第一部  国情

国土

 中華人民共和国は、中国と略称し、アジア大陸の東部と太平洋の西岸に位置し、陸地面積は約九百六十万平方キロで、大きさはほぼヨーロッパと同じであり、わずかロシアとカナダに次いで、世界第三位を占めている。中国の領土は、北は漠河以北の黒竜江の河心から、南は南沙群島の曽母暗沙までで、南北の距離は五千五百キロ、東は黒竜江とウスリー江の合流地点から、西はパミール高原までで、東西の距離は五千二百キロ。陸地の国境線の長さは約二万二千八百キロである。中国大陸の東部と南部は渤海、黄海、東中国海、南中国海に臨み、海域面積は約四百七十三万平方キロ、島嶼が五千四百あり、海岸線の全長は三万二千キロ、そのうち大陸海岸線が一万八千キロ、島嶼海岸線が一万四千キロ。

地理的特徴

 中国の地勢は西高東低で、階段状を呈し、一段ずつ低下し、最も高いところは青海・チベット高原で、海抜は平均四千メートル以上あり、「世界の屋根」と呼ばれている。第二の階段は内蒙古高原、黄土高原、雲南・貴州高原とタリム盆地、ジュンガル盆地、四川盆地からなり、海抜は平均千ないし二千メートルである。大興安嶺、太行山、巫山、雪峰山麓から東の海岸線までの地勢は、海抜千ないし五百メートルまで低下し、第三の階段となっている。第四の階段は、中国大陸棚の浅海区域で、平均水深は二百メートル足らずである。

 中国は山の多い国で、習慣的に山地、丘陵、起伏のわりに多い高原などを含めて山間地区と呼び、その面積は全国面積の約三分の二を占めている。全国の各種地形の比率は、山地約三三%、高原約二六%、盆地約一九%、平野約一二%、丘陵約一〇%である。

天然資源

土地資源 中国は土地が広く、土地資源の種類が多様で、各種の土地資源が分布している。中国は山地が多く、平野が少ないため、耕地と林地の占める比率は小さい。耕地は主に東部地区に集中し、林地の多くは東北地区と西北地区の辺ぴな山間地帯に集中し、草地の多くは内陸部の高原と山間地区に分布している。

耕地 現在、中国が擁している耕地は一億三千四万ヘクタールで、主に小麦、稲、トウモロコシ、コーリャン、大豆、栗、亜麻、甜菜、綿花、落花生、油菜の種子、サトウキビ、茶、柑橘などを生産している。

森林 現在の中国の森林面積は一億五千八百九十四万ヘクタール、被覆率は一六・五五%で、森林の少ない国である。しかし、中国の樹木の種類が豊富で、喬木だけでも二千八百余種あり、貴重な樹木は銀杏、メタセコイアなどがある。現在、人工林の面積は三千三百七十九万ヘクタールに達し、全国森林総面積の三一・八六%を占めている。

草地 中国には草地が四億ヘクタール余りあり、類型が多様なため、一年四季とも各種の家畜の放牧に適している。草地面積は全国総面積の四分の一近くを占めている。

 

動植物資源

 中国は、野生動物の種類が世界で最も多い国の一つで、陸生脊椎動物だけでも世界の陸生脊椎動物の九・八%に当たる二千余種あり、なかでも鳥類の占める比率が最高で、次は獣類である。いままでに発見された鳥類は千百八十九種、獣類は五百種、両生類は二百十種、爬虫類は三百二十種ある。陸生脊椎動物のうち、中国特有の動物、あるいは主として中国に分布している動物がたくさんある。たとえばキジ目では、コジュケイ、ジュケイ、サンケイ、オナガキジなど十九種あり、獣類では「生きた化石」と言われるジャイアントパンダがあり、動物学研究のうえで特に意義のあるシフゾウ(四不像)は野生のものはすでに絶滅している。そのほか、ターキン、マエガミジカ、梅花鹿などが生息している。

 植物は種類がとても多く、木本植物だけでも三万種以上に達し、そのうち喬木は二千八百余種あり、木質が優れ、経済価値の高いものが千種近くある。中国には北半球の植生がほぼ揃っており、東部の湿潤地帯にはさまざまな森林が分布している。最北部の寒温帯は落葉針葉樹林区、その南は温帯落葉広葉樹林区である。亜熱帯林区の面積は中国で最も大きく、一部の区域には中国以外の地域ではとっくに絶滅した「生きた化石」──メタセコイア、カタヤ、銀杏などがある。南部には半常緑の熱帯季節雨林・熱帯雨林、マングローブ林があり、また、ゴム、アブラヤシ、サイザル麻など一部熱帯植物の優良品種を導入している。メタセコイア、カタヤ、銀杏のほかにも、ミル、広葉杉(こうようざん)、イヌカラマツ、台湾杉、福建柏、杜仲など中国特有の樹木がある。

鉱物資源 中国の鉱物資源は豊富で、種類がそろっており、現在すでに発見された鉱物は百六十余種にのぼり、総埋蔵量は世界第三位である。石炭の保有埋蔵量は一兆六十三億トンである。石油の主な埋蔵地は西北地区で、次に東北、華北地区、東南部沿海の浅海大陸棚である。ほかに埋蔵量確認ずみのエネルギー資源は、天然ガス、オイルシェールとウラン、トリウムなどがある。鉄金属で埋蔵量が確認されているものは、鉄、マンガン、バナジウム、チタンなどがあり、そのうち鉄鉱の埋蔵量は約五百億トンである。世界で発見された非鉄金属はすべて中国にもあり、タングステン、錫、アンチモン、亜鉛、モリブデン、鉛、水銀などの埋蔵量は世界の上位にランクされ、希土類は世界の約八〇%、アンチモンは世界の四〇%、チタンは中国以外の国々の埋蔵量の総和、タングステンは中国以外の国々の埋蔵量の総和の四倍である。

気候

 アジア大陸東部に位置する中国は、太平洋に臨んでいるため、顕著なモンスーン気候の特徴がある。その上国土が広大、地形が複雑で、標高差が大きいため、さまざまな気候型を形成している。気候帯は熱帯、亜熱帯、暖温帯、中温帯、寒暖温帯があり、ほかに青海・チベット高原垂直温帯がある。

気温

 中国最北部の黒竜江省漠河地区は、北緯五十三度以北に位置し、寒温帯に属するが、最南端の海南省曾母暗沙は、赤道からわずか四百キロしか離れておらず、赤道気候に属し、南部と北部の気温差は非常に大きい。

 冬季は、多くの地域に雪が降り、氷に閉ざされる。一月の平均気温は、漠河地区ではセ氏マイナス三十度前後だが、海南島の三亜ではセ氏二十度を超える。冬の気温の特徴は、大多数の地区が寒冷で、南北の温度差が大きいことである。

 夏季は、太陽が北半球に直射するため、北部でも昼の時間が比較的長く、光熱量も南方との差は比較的小さい。そのため、標高の特に高い青海・チベット高原を除いて、全国的に気温が高く、南北の気温差はあまり大きくない。

降水

 中国の大多数の地区は海洋性暖湿気流の影響で、降水が比較的豊富だが、地域と季節によってまちまちで、東部が多く、西部が少なく、南東部から北西部へとだんだん少なくなるとともに、その多くは夏季に集中し、南部の雨季は長く、五月から十月に集中し、北部の雨季は短く七、八月に集中している。降水量は、多い年もあれば少ない年もあり、年による変化が非常に大きい。

日照

 中国のほとんどの地方は北回帰線より北にあり、冬は太陽の照射角度が小さくて日照時間が短く、太陽光熱は比較的少なく、北へ行くほど少なくなる。夏は太陽が北半球を直射し、太陽光熱が多くなるとともに、日照時間も長くなる。

行政区画

 中華人民共和国憲法の規定に基づいて、中国の行政区画は次のように分けられる。

 全国は省、自治区、直轄市に分かれる。

 各省、自治区は自治州、県、自治県、市に分かれる。

 県、自治県、市は郷、民族郷、鎮に分かれる。

 直轄市とわりに大きな市はその下に区、県を設置する。自治州はその下に県、自治県を設置する。自治区、自治州、自治県はいずれも民族自治区域である。

 国は必要に応じて特別行政区を設置する。

 現在、全国に直轄市が四つ、省が二十三、自治区が五つ、特別行政区が二つある。

人口、民族、語言

 中国は世界で最も人口の多い国であり、総人口は十二億九千五百三十三万人で、世界総人口の五分の一以上を占めるとともに、人口密度の比較的高い国の一つでもある。人口分布は非常にアンバランスで、東部と農村に多く、西部と都市には少なく、また人口増加スピードが速い。深刻な人口問題に直面して、中国は七〇年代から計画出産を実施して人口増加を抑え、年々出生率を低下させている。

 2001年、中国の人口自然増加率は引き続き低下した。年末現在、大陸部の総人口は十二億七千六百二十七万人、そのうち都市部の人口は四億八千六十四万人で三七・七%を占め、農村部の人口は七億九千五百六十三万人で六二・三%を占めた。男性人口は六億五千六百七十二万人、女性人口は六億千九百五十五万人であった。014歳の人口比率は二二・五%、1564歳の人口比率は七〇・四%、65歳以上の老年人口の比率は七・一%で、老年人口は九千六十二万人に達した。全国の年間出生人口は千七百二万人で、出生率は一三・三八‰、死亡人口は八百十八万人で、死亡率は六・四三‰、年間の純増加人口は八百八十四万人、自然増加率は六・九五‰であった。

 中国は多民族国家で、五十六の民族が暮らしている。各民族の中では漢族の人口が最も多く、総人口の九二%以上を占め、他の五十五の民族は総人口の八%にも満たず、少数民族と称されている。少数民族の中ではチワン族の人口が千五百万人以上で最も多く、ローバ族の人口が二千余人で最も少ない。漢族の人口は全国に分布しているが、主に黄河、長江、珠江の三大流域と松遼平野に集中している。少数民族の人口は少ないとはいえ、中国の五〇ないし六〇%の地域に分布している。漢族は自民族の言語と文字がある。漢語は、現代中国の共通言語であり、国際的な共通言語の一つでもある。回族と満州族も漢語を使用し、その他の五十三の民族はたいてい自民族の言語を使用し、二十三の民族が自民族の文字を持っている。長年来、漢族と各少数民族との間に政治、経済の連係と文化交流関係が樹立され、相互依存、共同発展の民族関係が形成されている。