公務員の増俸についての論争が再発

 5月中旬、項懐誠財政部長はメディアに、公務員の俸給が今年71日から増加することを実証し、具体的な増加幅は「適当な数だ」と語った。報道によると、その時になれば、中国の公務員の俸給は平均約15%を増加し、一人当たり約100元増額する。増俸の範囲は公務員、事業体の定年退職者である。

 今回の公務員の増俸は、1999年から今年までの3年内における4回目の増俸である。このニュースが発表されると、またもや社会各界の幅広い関心を引き起こし、収まっていたこれについての論争が再びエスカレートした。

 経済学者の戴園晨氏は、「最初に公務員の俸給を増加した時、私は両手を挙げて支持したが、2回目の時は片方の手をあげて賛成し、もう片方の手は賛成しなかった。2002年にさらに公務員の俸給を増加することに対し、私は両手を挙げて反対する。一回の増俸は1000余億元かかる。この1000余億元を農村の義務教育を解決する面に用いれば、農民の負担を軽減することができ、1000億元があれば、農村の義務教育の問題がすべて解決される」と語った。

 賛成する人は、公務員の俸給を増加すれば、内需促進、腐敗反対・廉潔提唱、人材を引きとめることができると考えている。

 現在のように何回も公務員全体の俸給を増加するのは終始、問題解決の方法ではなく、激励の役割を全然果たすことができない。長い日から見れば、公務員の給与を業績と結びつけるのは必然である。カギは合理的、科学的な給与メカニズムを構築することである。科学的なメカニズムを構築してこそはじめて給与を通じて激励メカニズムを体現し、勤勉を奨励し、怠惰を罰することができる。功績主義の原則を実行し、仕事を立派にする人の給与をあげるようにする。これらすべては公務員給与制度の改革に頼って最終的に完成すると指摘する専門家もいる。

増俸は正しい方策

 中国共産党中央党学校経済学部副主任、博士コース大学院生指導教師の王文京教授の見方は次の通り。

 現在、政府に養ってもらっているのは公務員だけであり、政府は公務員の使用者である。公務員の俸給を増加するのはモデルの効果があり、このような効果を通じて社会全体の給与レベルの向上を促すようにする。

 公務員の給与レベルを高めなければ、中国の経済に腐敗が永遠に残るだろう。高給は必ずしも廉潔な官僚を育てることができるとは限らないが、低給は間違いなく腐敗をもたらす。国際所得レベルと比べて、中国公務員の所得は低すぎる。これは必然的に公務員全体の勤務状況に影響する。公務員は激励を得られないだけではなく、仕事の効率にも影響する。他の国と比べて、中国公務員の給与レベルは中等よりもやや下にある。公務員に廉潔を保たせるに合理的な所得がなければならない。だから公務員の給与の調整は中国現代化の過程にかかわる大事である。

 WTO加盟後、われわれが直面している最大の問題は人材であり、収入を増やして人材を引きとめておくことを望んでいる。これも公務員の俸給を増加する主な原因の一つである。いまでは処長の月給は1000元しかなく、外資企業は1000ドルで一人の処長を引き抜くことができる。これらの人は政府の文書を起草する仕事をしており、われわれの手落ちをいちだんと知っている。これらの人が低給のため外資企業に鞍替えして、われわれと競争するなら、この損失がいかに大きいかは推して知るべしである。

 増俸は享受すべき待遇を給与に変えることでしかない。つまり公務員の隠れた収入を給与化させることである。周知のように、一部の公務員は低い給料のほか、手中にある権利を使ってさまざまな隠れた収入を待っている。これらの隠れた収入が正規の給料収入を大幅に上回る場合もある。正規の給料が低く、隠れた収入が高いことは、腐敗がはびこる重要な根源となっている。さまざまな名目の公金の収支決算を例として見ると、その金額は毎年2000億元にも達している。それは公費で落とすべきかどうかにかかわらず、すべて公費で落とし、享受すべきかどうかにかかわらず、すべての待遇を享受したからである。取り消すべき支出を取り消し、享受すべき待遇を給料に変えるならば、増俸の金が自ずと出てくる。これは「足し算をすると同時に引き算もする」ことであり、問題は結局増俸すべきかどうかにあるのではなく、どのように具体的に操作するかにある。

 現在、教育、医療、養老、住宅などの費用は全部個人が負担し、低収入はこれらの問題を十分に解決することができない。給料をある程度増やさなければ、消費を増やすことができず、需要促進もかなり限られる。だから増俸するだけではなく、大幅に増俸すべきである。しかし、この仕事も必ず社会保障システムを完全なものにし、農民の負担を軽減することと同時にしなければならない。

 経済学者の魏傑氏の見方は次の通り。

 公務員の増俸は、公務員が直接の受益者であるほか、その他の階層の人も間接的に利益を受けることができる。

 市場経済では、経済成長を決定する主な要素は需要であり、それは投資の需要に原動力を提供する。生産者は製品を市場で売り出して利潤を実現した後はじめて経営を持続し、拡大する可能性がある。内需の拡大は現在、経済の最も主要な問題である。

 今、国内で大多数の業種の製品が過剰のように見える。人々は金をもっており、消費もしたいが、買い物に行かない。実際には収入が低いため、金を溜めて、消費しないのである。今の過剰は相対的過剰であり、それは冷蔵庫やカラーテレビなどの家電に対する消費が基本的に飽和状態に達しているが、他方では、住宅や乗用車などに対し、消費欲求はあるが、支払う力がないからである。収入が一定のレベルに達しさえすれば、新たな消費ブームがすぐにも現れ、必ず経済に対し大きな促進作用を果たすだろう。

 公務員の給料は社会では中等レベルに属するが、消費は都市の高所得階層や普通の農民階層よりも高く、自宅購入、子女教育など必要な支出がかなり多い。そのため、この部分の人の収入を増やせば、彼らを以前入る力のない消費分野に入らせて、新しい消費ブームを盛り上げ、それによって経済成長を促し、全社会の各階層に利益を受けさせることができる。増俸後、これらの家庭は食品の支出額をより大きく増加し、農業生産物と副産物の購買力も大きくなり、農民の増収のためによい条件をつくり出す。農民の収入増加は、家電などその他の市場に対してもより大きな購買力を構成し、これら企業の発展と、経済全体の良性循環に有利である。

増俸反対

 経済学者の戴園晨氏の見方は次の通り。

 現在、就業が不十分で農村の収入レベルが低い状況の下で、公務員の俸給をあまり増加すべきでなく、節約した金を農村の義務教育に用いる。このようにすれば、農民の負担を解決するだけではなく、消費の需要を促すこともできる。

 国内の消費を刺激するにはいろいろのルートがある。現在わが国は多くの問題に直面しており、特に就業が不十分で、農村の収入レベルが低く、公務員の俸給を増やす方法で消費を刺激する必要がない。中国はすでに公務員の俸給を2回も増加した。3回目増俸しても、それによって促される消費の需要もあまり大きくないだろう。その上、増俸後は減らしにくく、このように毎年1000億元を加え続けていくならば、将来のマクロコントロールが困難になる可能性がある。

 過去の5年間に、農民の低い収入レベルは4%向上しなかったのに、都市部住民の収入レベルの向上幅は8%に達し、農民の収入問題はすでに経済の成長をひどく制約し、また社会の安定に影響している。

 国務院発展研究センター社会経済研究部の林家彬副部長の見方は次の通り。

 現在、多くの人は、公務員の増俸は隠れた収入の減に対する1種の補償であると言っているが、実際には、増俸と隠れた収入の間には関係がなく、俸給を増加すれば、隠れた収入を入手しなくなるわけではない。隠れた収入が負えられるかどうかのカギは政府の職能が転換するかどうかにあるのであって、公務員の増俸と関係がないのである。

 公務員の俸給を増加しないなら、これらの金を2つの方面に用いることができる。一つは弱い人々に機会をつくっており、サービスを提供すべきであり、もう一つは農村問題、特に農民問題がわりに深刻な地区に用いる。金をこの2つの方面に用いて、貧富の格差を縮小し、社会の矛盾を緩和する上である程度の役割を果たすべきである。

 現在、政府はなんとかして財政負担を軽減すべきであって、引き続き増俸すべきではない。中国の表向きの財政赤字はすでに大きな額に達しており、ほかに隠れた赤字がまだたくさんあることを民衆は知らない。例えば、国有企業の不良資産、不良債務、銀行の不良債権などは、最後には政府が財政面から解決する可能性があり、このような隠れた危険はとても大きいのである。

 増俸は機構改革に対して不利である。機構改革は公務員の人数を減らすためである。今増俸するならば、公務員はますます辞めたくなくなる。