百万元の年俸で教授を招聘するのは優秀人材導入のいい方法か

 7月初め、ハーバード大学の博士であることを証明する有効な証明を提示できないため、多くのメディアから疑われた陳琳さんは、山東外事翻訳学院に招聘契約を解除され、一時センセーションを巻き起こした百万元の年俸でハーバードの博士を招聘するこの事件は一段落を告げた。

 最近、大学が高給で教授を招聘することは社会を大いに驚かせている。4月下旬、清華大学は28人の海外在住の中国人学者を講習教授に招聘した。年俸は一人100万元(約12万ドル)で、任務は毎年、同大学の経済管理学院で34カ月に仕事をすることである。

 521日の新華社報道によると、山東省の私立大学である山東外事翻訳学院は100万元の年俸で世界的に影響がある金融理論家で、ハーバード大学ケネディ管理学院の経済管理博士の陳琳さんを同学院の常務院長に招聘した。陳院長は主に対外教育交流、教師育成、学院教学、学術研究、学院のハイテクグループの設立準備という5つの方面の仕事を担当する。そのうち、教育交流の面では、陳博士は毎年少なくとも同学院の10人の優秀な卒業生をハーバードやスタンフォードなど世界一流の大学に入学させる。

 一人当たりの年間所得が900ドル余りの中国では、100万元の年俸は高給の中の高給である。勤務時間で換算すれば、これらの講習教授は中国だけでなく、世界でも給料が最も多い教授であるとあるメディアは報道した。百万元の年俸で教授を招聘することはすぐにも多くの内外人士の疑問をを引き起こした。

 清華大学が招聘した講習教授の多くは学術成果が一般的で、清華大学の言うような世界的に有名な学者ではないと見る人がおり、また招聘した教授はアメリカで正式の研究に従事しながら、短期間の休暇を利用して中国で研究をするのは、招聘した大学に対しあまり役に立たないが、この金で安心して学問に励む教授を何人か招聘したほうがよいと見る人もおり、さらには、このような人材探しの方法は取り柄がなく、自分を売り込むきらいがあると見る人さえいる。

 山東外事翻訳学院の孫承武院長は「WTO加盟後、中国教育界の競争はさらに激しくなる。民営大学としては、競争の中で勝とうと思うならば、一日も早く国際とリンクし、先進的な教育管理の理念を導入しなければならない。こうしてのみはじめて競争の中で淘汰されず、より大きな発展をとげることができるのである。われわれは絶対に決して意識的に自分を売り込んでいるのではない」と語った。

 21世紀初めに世界一流の大学に仲間入りしようとする清華大学が今回、世界一流の学者を講習教授に招聘する制度を実行したのは、天下の英才を集める誠意を顕示するためであったが、あにはからんやこれほど多くの論議を引き起こしたのである。

高給は必ずしも真の人材を引きつけるとは限らない

 方舟子氏( ネットワーク作家) 清華大学は昨年10月、10万ドルの年俸でアメリカのある大学のサモンディ教授を招聘して、創立したばかりの工業工学部主任を兼任させた。同教授は毎年、清華大学で1カ月間仕事をするだけでよく、そのため、勤務時間で計算すれば、世界の給料が最も多い教授となった。最近、清華大学経済管理学院は最近百万元の年俸で28人の海外在住中国人学者を講習教授に招聘しこれらの教授は毎年、大学で34カ月間仕事をするだけでよい。このことは、なおさらに内外中国人の関心を集めている。

 清華大学の説明によると、いわゆる百万元の年俸は実際には14人が分かち合うものである。たとえそうであっても、勤務時間で換算すれば、これらの海外在住中国人教授は依然として世界の給料が多い兼職教授に属する。もし人民元とドルの購買力の差と中国の研究経費の不足を考えれば、清華大学の豪奢なやり方はなおさら人々をびっくりさせた。

 この金は国の支出によるものかそれとも企業の賛助によるものかにかかわらず、研究経費がきわめて少ない発展途上国として、中国は28人も招聘するという世界記録をつくる必要があるのかどうか。その実、清華大学は金を出してこれらの人に引き続きアメリカで正式の研究に従事させながら、短期間の休暇を利用して中国に来て研究を行わせていると言える。(いわゆる「短期間の休暇を利用しての研究」はその正式の研究に相対して言うもので、彼らが休暇をするだけで、仕事をしないというわけではない)。これはすでに先例のあることである。サモンディ氏はかつて米『サイエンス』誌で、10万元の年俸はそのアメリカ実験室の研究経費に充てられると語ったことがある。清華大学人事処の関係責任者は高給を惜しまず兼職教授を招聘する有利な点は、清華大学の関係学科を世界の科学技術の先端に融け込ませ、清華大学の専門家を推薦して、世界的に有名な雑誌の編集委員にならせることにあると語った。学術の実力で世界の科学技術の先端に融け込むなら、自ずと世界的に有名な雑誌の編集委員になることができる。清華大学のこのようなやり方は、果因関係を逆にするものである。

 このような大金を惜し気もなく使う気概は、清華大学が海外人材をとても求めたいことを際立って現し、海外に留学している人を引きつけて帰国させるのに役立つという人もいる。このような言い方は検証に耐えられないものである。優れた留学人員を引きつけ、帰国させるカギは良好な学術環境にあり、さもなければ、より高い給料を出して、これらの留学人員を帰国して休暇を過ごさせるだけである。

 趙潮(中国科学院人事教育局) 海外学者が帰国して仕事をすることに経費を提供して支持し、プラットフォームをつくってやるのはよい事、ハイレベルの学者をより多く引きつけるのに役立つ。しかし、このプラットフォーム適度につくらなければならず、高ければ高いほどよいのではない。高すぎると格差が大きくなり、内外学者の格差が大きすぎると、海外在住学者の帰国後の発展に不利である。彼らがスタートする時から奮闘努力をつづけ、より大きな発展をとげるようにするには、高すぎる給料と地位は、反対の作用しか果たさない。

人材を引きとめるのは高給でなく環境である

 陳平(アメリカに留学して博士号を取得した) 現在、私は主にテキサス大学で研究に従事しているが、北京大学にいた時、研究に使える精力がアメリカの5分の1にもならず、学術論争の雰囲気がなおさらない。アメリカでは、ほとんど食事をして睡眠以外のすべての時間は科学の核心的問題を思考するのに使われ、問題解決のインスピレーションは競争者との論争や周辺分野の専門家との討論を通じて得られる。中国では、仕事の余暇のわずかな時間に真に意義のある問題を考えることはできるが、対話できる人がいない。これは私がずっと帰国を考えながらも、再三遅らせた原因である。

 内外の状況がそれほど大きく違っていることにより、私は中国の問題は人材がないのではなく、現有体制の下で人材を評価、選抜するシステムが欠け、往々にして「国内で成績を収められるかどうかに頼って人材を判断していることを痛感している。ここ20年来の中国の経済改革は順調に進み、研究に用いられる経費と条件も急速に改善されているが、学術環境が世界の先進的なレベルと比べて、まだ極めて大きなギャップがある。中国の科学人材の成長は経済的待遇の大幅な向上に頼るのではなく、学術環境を大いに改善することに頼るのである。

 傅新元(米エール大学医学博士) われわれが帰国して常勤教授にならないのはなぜか。給料は重要な要因ではあるが、それだけの問題ではない。科学者として、アメリカでも中国でも、最も重要なのはどのような学術成果をあげるかである。以前、李政道、楊振寧らのような最も優れた科学者は、学術ピークが過ぎたあとに中国に戻ってきた。しかし、私とその他の一部の学者は学術の最も活発な時期に帰国し、中国で一流の研究を行うことを望んでいる。しかし、われわれはまず中国がすばらしい学術環境を提供できるかどうかまたはつくれるかどうかを確認する必要がある。いま、われわれはこれについて模索している。初めのうちは、われわれは同時に国外と国内で仕事をすることしかできない。われわれは支持と理解が必要である。

優れた人材を導入し、世界一流レベルを追い抜く

 趙純均(清華大学経済管理学院院長、教授) 講習教授の招聘問題について清華大学は非常に慎重であり、金を使え切れないほどもっているわけではない。

 一部のメディアは報道でそれをはっきり説明しなかったため、誤解を招いたのかもしれない。実際には、大体4人の講習教授が一つのグループとなり、100万元の経費を分かち合い、毎年、一人当たり10万元の研究経費と15万元の生活手当をもらっている。

 このような待遇は高いものとは言えない。アメリカでは、各大学の教授の待遇は同じではなく、同じ大学でも異なる学科の教授の待遇も同じではない。一般的に言って、管理学、金融学の待遇がわりに高く、経済学がこれに次ぎ、管理学あるいは経済学の常勤教授の年俸は通常10万ドル以上である。国内の経済管理学界は清華大学が提供する待遇に驚いていない。、校外で授業をしている一部の教授の一日の収入が1万元に上るケースもある。

 清華大学が招聘した人は海外在住中国人学者の中のエリートであるため、私はこれらの講習教授の全般的なレベルを疑ったことがない。

 もちろん、われわれは常勤教授を招聘することも考えている。しかし、目下、常勤教授の招聘はかなり難しい。海外学者は学術環境、人間関係、生活条件など多くの具体的な問題を考慮する。例えば、国外の教職を完全に放棄するならば、国外との学術連係に影響を及ぼし、学術界もそのように評価してくれないのではないかと心配する人もいる。清華大学自動化学部の講習教授グループを招聘するやり方は経済管理学院にヒントを与えた。これは何人かの学者が一つのグループをつくり、共同で常勤教授の仕事を完成することである。

 いわゆる「休暇を利用しての研究」は不満をもつ議論である。経済管理学院はすべての講習教授と契約を結んだが、契約の中で彼らの仕事の任務について課程設置、博士コース大学院生指導、協力研究の展開などと具体的に書いている。このほか、現在、通信がとても発達しており、われわれは単に時間を買うために金を使っているのではない。例えば、金融研究センターの設立準備に参与する講習教授はいま毎日のようにアメリカから何回か電話をかけ、Eメール、手紙を発送し、多くの精力を費やしている。これらの学者は国外で金を稼ぐ機会がわりに多いが、彼らがこうしてやるのは確かに国を愛する情熱があるからである。

賢明な行動

 呉明(偽名、講習教授) 中国では、清華大学が28人の講習教授に与える待遇が高すぎると思う人が大勢いるかもしれない。しかし、アメリカの基準から見て、われわれが多くもらっているのではなく、少なくもらっているのである。実際には、われわれの年俸はいずれも10万ドル以上で、20万ドルに近いかまたはそれ以上の人もいる。その中にアメリカで授業を一つ余計に受け持って楽々と2万ドルまたはそれ以上多くもらっている人も一部いる。しかし、清華大学の講習教授となって、2万ドルを稼ぐには、長い旅行をし、34カ月かかって1科目の授業をし、また清華大学の教師や学生と一緒に研究を行い、博士コース大学院生を指導しなければならない。

 われわれは何のためにこうするのか。われわれは中国の経済発展と研究・教育に自らの力を尽くすためであり、清華大学と賛助企業が得難い機会を提供してくれた。もし大きな貢献をすることができなければ、私は真っ先に辞職する。

 清華大学があまり金を使わないで世界の最も優れた教授を招聘するのは人材を広く誘致する賢明な行動である。