発展の潜在力のある遠隔教育

      唐元カイ

 「科学・教育による国家振興」戦略の構成部分としての遠隔教育は中国で速やかな発展をとげている。

 中国の遠隔教育は次の3つの段階をたどってきた。第1段階は通信教育であり、第2段階はラジオ、テレビなどを利用して行う教育であり、第3段階はコンピューターネットワークやマルチメディアを運用し、デジタル化環境の中で交互に行う教育である。

 第3段階は1997年から始まった。当時、一般学校の在校生数は25000万人近くで、それに各級、各種の成人学校の学生を加えて、総数は33000万人となるが、それに比べると、教育資源が相対的に不足している。そのため、中国はネットワーク教育を発展させ、先進的な情報技術と教育技術を使ってさまざまな教育資源を整合する決意を固めた。

 現在、現代遠隔教育は速やかな発展を遂げている。

地域間の格差を縮小

 甘粛省の農村では、多くの小学校の外はまだ田舎の泥道であるが、教室の中では、生徒たちはブロードバンドや専門家授業の光ディスクを利用して、全国各地の最優秀の教師の授業を聞き、大都市の生徒と同じような教育資源を享受している。

 発達地区と貧困地区の間の教育面での格差を最も速く縮小する方法は、遠隔教育を発展させることだと見られている。

 中国の北西部にある甘粛省は、経済こそ立ち遅れているが、遠隔教育の発展を非常に重視している。省政府は小中学校の情報化建設のための専門経費を計上し、そのために毎年100万元を支出している。同省の教育庁によると、昨年末現在、同省は小中学校に5万台のパソコンを買い入れ、230余りのキャンパスローカル・エリア・ネットワークを開通し、7割以上の高校と半数近くの中学校で情報技術課程を開設している。情報化手段を小学校に導入するテンポも速くなり、すでに4.2%の小学校で情報技術教育課程が行なわれ、僻地や少数民族地区では、遠隔教育試行、現代遠隔教育の双方向伝送試行、キャンパス情報ネットワーク開設が同時に展開されている。

 当面、中国の限りのある教育資源を合理的に配置し、中国の貧困地区にりっぱな教育サービスを提供するため、高等教育機構と地区の小中学校のネット学校をつなぎ合わせる「中国教育科学研究コンピューターネットワーク」(CERNET)というプラットフォームが作り上げられた。

重視される遠隔教育

 数年前に開かれた第15回党大会は「科学・教育による国家振興」のスローガンを打ち出し、教育を優先的に発展させる戦略的地位に置いた。朱鎔基氏は総理に就任した時、この戦略の実施は政府の最大の任務であると国内外に宣言した。「現代遠隔教育プロジェクト」は「科学・教育による国家振興」の8大プロジェクトの一つとして提出されたもので、その目標は開放式教育のネットワークを形成し、生涯教育システムと学習化社会を建設することである。

 1998年、国務院は教育部の「21世紀に向けての教育振興行動計画」を認可し、「いち早く中国の現代遠隔教育資源の建設を科学的、系統的、規範的な軌道に載せ、現代遠隔教育資源の建設任務を成し遂げる」ことを提出した。この行動計画にある諸々のプロジェクトの時間通りの始動とスムーズな実施を保証するため、中央財政は1999年から2001年にかけて合計100億元の特別資金を計上した。

 教育部はずっと遠隔教育を支持しており、しかも具体的な実施の段取りを決めた。先ずは現代遠隔教育の発展に物質的保障を提供することであり、次は多額の資金を投入して、大学の教育研究・開発の強味に依拠して、各段階の教育のための情報資源バンクをつくり、さまざまな教学ソフトウエアとマルチメディアソフトウェアを開発することである。

 これまでに教育部は45校の大学がネットワーク教育学院を設立して、現代遠隔教育を試行することを認可した。今春までに、ネットワーク教育学院の在学生数は24万人に達し、8大種類、51部類専攻科目を設け、300種近くの課程を開設し、多くの素材バンクと事例バンクを設置し、ネット教育は31の省・自治区・直轄市をカバーしている。

 現在、可視ネット教育システムを開発する学校や団体が増えている。例えば、1校の寮制学校と2校の中学校を設立した私営公司の南海発展グループは、1年前にナスダック上場会社のノーベル・ラーニング・コミュニティスと戦略パートナーシップを樹立し、双方はネットワークの交流システムを確立したと発表した。

遠隔教育は教育革命

 教育界の人々は、遠隔教育は教育の革命であり、それは中国の教育大衆化の方途であるだけでなく、大きな市場潜在力をもつ成人継続教育、生涯教育の重要な形態でもある。ネットワークシステム資源の整合が、在来の教学パターンを変えるものと見られている。

 清華大学副学長の胡東成教授は、現代遠隔教育によって、学校がさらに開放すると見ており、遠隔教育を受けて育成された中国最初の大学院生は清華大学から卒業するという。

 しかし、始動の段階にある中国の現代遠隔教育は、思想理念、教育パターン、ネット上の資源建設、ネットワーク技術、教学管理と運営メカニズム、教学サービスシステムおよび教学品質の管理などの面で、引き続き研究、模索する必要があり、中国の遠隔教育ネットワークの建設と発展は国外とかなりの格差があるためである。

 このほか、教育市場は遠隔教育の発展につれて一連の変化が生じる。すこぶる成果のある教育改革の推進にともなって、政府は、潜在力に富むネット教育市場の規模を拡大する必要があるとはっきり表明した。しかし、国内のネット教育公司の多くは教育ソフト公司であり、マルチメディアのソフトウェアには経験があるが、教育ネットの経営にはまだ経験不足である。他方では、小中学校のネット学校や小型教育ネットワークはネット教育に強味をもっているが、資金や技術や管理経験を欠いている。そのため、いかにさまざまな教育資源を改めて一つの強味に整合することは、中国のネット教育を発展させる上で差し迫って解決せねばならない問題である。