中国の宇宙技術の国際協力を展望

蘭辛珍

 先般開かれた中国・ブラジル地球資源衛星引き渡し2周年応用成果報告会で、中国国防科学技術工業委員会の劉積斌主任は記者に「今年、われわれは中国・ブラジル資源衛星02号を打ち上げる」と語った。

 中国・ブラジル地球資源衛星は中国とブラジルが共同で開発し、19991014日中国で打ち上げに成功したものである。軌道テストと試運転を経て、200032日、使用のため正式に引き渡された。現在、衛星ワークステーションの各サブシステムの作業はいずれも正常な状態にあり、性能は良好である。資源衛星は2年という設計上の寿命を完全に超えて、さらにある期間安定して作業する。

 これに先立ち、中国はすでにアメリカ、ロシア、フランス、カナダ、韓国、タイなどの欧米およびアジア諸国と宇宙技術協力を展開し、相前後してパキスタン、オーストラリア、スウェーデン、アメリカ、フィリピン、ブラジルなどの諸国および中国のユーザーのために27個の国外製衛星の打ち上げに成功した。

 オブザーバーによると、今年325日から41日までの神舟3号無人宇宙船の成功裏に打ち上げおよび帰還に伴い、国際における中国の宇宙技術とその応用の声望はますます高くなり、それによって中国は国際宇宙技術協力の面で重要な位置を占めることになろう。

喜ばしい宇宙技術の成果

 515日、太原衛星打ち上げセンターは長征運搬ロケットで「風雲1号D」、「海洋1号」という2個の衛星を同時に予定の軌道に乗せることに成功した。

これは中国が「一つのロケットによる2つの衛星打ち上げ」で収めた一三回目の成功である。中国宇宙技術研究院の専門家によると、「風雲1号D」は当今の国際先進的なアメリカNOAA15気象衛星の放射計と比べて、その感度、空間解像度などの性能は同じで、通路の数量、全地球の原始資料の解像度はNOAA15より優れている。

 中国はいままで類型の異なる人工衛星を50個近く開発し、打ち上げ、飛行の成功率は90%以上に達し、帰還式リモートセンシング衛星シリーズ、「東方紅」通信放送衛星シリーズ、「風雲」気象衛星シリーズ、「実践」科学探査・技術テスト衛星シリーズという4つの衛星シリーズを一応形成している。

 中国は世界3番目の衛星回収技術を把握した国であり、衛星回収の成功率は国際先進レベルに達している。中国は世界で5番目に地球静止軌道通信衛星を独自に開発し、打ち上げた国でもあり、気象衛星、地球資源衛星の主な技術指標は国際レベルに達している。中国はまたアメリカと日本に次ぐ3番目の、極軌道、静止という2種の気象衛星を同時に運行している国でもある。中国が自ら開発し、打ち上げた6個の通信衛星、地球資源衛星、気象衛星は使用を始めてから、安定して作業し、性能が良好である。衛星回収技術、軌道制御技術、姿勢制御技術、宇宙飛行リモートセンシング技術などの面では世界をリードする地位を占め、すでに三軸安定衛星ワークステーション、自転安定衛星ワークステーション、帰還式衛星ワークステーション、小衛星ワークステーションなどいくつかのシリーズの開発に成功した。

 中国は宇宙運搬ロケットを独自に開発する能力をもつ数少ない国の一つでもあり、近地点軌道衛星、地球静止軌道衛星、太陽同期軌道衛星の打ち上げに用いられる12種の型の異なる「長征」シリーズ運搬ロケットを独立自主に開発した。「長征」シリーズ運搬ロケットの近地点軌道の最大運搬能力は9200キロ、地球静止転移軌道の最大運搬能力は5100キロに達し、国際商業ベース衛星打ち上げサービス市場で重要な位置を占めている。「長征」シリーズ運搬ロケットはこれまで63回打ち上げられた。

 宇宙飛行器発射場の面では、すでに酒泉、西昌、太原の3発射場がつくられており、国内の打ち上げ任務も完成できれば、国際商業ベースの打ち上げサービスとその他の国際宇宙飛行協力展開の能力も持っている。陸地観測コントロールセンターと海上観測コントロール船を含めて、中国の宇宙飛行観測ネットの観測コントロール技術は世界先進レベルに達している。

 「われわれは有人宇宙飛行を実現する。ここ数年内に月着陸計画も実現する考えだ」。国家航天局で取材した際、多くの専門家は記者にこう自信満々に語った。1992年に中国は有人宇宙船の宇宙飛行プロジェクトを実施し始めてから、すでに有人宇宙船、信頼度の高い運搬ロケット、宇宙リモート・センシングと宇宙科学実験装置の開発に成功し、宇宙飛行医学と宇宙生命科学プロジェクトの研究を展開し、予備宇宙飛行士を選抜した。19991120日と21日に、最初の「神舟」号無人実験宇宙船の打ち上げと回収に成功した。今年の「神舟3号」の打ち上げと回収の成功により、中国は有人飛行にまたも1歩近づいた。

実り豊かな宇宙技術の応用成果

 中国宇宙技術研究院報道部の盧俊主任は記者に、「今年に打ち上げた『海洋1号』衛星は主に海洋モニタリングに用いる」、「中国の宇宙応用成果が非常に著しく、通信、森林防火、砂嵐のモニタリングなどでは、非常に大きな社会的効果と経済的効果をあげている」と語った。

 20世紀80年代の中期から、中国は衛星通信技術を利用して日増しに大きくなる通信、放送、教育事業の発展の必要を満たしてきた。衛星固定通信業務の面では、全国に数十カ所の大中型衛星通信地上局を設け、世界の180以上の国・地域を結ぶ国際衛星通信回線は27000余回線に達している。国内衛星公衆通信ネット、衛星通信回線は7万以上に達している。超小口径端末(VSAT)通信業務はここ数年発展が速く、国内には超小口径端末通信業務の経営部門が30個あり、小型サービスステーションのユーザーは15000戸に達し、そのうち双方向のユーザーは6300戸を上回っている。それと同時に、金融、気象、交通、石油、水利、民間航空、電力、衛生、報道など数十部門の80以上の専用通信ネットと1万にのぼる超小口径端末を設置した。衛星テレビ放送業務の面では、すでに全世界をカバーする衛星テレビ放送システム、全国をカバーする衛星テレビ教育システム、衛星直接中継試験プラットホームがつくられ、中国の放送・テレビのカバー率を大幅に高め、現在はすでに33の通信衛星中継器を占用する衛星伝送カバーネットとなり、衛星テレビ放送接収センターは約189000カ所に達している。

 それと同時に、宇宙科学の応用は著しい成果をあげ、中国は20世紀60年代の初期に宇宙観測ロケット、宇宙観測アドバルーンを利用して高層大気の測定を展開し始めた。70年代の初期から「実践」シリーズ科学探査・技術実験衛星を利用して一連の宇宙観測と研究を展開し、多くの貴重な環境測定データを入手した。ここ数年は、宇宙天気予報の研究と相応の国際協力を展開した。80年代の末から帰還型リモートセンシング衛星を利用してさまざまな宇宙科学実験を行い、結晶体と蛋白質の生長、細胞の育成、作物の育種などの面ですばらしい成果をあげた。中国の宇宙科学は基礎理論研究の面で若干のイノベーションの成果をあげ、宇宙物理学、微重力科学、宇宙生命科学などの分野で一定のレベルを持つ対外開放の国家クラス実験室を設置し、宇宙有効負荷応用センターを設置し、宇宙科学実験をサポートする基本的能力をもっている。ここ数年、「実践」シリーズ科学探査・技術実験衛星を利用して近地点の宇宙環境の中の帯電粒子とその効果に対し比較的詳しい測定を行い、初めて微重力流体物理の二層流体の宇宙実験を完成して、宇宙実験のリモート・コントロール操作を実現した。

対外打ち上げ市場を開発

 「新しい世代の無毒、無汚染、高性能、ローコストの運搬ロケットを開発し、国際商業ベース打ち上げサービスに参与する能力を増強する」。2000年、中国国務院は「中国の宇宙飛行」白書の中で、以上のような対外打ち上げ市場開発の要求を提出した。

 10年前に、中国はかつてアメリカとヨーロッパの打ち上げサービス業者の主な潜在的な競争相手と思われた。しかし、今まで、中国の対外打ち上げに依然として突破的な進展が見られず、1985年に中国政府が「長征」シリーズ運搬ロケットを国際市場に進出させ、国際衛星打ち上げサービス業務を引き受けると発表してから現在までに、パキスタン、オーストラリア、スウェーデン、アメリカ、フィリピン、ブラジルなどの諸国のために27個の外国製衛星を打ち上げただけである。アジア太平洋衛星通信委員会――時事通信ウェブサイトの分析によると、その原因は三つある。第1は国際市場における長征ロケットの名声が損なわれることである。長征2号(EPKM)ロケットが1992年と1994年の2度の打ち上げ失敗および1996年の長征3号乙ロケットの災難的な初飛行のため、大多数の取引先は長征ロケットとの打ち上げ契約を取り消した。第2はアメリカが国際打ち上げ市場の「公平競争」を確保するために中国に一連の打ち上げ割り当て額を強引に押しつけたことである。1995年、中国はその時から2001年までにアメリカの打ち上げ業者のオファーより15%以上も安い価格で全部で15個の衛星を打ち上げなければならなかった。これらの限定額は20011231日で期限切れとなったが、現在まだ延期していない。第3は米国務省がエクスポート・ライセンスをコントロールしたことである。これは最も根本的な原因でもある。1999年から、アメリカはいろいろな理由を持ち出してアメリカ製の衛星あるいはアメリカの部品を含む衛星の対中国輸出を禁止し始めた。アメリカ国務省の「国際兵器貿易規定」第121.1条は、衛星はアメリカ軍用品制御明細書の第15種類の「衛星システムと関連設備」項目下の国防製品あるいは技術に属し、それには商業通信衛星、リモートセンシング衛星、科学実験衛星、航行誘導衛星、多目的衛星を含むと規定している。当面の商業衛星の契約ベースの価格について言えば、多くの衛星はアメリカの法律の定めた「特殊な軍用設備」あるいは「主要な国防設備」の部類に属し、そのため、上述の規定はいずれも中国に輸出して打ち上げられる圧倒的多数のアメリカの商業通信衛星に適用する。

 米議会は1999315日に「1999会計年度国防安全権限授与法」を公布し、その中で中国のアメリカ製衛星打ち上げに対し、さまざまの特別な規定と制限を行っている。中国のロケットによるアメリカ製衛星の打ち上げに対するアメリカの差別的な審査、認可政策は、衛星輸出許可申請の難度を大きくし、中国の国際商業ベース衛星打ち上げサービスに重大なマイナス影響を及ぼしている。

 中国国家航天局の姓名を明らかにしたくないある関係者は記者に次のように述べた。「第1の原因について、われわれはすでに解決し、われわれの開発した新しい世代の運搬ロケット――長征5号は13トンにも達するGTO運搬能力を持っており、このロケットは低温・高エネの環境保全炭水化合物推進システムを使用する」。「第2の原因は、アメリカはいまでもまだ延期していないことである。われわれの対外打ち上げ市場開発に影響するのは第3の原因である。しかし、われわれの衛星開発能力がすでに向上し、中国宇宙飛行科学技術グループはすでに総体設計、サブシステム開発、生産・試作、環境試験、サービス保障など宇宙飛行器開発システムを形成し、30余年も衛星開発経験を積み、地球静止軌道通信衛星、地球静止軌道と太陽同期軌道気象衛星、資源衛星、科学実験衛星などの衛星を開発する能力を持ち、衛星の回収技術、軌道制御技術、姿勢制御技術、宇宙飛行リモート・センシング技術などは世界先進レベルに達し、ユーザーのためにさまざまな衛星とその部品を設計、製造し、衛星軌道を引き渡すことができる。現在、われわれは国際市場を切り開く能力がある。

 2002年1月17日、中国宇宙飛行科学技術グループ公司はイスラエル航空機工業会社、香港衛星科学技術持株会社と合意に達した。それによると、三者は商業ベースで「香港1号」と「香港2号」通信衛星を設計、製造、運行し、中等容量の通信衛星を協力して開発することになっている。これは中国の対外衛星打ち上げ市場の新しい時代の到来を予告している。

展望明るい国際協力

 中国は一貫して宇宙空間の平和的利用のさまざまな活動を支持し、平等互恵、他人の長所を取り入れて自らの不足を補い、共に発展することを踏まえて、宇宙分野の国際協力を増進、強化することを主張している。

 1980年6月、中国は初めてオブザーバー代表団を派遣して国連宇宙空間平和利用委員会第23回会議に参加し、同年113日、国連は中国をこの委員会に正式に加入させた。その後、中国は国連宇宙空間平和利用委員会およびその傘下の科学技術と法律グループ委員会の各回の会議に参加した。1983年と1988年は相前後して国連の制定した「宇宙空間条約」、「宇宙救助返還協定」、「宇宙損害賠償条約」、「宇宙登録条約」に加入した。1994年、中国政府は国連アジア太平洋経済社会委員会と協力して北京で第1回アジア太平洋地域「空間応用の持続可能な発展促進閣僚会議」を開き、深遠な影響を持つ「北京宣言」を発表し、自らの責任と義務を担うことを約束した。

 中国は相前後してアメリカ、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス、日本、スウェーデン、アルゼンチン、ブラジル、ロシア、ウクライナ、チリなど10数カ国と政府間、政府部門間の宇宙科学技術および応用協力協定、議定書あるいは覚書に調印し、長期の協力関係を樹立し、互恵の宇宙計画の制定、専門家と学者の相互派遣、シンポジウムの開催から衛星あるいはその部品の共同開発、衛星搭載サービス、商業ベースの打ち上げサービスの提供などに至るまで、両国間の協力の形はいろいろである。1993年、中国はドイツと共同出資して華徳宇宙飛行技術公司を創立した。1995年、中国はドイツ、フランスの宇宙飛行会社と「1号」衛星の開発、製造契約を締結し、1998年に打ち上げに成功した。これは中国が衛星についてヨーロッパ宇宙飛行界と行った最初の協力である。

 1992年、中国はタイ、パキスタンなど諸国と共同で「アジア太平洋地域宇宙技術・応用多国間協力シンポジウム」を提唱、発起し、この地域協力の推進の下で、中国、イラン、韓国、モンゴル人民共和国、パキスタン、タイなど6カ国の政府は1998年4月にバンコクで「マルチジョブ小型衛星プロジェクトと関連活動協力に関する了解覚書」に調印し、宇宙協力プロジェクトを正式にスタートさせ、効果的な協議協調メカニズムを一応構築し、連絡委員会(LCAPMCSTA)、組織化準備委員会(PREPAPMCSTA)、準備委員会事務局などの機構を設立し、災害軽減、小型衛星技術、通信の3衛星技術工作グループを設立し、プロジェクトの研究と評価を展開している。アジア太平洋地域の多国間宇宙空間協力は国連宇宙空間平和利用委員会に大いに賞賛され、その支持を得ている。

 「中国政府は宇宙技術、宇宙応用、宇宙科学などの分野での国際交流と協力の展開を支持している。中国は宇宙領域における国際協力を20年余り行っており、二国間協力、地域協力、多国間協力および商業ベース打ち上げサービスなどさまざまな形の協力を展開している。われわれの宇宙技術はかなりのレベルに達しており、世界先進レベルに属するものもあり、国際協力の中でより多くの国を引きつけるであろう」と中国宇宙技術研究院の盧俊氏は記者にこう語った。

 取材を通じて、記者は次のことを知った。中国と国際社会の宇宙技術協力は今後次のいくつかの分野で重点的に展開される。第一はアジア太平洋地域の宇宙技術と応用の多国間協力を推進し、宇宙技術を利用して区域経済の発展を促進し、環境、災害モニタリングを行う。第二は中国の宇宙飛行企業が平等、互恵、公平の原則の下で国際宇宙飛行商業ベース打ち上げサービスに積極的に参与する。第三は中国の成熟した宇宙と宇宙応用技術を利用して、互恵を踏まえて、発展途上国と協力を展開し、協力国にサービスを提供する。第四は地球環境モニタリング、宇宙環境の探査観測、微重力科学、宇宙物理、宇宙天文などの研究分野の国際交流と協力、特に微重力流体物理、宇宙材料科学、宇宙生命科学と宇宙生物技術などの研究分野の国際交際と協力を展開する。

 中国宇宙技術研究院の専門家たちは、中国は国際宇宙協力に参加するにあたって、1996年の第51回国連総会で採択された「宇宙空間を模索、利用する国際協力を展開し、すべての国の福祉と利益を促進し、特に発展途上国の必要を考慮することに関する宣言」(「国際宇宙協力宣言」)の中で打ち出された基本原則を順守し、宇宙資源を平和的に開発・利用し、人類の福祉を図ることを趣旨として、国際協力の中で時々刻々宇宙環境と宇宙資源の保護に意を配るだろうと表明した。