北京の観光知識(二)

観光

 悠久の歴史は、美的価値、文化的価値のある数え切れないほどの名所旧跡を北京に残してくれた。万里の長城、故宮、頤和園、天壇……それらは世界各地の人々を引きつけている。北京をそぞろ歩きすれば、王府(旧時、皇族の邸宅)、庭園、城楼、寺廟、著名人の旧居などがいずれも人々の足を止めさせる。北京に長く住んでいる人であろうと、初めて北京を訪れる人であろうと、長い歴史を内に秘め、伝統文化の息吹にあふれた北京の独特な魅力のとりこになることだろう。

名所旧跡

天安門広場

交通:1410225257、特1路線バス「天安門」下車、地下鉄「天安門東」または「天安門西」下車

 北京市の中心に位置する、面積44ヘクタールの100万人を収容できる世界最大規模の広場である。1949101日、新中国の建国式典がここで挙行された。広場の北側に建つ天安門は高さ33.7メートル、楼閣の城壁は高さ1.59メートルの須彌座の上に築かれており、建物全体が荘重かつ典麗である。広場の南側には人民英雄記念碑と毛主席記念堂、西側には人民大会堂、東側には中国歴史博物館、中国革命博物館が建つ。

 天安門広場では、国旗掲揚・降納式が毎日行われる。中国人民解放軍儀仗隊の国旗護衛班の兵士たちが、日の出とともに軍楽隊の伴奏に合わせて国旗を掲揚し、日没とともに降納する。国旗掲揚・降納式は、今や天安門広場で最も注目を集める神聖な儀式となっている。

 祝祭日には常に、盛大な祝賀行事がここで催され、広場には花が咲き乱れ、イルミネーションが輝き、人の波で埋め尽くされて、内外の観光客が最も見たい光景の一つが展開される。

故宮(紫禁城)

交通:21020101路線バス、103109路線トロリーバス「故宮」下車

開館時間:9:0016:00

 北京市の中心部にあり、1406年から建設が始まり1420年に完成した、明、清代の24人の皇帝の皇居跡である。500余年の歴史をもち、敷地面積は72ヘクタール、9000以上の部屋があり、世界でも最も規模が大きく、最も保存が整っている宮殿建築群の一つである。故宮をゆっくり見てまわることは、中国の歴史という長い廊下を通り抜けるのに等しい。故宮では太和殿、中和殿、保和殿の三大殿および東内宮、西内宮のほか、中国の歴代の収蔵品を展示する歴代文物陳列館、珍宝館、絵画館、明・清工芸美術館、陶磁器館、青銅器館、時計館などが参観できる。

 また、南門の「午門」では、各国語によるイヤホンガイド一式を貸し出しており、故宮の見学コース、各参観箇所の歴史や建築の特徴などを知ることができる。イヤホンガイドは見学を終えたあと北門の「神武門」で返すことができる。

天壇

交通:615203943路線バス、106116路線トロリーバス「天壇」下車

開園時間:8:3019:00

 北京市南東部にある、明・清代の皇帝が天をまつり、五穀豊穣を祈ったところで、1420年に建てられた。敷地面積は273ヘクタールあり、現存する祭壇建築の中で最大のものである。黄色い瑠璃瓦の屋根と朱塗りの城壁をもつ故宮とは異なり、天壇は青を基調とし、「天」に築かれた殿宇という特徴を表している。主な建築物には祈念殿、皇穹宇、圜丘壇、斎宮などがある。有名な回音壁、三音石は皇穹宇の中にある。圜丘壇の中心に立って声を発すると、どの方向に向かって発声しても、自分の声にエコーがかかって聞こえ、おもしろい音の反響現象が体験できる。

景山公園

交通:103109路線トロリーバス、101路線バス「故宮」下車

開園時間:7:0020:30

 北京市の南北の中軸線(南の永定門から、前門、天安門、故宮を経由して景山の「万春亭」を通り抜け、地安門、鼓楼、鐘楼に至る)上に建てられている。高さ43メートルの山の頂にある「万春亭」は旧北京の中心地点であり、当時の最高地点でもあった。したがって「万春亭」は、旧時の北京の四季とりどりの風景を眺めるのに格好のポイントと言える。

北海公園

交通:103109107111路線トロリーバス、101路線バス「北海」下車

開園時間:8:0017:00

 北京市の中心に位置し、「仙山瓊閣」(幻想的で壮麗な建物)とたたえられている。遼、金、元、明、清の五代にわたる王朝の「離宮」、「御苑」であった。イタリアの著名な旅行家であるマルコ・ポーロは招かれて「御苑」に遊んだことがあり、「東方見聞録」の中でその美しさを絶賛している。68ヘクタールある面積のうち、水域面積が半分以上を占める。北海の中心は「瓊島」と呼ばれる小島で、ここの白塔山の頂には白塔がそびえ建ち、周りには宮殿楼閣が連なっていて、まるで多くの星々が月をささげ持つようなさまである。清朝の宮廷料理で有名な「?膳飯荘」もここにある。北海の北岸にある九龍壁は力強く雄大で、中国でも三カ所にしかない九龍壁の一つである。

中山公園

交通:141020路線バス「中山公園」下車、地下鉄「天安門西」下車

開園時間:7:0020:00

 もともと明・清両王朝の皇帝が土地の神と五穀を祀る社稷壇として1421年に建造した。天安門広場に面しており、南門は金水河に臨み、背後の河をはさんで故宮と向かい合い、東は午門、端門、天安門に隣接している。社稷壇とこれに付随する建物は公園の中央部にあって内壇と総称され、その周りは外壇と呼ばれている。社稷壇の北側にある精巧な木造の正殿は、15世紀の初めに建てられたもので、もとは拝殿または祭殿と呼ばれて、祭礼行事の際の皇帝の休憩場所であった。1925年、孫中山(孫文)が亡くなったのち、その遺体がここにしばらく安置されていたため、1928年に「中山堂」と改名された。

労働人民文化宮

交通:141020路線バス「中山公園」下車、地下鉄「天安門東」下車

開館時間:8:0020:00

 天安門の東側に位置するかつての太廟。明代の永楽18年(1420年)に建造され、嘉靖23年(1544年)に改築された。明・清両代の皇帝が即位、婚礼、摂政、凱旋などの重要な式典を挙行するときや正月に、先祖を祀ったところである。

頤和園

交通:動物園から332路線バス、西直門から375路線バス「頤和園」下車

開園時間:9:0016:00

 北京市街の西北約20キロにある、山水の景色をふんだんに取り入れた典型的な皇室庭園で、中国内外によく知られている。もともとは清朝皇帝の離宮で、皇室の避暑、行楽、誕生祝いの場として利用された庭園であり、西太后(慈禧皇太后)が政務をとる場でもあった。800年余りの歴史をもち、面積290ヘクタールとスケールが大きいが、見どころの中心となるのは万寿山前山、後山、昆明湖、後湖である。万寿山前山の仏香閣を中心とする大型建築群は華麗できわめて雄大である。万寿山南麓に広がるのが、紺碧の水を満々とたたえた昆明湖だ。後山と後湖は、雲をつくように古木がそびえ、ひっそりと静まりかえっている。昆明湖のほとりには売店がずらりと並び、店の旗やのぼりがはためく様子は江南の水郷のような風情である。また、後山の中軸線に建つ雄大なチベット寺は、一風変わった風格をもっている。後湖の東端からは、「園中園」と言われる美しい「諧趣園」に行くことができる。

香山

交通:動物園から360路線バス、頤和園から332路線バス「香山」下車

開園時間:8:0017:00

 北京市中心から28キロ離れた観光地。最も高い香炉峰は海抜557メートルで、ここの頂上には乳峰石という巨大な岩があり、形が香炉に似ており、遠くから眺めると廬山の香炉峰と非常によく似ていることから、人々はここを「香山」と呼ぶようになった。香山の紅葉はとても有名で、山モミジ、カエデ、マルバハゼなど種類も多く、毎年秋になると、紅葉を目当てに来る人たちでいっぱいになる。

円明園遺跡

交通:375路線バス「円明園」下車

開園時間:8:3017:00

 円明園は「福海」を囲む「円明園」、「万春園」、「長春園」の三つの庭園の総称である。清朝は1709年に建造を始め、国力の限りを尽くして腕利きの職人を大勢集め、湖を埋め立てて山を築き、珍しい花や木々を植えるなどの工事を続け、約150年の歳月をかけて完成させた。そして国内外から40景の景勝が集められ、145にのぼる大規模建造物が建てられ、数え切れないほどの芸術作品や図書、文物が収蔵された。これらの建造物の中には、中国式の庭園以外に、長春園には海晏堂、遠瀛観など西洋式の建物もあり、自然の景観と引き立てあって「万園の園」とたたえられていた。

 しかし残念ながら、この芸術的傑作である庭園は、1860年と1900年にそれぞれ英仏連合軍と八カ国連合軍の略奪と焼き討ちを受け、一世一代の名園は廃墟となってしまった。現在、修築された遺跡は、往時をしのぶ公園として一般公開されている。

廬溝橋

交通:長椿街から309路線バス、六里橋から339路線バスを利用

 廬溝橋は六、七百年前からすでに世界にその名を知られている。マルコ・ポーロが「東方見聞録」の中で永定河に架かるこの橋をほめたたえてからは、外国人はこれをマルコ・ポーロ橋とも呼んでいる。廬溝橋は800年の歴史をもち、北京で現存する最も古い石造のアーチ形を連ねた橋である。全体が白石で造られ、全長266.5メートル、11のアーチ形の橋桁からなり、両側にそれぞれ140の欄干があり、欄干の柱頭にはさまざまな姿をした485の石の獅子が彫られている。廬溝橋は中国人民の抗日戦争が勃発したところであるため、「中国人民抗日戦争記念館」が橋のほとりに建造された。

周口店「北京原人」遺跡

交通:天橋から917路線バス、六里橋からミニバスを利用

 北京市中心から南西50キロの周口店鎮竜骨山は、内外にその名の聞こえた「北京原人」の遺跡である。

20世紀初め、石灰岩を採掘している時に、偶然一つの洞窟が発見され、1921年と1922年に科学者、地質学者が試掘をすすめ、二つの人類の歯が発見された。1927年に大がかりな採掘を始めた結果、数多くの獣骨とともに人類の下顎骨などの化石が出土した。19291210日、ついに北京原人の完全な頭蓋骨が発見され、中国内外の学術界を揺るがしたのである。周口店には「北京人類展覧館」が設けられている。

万里の長城(八達嶺、慕田峪、司馬台、居庸関)

交通:

八達嶺:前門、北京駅、東大橋、動物園から各々観光バスを利用

慕田峪:東直門から916路線バスを利用

 「長城に到らざれば好漢にあらず」と言われ、中華民族の象徴である万里の長城は、紀元前7世紀から築かれ始め、東は山海関から西は嘉峪関まで全長は12000華里(1華里は500メートル)あり、世界で最も壮観な人工建造物である。北京地域内では、延慶県の八達嶺長城、懐柔県の慕田峪長城、密雲県の司馬台長城、八達嶺の南西10キロにある居庸関長城の4カ所が一般公開されている。

 八達嶺長城は明代の長城の最も代表的な部分で、雄大で迫力があり、傾斜の急なところもあれば緩やかなところもあってそれぞれに面白味がある。頂上まで登ると、長城の内と外に連なる山々や沃野といった北国の風景を一望のもとに眺めることができる。

十三陵

交通:前門、崇文門、東大橋、展覧路から観光バスを利用

開園時間:8:3017:00

 北京の北西郊外50キロの軍都山の南麓にあり、東西北の三面を山に囲まれた天然の広大な庭のような形をなしている。庭の正門は陵墓地区の南端にあり、両側にはそれぞれ蠎山、虎峪が高くそびえ、まるで龍と虎が正門を守っているように見える。そして南に向かっては平原が果てしなく広がっており、当時においてこうした条件こそは「風水」の地相に絶好の地であった。十三陵は、明朝が北京に都を移した後の13人の皇帝の陵墓群で、現在一般公開されているのは長陵と定陵である。

定陵では「地下宮殿」およびここに保存されている棺が見られる。このほか、十三陵の参道の両側に並ぶ石人・石獣も保存状態がよく、必見のところである。