中国は崩壊するか

 中国の運命についての論争はここ10年来止んだことがなかった。数年前流行した「中国脅威論」と違って、最近の世論の論争の焦点は中国が崩壊するかどうかである。

小 丁

 「中国崩壊論」およびそれと関係のある「中国統計数字水増し論」は主に、表現は中国経済成長の真実性を疑い、中国の当面の経済社会に存在するいくつかの問題を無限に拡大し、中国の統計数字が「偽帳簿をつくって」おり、数年後に中国は崩壊するだろうと言っていることに現れている。西側のメディアは普遍的にこのような論点にかなり目を向けており、中国経済の繁栄を疑い、中国の崩壊を予言することは西側では一種の流行に似ている。

 「中国崩壊論」の起源は米ピッツバーグ大学のトーマス・ロースキ経済学教授が2001年に発表したある学術論文にさかのぼることができる。「中国のGDPの統計にどんな問題が発生したか」(What'sHappening to China's GDP Statistics?)という論文の中で、中国各省、市の経済統計データは中国国家統計局が発表した数字と一致しないところがあることを発見し、そのため、1997年から2000年までの中国の国内総生産の増加値の真実性を疑うと書いている。ロースキ教授の「中国統計数字水増し論」の観点は本来学術界の1家言であるが、ある期間無視されたあと、その観点は最近急に西側のメディアの注目を集めるホットスポットとなった。『ニューズ・ウィーク』、『ビジネス・ウィーク』、『ザ・エコノミスト』など西側の主なメディアは次々とその観点を大々的に報じた。というのは西側の輿論がその時すでに「中国脅威論」に熱中しなくなり、またその時ロースキ教授の観点がちょうど彼らの期待、つまり「中国の経済成長は偽りのものであり」、「中国の経済は間もなく崩壊する」にそっているからである。

 今年41日に出版されたアメリカの『ニューズ・ウィーク』も「中国が偽帳簿をつくるのはなぜか」と題する論文を掲げ、その編集者の言葉は「経済大国としての中国の評判は全く偽りの基礎の上に築かれたものである」と書いている。この文章は、中国がすでに「うわべだけの数字に埋められ」、「これらの数字が表しているのは大げさな繁栄であり、本来科学的であるはずの数字が政治の道具となった」と警告している。20017月に章家敦が出版した『中国が間もなく崩壊する』という本は「中国崩壊論」を極点に押し上げた。この中国系アメリカ人の弁護士は、中国の四大国有銀行の不良債権は「すでに維持できないところに達している」と見ている。そのため、章家敦は中国が今後の5年内にWTO加盟によって外国製品に突き破られ、中国の現行の政治と経済制度はせいぜい5年前後しか維持できないだろうという結論を引き出した。

 以前の西側の経済学者は中国の経済統計データが真実でないか問題があると疑っただけで、このような大胆な「結論」を持ち出す人がまだいなかった。そのため、「中国が間もなく崩壊する」という観点が打ち出されてから、多くの専門家と学者も中国の経済に存在する様々な問題について盛んに話している。中国が前の一時期に広く宣伝したような繁栄、隆盛ではなくなり、中国は崩壊しつつあるということを人々に信じ込ませるように努める人も一部いる。

 中国の統計は水増しされている。これはもともと学術範囲内の論点であるが、西側の一部メディアによって広く伝播されている。このため、人々はなぜかと尋ねざるを得ない。世界の発展史において、ある大国が台頭する時、国際にどうしてもさまざまな議論、推測、懐疑ひいては憂慮が生じるが、これは情理にかなったことである。中国の経済は長年続けて急速な成長をとげ、国力が急速に増強されているが、これは世界中の人々の関心を集める焦点となるのも、何も不思議なことではない。

 「中国崩壊論」が流行する原因の一つは、中国の経済成長率の統計には確かに若干の問題が存在し、計算のレベル、方法、範囲などがいちだんの改善と向上が待たれている。ところが、「中国崩壊論」を信じたり、伝播したりする人はこの問題を無限に拡大した。中国の一部の企業と地方の官吏が統計数字を偽って報告する現象が存在し、中国の国有銀行にも不良債権がある。この点について中国政府は従来覆い隠せず、いま体制と法律の改革を通じて解決している。しかし、これらの問題はどれだけ深刻なのか、中国の経済崩壊を招くかどうかは、客観的データと的確な分析が必要である。有名な経済学者である任若愚氏は、ロースキ教授の結論はあまりにも簡単でぞんざいであると指摘した。事実上、中国国家統計局は中国の統計状況をとてもはっきり知っている。国家統計局計算司の許憲春司長は、いかなる国にとっても、国内総生産のデータが100パーセント的確なものにするのは不可能であるが、中国の現在の国内総生産のデータは中国の国民経済発展の客観的状況を基本的に反映していると語った。中国国家統計局の邱暁華局長は、「中国経済の高速成長が頼ったのは経済発展のサポートであって、偽りの数字ではない。ロースキ教授は学術面であまり厳格でなく、誤りの結論を引き出した。下心のある人が彼の文章を利用することに至っては、学術問題範囲外のことである」と語った。

 もう一つの原因はイデオロギーの範疇にまで追及することができる。冷戦思惟の継続と影響により、西側の一部の人は中国に対し根強い懐疑、恐怖、排斥を抱いている。西側の一部の人は頭の中で、冷戦の勝利が西側のイデオロギーの正しさを証明し、いかなる事も、西側のイデオロギーに従ってやってこそはじめてりっぱにやることができるが、さもなければ失敗すると考えている。しかし、中国の経済発展はどうしてもこの思惟論理に合わない。その思惟論理と一致しない客観的な現実が現れると、彼らがこのような論理に問題があるかどうかを再考するのではなく、中国の統計数字が偽りのものであり、中国の繁栄が偽りのものであると断定する。ロースキ教授の「中国統計数字水増し論」は当初発表された時、アメリカ世論界の注意を引き起こさなかった。というのは、当時「中国脅威論」が盛んに宣伝されていた時であり、この理論の基礎は中国の実力の成長が速すぎ、世界に脅威をもたらすというものであり、「中国脅威論」を証明するには、中国の統計数字を肯定し、それを誇張する必要があるからである。「中国脅威論」が流行しなくなり、西側の世論はロースキ教授の言い方が西側のイデオロギーに奉仕できることを発見した時、「中国崩壊論」を大々的に報じた。北京放送学院当代国際問題研究センター主任の劉洪潮教授は、「中国崩壊論」を大々的に宣伝す人たちは自身が中国が真に崩壊に直面していることを信じるかどうかも懐疑に値すると指摘した。

 劉洪潮教授は、「中国崩壊論」が「中国脅威論」の論点と同じでないように見えるが、実際には「中国脅威論」の焼き直しの一種で、その性質は同じであり、目的はいずれも中国の国際イメージを破壊し、中国の国際環境を悪化させ、中国の発展を遅らせ、中国の台頭を抑えることにあると指摘した。

 中国の経済統計数字について、大多数の客観的なアナリストはわりに正確に評価することができる。世界銀行は20世紀80年代にレポートを作成した時、中国政府の統計数字を直接採用したが、90年代初め、中国政府の統計数字に疑問を抱き、当時中国の統計数字がまだ国際通用の方法を完全に運用していなかったため、中国の国内総生産を調整した。90年代末になると、中国の統計部門のたえまない整備に伴い、世界銀行はこれ以上中国政府の数字を調整せず、その出版物のデータも中国政府の統計数字を直接採用した。

具体的な数字は問題をもっとよく説明できるかも知れない。世界銀行の最新資料が示しているように、2000年の中国の国内総生産は世界第6位にあがっている。世界銀行が最近公布した2001年『中国経済の半年度レポート』も中国政府の統計データを肯定し、多くの国の経済が衰退している状況の下で、中国経済は依然として急速な成長を維持し、そのうち外資系企業が最も際立ち、昨年外国の対中国直接投資は470億ドルに達したと指摘した。アメリカの『フォーチュン』誌も、中国にいる3000人の外国企業の高級管理者に対し調査を行ったが、その結果は70%近くの外国会社は、中国に対する投資を増加することを明らかにしたと報道した。

 ブッシュ米大統領は今年2月に中国を訪問した際、1975年の中国におけるその経歴と比べて、中国は最近の20余年間に天地を覆すような変化が生じたと語った。シラク仏大統領も最近中国の収めた全世界の注目を集める成果を称賛し、次のように述べた。中国は世界最大の発展途上国であり、発展の過程に自国の問題があり、意に添わないところもたくさんある。しかし、中国は世界で問題がある唯一の国ではなく、いかなる国もそれぞれ自国のいろいろな問題がある。最も重要なのは現実に直面し、問題を解決する中で前進することである。

 中国で20年余り暮らし、中国の政治経済についての本を20冊も書いたアメリカの弁護士と経済学者の竜安志氏は、1996年に『中国の第1』を書いた時、多くの人はこの国の経済情勢に対する一部の予測を納得できず、これは親中国・親共産党の別の声にすぎないと見ていたと回顧した。氏が最近『中国の世紀』という本を出版したあと、ほっとした。というのは、氏がすでに公認される主流の作家になったからであり、中国の経済の見通しに対するその楽観的な態度が全世界の最も有名な商業界の指導者の中国経済に対する評価、展望と偶然に一致しているからである。