「変貌」する首都鋼

 首都鋼という中国の「鉄鋼の巨人」はいま自らの経営戦略と産業構造を改め、多元化と多色彩の方向に向って邁進し、グリーン北京のために積極的な貢献をしている……

唐元

 北京が2008年オリンピックのために実施している環境整備プロジェクトの中で、カギとなる部分は北京の西部にある中国の重要な鉄鋼生産基地である首都鋼であり、同企業はかつて長年の間北京最大の汚染源の1つであると考えられていたと見る輿論がある。

 首都鋼の人びとは自企業の環境保全問題をオリンピックの開催と結びつけたくない。というのは、このような結びつきが知らぬ間に無形の中で彼らが緑色を重視するイメージを抹殺してしまうからである。事実上、ここ数年、首都鋼は全力尽くして環境問題を解決するために多くの資金と人力を投入するとともに、傘下の一部建設公司の経済効果が急減するのをも惜しまずに、多くのインフラ建設を停止した。例えば、1995年から2000年までの5年間に、首都鋼は合計9600万元を投入して、189件の整備プロジェクトを完成した。最近、首都鋼はまたも、125000万元を支出して、18方面の環境整備を行い、主要な目標は鉄鋼生産全過程のクリーン化を実現することであると発表した。

 現在の首都鋼は、相変わらず製鋼しているが、同時に工場構内では、人々が想像する濃煙、粉塵、騒音が緑の芝生が生え、赤い花が咲く奥床しく、上品で、静かな環境に取って代わられるところが日ましに増えている。

 特に、以前は製鋼労働者であった多くの人は、今では油に汚れて黒光りする仕事着を脱ぎ捨て、清潔な白い服に着替えて、ハイテク企業で働く者となった。彼らは相変わらず首都鋼の従業員であるが、首都鋼全体の経営構想とその産業構造の変化により、ハイテク産業の従業員となっている。

 ここ数年、産業構造に対する調整と環境保全の強化を通じて、首都鋼は「花園式の工場」とハイテク企業に変わりつつある。

単色から多色へ

 80年余りの精錬史をもつ首都鋼は終始北京ないし全国に尊敬される企業である。その主導製品はずっと国の重点プロジェクトと国防施設建設が優先的に選んで使用する材料であり、生産量はそれぞれ国内市場の13分の17分の1を占め、50余りの国・地域に輸出されている。鉄鋼生産量はかつては大国の地位と総合的実力を示す典型的な標識の一つであると考えられていた。非常に長い時期の代表として、首都鋼はずっと北京工業の標識と見られている。

 首都鋼の鉄鋼業は採鉱から鋼材に至るまでの現代化した連合生産体系であり、総合生産能力は800万トンであり、ペルーの鉄鉱を含めて3つの大型の現代化した鉱山、5つの溶鉱炉、4つの製鋼所、19の圧延工場がある。1995年、主なものと副次的なものを分離する方法で、首都鋼総公司を親会社とし、資本をきずなとする親子会社――首都鋼グループを設立した。1997年から近代的企業制度の枠組み建設を始め、1999年から現在までは、近代的企業制度の規範化建設の段階である。1999年に株式制改革を行って上場し、北京首都鋼有限株式公司を設立した。2000年に債権の株式への転換を実施し、北京首都鋼新鋼有限責任公司を設立し、総公司は持株会社となり、首都鋼はその時から多種の所有制が同時に存在し、多法人の大型企業グループになった。

 首都鋼の人の誇りは溶鉱炉や飛び散る溶鋼と結びつけているが、これにもまして20世紀80年代の初めと密接な関係があって分けられない。あの時、中国の国有企業は利潤と減価償却資金を残らず国に上納しなければならず、拡大再生産の能力がないだけでなく、単純再生産を行う権利さえなかった。このような体制に照らして、首都鋼は国に上納する利潤に固定基数と逓増比例を設け、上回る部分は企業が自主的に支配して技術改造を行うという「請負責任制」実施の構想を打ち出した。この構想は多くの経済学者の論証を経て最後に国務院の認可を得た。その後の請負制を実施する10余年間に、首都鋼は前後して数十項目の国外の先進技術を採用して、多くの新技術と新設備を創造して国外に輸出し、そのうち転炉は国外の同業者に「世界で最も速い」と称賛された。それと同時に、企業が利益を残す方式で形成された固定資産総額は100億元を上回り、上納の利益と税金は累計数百億元に達した。専門家たちは首都鋼の貢献を論評した際、そのもたらしたのは巨額の利益と税金だけでなく、新しい構想もあると指摘した。

 しかし、1つの時代の幕が下りるに従って、中国の都市では代わり映えがしない付和雷同の景観から抜け出し、業界性の衰退によって多くの企業は新しい選択に直面し、市場のニーズに合わない企業は自らの活路を考え直している。90年代後期から、北京は工業を重視する都市発展戦略を改め、技術集約、高付加価値、省エネの原則に基づいて、新しい産業発展の方針を推進し、ハイテクと情報通信産業の発展をいっそう重視する姿勢を明確に見せている。国有の大型企業として、首都鋼も首都発展の大局に従い、奉仕しなければならない。

 ここ数年、首都鋼は自らの力に頼って大規模な産業構造調整を行っており、在来産業からハイテク産業への体制転換を実施し始めている。

 首都鋼の人びとはすでに未来の三大発展戦略を次のように明確にした。@ハイテクで鉄鋼業を改造し、製鋼システムを全面的に最適化させ、生産プロセスのグレードアップ、製品のモデルチェンジを実現し、競争力と付加価値を高める。Aハイ・ニューテク産業、不動産業、サービス業を大いに発展させ、新しい産業の支柱を形成する。B海外貿易を積極的に発展させ、首都鋼グループの戦略的構造調整に資金面から支持と協力を提供し、多元化の産業構造と経済成長要素の構築に努力する。

 前の5カ年計画(1995-2000)期に、鉄鋼生産の規模を厳格に抑える前提の下で、首都鋼は精製鋼の生産を目標として、1018000元を投じ、取瓶精錬炉、連続鋳造改造など多くの技術改造プロジェクトを完成し、溶鉱炉からの石炭噴出、飛び散る溶鋼からの溶鉱炉保護、高効率連続鋳造機など多くの科学技術成果を速やかに生産力に転化し、鋼材生産ラインに対する全面的なオートメ化コントロールを実現した。2000年末現在、技術を多く使用し、付加価値の高い製品の生産量は1995年の6倍近くに伸びた。

 この5カ年計画(2001-2005)期に、首都鋼は引き続き一部の溶鉱炉、転炉、コークス炉、圧延機などを含む立ち遅れた技術と設備を淘汰し、連続鋳造機の改造、薄板冷間圧延生産ライン、中厚板連続鋳造生産ラインなどの重点プロジェクトを完成する。その時になると、高付加価値製品の生産量は粗鋼生産総量の70%以上に達し、年間鋼材輸出量は200万トン以上に達し、それによって粗鋼生産量を圧縮し、良質鋼材に頼って利潤獲得レベルを高めることになる。

 首都鋼は線材、スクリュー・スチールの生産で聞こえているが、製品が単一で、付加価値が低い状況はかつて首都鋼の人びとの心を痛ました。この5年間に、首都鋼は国内が依然として大量輸入する必要のある冷間圧延薄板を主な目標とし、数10億元を投じて冷間圧延薄板生産ラインを建設して、中国の乗用車、家電のために良質の「鋼材」を生産する計画である。

 首都鋼は中国の最も速くハイテク産業に足を踏み入れた鉄鋼企業であり、その主体は超大規模集積回路設計と製造であり、この分野は中国電子工業の弱い環であり、中国の情報産業の発展を制約するボトルネックでもある。しかし、巨額の資金とハイテクを投入する必要があるため、実力の厚い特大型企業にしか介入する能力がない。首都鋼は日本NECと協力し、1994年に「首鋼日電電子有限公司」(SGNEC)を設立したが、これは現在国内の規模が最も大きく、技術が最も先進的な大規模集積回路のメーカーの1つであり、主要な製品には4兆ビット、16兆ビット、64兆ビット、128兆ビットのダイナミックの記憶装置(メモリ)、パソコン電気回路、通信プログラム制御電気回路、家電製品電気回路、ゲート・アレイ電気回路など6大種類、数百品種の集積回路があり、性能はすでに世界先進レベルに達し、拡散生産ラインの技術レベルは6インチ、0.35ミクロンに達し、組み立て生産ラインの能力は年間7000万個で、完成品メーカーと協力して情報家電制御回路、消費電子回路、ICカード、ハイビジョンデジタルカラーテレビ、電子電気メーター、ノートパソコン用チップなどを開発し、そのうち、カラーテレビリモコン電気回路と多機能時計電気回路はすでに国内市場のシェアの50%を占めている。

 2000年末、首都鋼はまた北京とアメリカの2社の有名な半導体会社と共に半導体製造有限株式公司を建設し始め、2010年には8インチと12インチのチップ生産ラインを6本ないし8本完成する計画で、総投資額は100億ドルに達する。第1期として今年に操業を始める2本の8インチ、0.25ミクロン生産ラインは世界の最も先進的なアナログ回路と電力電子半導体技術を採用し、133500万ドルを投じ、操業開始後の年間売上高は50億元に達する。推計によると、チップ業は1元の生産額を増加すると、関連産業と国民経済がそれぞれ10元と100元の生産額を増加するのを促進することができる。

 今までに、首都鋼はすでにIC生産、工業用ロボット、自動車用エアコンなど多くのハイテク企業を設立し、国内外のハイテク企業と提携して、スクリーンタッチ検索一体機、中関村ソフトパーク、ハイテク農業などに投資した。未来の5年間に、首都鋼はソフト開発、チップ設計、チップ生産から完成品に至る生産一体化の発展戦略を実施することが、現在中国最初の8イン、0.250.18ミクロンのチップ生産ラインの建設を加速し、タッチコンピューター、知能電気メーター、デジタルCD−ROMなど製品のスケールを拡大する具体的なプロジェクトを確定した。意気が盛んな首都鋼の人びとは「マイクロ電子産業チェーン」を形成し、ハイテク産業の売上げ収入が2005年に100億元以上に達し、北京の新しい経済成長要素となることを計画している。

 首都鋼グループの羅氷生理事長は、「首都鋼」の名称は引き続き使っていくが、内包が完全に変わり、すでに伝統的な鉄鋼企業からハイテク企業に変わっていると何度も表明した。

 現在、首都鋼はすでに所期の目標を繰り上げ実現し、2年続けてハイテクを主とする非鋼産業の売上げ収入が鉄鋼産業の売上げ収入を上回った。

代価を払って緑色を実現

 現在、中国では経済成長の代価は繁栄に従って大きくなっている。多くの国と同じように、経済は発展させる必要があり、生活は現代化させる必要があり、環境生態と物質的富の創造との間に、どのように全面的、均衡的で、協調する発展を取得するかは確かに中国人の二つの困難な選択となっている。

 2008年のオリンピックは工業の汚染を拒否し、北京が今年3月末に公布した「北京オリンピック行動計画」は、来年の年末までに、首都鋼の粗鋼生産量を現在の800万トンから600万トンに減らし、北京に対する煙塵と粉塵の汚染を軽減することを明確に提出した。4分の1の減産は、見たところ変化に乏しい数字であるが、これは40億元近くの収入を減らし、5万余人の従業員の職と関係がある。現在、首都鋼は全国大型鉄鋼企業の中でわずか上海宝山鉄鋼公司と遼寧鞍山鉄鋼公司に次いで第3位にランクされているが、減産後は第4位に下がる。特に、中国の国有企業改革の最大の難点は人であり、来年の年末までに5万人に職場を転換させたり一時帰休させたりしなければならないが、その圧力と難度は推して知るべしである。

 しかし、首都鋼の人びとは、「グリーン・オリンピック」のためにある程度代価を払うのはそうする価値があるとしている。彼らは、体制転換の試練に耐え抜き、その甘みをしめた経験した首都鋼が、製品に使う技術の量と製品の付加価値を高めることを通じて、鉄鋼の売上げ収入総額が下がらず、利潤獲得レベルが向上するのを確保するのは全く可能であると表明した。

 2000年に首都鋼構内の煙塵、粉塵、二酸化硫黄の年間排出量は1995年よりそれぞれ43.84%、45.7%、57.34%下がった。北京市がモニタリングする29の重点部門、区・県がコントロールする24の非重点部門の排出は、20005月には基準に全面的に達し、中国政府の打ち出した工業汚染源の排出基準に繰り上げて達した。そのため、工場構内の緑化面積は192万平方メートルに達し、1995年の30.04%から32.06%に上昇した。

 より大きな「グリーン行動」は首都鋼の人びとの間で行われている。たとえば、エネルギー消耗が高く、汚染がひどい立ち遅れた生産技術と設備を淘汰し、コークス製造、製鉄などによる汚染を引き続き防除し、燃料の構成を改め、石炭を燃料とするボイラーと機関車などをちくじ淘汰している。羅氷生理事長によると、未来の5年間に首都鋼はすべての生産の環でクリーン燃料を使い、それによって生産の過程を環境保全の要求に合致させ、環境の質を全面的に高めるという。

 調べによると、首都鋼最大の汚染源である石景山の600万トン焼結鉱の工場が全部北京から移出され、同時に、付属の材料工場も大幅に圧縮し、密封処理される。そのほか、5年内に、首都鋼は現有の5つのコークス炉の中の3つを北京から河北にある首都鋼遷安鉱区に移し、そこで首都鋼の原材料基地を新たに建設する。

 煙塵、粉塵、二酸化硫黄の単項指標が基準に達するのは比較的容易であるが、首都鋼の次の目標は、生産プロセス全体の構造調整を実現すると同時に、生産全過程のクリーン化を実現し、各項目の指標を基準に達させるだけではなく、環境の質を全体として向上させることである。

 現在新規建設している工業用水処理所は運行し始め、毎日105000トンの水を処理することができる。首都鋼の工業用水は以前はすべて「基準に達してから排出した」が、現在は、全部基準に達してからさらに深化処理を行い、合格の水に変えて再利用するようにしている。関係者の推測によると、2005年にならば、首都鋼の水消耗量は増加しないばかりでなく、2000年より50%減少し、減少した分の水資源を新しい産業に用いる。

 そのほか、首都鋼の工業コークス炉系統を利用して「白いごみ」を回収・処理する実験作業も終わり近づいている。北京は毎年ビニール袋、プラスチック弁当箱などのごみを20万ないし30万トン処理しなければならない。首都鋼技術研究院の銭凱さんは、今回の実験研究の成果は北京市の「白い汚染」の問題を基本的に解決し、その回収規模は全市のこの種のごみの処理総量に相当する。このような工業コークス炉設備はコストが低く、回収率が100%に達するという強みがある。回収の過程では2次汚染を避け、廃物を宝に変え、コークスと化学工業原料となる気体を生産することができると語った。

 それと同時に、首都鋼の人びとは廃棄されたタイヤ、電池を処理する冶金溶鉱炉の技術設備の研究作業を進めており、この設備が使用すれば百トンにのぼる廃棄物回収処理任務を完成できると予想している。彼らはまた高温精錬の環境を利用して病院の使い捨て注射器などの特殊な汚染物を処理している。

 北京市が毎年破棄処分にする自動車はおよそ10余万台ある。これに対し、首都鋼の人びとは、精錬の方法でそれを再生することができると語った

 以上の一連の行動は、首都鋼が自らの環境問題を解決するだけでなく、首都の環境改善にも貢献することを意味している。

 首都鋼の人びとはまた、鉄鋼生産の規模が圧縮された後、あけたところは冶金博物館と大型室内熱帯植物園を改築することを計画している。その時になれば、首都鋼の環境の質は国際と国内の先進企業の先進レベルに達し、北京の五輪招致の要求を満たすであろう。