食品の安全問題の解決に着手

 15000万元を投入して食品の安全に関する重要な技術を開発すると同時に、管理を強化していく―――

唐元かい

 ダイオキシンや狂牛病など、食品の安全に影響を及ぼす驚くべき事件が世界的な規模で起きていることから、人々は食品の安全性の問題に不安を隠せないでいる。調査によると、中国でも疾病発症につながる微生物汚染による食中毒が年々増え続けており、死亡にいたるケースもあって、食品の安全面での問題が同様に関心の的となっている。

政府の重視

 政府は食品の安全問題を国民経済と社会発展に関する第105ヵ年計画期間中(20012005年)の「国家重大科学技術専門プロジェクト」12件の1つに盛り込んだほか、科学技術部は衛生部と国家品質検査総局、農業部と共同で『食品の安全に関する重要な技術』と題するフィジビリィティ・スタディー報告書をまとめた。この報告書は食品の安全をめぐる現状と存在する重要な問題を軸に、世界貿易機関(WTO)加盟後に直面するチャレンジに対応し、国際貿易に適合した食品の安全技術基準と検査システムを確立し完備させることを目的に制定されたもの。中国科学院会員で農業科学院の盧良恕副院長を座長とする26名の権威者で構成される専門家グループは6月末に検討会を開き、真摯な討論と審査を行って「報告書」を採択した。これにより、政府が15000万元を投入して実施する「食品安全検査ネットシステム」プロジェクトが2005年の完成めざして起動した。

 『食品の安全に関する重要な技術』では、食品の安全検査技術と関連設備の研究・開発、食品の安全検査と評価システムの構築、食品の安全基準と技術に関する基礎データの蓄積、生産と流通過程における制御技術の開発など4つの面で研究を行われることになっている。 検討会に出席した専門家は、このプロジェクトを実施して、以下に示す具体的な目的を達成することを明らかにした。

 食品安全検査システムをほぼ構築し、実験室での検査方法を400500件確立し、国際規格に合致した国立食品安全センターを23カ所設立するとともに、試薬、現場高速検査に関する技術を3040件開発する;

 400500品目の食品について安全上限基準値、3040の生産と加工、流通分野における食品について安全技術規範と基準を提言する;

 食品安全モデル地区を510カ所建設し、食品安全モデル企業を1020社育成する;

 食品の安全に関する主力研究者を養成し、高級専門要員を500650人導入・養成する。

市場への参入許可

 この数年、食品の安全を脅かす事例が増え続けている。例えば、精米の段階で鉱物油を用いて“光沢を出す”、小麦粉にホルムアルデヒドを混入する、ブタに薬品を加えた飼料を与えて赤身を増やす、野菜の農薬残留度が基準を超えているなどだ。

 これに対処するため、政府は農産物市場参入制度を制定して、「新世紀における無公害食品行動計画」を実施に移した。

 農業部(省)市場・経済情報司の劉振偉司長は「農業関連機関は食品の安全を確保するため、農薬、動物用薬品の禁止違反、各種添加剤の残留問題の解決に力を入れている。市場参入許可制度の制定から着手して、生産地と販売地、この2つの市場で農産物の品質と安全を管理するようにし、まず北京や天津、上海、深せんの4都市で試験的に開始し、蓄積した経験を幅広い範囲で普及させていく」方針を明らかにした。

 さらに劉司長は、参入許可制度は農民や販売業者にとって大きな制約となるが、長期的に見ればプラスだとの考えを示した。消費者が食品に不安を持てば、買い控えや不買が起きることになり、これに反して、消費者の信頼が得られれば、食品の総消費量は必ず拡大するからだ。

 また農業部は良質で安全、衛生的な農産物の発展をめざすため、生産前、生産中、生産後の基準の制定と修正を速めており、去年は2回に分けて農業関連715項目の基準を実施すると同時に、3回目の実施も計画している。

 農産物の品質検査と監督システムの整備では去年、市場が求めていた部クラスの品質検査センターを2030カ所補充し、また畜産品や動物用薬品、飼料の品質認証センター設立の準備を加速させて、農産物の品質と安全に対する監督と管理を強化してきた。 

新たなシステム

“赤身をつくる薬品”や“水を注入した肉”といった問題で各地の消費者が食肉の安全に心配を寄せていたころ、ある企業が時期を逸せず豚肉の生産と販売を一体化させた「銘柄専門販売」システムを打ち出した。販売する“安心肉”は赤身薬が含まれていない、水が注入されていない、病死した豚が使用されていないことを保証し、また豚肉の微生物含有量、薬物残留量、重金属含有量についても指標を設けて達成を確約するほか、保険会社の「品質保険」で、仮に確約した基準に達しなければ消費者に賠償するというものだ。これは市場関係者に大きな衝撃を与えた。また豚の飼育から安全管理の方法にも一石を投じるものとなった。

 「豚肉市場では、伝統的な卸し・小売り方式が統一配送、チェーン販売方式に取って代わるかどうか今ははっきりしないが、競争が激化している中、市場の生産・販売システムが大きく変化するのは争えない事実だ」。福建省アモイ市養豚協会の李明星会長の発言だが、多くの人がこれに賛同している。

 専門家や業界関係者は、表面的には豚肉の生産・販売をめぐる“大戦”は単純かつ正常な市場競争にすぎないが、実際には現在の食品の安全に関する異なる基準と保証システムとの摩擦を反映したものだと見ている。

 今年4月にアモイで豚肉の銘柄販売を始めた銀祥公司の責任者は「“安心肉”の最大のポイントは、当社が生産から販売の末端に至るまで厳格に安全保証を行っていることだ。国や地方の関係する規定に基づいてより厳しい内部基準を設け、優良な養豚場と『指定同盟』契約を結び、養豚場は当社が定めた基準に沿って、また当社の監督の下で生産するほか、当社は買い上げ価格を保証する。同時に輸送、小売りなど各節目ごとに豚肉の品質をすべての過程で監督し、毎月定期的にサンプルを省の検査センターに送って無公害豚肉に関する各指標について検査してもらい、基準に達していない場合は決して販売させない」と説明している。

 福建省農林大学の陳家祥副教授によれば、農業部が公布した“無公害豚肉”に関する指標には、疫病のほかに農薬残留、重金属残留、微生物含有量など15項目の指標があるが、市場の監督と管理、防止で重点されているのは、赤身肉をつくる薬品を含んでいない、病死した豚の肉でない点だけだという。「現在の決められた場所での堵殺、検査と検疫では普遍的に15項目の指標に責任を負うことはできない。こうした状況の中で、銀祥公司がした確約は超前進的なもので、消費者の安全へのニーズに非常に合ったものだ」と陳副教授は強調する。

 また専門家は、基準が高いか低いかは問題の一側面にすぎず、現有の分散飼育――集中堵殺――分散販売という生産・販売方法の下では、伝統的な豚肉の安全保証システムと市場の管理システムにも明らかに“軟肋骨”があると指摘する。

 銘柄“安心肉”は一つの強烈なシグナルを放った。“テーブル汚染”防止作業が進むに伴い、一部の企業はそこに巨大なビジネスチャンスを見て取って主動的に参入するようになった。豚の生産から豚肉の販売に至るすべての過程で、企業は厳格に自律的な行為を行うようになってきたが、こうなれば、政府の関連機関による監督も相対的に簡単なものとなり、どんな節目で問題が生じたかが発見できれば、企業に対して直接処罰を科し、重大な場合には市場から締め出すことができる。品質の安全性が一貫して“古く、大きく、難しい”問題となっていた豚肉市場に「企業が製品に責任を負い、政府が企業を監督する」新たな安全保証システムを真に確立できる可能性が出てきた。