唐家セン外交部長、世界情勢、中国外交について語る

 ●世界の構造と情勢の発展の基本的趨勢は「911」同時多発テロ事件によって変わることなく、国際関係の基本的矛盾はまだ解決されておらず、平和と発展はやはり現代のメーンテーマである。

 ●総体としては平和、局部的には戦争、総体としては緩和、局部的には緊張、総体としては安定、局部的には激動という状態が現在と今後の一時期における国際情勢が発展の基本的態勢である。

 ●世界の安全問題はさらに多元化する。伝統的な安全の要素と非伝統的な安全要素が交じり合い、テロリズムなど非伝統的な安全問題による害が深刻化している。

 ●江沢民氏を核心とする党中央の指導の下で、私たちは冷静に観察し、落ち着いて対応し、チャンスをつかみ、情勢に応じて有利になるよう事を運び、外交活動の新たな局面を切り開き、わが国の国際的地位と役割が著しく向上し、我が国が直面する国際環境は依然として挑戦よりチャンスの方が多い。

 ――まず唐外交部長に2001年の国際情勢について総合的な評価をしていただきたい。

 唐家セン(以下唐と略称) 2001年は新しい世紀の最初の年で、なみなみならぬ年でもありました。国際情勢には何度も起伏があり、複雑に入り組み、重大が突発的な事件が頻発し、不確定要素が増え、特に「911」事件は世界の政治、経済、安全、文化などに大きな影響を及ぼすことになりました。一部の地区においてはこれまで注目されてきた問題がまだ解決していないのに、また新しい問題が発生することになりました。世界経済はさらに落ち込み、各国への影響が次第に表面化しつつあります。

 しかし、全体から見れば、世界の構造と情勢の発展の基本的な態勢は「911」事件がゆえに変わってはおらず、平和と発展はやはり現代のメーンテーマであり、世界の多極化は紆余曲折の中で前へと発展し続け、わが国が直面する国際環境はやはり挑戦よりチャンスの方が多いといえます。総体においては平和、局部的には戦争、総体においては緩和、局部的には緊張、総体においては安定、局部的には激動というのが現在と今後一時期の国際情勢の発展の基本的態勢であります。

 ――2001年の国際安全情勢には新たな変化が現われました。これらの変化について唐外交部長はどうお考えになりますか。

 唐 今や、世界の安全問題はさらに多元化しており、伝統的な安全の要素と非伝統的な安全の要素が交じり合い、テロリズムなど非伝統的な安全問題の害は激しくなり、世界の安全にとってまた一つの重大な現実的な脅威となっています。これまで注目されてきたいくつかの問題もなお地域と世界の安全に大きな影響を及ぼしています。

 「911」事件のあと、アフガニスタン情勢が急変し、一躍して現在の世界の大きな問題の一つとなりました。アフガニスタンの隣国として、中国はずっとアフガニスタン情勢の推移に注目しており、そしてアフガニスタン問題解決のうえで積極的な役割を果しています。わが国は直ちにアフガニスタン問題の解決についての5つの主張を提出し、将来のアフガニスタンの政権は広い基礎をもち、各民族の利益を反映し、各国特に隣国と友好的に付き合う政権であるべきで、国連はこのような政権を作る過程で重要な役割を果す必要があると強調しました。喜ばしいことに先般、国連の主宰のもとでアフガニスタンの各派はボンでアフガニスタンの暫定政権の成立について重要な合意に達しました。これはアフガニスタンが平和と安定へ向かう幸先よいスタートであります。われわれはこれを歓迎し、アフガニスタンの各派別が民族の和解をひきつづき重んじ、達成した合意を着実に実行し、できるだけ早くアフガニスタンの平和と安定を回復するよう願っています。

 中国は一貫して中東和平の進展を支持し、公正かつ全面的で合理的に中東問題を解決するよう主張してきました。現在、イスラエルとパレスチナの衝突がエスカレートし、中東の平和の進行過程はきびしい試練にさらされています。われわれはそれに不安を抱しています。中国は暴力行為を強く非難し、関係各方面に効果的な措置をとって、すべての暴力活動を早く停止し、緊張情勢の緩和と和平交渉の再開のため積極的に条件を作りだすことを願っています。

 ――2001年の国際関係の調整と変化をどうお考えになりますか。

 唐 2001年の国際関係には、一部ではあるが積極的な変化が現れました。一つはともに直面する挑戦に対応して、各国が利益の接点を積極的に求め、多国間または二国間の平和と発展の問題を解決し、対話と協力を強める変化であります。いま一つは大国間の関係が緊張から緩和に向かうようになったことであります。前半において、大国間の関係には一連の曲折が見られ、矛盾も鋭かったが、後半、特に「911」事件の後においては、各大国は共通の認識を求め、協力を強めるためお互いの関係を改善し、発展が見られました。第三の変化は各国のハイレベルの相互訪問と会合が増え、ホットラインで意見交換を行うことが頻繁となったことであります。このような指導者の間の直接の接触と交流は、国際関係の調整にとっては取って替わることのできない促進の役割を果しました。全体から見れば、以上の変化は世界の多極化の趨勢への発展にプラスとなり、世界の平和と安定にプラスとなるものであります。

 しかし同時にまた、国際関係の中の基本的矛盾がまだ解決されてはおらず、大国間にはいくつか根深い問題がまだ存在しており、南北の格差は拡大しつづけ、不合理な国際秩序がまだ目にみえる形で解決されていない、ということを認めなければなりません。

 ――現在、内外の人々は世界経済の情勢はきびしいと普遍的に見ていますが、唐外交部長はこれをどうお考えでしょうか。

 唐 世界経済の成長は新たな調整期に入っていると見ています。アメリカ経済は第二次世界大戦以来の最長の成長期が終り、今衰退期にさしかかっており、アメリカ、ヨーロッパ、日本という三大経済体は20世紀70年代以後はじめて同時に落ち込み、世界経済の伸びはここ10年来最低の水準にあります。このような情勢が現れた原因は多方面のものであるが、「911」事件はそれをさらにひどくする役割を果しました。国際貿易と国際直接投資が減ったため、発展途上国はいっそう多くの困難に直面するようになりました。新しい情勢に対して各国は国際貿易、金融などの面の協調と協力を強める必要があります。発達諸国は援助の増加、債務の減免、市場の開放などで発展途上国に対してさらに弾力性のある措置を取るべきであります。WTOのドーハド会議において新しい多国間貿易交渉が始動したことは積極的なシグナルであります。われわれは各国がともに努力して、世界経済ができるだけ早く回復に向かうことを促すよう願っています。

 ――2001年の中国の外交は緩急よろしきを得た、精彩なものであり、みのり豊かな成果を収めました。これらのことについて具体的にお話し願えませんか。

 唐 急変する国際情勢に直面して、われわれは江沢民氏を核心とする党中央の大所高所から物事を見て英断を下す指導の下で冷静に観察し、落ち着いて対応し、チャンスをつかみ、物事を有利なほうに導き、外交の新しい局面をさらに切り開き、わが国の国際的地位と役割を著しく高めました。

 わが国は世界におけるテロに反対するたたかいの中で建設的な役割を積極的に果してきました。「911」事件の後、江沢民氏を核心とする党中央はこの重大な突発事件の影響を高度に重視し、すぐに情勢を正しく判断し、直ちに対応のウェを定めました。われわれはすべての形のテロリズムに反対し、国際反テロの協力に積極的に参加し、国連と安全保障理事会が主導的な役割を果すよう促しました。それと同時に、テロリズムに対する軍事行動は目標が明確であるべきで、『国連憲章』の趣旨と原則及び公認の国際法の準則に合致すべきであり、テロリズムを特定の民族や宗教と同列に論じてはならない、とはっきりと提起しました。中国の言動は平和、公正、責任感のある大国の姿を具現するものであり、国際社会の広い範囲で好評を博しています。

 わが国はAPECの第九回の非正式首脳会合を成功裏に主催しました。この盛会は「911」事件後間もない、世界経済がきびしい情勢にさらされる肝じんなときに開かれたものであり、APECメンバー諸国は会議に大きな期待を寄せ、世界に注目されていました。江主席が主催した会合に参加した首脳たちは「新しい世紀、新しい挑戦、参与、協力、共同の繁栄を促進する」というテーマをめぐって突っ込んだ意見交換をおこない、広範な共通認識を達しました。会議の円満な成功はAPECの発展のために新しい活力を注ぎ込み、人々の世界経済の伸びを回復することに対する自信を強めることになりました。

 わが国と主要な国々との関係には新たな発展の動きが現れました。中米関係は前の半年間には困難な時期を経てきましたが、後の半年間に次第に回復し改善されました。江主席とブッシュ大統領は上海で開かれたAPEC非公式首脳会合の期間に初めての会談を行い、中米の建設的な協力関係を発展させるうえで重要な共通認識に達成し、両国の関係に新しい展望を切り開きました。今年は中ロ戦略協力パートナー関係が豊作の年であります。両国のハイレベルの交流が頻繁におこなわれ、江沢民主席はプーチン大統領と数回も会談し、特に江主席はロシア訪問の期間にプーチン大統領と『中ロ善隣友好協力条約』を正式に調印し、両国の長期にわたる友好関係を発展させるために法律的基礎をうち固めました。中国とヨーロッパとの全面的なパートナー関係の発展もスムーズに進展し、第四回の中国とヨーロッパの指導者との会談も重要な成果を上げ、双方の関係は全面的協力の新たな段階に入りました。中日関係は幾多の曲折をへて「歴史を戒めとして未来に目を向ける」という精神に基づき、双方の努力によって、両国の関係はすでに正常な発展の軌道に戻りました。

 わが国と周辺諸国との善隣友好協力関係はすでに全面的発展の新たな段階に入りました。2001年に、わが国はロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン及びウズベキスタンと「上海協力機構」を設立したことを明らかにし、これは相互信頼によって安全を、互恵によって協力を目指す新しい形の地域協力組織の誕生を示すものであります。わが国とASEAN諸国との協力関係は絶えず発展をとげ、第五回中国・ASEAN指導者会議(10プラス1)においてわが国はASEAN諸国と新しい世紀における重点協力分野を確定し、今後の10年内に中国・ASEAN自由貿易区を作り上げることで合意しました。これは双方の関係の長期的な発展と地域の繁栄および安定にとって深い意義を持つものであります。

 わが国と広範な発展途上国との協力関係には大きな発展が見られ、ハイレベルの頻繁な訪問を保ち、政治的話し合いを強め、経済貿易の協力を拡大しました。江主席は20014月にラテンアメリカ6カ国を成功裏に訪問し、中国とラテンアメリカとの友好協力関係のために新しいページを添えることになりました。中国とアフリカ諸国との関係は順調に発展をとげ、中国・アフリカ協力フォーラムの諸項目の後続の作業が逐次推し進められています。

 ――最後に唐外交部長に2002年の中国外交の展望を簡潔にお話し願いたいと思いますが。

 唐 2002年はわが党と国家の歴史において大きな意義を持つ年であると思います。国際情勢の発展の基本的態勢から見れば、2002年は中国外交にとってやはりチャンスと挑戦がともに存在する年であり、しかし、挑戦よりチャンスの方が多いと思います。われわれは断固としてケ小平氏の外交思想を貫き、「三つの代表」という重要な思想を実行し、大局意識と憂国の意識、変化に対応する意識と革新意識を一層強め、確固たる自信をもって、落ち着いて対応し、作風を変え、着実に仕事に打ち込み、優れた成果をもって党の第十六回代表大会の開催を迎え、現代化建設をひきつづき推し進め、祖国揶黷フ大業を完成し、世界平和を実り、共同の発展を促すためにしかるべき貢献をしなければなりません。