ルポルタージュ『尊厳』が出版さる

 中国の女性作家旻子(本名李旻)のルポルタージュ『尊厳‐‐中国民間対日賠償請求の軌跡』(以下、『尊厳』と略す)が今年5月に中国工人出版社から出版された。これは1945630日深夜に日本の秋田県大館市の花岡で起こった、日本の企業側および官憲による迫害に抵抗する「花岡事件」をテーマとして書かれたルポルタージュである。

 第二次世界大戦で、中国侵略の戦線を拡大し、さらには太平洋戦争へと突入した当時の日本当局は、国内における軍需産業の労働力不足を補うため、中国各地で、中国人捕虜や若者を日本に強制連行し、各地の工場、鉱山、ダム建設工事現場に配置し、非人道的な待遇の中で働かせた。花岡の企業の工事現場に配置された986人の中国人「労務者」は非人道的な扱いに耐えきれず、捕虜として連行されていた元将校耿諄さんの指導のもとで一斉に蜂起して日本官憲および企業側とたたかった。しかし、この蜂起はすぐ日本の官憲に弾圧され、蜂起に参加した人たちの多くは迫害を受けて死んだ。中華人民共和国の成立後、在日愛国華僑や「花岡事件」のごく少数の生き残りたちの努力、そして平和を愛する日本の人たちの声援のもとで、この事件の真相が明らかにされ、犠牲になった人たちの遺骨収集もおこなわれ、1953年に、そのうちの一部遺骨は当時、中国在留日本人の日本への帰国のために中国に向かった興安丸などによって故国に持ち返えられ、寄港地の天津市に設けられた記念館に安置された。

 それ以後、平和を愛する数多くの日本の人たちと正義の側に立つ日本の弁護士たちの数十年にわたる努力によってこうした迫害事件を闇に葬り去ろうとした勢力に打ち勝ち、訴訟は一応の成果をあげることができた。泉下に眠る犠牲者たちも、これで無縁仏としてあの世にさまようことはなくなったのである。そして、今回の旻子のルポルタージュ『尊厳』の出版によって、正義のたたかいの中で命を落とした人たちを永遠に人びとの記憶にとどめることも可能となったわけだ。

 文遅中日友好協会副会長は、このルポルタージュ『尊厳』のために序文をしたため、中日国交正常化30周年の年にあたり、長篇ルポルタージュ『尊厳‐‐中国の対日民間賠償請求の軌跡』を目にすることができて、感無量である、と述べている。(林国本)