2002年、積極的な財政政策は依然として重任を担う

柴 米

 1998年の第2・四半期から、中国は積極的な財政政策をスタートさせた。マクロ経済政策から言って、財政政策は主に2種類あり、一つは緊縮の財政政策であり、もう一つは拡張の財政政策である。関係方面によると、中国の積極的な財政政策は適度な拡張の財政政策である。このマクロ経済政策の主な内容は国の借金の規模を拡大し、調整した資金を運用して政府の投資を手配し、内需を拡大するとともに、市場の予期を変え、民間の投資と消費の活発化を促し、国民経済全体を回復させるものである。

 財政部の金立群副部長は、短期的な政策手段として、この政策は1ないし3年実行することを計画していたが、各方面からの最新ニュースによると、2002年には、中国は依然としてこの政策を続けて実行すると述べた。

大きな功績

 財政部科学研究所所長の賈康研究員は次のように述べた。4年前、次の五つの背景が積極的な財政政策の登場を促した。@東南アジアの金融危機が中国の経済運営に深層の影響をもたらした。A外部の金融危機が中国の経済運行周期の底に達し、軟着陸したばかりの中国経済にデフレの圧力に直面させている。B中国経済に製品が相対的に過剰するという全面的な買手市場の局面が現れた。C中国政府が行い始めた国有企業の改革が、多くの従業員を一時帰休させ、中国の内需不足の状況に重要な影響をもたらした。D連続して実施している貨幣政策の効果が明確でない。

 1998年以後、中国は累計11206億元の国債を発行した。それと同時に、中央政府はまたその他の財政支出の措置をとって国内の消費需要を拡大した。

 経済運営の実際から分析して、積極的な財政政策は投資需要を拡大し、消費需要を刺激する方面で重要な役割を果たしている。1998年から2000年までの3年の国債投資は3600億元であるが、推計によると、1998年、1999年、2000年の3年の経済成長に対する国債投資の貢献はそれぞれ1.5パーセント、2パーセント、1.7パーセントであった。2001年の国債規模は1500億元で、その年の経済成長を促す上でも重要な役割を果たした。1998年から、中国の経済成長の変動の幅は明らかに小さくなり、終始7ないし8%の快速成長を保ち、20世紀80年代末期と90年代初期の3ないし4%の低成長が現れなかった。その中で積極的な財政政策の果たす役割が大きな功績を立てている。

無視できないマイナスの作用

 有名な経済学者の茅于軾氏は、私は保留付きで拡張性政策に同意する、「これは強い副作用のある処方」だからであると述べた。

 そのマイナスの作用について、経済学界は比較的一致して次のように見ている。国債投資は政府行為の一種で、国債の発行が多すぎれば中国の市場経済の完全化に不利である。国債の発行が多すぎると、財政赤字は年々増加し、財政にリスクをもたらし、未来の経済発展にマイナスの効果を生む可能性がある。国債の発行が多すぎると、金融にリスクをもたらす可能性がある。国内市場が売り手から買い手に変わり、経済発展の原動力が消費者に変わり始めた状況の下で、国債の発行、投資の拡大だけに頼っては効果的に経済成長を刺激することはできない。

 経済学者が普遍的に憂慮している問題はさらに次の三つある。@政府投資の効率問題と工事の質の問題。A時間が経つにつれて、国債プロジェクトがちくじ低収益あるいは無収益のプロジェクトに傾き、国債投資の効用が少しずつ小さくなる現象が現れる。B政府のプロジェクトが腐敗を生みやすい。

 このほか、争議の問題が一つある。つまり積極的な財政政策が民間投資を「締め出す効果」をもたらすかどうかである。

 締め出す効果は政府が企業、住民と商業銀行から金を借りて拡張的政策を実行し、利率の上昇か限度のある貸借資金に対する競争を引き起こして、民間部門の投資減少を招き、政府の財政支出の拡張作用を部分的あるいは全部相殺する可能性がある。

 有名な経済学者の呉敬氏らは憂慮している。呉敬氏は、長期にわたって積極的な財政政策を実行すると民間投資を抑えると考えている。

 劉国光氏ら有名な学者は次のように見ている。拡張的な財政政策をとってもしばらく民間投資を「締め出す効果」をもたらすことがない。なぜなら、現在供給が需要を上回る全般的な枠組みの下で、遊んでいる大量生産能力、生産要素を利用でき、民間投資が効果的にこれらの遊んでいる経済資源を吸収、消化できない場合、投資規模の拡大を含む政府の支出規模が、民間投資を「締め出す効果」をもたらさず、需給のアンバランスによって誘発されるインフレを生み出さないばかりでなく、遊んでいる資源を利用して、民間投資の増加を促進し、導くからである。

しばらくフェードアウトできない

劉国光氏は、必要かどうかおよび積極的な財政政策を引き続き実施できるかどうかを判断する場合、主に次の三つを見る。一は国際経済情勢がいつ好転でき、外需増大の勢いが回復できるかどうかを見ることであるが、これは今からみると確定できないものである。二は社会投資がいつ上がって増加できるかを見ることであるが、2001年の社会投資の増加速度が2000年よりさらに低く、これも外需不足の状況の下で、外需のための社会投資が抑えられたことと関係がある。三は財政指標が警戒線から離れる距離を見ることである。国際上ではよくGDPに占める財政赤字の比率が3%を越えず、GDPに占める国債残高の比率が60%を越えないという二つの指標を使って比較するが、現在中国のこの二つの指標は国際常用の警戒線とまだ距離があると述べた。

賈康氏は次のように述べた。上述の要素を除いて、深層の構造調整、体制とメカニズム転換の進展状況をも考えるべきである。積極的な財政政策の実施は、経済運行状態の段階における政府の支出拡張に直接現れ、中・長期の経済発展の活力と原動力問題をちゃんと解決するには、このような拡張だけに頼っては駄目であり、このような拡張のもたらす一定の時間内の「あえぐ機会」(操作の余地)を利用して、深層の構造制約と体制制約を取り除くことに努め、制度のイノベーション、メカニズムの転換を推進し、政府、企業、市場の諸方面の改革を深化させ、それによって今後の経済の中・長期発展を支えなければならない。1998年に入ってから、積極的な財政政策を推進するとともに、構造調整、改革深化の作業にも進展が見られたが、客観的に言って、満足できないところがまだたくさんあり、構造、体制の問題がいつも非常に明らかに成長の障害として現れている。

 専門家は、以上の諸方面の要素はまだ積極的な財政政策がいまフェードアウトできる根拠を提供していないと考えている。

 有名な経済学者、中国社会科学院学術委員会委員、研究員の李京文氏は次のように述べた。現在、中国は経済成長を促すには投資と消費にしか頼れない。消費から見て、人民大衆の収入は一度に多すぎるほど増加する可能性がない。そのため、経済成長は主に投資に頼って促し、銀行ローン、民間投資の増加を導くため、やはり国債を引き続き追加発行する必要がある。

 中国人民大学財政金融学院の王伝綸教授は、いま中国のGDPの増幅は7%であり、物価の上げ幅は1%で、物価情勢は安定しており、積極的な財政政策を実施する余地があると述べた。

 20019月に閉幕したAPEC財政担当相会議で、財政部長の項懐誠氏は次のように述べた。「マクロ経済政策は経済発展の態勢によって決定されるべきものである。今後の2年内にわれわれは積極的な財政政策を引き続き実施し、現在われわれが実施を始めたプロジェクトは6000余件で、24000億元の規模に達し、それをやり終えなければならない。そのほか、今の国際経済の成長速度が低下する状況の下で、われわれは内需を促さなければならない」。  

減税する必要があるか

 1998年以来の積極的な財政政策に関する論争の一つは「どうして減税政策を実行しないのか」ということである。普通の論理によって、拡張的財政政策には政府の減税、支出増加という二つの方面が含まれる。1998年以後、中国の財政税収政策は拡張的財政政策の導きの下で減税するのではなくて支出を増加している (厳格に言えば、減税を重点としない)

 有名な経済学者の肢ネ寧氏はこう語る。現行の税制政策は90年代の初めに制定されたもので、その時に主に収入の増加に着眼していた。事実上、税収は経済の発展を促進するために制定すべきものである。現段階では減税すべきである。少し考えてもみよう。500億元の国債を発行することは1000億元の国債を発行すると同時に500億元を減税することと比べて、どっちの方が経済をより促進できるのか。

劉国光氏は、先般開催された「中国経済学者フォーラム(2001年)及び2002年中国の社会・経済情勢についての分析と予測国際シンポジウム」で次のように述べた。政府はここ数年来たえず税金の徴収・管理に力を入れ、税収は年間1000億元以上を増加し、GDPの成長率を大幅に上回っている。2001年第1・四半期から第3・四半期までの中国の税収は前年同期比227%増え、伸び率はGDP3倍である。こうして企業と個人の投資能力と投資意欲を大幅に低下させた。いまは構造的減税を行うべきである。

 ここ数年実施されている政策は、拡張的財政政策を主とする需要面の政策であった。今後はより多く供給面から着眼し、供給面の政策をとって、需要面の政策を供給面の政策と結びつけるべきである。供給面の政策には主に税収というてこを利用して税負担軽減、企業の制度改革、競争強化、中小企業の助成・激励など供給の意欲を刺激する政策が含まれるべきで、そのねらいは企業の活力を高め、それを発揮させることにある。

賈康氏は次のように語っている。現在の減税の全般的なスペースは大きくない。主な理由は、一、国内総生産に占める税収の割合が低すぎて、マクロ税負担から見れば、減税できなくなっている。二、中国の現行の税制構造は減税効果を制約している。三、中国の現段階における経済と税収の環境も減税の実行を重点とすることに適していないというのは、現在、中国の市場システムがまだ健全なものではなく、企業の投資と経営行為がまだまだ規範化されておらず、かなりの企業の減税のシグナルに対する反応が敏感ではないからである。

 税収の増加がGDPの成長より高いということは絶対できないという見方は誤解である。実際には、管理体制と税制構造が相対的に安定し、円熟している時期にあってはじめて、税収がGDPに占める割合にいちじるしい変動が生じないのである。中国の経済発展はまだ転換期にあり、体制と税制は転換中で、多くの要素が激しく変化しているため、単に税収がGDPに占める割合が相対的安定している枠組みを中国の現実に当てはめるのは適当ではない。

 全般的に言えば、中国は現在の減税のスペースが大きくないとしても、具体的項目で減税することを排除しない。例えば、ここ数年打ち出した輸出税の還付に力を入れること、固定資産方向調節税徴収の一時停止、不動産の関係税率の引き下げ、ハイテク分野の税収優遇などの政策は、投資を奨励し、消費を刺激する積極的な効果をあげている。国はまたハイテク発展を支持する面で新しい税収優遇政策を規定した。とりわけ、近年中国は税金以外の料金徴収の整備に力を入れているが、これは実際には減税と同じ効果をあげている。次の段階に増値税を転換すれば、さらに度合いの大きい減税となる。

政策の内包は調整すべきである

多くの経済学者は、積極的な財政政策を引き続き実施しても、その内包について調整すべきである、と見ている。

 先般、国家情報センター経済予測部が作成した研究レポートによると、積極的な財政政策は、国債発行の増加、公務員の給料増加だけでなく、税金・料金の減税、支出構造の調整など多くの面の内容を含んでいる。この意味から言えば、積極的な財政政策はさらに範囲を広げ、いっそう力を入れる必要がある。

 レポートは次のように提案している。

 一方では、財政支出増加に力を入れると同時に、支出構造を調整すべきである。

 ――国債による投資先を調整する。現在、インフラ建設の供給能力は大幅に向上しているので、インフラ建設を引き続き拡大することはそれほど差し迫っていることではなく、そのため、国債による資金投資先は適切にその他の分野へ移転すべきである。国債による投資はインフラ投資から次第に市場と潜在力のある制造業に投下すべきであり、同時に工業を装備することに用いる投資の割合を大きくし、投資の経済効果を大きくする。国債による投資は農業と第三次産業に向かって発展すべきである。国債が企業の技術改造への投資の手形割引の利息の規模を大きくし、手形割引の利息の範囲を拡大する。国債の資金が地方に配分する金額を増加する。国債による投資で西部地区がさらに多くの工業建設プロジェクトを実施するのを支持する。

 ――都市・農村住民収入を増やす政策を引き続き実施するが、重点は低所得層に傾斜する必要がある。

 ――社会保障システムの確立と整備を速め、改革と経済構造調整のプロセスを速める。

他方では、税金を下げて負担を軽減し、投資と消費の好ましい成長を促進する。これには、生産的増値税を消費的増値税に変えること、内国民待遇の原則に基づいて中外企業の所得税を統一すること、輸出税還付メカニズムをさらに整備し、企業が輸出を拡大するよう奨励すること、個人所得税を徴収する最低収入額を高め、人数の多いサラリーマン階層の税負担を軽減して、消費を拡大するようにはかり、高所得者に対する徴税に力を入れること、自動車、化粧品などの商品の消費税を取り消すこと、農民の税負担を軽減することが含まれている。