的養老保険制度は社会プールと個人口座を結び付ける形式をとっている。基本的養老保険は都市部の各種企業の従業員をカバーし、都市部のすべての企業およびその従業員は基本的養老保険料を納める義務を履行しなければならない。目下、企業の納める基本的養老保険料は賃金総額の約20%を占め、個人の納める分は本人賃金の8%である。企業の納める基本的養老保険料の一部分はプール基金の設立に用いられ、一部分は個人口座に振り向けられる。個人の納める基本的養老保険料は個人口座に入れられる。基本的養老年金は基礎的養老年金と個人口座養老年金からなり、基礎的養老年金は社会プール基金から支払われ、毎月の基礎的養老年金は従業員の社会平均賃金の20%であり、毎月の個人口座養老年金は個人口座基金累積額の120分の1である。個人口座の養老年金は相続することができる。新しい制度を実施する前に仕事に参加し、実施してから定年退職した従業員には、さらに移行的な養老年金が支給される。

 数年の推進を経て、基本的養老保険に加入する従業員は1997年末の8671万人から2001年末の1億802万人に増えた。基本的養老年金を受け取る人数は2533万人から3381万人に増え、基本的養老年金も月平均430元から556元に増えた。基本的養老年金の時間どおりの全額支給を確保するため、ここ数年、中国政府は基本的養老保険基金のプールの段階を逐次高めるように努め、省クラスによるプールを逐次実施し、基本的養老保険基金への財政投入をたえず大きくしている。1998年から2001年までに、中央財政の基本的養老保険に対する補助支出だけでも861億元に達した。現在では、社会サービス機構(例えば銀行、郵便局)による基本的養老年金支給を基本的に実現し、2001年の基本的養老年金の社会化支給率は98%に達した。そのほか、行政機関と事業体の職員・労働者と定年退職者は依然として元の養老保障制度を実施している。

 1991年、中国の一部農村地区で養老保険制度の試行を始めた。農村の養老保険制度は「個人の保険料納入を主とし、集団による補助を従とし、政府が政策面から扶助する」ことを基本的原則とし、基金蓄積の個人口座の形式をとっている。

 医療保険制度

 1988年、中国政府は行政機関と事業体の公費医療制度と国有企業の労働保険医療制度に対する改革を始めた。1998年、中国政府は「都市部職員・労働者の基本医療保険制度の確立に関する決定」を公布し、全国で都市部職員・労働者基本的医療保険制度を確立し始めた。

 中国の基本的医療保険制度は社会プールと個人口座結合の形式をとっている。基本的医療保険基金は原則的には地区・市クラスのプールを実施している。基本的医療保険は都市部のすべての雇用部門とその職員・労働者をカバーしている。すべての企業、国の行政機関、事業体とその他の部門およびその職員・労働者は基本的医療保険料を納める義務を履行しなければならない。現在、雇用部門の保険料納入の比例は賃金総額の6%前後で、個人の保険料納入の比例は本人の賃金の2%である。部門の納める基本的医療保険料の一部分はプール基金の設立に用いられ、一部分は個人口座に振り向けられる。個人の納める基本的医療保険料は個人口座に入れられる。プール基金と個人口座がそれぞれ異なる医療費用支払い責任を担っている。プール基金は主に入院と一部慢性病の外来診察での治療の費用を支払うのに用いられ、プール基金は支払いの開始の基準、最高支払額を設けている。個人口座は主に一般の外来診察の費用を支払うのに用いられる。

 基本的医療保険制度に参加した従業員が基本的医療サービスを受けられるように保障し、医療費用の速すぎる増加を効果的に抑えるため、中国政府は医療サービスに対する管理を強化し、基本的医療保険の薬品目録、診療項目、医療サービス施設基準を制定し、基本的医療保険サービスを提供する医療機構、薬局に対し資格認定を行うとともに、基本的医療保険制度に参加した職員・労働者が選ぶことを認めている。基本的医療保険制度の改革に呼応するため、国は同時に医療機構と薬品生産流通体制の改革を推進している。医療機構の間の競争メカニズムと薬品生産流通の市場運行メカニズムの構築を通じて、「わりに安い費用で比較的優れた医療サービスを提供する」という目標の実現に努めている。

 社会プール基金の最高支払額を越える医療費用を解決するため、基本的医療保険のほかに、各地で大口医療費用の相互援助制度をあまねく確立している。国は公務員のために医療補助制度を確立した。条件を備える企業が職員・労働者のために企業補充医療保険を確立することができる。国はまた社会医療救助制度をちくじ確立して、貧しい人に基本的医療保障を提供する。

 中国の基本的医療保険制度の改革は着実に進められており、基本的医療保険のカバーする範囲がたえず拡大されている。2001年末までに、全国の97%の地区と市は基本的医療保険の改革をスタートし、基本的医療保険に参加した職員・労働者は7629万人に達した。そのほか、公費医療とその他の形式の医療保障制度がまた1億人以上の都市部人口をカバーし、中国政府はいまこれらの人口を逐次基本的医療保険制度に組み入れつつある。

 失業保険制度

 中華人民共和国の成立初期に、短期間の失業救済制度を実行したことがある。そのあと、計画経済体制の下では、統一的に受け入れ、配置する就職制度を実施したため、失業救済制度は次第に取り消された。改革・開放政策が実施されてから、国有企業の経営メカニズムの転換と労働制度の重大な改革に適応するため、中国政府は1986年から失業保険制度を逐次確立し始め、従業員の失業後の基本的生活に保障を提供するようにしている。

 1999年、中国政府は「失業保険条例」を公布し、失業保険制度の整備を新たな発展段階に押し上げた。失業保険は都市部のすべての企業、事業体とその従業員をカバーしている。すべての企業、事業体とその従業員は失業保険料を納めなければならない。部門の保険料納入の比例は賃金総額の2%であり、個人の保険料納入の比例は本人の賃金の1%である。失業保険の待遇を享受するには次の三つの条件を満たさなければならない。@失業保険料の納入が満1年になる。A本人の意志以外の原因で仕事を中断した。Bすでに失業登録をし、しかも求職の要求がある。失業保険の待遇は主に失業保険金である。失業保険金は月ごとに支給され、基準は最低賃金基準より低いが、都市部住民の最低生活保障基準より高い。失業保険金を受け取る期限は保険料納入年限に基づいて確定されるが、長くても24カ月である。失業者が失業保険金を受け取る期間に病気になった場合、医療補助金を受け取ることもできる。失業者が失業保険金を受け取る期間に死亡した場合、その遺族は葬儀補助金と遺族救済金を受け取ることができる。そのほか、失業者が失業保険金を受け取る期間に職業訓練を受け、職業紹介の補助を享受することもできる。

ここ数年、失業保険のカバーする面が絶えず拡大され、保障の対象も絶えず増えている。1998年から2001年までの期間に、失業保険に加入する人数は1998年の7928万人から2001年の1355万人に増加した。2001年末の失業保険金の受取人数は312万人であった。失業保険制度の整備に従って、国有企業の一時帰休者の基本的生活保障制度は逐次失業保険に組み入れられている。

 公傷保険制度

 20世紀80年代の末から、中国政府は公傷保険を改革し始めた。1996年、中国政府の関係部門は「企業従業員公傷保険試行規則」を公布し、一部の地区で公傷保険制度が確立し始めた。その年、中国政府の関係部門はまた「従業員の公傷と職業病による身体障害度の鑑定基準」を制定し、公傷と職業病で身体障害になる程度の鑑定に根拠を提供した。

 「企業従業員公傷保険試行規則」は次のように規定している。公傷の保険料は企業が納め、従業員個人はそれを納めない。公傷保険料納入は業種差別率と企業変動率を実施する。異なる業種の公傷事故のリスクと職業の危害程度に基づいて異なる業種の保険料率を確定する。業種の保険料率を踏まえて、企業の前の年の実際の公傷事故のリスクと公傷保険基金の支出状況に基づいて各企業のその年の具体的な保険料率を確定する。

公傷保険基金支給の待遇は主に、公傷の医療期間に生じた医療費、公傷医療期終了後の労働能力喪失の程度に基づいて確定された身体障害補助金、救済金、身体障害看護費などがある。2001年末の全国の平均公傷保険料率は1%前後であり、公傷保険に加入した従業員は4345万人に達した。公傷保険に加入していない企業は、依然として同企業が公傷待遇を支払う責任を負っている。

 出産保険制度

 1988年以来、中国の一部の地区で企業出産保険制度の改革を始めた。1994年、各地の経験を総括した上で、中国政府の関係部門は「企業従業員出産保険試行規則」を制定し、その中で次のように規定している。出産保険料は企業が納め、従業員個人は納めない。出産保険金支給の待遇は主に、出産のために生じた医療費と産休期間に毎月支給する出産手当などがある。2001年末、全国の平均出産保険料率は0.7%であり、出産保険に加入する従業員は3455万人に達した。出産保険に加入していない部門は、依然として同部門の出産待遇支給の責任を負っている。

 最低生活保障制度

 早くも中華人民共和国成立の初期に、中国政府は都市と農村の貧しい住民に対する社会救済制度を確立した。1993年、中国政府は最低生活保障制度の確立を試みるため、都市部の社会救済制度を改革し始めた。1999年には、全国のすべての都市と鎮を設置された県都で最低生活保障制度が確立された。その年に、中国政府は都市部のすべての住民に最も基本的な生活保障を提供する「都市住民最低生活保障条例」を公布した。

 都市住民の最低生活保障資金は、地方の人民政府が財政予算に組み入れる。地方政府は当地で都市住民の基本的生活を維持するのに必要な費用に基づいて最低生活保障基準を確定している。家庭の一人当たり所得が最低生活保障基準より低い都市住民はいずれも最低生活保障待遇を申請することができる。それを受け取ることができる。都市住民は最低生活保障待遇を受ける場合は家庭所得を調査する必要があり、受ける待遇のレベルは家庭の一人当たり所得と最低生活保障基準の差額分である。

 2001年、全国の都市最低生活保障金の受領人数は11707000人に達し、中央財政が最低生活保障待遇を支給するために投入した資金は23100万元であった。ここ数年、一部の農村地区も最低生活保障制度を確立し始めている。

 社会福祉制度

 中国の社会福祉制度は政府が出資して生活の貧しい老人、孤児、身体障害者など特殊な困難をもつ人びとに生活保障を提供するために確立された制度である。特殊な困難をもつ人びとの生活の権益を保障するため、国は「中華人民共和国老人権益保障法」、「中華人民共和国身体障害者保障法」、「農村五保(衣・食・住・医・埋葬を保障する)扶養活動条例」などの法律、法規を公布した。関連法律・法規は、次のように規定している。都市部の身寄りのない老人、扶養条件にかなった身体障害者と孤児に対しては集中的扶養を実施し、農村の身寄りのない老人、扶養条件にかなった身体障害者と孤児に対しては集中と分散を結合した扶養を実施する。集中的扶養は一般に社会福祉院、老人ホーム、療養所、児童福祉院などの福祉機構を通じて行われる。身体障害者については、政府が優遇政策に基づいてさまざまな形式の社会福祉企業を設立し、労働に参加できる身体障害者が就職のチャンスを得られるように助ける。

中国の社会福祉事業は大きな成果をあげた。2001年末現在、全国に政府の設立した社会福祉機構が3327カ所あり、191000人を収容している。集団の設立した社会福祉機構が35000カ所あり、668000人を収容している。民営の社会福祉機構が934カ所あり、34000人を収容している。社会福祉企業が38000社あり、699000人の身体障害者が従業員として働いている。そのほか、中国はまた社会福祉宝くじの発行を通して社会福祉事業を支持する資金を募集している。2001年、福祉事業は合わせて42億元の資金を募集した。

 優遇慰問・職業斡旋制度

 優遇慰問・職業斡旋制度は国と社会のために功績を立てた特殊な人びとに補償、表彰を与える制度を指す。現在、中国に優遇慰問と職業斡旋の対象が3800余万人いる。これらの人の権益を保障するため、国は陸続と「革命烈士表彰条例」、「軍人救済優遇条例」、「都市部退役兵士職業斡旋条例」などの法規を公布した。これらの法規は、犠牲になった軍人の遺族、革命傷痍軍人、古参復員軍人などの重点的優遇対象に対し定期、定量の補助を実施する、義務兵の留守家族に対しあまねく優遇金を支給する、革命傷痍軍人などの重点的優遇対象の医療費用を減免する、都市部の退役兵士が政府の就職斡旋を一回受けることができ、自分で職を探すものに経済補助を一回与えると規定している。1996年から2001年までに国の各クラス財政が支出した優遇資金は292億元であった。

 災害救助制度

 中国は自然災害が頻発する国であり、水害、干害、風害、雹害などの大きい自然災害があとを絶たず、人民の暮らしに重大な影響を及ぼしている。被災者の救済作業をよりよく進めるため、中国は突発的な自然災害に対する社会救助制度を確立した。中国では、各クラスの政府は毎年財政予算に災害救助支出を計上し、それを使って被災者を救済している。1996年から2001年までに、全国の各クラス財政の災害救助支出は2126000万元に達し、延べ39000万人の被災者に食糧、衣類や布団などを提供した。災害救助制度は被災地区の人民の基本的生活を力強く保障した。

 社会互助制度

 隣近所の相互援助は中華民族の優良な伝統である。2000年に公布した「中華人民共和国社会公益寄贈法」は、社会の寄贈活動の経常化、制度化に対し立法面から規範させ、奨励している。2001年に民政部門の受け取った社会の寄付(寄付した物資を計算した金額を含む)159000万元であった。中国政府はまた機関、企業・事業体、社会団体が貧困家庭を貧困から脱却して豊かになるのを組織的に助けることを積極的に提唱している。末端の政府は地域社会でサービス業を興して、貧しい対象に配慮を寄せ、サービスを提供している。1994年から、全国の各クラスの労働組合は毎年生活が困難な従業員の家庭に「温かさを送る」活動を展開している。ここ数年来、募集した見舞金は合計1044000万元に達し、延べ3975万戸の貧しい従業員、労働模範、離職休養・定年退職従業員、負傷、病気、身体障害の従業員の家庭を訪れ、慰問した。

四、21世紀初期の発展

 中国は2001年に国民経済と社会発展の第105カ年計画(20012005)を実施し始め、労働と社会保障事業の発展は新たな段階に入った。新世紀の初期に、中国の労働と社会保障事業を発展させるにあたって、解決する必要のある問題もあれば、新たな発展のチャンスにも直面している。改革・開放と現代化建設の全面的推進は、就職と社会保障問題の解決のために有利な条件をつくり出した。国民経済のいっそうの発展と経済実力の増強は、就職の拡大と社会保障事業の発展のためにかなりしっかりした物質的基盤を提供した。一応確立された市場を方向とする就職メカニズムと社会保障システムは、労働と社会保障事業の発展をいっそう推進するためにすばらしい基礎を築いた。それと同時に、中国政府も、今後のわりに長い間に、都市と農村の就職の矛盾が依然として際立っており、構造的な失業がいっそう深刻で、労働関係が複雑化し、人口の高齢化と失業者の増加が社会保障に与える圧力がいっそう大きくなり、農村における社会保障事業の発展が任重くして道遠しであることをはっきり見てとっている。

 目標と任務

 21世紀の初期における中国の労働と社会保障事業の発展の目標は、中国の生産力の発展レベルに適応し、社会主義市場経済の要求に合致する比較的整った労働と社会保障制度を基本的に確立し、広範な勤労者にわりに十分な就職と基本的な社会保障を得させ、勤労者と雇用部門の合法的権益を守り、都市と農村の住民の物質生活と文化生活のレベルを高め、経済の発展と社会の安定を促進することであり、主な任務は、絶えず勤労者の資質を高め、就職構造を改善し、市場を方向とする就職メカニズムを基本的に形成し、就職増加の促進に努め、失業率統計を規範化させ、完全なものにし、都市部の登録失業率を5%以内に抑えること、労働関係を積極的に協調し、労働関係の調和と安定を保つこと、所得分配のマクロコントロールシステムを完全なものにし、合理的な所得分配関係を保ち、都市部住民の1人当たり可処分所得と農村部住民の一人当たり純所得を年平均5%前後伸ばすこと、都市部の社会保障制度建設を加速し、資金調達の方式と運営メカニズムを改善し、社会保障管理とサービスの社会化を推進すること、農村では、多種形式の農民養老保障と健康保障を先導として、社会主義市場経済体制と経済発展レベルに適応する基本的保障システムを積極的に模索し、弱い人びとの生活と仕事を援助する制度を確立することである。

 政策と措置

 ――積極的な就職促進政策を実施し、百方手を尽くして就職の規模を拡大する。引き続き経済のわりに速い成長を保持し、内需を拡大し、新しい就職のチャンスを最大限につくり出し、就業総人数を増加する。労働力の就業構造を改善し、労働集約型の産業と企業を大いに発展させ、第三次産業、中小企業と非共有制経済を就職拡大の主なルートとする。優遇政策をいちだんと実行し、一時帰休者と失業者の再就職を促進する。

 ――統一、規範化した労働力市場を設立し、都市と農村の就職を統一的に考え、就職サービスシステムを整備する。労働・人事と戸籍管理制度の改革を深め、労働力が都市・農村間、地区間の秩序だった流動を導き、農業の余剰労働力の移転を促進する。公共職業紹介機構のサービスを改善し、民営職業紹介機構の健全な発展を推進する。

 ――勤労者の資質を全面的に高め、柔軟な就職の形式を実行する。労働予備制度と就職参入制度を推進し、職業教育、継続教育、再就職訓練を強化し、職業資格証書制度を実行する。農村労働力に対する職業技術訓練を重視し、整った農村職業訓練システムを逐次形成する。柔軟な就職の形式をとり、自主的就職を提唱する。

 ――労働契約制度を強固にし、完全なものにし、集団契約制度を大いに推進し、労働関係の三者協調メカニズムの構築を促進する。国の基本労働基準の制定・修正作業を積極的に展開し、中国の国情に合った労働基準システムを完全なものにする。労働争議処理制度をさらに改善し、労働争議を予防、処理する総合的能力を絶えず高める。

 ――賃金所得分配制度の改革を推進し、所得分配の激励と制約メカニズムを構築する。最低賃金制度を健全にし、賃金指導ラインと労働力市場の賃金価格指導制度を全面的に推進する。賃金の集団協議制度を引き続き試行し、賃金支払行為を規範化させ、従業員の労働報酬の権益を保障する。

 ――社会保障体制の改革を深化させ、社会保障システムの建設を加速し、社会保障システムを完全なものにするテストを積極的に行う。信頼できる安定した社会保障基金の資金調達メカニズムを確立し、財政支出構造を調整し、必要な投入を増やし、保障基金を充実させ、費用上納率と代替レベルを合理的に調整し、社会保障基金の運営効率と投資収益率を高める。社会保障のマクロコントロールと監督体制を健全にし、管理レベルと仕事の能率を高め、社会保障システムの安定、健全、秩序だった運行を促進する。

 ――基本的養老保険と基本的医療保険制度を健全にし、条件を備えた雇用部門が従業員のために企業年金と補充医療保険を確立するのを奨励する。失業保険制度を一歩進んで完全なものにし、国有企業の一時帰休者の基本的生活保障制度を失業保険に組み入れる。公傷保険と出産保険制度の確立を加速的に推進する。機関と事業体の職員・労働者の基本的養老保険制度を完全なものにする。都市住民の最低生活保障制度を規範化させる。地域社会の建設を加速し、社会保障の社会化を推進する。多種の保障形式を模索し、農村の基本的保障システムの確立を推進する。社会救済、社会の相互援助、優遇慰問と職業斡旋、社会福祉政策を完全なものにし、婦人、未成年者、老人、身体障害者の合法的権益を守る。

 ――行政監督、社会監督と機構内部のコントロールを結び付けた社会保障基金監督管理システムを確立する。社会保障制度を確立し、完全なものにするとともに、投資管理の方途を模索し、異なる保障項目資金の管理原則に基づいて、基金管理体制とセットになる基金監督管理制度を確立し、基金の価値保持と増大の実現に努め、社会保障基金の運営リスクをなくし、社会の安全と安定を守る。

 ――労働と社会保障の法制化を加速し、労働と社会保障監察制度を完全なものにし、監察と法律執行要員の総合的資質を絶えず高め、さまざまな形式の監察活動を展開し、労働保障の監察・法律執行と社会各方面の法律監督の実行との有機的結合を推進する。労働保障管理情報システムの建設と科学研究成果の普及活動を強化し、労働と社会保障管理の科学化、規範化、法制化、情報化のレベルを高める。引き続き国際労働と社会保障分野の活動に積極的に参加し、対外協力と交流を広く展開し、国際労働事務における中国の促進的役割をいちだんと発揮させ、WTO加盟後の新しい情勢に適応し、労働と社会保障事業のたえまない新たな発展の推進に努める。