十分な考えの筋道を欠く日本外交

 国防大学戦略研究所  丁邦泉

 58日、5人の身元不明者は瀋陽にある日本総領事館に闖入しようとしたが、警備に当たっていた中国の武装警察の阻止で成功しなかった。そのうちの2人は武装警察ともみ合いになったあと、一度は領事館に突進した。このような緊急な状況の下で、殴られて負傷をした中国の武装警察は痛みと危険を顧みず、総領事館の主要官員の同意を得てから、領事館に入ってこの2人を強行に連れ出した。中国の武装警察が果断で正しい処置をとったため、出現する可能性のある最悪事態の出現が回避され、その場で日本側官員が礼をして感謝の意を表した。

 人々が不思議でおかしいと思うのは、中国武装警察の自分の職務に忠実で、日本領事館とその職員の生命・財産に対し高度の責任を負う行動が、事後、日本側に「ウィーン条約の関係規定に違反した」行為と非難されたことであり、このような小さな事が日本国内で一部の人によって「日本の主権を侵犯した」大問題だとわめき立てられたことであり、中国側の善意と実務的な態度が日本側にゆえなく歪曲されたことである。日本の自民党内と社会の一部の人は、あろうことか日本政府が中国に対し断固たる対策をとるよう強く要求した。日本外務省は駐日中国大使を召見するなどの形で、中国に厳重抗議を申し入れ、愚かにも中国にこの5人の闖入者を「返す」よう要求しただけでなく、横暴でも中国政府に日本に謝罪し、また今後も類似の事件が再発しないことを保証するよう要求した。この期間に、日本の一部のメディアはたてつづけにこのようなニュースを流し、マンガで中日両国の指導者を皮肉るものさえあった。

 周知のように、「911」テロ事件が発生した後、各国とも外国公館に対する保護を強化した。これは世界のテロ反対闘争の一構成部分と見なされるべきである。中国の武装警察は外国の中国駐在公館を保護する過程では、終始ウィーン領事条約を含む関係国際条約の規定を真剣に実施している。今回の5人の身元不明者が瀋陽の日本総領事館に闖入した事件に対する処理もその例外ではない。一時期以来、多くの中国駐在外国公館は中国の武装警察が身元不明者の闖入を防止するため、警備を強化するやり方に歓迎と感謝の意を表明した。しかし、日本政府の反応は各国とこれほど違うのはなぜだろうか。

 その実、これは主に日本国内の政治情勢と小泉首相のおかれている立場によってそうなったのである。長い間、日本国内で民族主義の思潮がはん濫し、社会では極端な右翼勢力が機に乗じて台頭し、一部の人は中日友好関係の順調な発展と中国の繁栄富強を目にしたがらず、なんとかして日本の第2次世界大戦期間の歴史問題と中日関係問題の上で中日両国政府に難題を出し、トラブルを引き起こそうとし、「天下が乱れないことだけ恐れている」。他方、小泉政府は国内の政治的支持が田中外相の解職によって大幅に下がってしまったため、対外関係問題で強硬な立場をとってその強い地位を顕示することを望んでいる。しかし、このような国内の右翼勢力の圧力に屈服するやり方はまさに小泉首相の国内事務の面の軟弱さおよび対外事務の面で定見がないことを暴露した。

 国際関係においては、具体的な問題を処理するときは、十分な考えの筋道が必要である。日本政府が今回の駐瀋陽総領事館事件を処理するとき、愚鈍で技巧がないように見えたのは、十分な考えの筋道がないからである。十分な考えの筋道とは、全局から出発し、長期にわたる考慮から出発して、国と国の間に発生したさまざまな具体的な問題を認識、処理することであって、具体的な小さな事にまとわりつくことではない。

 近年来、隣国と関係のあるいくつかの事に対する日本政府の処理を見ても、そのほとんどは十分な考えの筋道がないものである。例えば、今年4月、小泉首相が突然靖国神社の参拝を決定したことはすべてのアジア隣国との関係を発展させる大局と長期にわたる必要に合致せず、十分な考えの筋道がないものであった。昨年12月、日本が中国の専属経済海域で不審船を撃沈し、また「真相をはっきりさせる」ため、どうしてもそれを引き上げることを固持していることも、十分な考えの筋道のないことである。今回の事件を処理する過程で、小泉首相は闖入者事件が日中関係を損なうようなことはないと語り、中日友好関係の大局を重視しているようであるが、日本側が小さなことでそれほど大騒ぎするのは、はっきりした十分な考えの筋道があるとは言えない。

 現在、駐瀋陽日本総領事館事件はついに両国政府の努力の下でわりに妥当に解決された。人々は不法闖入のような事件が再び起こらないよう望んでおり、これにもまして日本政府のこのような問題の処理の仕方が繰り返さないよう望んでいる。そのキーポイントはあくまで十分な考えの筋道で国と国の間の避け難いさまざまな具体的で小さな問題を処理することである。