医療制度の改革

 20世紀50年代の初期に確立された従業員の公費医療と労働保険医療制度はすでに社会発展の要求に適応しなくなり、1988年に中国は医療改革を行い始めたが、いま都市部従業員の基本医療保険制度が基本的に確立されている。

蘭辛珍

 「北京市では現在600余万人が社会医療保険に加入して、基本医療保険は北京市の都市部の働く人たちと企業従業員総数の90%以上をカバーしている」。79日、北京市労働・社会保障局の王徳修副局長は記者にこう語った。2001年、北京市人民政府は「北京市基本医療保険規定」を公布し、全市の従業員の中で基本医療保険制度を実施し始めた。

 1988年、中国政府は機関と事業体の公費医療制度と国有企業の労働保険医療制度を改革し始めた。1994年、国務院は江蘇省鎮江市、江西省九江市で医療保険制度の改革を試行することを決定した。1996年、試行の範囲はさらにアモイ市、成都市などの40余市に拡大された。1998年、国務院は「都市部従業員の基本医療保険制度確立に関する国務院の決定」(「医療決定」と略称)を公布し、全国の各都市で都市部従業員の基本医療保険制度の改革が全面的に展開された。これは中国が従業員医療制度の市場化を推進するために実施している重要な政策であり、従業員の医療保障は所属部門保障制度から社会保険型の医療保険制度に転換し、福祉保障から共済・有効制約の保険メカニズムに向かって転換し始めた。20023月末現在、基本医療保険制度は全国の99%の都市をカバーしている。

 中国社会科学院の王延中教授は、中国の都市部従業員の基本医療保険制度の実施は、中国の経済体制改革のいま一つの大きな成功であると見ている。

大勢の赴くところとなった医療改革

 従業員の公費医療と労働保険医療制度は、20世紀50年代の初期に確立されたものであり、ここ数年来、公費医療、労働保険医療制度に存在している欠陥が日に日に際立っており、主に次のいくつかの方面に現れている。一、国と所属部門は従業員の医療費用をあまりにも多く引き受け、財政と企業は重任に耐えられず、1990年から1997年までの全国従業員の医療費用支出は270億元から773億元へと年平均16.2%増え、国と企業の負担能力を大いに上回った。二、病院と患者の双方に対する有効な制約メカニズムを欠き、浪費がひどく、一部の従業員は医療費節約の意識を欠き、「大した病気でもないのに大げさに養生する」、「1人が受診して、家族の薬までもらってくる」という現象は一部の部門に、程度は違うが存在している。三、管理とサービスの社会化の程度が低い。異なる地区、異なる所有制、異なる業種、異なる部門では、従業員の享受する医療待遇の差違が大きすぎ、かなりの従業員は基本医療保険を得られない。生産・経営状況のよくない一部の企業では、多くの従業員の医療費は1年に数十元しかなく、多くの部門では従業員の医療費は長期にわたって清算できず、医療費の支払いが遅れる現象がかなり深刻である。四、医療保障のカバー率が低い。外資企業、株式制企業、私営企業の従業員と個人経営者の多くは社会医療保障に加入しておらず、これら企業の従業員は有効な基本医療保障が受けられないでいる。

 王徳修副局長は、上述のような状況にかんがみて、医療改革は行わなければならない。従業員の医療保険制度改革は、社会主義市場経済体制を確立する要求である。社会主義市場経済を実行する条件の下で、政府は養老、医療、失業保険制度を確立して、市場競争によってもたらされるリスクを分散、なくし、社会の公平と安定を守らなければならないと語った。

社会に向かう医療保障

 労働・社会保障部の王東進副部長は次のように説明した。「医療改革は次の3つの目的を実現しなければならない。一、医療保障は福祉保障から社会保険に転換し、以前の所属部門の分散した管理を社会化管理に改め、医療保険基金の統一プールと共済を実現し、病院、患者、保険機構三者の制約メカニズムを構築し、以前の国と企業が一手に引き受けた従業員の医療費を所属部門と個人が共同で納めることに改め、個人の自己保障責任を増強し、権利と義務の統一を実現する。二、医療保障の範囲を拡大し、都市部のすべての人に医療保障を得られるようにする。三、医療機構がコストを下げ、サービスをレベルアップするように激励する」と語った。

 医療保障の社会化は、医療を受ける人を広くカバーすることを真に実現している。王徳修副局長は、今度の基本医療保険改革は北京市行政区域内の都市部のすべての雇用部門をカバーし、それには企業、機関、事業体、社会団体、民営の非企業部門が含まれていると語った。 医療保障の社会化は同時に医療機構のサービスにも要求を出している。「都市部従業員の基本医療保険制度の確立に関する国務院の決定」は、医療保険に加入した従業員が医者にかかる選択権があり、自分の信頼する病院と医者を選ぶことができると規定している。このため、病院は患者を獲得するためにどうしても体制改革を行い、医療コストを引き下げ、サービスのレベルを高めなければならない。

国の財政負担を軽減

 「医療保険制度の実施では、北京市政府は毎年数十億元の支出を減らすことができる」と北京市労働・社会保障局医療保険処の張大発処長は記者に語った。

 張処長はこう計算した。1998年の北京市の医薬費支出は102億元であったが、基本医療保険制度実施後の2001年に、北京市の基本医療保険は合計61億元を調達した。そのうち個人口座は26億元で、統一プール基金は35億元である。個人口座を除けば、2001年の統一プール基金は338000万元を支出したが、12000万元残り、国は重い医療費負担から完全に抜け出した。

庶民は医療改革を支持

 北京市第三工作機械工場の高志偉さんは、2001年の初めに医療保険に加入した「医療保険に加入する最も大きなメリットは、毎度医薬費の清算で頭を痛める必要がなくなった」、「これはわたしの1999年と2000年の医薬費で、今でも清算していない。今年は診療を受けても、医薬費は個人口座から支出されるので、清算のことで頭を痛める必要がなく、とても便利になった」と高さんは束になった医薬費領収書を見せながら記者に語った。張大発処長は、現在北京市の従業員の清算できない医療費領収書は総額が10億元以上に達していると語った。 北京市宣武区虎坊橋に住む王淑さんはいま、受診がいっそう便利になったと思っている。「以前受診は所属部門の指定した病院へ行かなければならなかった。病院は家から遠く離れており、行くたびに家族が休暇を取って付き添ったので、とても不便だった。今はよくなった。医療保険に加入してから、家に近い友誼病院をかかりつけの病院に選び、家を出ると受診できるので、一人で行けるようになり、これ以上家族に面倒をかける必要がなくなった」と語った。

 20024月、北京市労働・社会保障局は北京市の443万の在職従業員と定年退職従業員に対し調査を行い、83%の人は医療改革に支持の意を表した。それと同時に、99%の調査対象者は、医療改革を行うと同時に、政府は医療サービス管理を強化し、医療機構間の競争メカニズムと薬品生産流通の市場運行メカニズムを構築して、「わりに安い費用で行き届いた医療サービスを受けられる」という医療改革の目標を実現すべきだと協調した。