証券市場に健全な発展を

―――国有株所有削減の停止は市場を回復させ、市場関係者に好評だった

木 子

 広発証券の陳雲賢・取締役会長は「国有株削減の停止は政府の威信を大々的に高め、投資家の証券市場に対する信頼を回復させた」と評価した。経験が示すように、証券市場の政策が不明瞭になれば、投資家の信頼を築くことはできず、市場も低迷から脱け出るのは難しい。

 銀河証券研究所の唐振斌氏は「去年6月以来、投資家は辛酸をなめ尽くしており、停止のニュースで心理的負担が取り除かれた。一時、大量の資金が投入されなかったのは、信頼がなかったからで、約8億人の貯蓄や企業資金は非常に余っていた。だが、停止の呼びかけは市場に資金を投入する“安定剤”となった」と話す。

 北京大学光華管理学院の曹鳳岐教授は「長期的に見て、国有株の非流通問題は解決しなければならないが、2級市場で削減するのではなく、現在の市場に掛かっている“ダモクレスの剣”を抜き去れば、広大な投資家の心理負担は軽減される」と指摘している。

 首都経済貿易大学の劉紀鵬教授は、資本市場を発展させるには株式の種類、株式会社の資本、株式市場、この3大構造の調整が必要だと強調したうえで、「こうした調整は、市場が安定し、発展していなければ実現できない」と指摘した。中国の株式市場は転換期にあり、新旧の特徴が入り混じっている。このため、旧体制下の行政手段がもたらす問題に注意を払うとともに、ひたすら西側のモデルを模倣する、あるいは米株式市場を再現する動きにも注意を払う必要がある。でなければ、相場はがたがたになるだけで、改革や発展どころではなくなる。

 さらに劉紀鵬教授は、客観的に見て国有株削減の停止は(1)経済が持続的に好調である一方、株式市場は低迷し、協調が取れていない(2)国際的に中国経済崩壊論や統計数字の虚偽論がかまびすしいが、資本市場が発展すれば、こうした見方を必ず打ち破ることができる(3)中国経済は構造的な調整に直面しており、積極的な財政政策をスローダウンさせる必要があるが、それには民間投資の発動に依存しなければならず、投資発動で最も重要な支えになるのは間違いなく資本市場である―――の3つの背景を抜きにしては考えられない、との考えを示した。

 また劉教授は「削減停止の最大の意義は、株式市場に休息のチャンスをもたらし、また資本市場が改革と発展に向けチャンスを捉えたことだ」と強調した。 

 中国人民大学金融証券研究所の呉暁求所長は「国有株削減は中国資本市場の枠組みにかかわる重大な問題であり、方向性は正しいが、市場はまだ成熟しておらず、これを受け入れるのは無理だ」と指摘し、国有株の削減に関してまだ適度な方策が打ち出されていないとして、国内証券市場を通しての国有株削減の停止に賛成の意を示している。

 また呉教授は「国有株削減は株式市場に長期低迷をもたらした要因であり、過去1年間に打ち出された幾つかの方策は証券市場の公平な原則を損なったため、停止するのは当然だ」と指摘する。

 さらに呉教授は「削減の停止が社会保障資金に影響を及ぼすことはない。それは両者の間に必然的な関係がないからだ」と強調した。

遅かれ早かれ解決すべき国有株問題

 経済学者の曹鳳岐氏は「国有株削減の停止は、全株削減の停止を意味していない。削減と流通の問題は最終的には解決しなければならず、でなければ、“生煮えの飯”を食することになり(中途半端)、問題はますます深刻化する」と指摘している。

 過去の削減方案が実行不可能とすれば、では、どのようは方法だったら国有株流通の問題を解決できるのか。

 国務院発展研究センターの郭励弘研究員は「関係機関は議論を速めて方法を見出し、早急に市場での全流通を実現すべきだ」と指摘したうえで、(111年前に制定した「3分の2の国有株と法人株は流通させない」との法律の条項を徹底的に修正する必要があり、これが株式市場の適正な発展に影響するかぎとなる(2)今年初めに議論した後に形成された共通認識にもとづいて、新規株式の全流通を推進する(3)海外での上場企業については、機関投資家が所有する株式の削減方案の実施を速める(4)非上場国有企業については、政府の財産権を譲渡することで外国企業との合弁を積極的に模索する―――この4点が必要だと強調した。

 経済界にしろ、また業界にしても、いずれも経済の発展には健全な株式市場が必要だとの見方で一致している。また、資本市場の経済発展に対する重要な意義を深く認識し、上場による企業再編を加速させるとともに、株式市場の投資機能を強化して、安定かつ適正化された、また繁栄し持続的に発展する株式市場を創造することが、当面ないしは今後数年間のマクロ経済の良性な運営を維持するうえで非常に重要だ、との認識を示している。

 今後10年以内に上場企業は20003000社に達する可能性があり、市場価格はGDPを超すことも考えられる。従って、経済成長は一定程度、株式市場によって達成されることになる。株価が安定的に値上がりすれば、個人や企業に経済が順調であるシグナルを発することができ、経済成長の刺激ともなる。こうしたことから将来、経済の持続的安定成長を維持するには、安定し、適正化された、また繁栄し持続的に発展する株式市場がなくてはならない。

 統計によれば、国有企業の約70%が資金源を銀行融資に依存しており、内部融資は29%、資本市場での調達は僅か1%にすぎない。資本市場を発展させることが同時に、国有企業の財産権と資本拡充の問題を解決する有効な方法になるのは明らかだ。

 国家自然科学基金が組織した証券市場専門課題グループが先ごろ発表した研究報告は、管理層による安定の中で進歩を求める方針や行政干渉が薄れていき、またh壮健市場の管理監督体制が完備され、投資家が理性的になっていけば、株式市場は徐々に健全かつ適正化された路を歩むだろう指摘している。